満足度★★★
合体
面白い。
ネタバレBOX
男3人が、森を見渡せる崖の上で、森を管理しているが、何も進まず変わらずの生活。森の中にはアメフラシが生息し、女5人が住んでいる。そして男が森に下りて女と出会う…。
序盤から中盤がタルく感じてしまったが、終盤(男と女が恋に落ちたとこ)から面白くなった。
崖の上の男に会いにいくヒトデナシをひきとめようとする母さんが死に、合体するヒトデナシと男。すると現代で家庭を築いた二人のシーンになる。タイトルの通り、レンメンと続く命の描写というのか。
男と女(という概念)が生まれる前の話だったのか(母さんも崖の上の男と合体したんだろうけど)、もしくはその概念が壊れた未来の話だったのか、そんな神話な肌触りの舞台だった。
前半のように、背景が不明なままのシーンが続くと注意力が鈍るが、話に動きがでると、見ごたえ合った。役者の演技も良かった。佐藤晃子の裸体は、話に合うような美しさがあって良かった。
満足度★★★
早稲田万歳
面白い。チラシの菊池佳南の表情がとてもいい。
ネタバレBOX
パキスタンで、大学時代に誘拐された坂本(西尾友樹)は、帰国後バッシングを受け、家族の中傷され、週刊誌には適当書かれる。そして、週刊誌の専属カメラマンとなる。しかし、陸上選手のパンチラ写真の件で仕事をやめ、写真を抱えたまま、あてもなくホームに立ち尽くす…。
「真実はひとつだけど事実はそれぞれにある」というようなセリフに、この世の不条理を感じた。ブンシュンのライターたちとの会話シーン、納得なんてできない、一見くだらない主張だなんて思ったけど、それで世界は回ってるのかもなんて思えた。世のトラブルとか軋轢の根源のようなものというのか。
ゆるい空気と引き締まった空気のメリハリがついてて良かった。喫茶店のシーンはいい空気感だった。中傷の手紙が降り注ぐとことか、母への手紙を読み上げるシーンとか。
変に「バッシング」に光を当てすぎなかったのがいい。バッシングを受けた坂本が逆にカメラマンになり週刊誌に写真を載せる、その矛盾と、内面に抱え続ける振り切れなかった想いの爆発(パンチラ写真の件)がみどころか。ただ、その後の菊池佳南とのシーンも含めて、やや間延びした感があったのが残念かなと感じた。
満足度★★★★
湖底
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。90分。
ネタバレBOX
とある男性が殺され、警察の検問が敷かれた、美ヶ原付近のパーキングエリアに足止めされた面々の話。
香緒里(吉川莉早)…彩花の姉。彩花と仲いいことから、とある男性を殺してしまった。
彩花(岩田奈々)…姉と男性の好みが一緒が悩み。姉に許された。
後藤(伊与勢我無)…葬儀屋。女を口説くのが得意らしい。
下河辺(高坂勝之)…葬儀屋。ややめんどくさい。香緒里らの番号を聞き出す。
美紀(みやなおこ)…律江が好きで、律江と仲のいい女に嫉妬する。めんどくさい。
律江(白石廿日)…美紀の嫉妬にちょっとイヤになる。
真琴(もたい陽子)…会社員。神谷とちょっといい関係になりかけた。
神谷(花塚廉太郎)…会社員。真琴に男がいたことに怒り、下衆っぽさが露呈した。カツゼツ悪い。
浜島(玉置祐也)…会社員。真琴が好きで、アイランドビーチのハンドルネームで書き込みしてた。
奈緒美(高橋明日香)…会社員。神谷が好き。意思表示をはっきりしないのがイヤな性質。
みゆき(野田和佳子)…会社員。浜島が好き。事件からみで聴取されるのが恒例行事な女。
ちょくちょく笑えて90分があっという間。キャラ設定もいい。テンポもいい。
色んな恋心が弾けて飛んでって感じ。そして一貫して柔らかい。
屈折した仲の良さから倉田姉妹が殺人を犯したことが判る終盤、世の中に苦しみがたくさんあって、月が許してくれると話す香緒里。いつまでもここにいるという姉妹の表情と、ぼんやり浮かぶ月が美しかった。
満足度★★★★
幸せの掴み方
面白い話と思ったが、残念なことに舞台が観にくい。
ネタバレBOX
22年前に3歳の妹・ゆうちゃんが行方不明になった花井家。父は方々を駆けずり回り、母は精神的に参って床に伏せている。長男をはじめ兄弟、幼馴染らは、その後悔や幸せへの渇望、ゆうちゃんの死の可能性を胸にビラ撒きなどゆうちゃん探しに出かける日々。そして、ゆうちゃんが見つかる…。
篤(尾方宣久)…長男。家族を第一に生きてきた。ゆうちゃんの生き死によりも今の家族を優先している。優と心を通わせるが、遠くへ行けないと、また以前の生活に戻る。
宏(長瀬良嗣)…次男。どこか頼りない。愛との間に子ができ、優の出現から二人で家を離れる。
淑子(岩瀬ゆき映)…長女。ゆうちゃんの失踪を後悔し続け、優の出現から「家族」を守ろうと不安定になる。
愛(小林さやか)…幼馴染。宏の子を身篭る。幸せを掴むため、優がニセモノと知りつつも家を出る。
千鶴子(菊池美里)…幼馴染。幸せが見つけられない。
久保(岡田美子)…篤の同級生。新聞記者。ゆうちゃんの件を記事にしようとする。
青木(遠藤友美賀)…篤の同僚。篤に片思い。花井家に疎まれているが、それを客観的にも見ている。
優(平田裕香)…上原家の養子。宏に拉致されてきた。家でも職場でも上手く行かず、花井家に居場所を求める。篤と家を出ようとした。
ゆうちゃんをなくした記憶と後悔、22年という歳月と労力…舞台ではそこまで強調されてないように見えたが、実際かなりヘビーな状況。ゆうちゃん探しが日常化し、一般的な「幸せ」を見失った家族とそれでも「幸せ」を掴もうとする家族と「幸せ」を掴みきれなかった家族の話。
異常だけども平穏でもある家族の生活に、人生に居場所がない女が入ってきて話が動き出す。みな傷を負って生きていて、何かを掴もうとしているけど掴めない、そんなもどかしさとか苛立ちとか鬱憤が見え隠れする作品。静かな調子だけど、ズシっと重い。
淑子の、「自分の幸せ」が何なのかわからなくなった様子とか、篤の「幸せ」を自ら手放す様子にガツンときた。タイトルの「遠くに行くことは『許されない』」ってとこがグイグイ心を押してくるよう。演じた尾方や岩瀬も良かった。
見せ方とかどうあれ、話自体は非常に好み。110分。
満足度★★★★
ヒモ
面白いけど、折角の円形ステージシーンがかなり観にくい。
ネタバレBOX
ストリップ一座の話。初見だけども構成がいいのかすんなり観られて、3時間(休憩10分)が早かった。話の濃淡がうまい。
シゲ(リリー・フランキー)…明美のヒモ。ヒモ道を標榜する。昔、明美に堕胎させた。
明美(渡辺真起子)…昔は評判の良かったストリッパー。美智子に仕送りをする負担から、「本番」や「売春」をして梅毒が頭に回って狂った。
まこと(渋川清彦)…みどりのヒモ。みどりと一緒になる覚悟を決めるも、踏ん張れずに他の女と結婚した。いいとこの出。
みどり(安藤聖)…まことと破局後、泡姫に。子はどーなったのか不明。
雄(古澤裕介)…咲子のヒモ。ガススタンドで女をコマす生活に戻る。
咲子(新田めぐみ)…結婚を考えもしない雄にイラ立つ。
正輝(米村亮太朗)…座付き照明。明美に想いを寄せ、妻と離婚した。
美智子(門脇麦)…シゲの娘。NY留学し、ロイヤルバレエの学校に入り、成功し帰国するが、明美はその存在が分からなかった。
座長(でんでん)…ヤクザ。明美のダンスに惚れてた。
ストリップ一座という、社会の底辺な狭い世界での、男と女な物語。表面的にはかなりスタイリッシュに描いているが、その下にドロッとしたものが脈づいているような感じ。男女の愛憎だけでなく、子(美智子や胎児)もからませ、カネもからませ、「人生」を描く。羨ましいとか素敵とか決して言えない人生だけども、その熱さにヤラレタ。
明美の気狂いとか、まこととみどりの終末とか、いいところに落ちたなと思った。物語るに値する「人生」というのか。
シゲの一幕目の語りとか、終盤のベッド前での語り、美智子とのやり取りとか、最高だった。職業「ロープ」も笑った。
満足度★★★★
オトメチック
面白い。
ネタバレBOX
ストーリーっていうものがあんまない、妙な舞台。不思議と笑えるけど。
馬場(小田井孝夫)…音無をたぬきから人間にしたり、雅子の求婚から逃げたり。
持立(藤田記子)…手がサイボーグだった、宝くじの販売員だった人。
雅子(藤井由紀)…馬場から盆踊り時、撥の持ち方教わった。
音無(宮下今日子)…弟のためにがんばったりもした。
西園寺(伊藤知奈美)…メイドさんみたいな子。犬を探してた。
神馬(金沢涼恵)…放射能が苦手。
伸親(猿飛佐助)…音無の弟。バレエ教室に通いたい。
んっん少女(森田ガンツ)…「ん」しか言えない女の子。雅子の影武者とかなんとか。
序盤のダンスとか、小道具とか、チョイチョイ入るわけわからんセリフと展開に、苦笑いもし、笑いもした。バー公演で見るのがちょうどいいとも思った。
子供の「わっかんない」「はっ?」っていうツッコミがウケた。そりゃそうだと思った。60分。
満足度★★★
伝説
宝島もピーターパンもよく知らない。面白い。
ネタバレBOX
船乗りを目指すジム・ホーキンス(加藤晃子)が偶然出会ったオウム(渡辺実希)と同じ地図を持っていたことから、ともにゴールディ(土谷朋子)の船に乗り、宝島を目指す。紫の嵐を超えてたどり着くが、オウムやコックのジョン・シルバー(渡辺望)らに地図を奪われてしまう。伝説の海賊が残した宝が海賊の船だったことと、亡霊となったピーターパン(青井そめ)の出現に驚く面々。ピーターパンの呪いを解き、再度海に出るジム…。
ブルーシートの海の表現とか、幕を使った視覚効果のある演出は気に入った。狭い舞台で、にぎやかな場面の表現も上手くできてた。
序盤の進行がややタルいなと思ったけど、伝説「ピーターパンの呪い」あたりからワクワクドキドキって感じで面白いなーと率直に思った。伝説の海賊の部下のスミー(佐々木豊)の恐怖とか、伝説と現実が徐々に重なっていく塩梅もいい。ダークな色に染まっていく感じがね。
ただ、ピーターパンの成仏?って流れが、ちょっと乗れなかったのが残念。110分。
満足度★★★
「わたし」
面白い。
ネタバレBOX
ギャっと朝起きてって女の子な舞台と思ったら、OLの取り留めない話でもあったり、いじめられる女の子の話であったり、育児放棄な母の話であったりの90分。18人の「わたし」と犬が、妙なダンス(と歌)とリピートなセリフで魅せる作品。
序盤のパフォーマンスでの、拡張子?がお気に入り。あと、終盤のグルグル回るのとか、育児放棄ママの心の歓喜とか。
多人数の良いとこを活かした舞台が好感触。リピートする毎日を描くって難題なんだろうなと思った。
満足度★★★★
魔女の宅急便
安くて面白い。
ネタバレBOX
テヅカ(篠本美帆)…漫画家。テヅカ先生と呼ばれたい。ドラマ化や映画化の話を蹴る。
ハマオカ(三瓶大介)…テヅカのアシ。ドラマ化映画化に賛成する。
キタミチ(根津茂尚)…テヅカのアシ。ツッコミが激しい。
モチヅキ(松木美路子)…テヅカの編集。カタヤマに罵声を浴びせる。
カタヤマ(伊達香苗)…モチヅキの部下。お土産貰えず不機嫌になる。
ツバナ(生見司織)…テヅカの友達。漫画とか色々知らない。ミッキーは描ける。
エリサワ(永山智啓)…テヅカの友達。常識人。
オカダ(宮本奈津美)…テヅカの友人の漫画家。九州まで車運転した。
モリカワ(三枝貴志)…オカダのアシ。テヅカの品をオークションにかけようとする。
ユキムラ(澤唯)…オカダのアシ。テヅカのファン。
テヅカの仕事場での会話劇。ゆるめだけど、芯が通っているような会話が魅力的。キャラも立ってて笑える。
テヅカをはじめ、カタヤマとかツバナといった女性がかわいい。男もモリカワとユキムラのコンビは最高。愛すべきキャラクターたちの、ほんわかな舞台。いい空気だった。
トンでるツバナを演じた生見司織の、音声にあわせての表情が上手い。ミョウチクリンで邪魔だけど、毒っけのない、いいキャラクター造形だった。
あと、前説の川村紗也のキキコスプレがかわいい。
満足度★★★
女組
面白い。
ネタバレBOX
変哲もないOL・メグミ(林貴子)とオオタニ(畑中智行)のラブストーリー。
頭の弱い殺人犯・カンドリ(渡邊安里)を追う刑事のオザキ(菜月チョビ)とスズキ(森めぐみ)の話。
改造人間として生まれ変わり、世界征服を目論むブルーナイト(坂口理恵)と対決するキョウコ(原田樹里)の話。
作者(?)が意図したのか話の中に主人公が3人いる状況に、早く話を終わらせようと意気込む面々は、作者抜きでストーリーを創っていく…。
基本ドタバタでコミカルな調子の100分。わかりやすいネタで笑いが多い舞台だった。メタ構造もしつこくなく、オチ(オオタニが作者で最初に戻る)もナチュラルで、安心してみていられる。
中心になりたかったけどなれなかったオオタニに笑顔で応えるメグミが素敵。汗だくになりながらも弾けてた林が眩しかった。(自転車こいでるパフォーマンスが好き)
声が聞き取りにくいともがあったのがやや残念。若手中心の活力ある演技が好印象。変にしめっぽくしないとこも○。
満足度★★★
情愛
面白い。
ネタバレBOX
「モノロオグ」(40分)
26歳の看護婦(遠藤留奈)が、付き合ってたフランス人の居なくなった部屋を訪れ、回想し内省する…。
色っぽい着物姿でありながら、恋心に一喜一憂するサマがかわいい。そして、邪魔でなかった自分を誉めてと独白するラストに心打たれた。
「空の赤きを見て」(50分)
病気な父・周蔵(NIWA)の療養のため、金策に走る周一(照井健仁)。そんな兄を心配する妹の美代(前川怜早)と周一の妻・兼子(土屋咲登子)のもとに、周一の同僚・宮下(松木大輔)がやってきて、会社の金庫から金が盗まれたと告げる…。
兄の負担を減らしてと迫る美代に、無理にとは言ってない、負担を減らそうとしている位だと言う父のやりとりに、家族の情がにじみ出る。結果、間もなく死ぬ父を前に、これでよかったという美代が、兄の背中で静かに泣くシーンにも、ない交ぜになった感情が溢れるようでよかった。
満足度★★★
未来系
面白い。
ネタバレBOX
未来からやってきた女の子と男の子の話。告白し両思いになりながらも、未来に帰る女の子。そしてタイムマシンを作成し、未来にたどり着く男の子(と一同)…。
有斗(中舘淳一郎)…アスカを匿う。輝更の好意に気づかない。
アスカ(有野いく)…未来少女。有斗と両思い。
輝更(志水衿子)…有斗が好きな幼馴染。けなげなツンデレ。
恵留(長谷川美子)…有斗の姉でブラコン。カナタと意気投合する。
機々(橘か織)…カガク部。天才。
玄(井原一樹)…カガク部。植物が恋人。
焔(東銀座晴海)…カガク部。機々が好き。
カナタ(舞原鈴)…アスカの姉でシスコン。理解ある大人チックな女性。
話自体、王道の安定感があって良かった。変に凝らずにいてね。
萌えが中心に据えた舞台はよいけど、キャラの魅力がもっとほしいかな。恵留や機々のキャラは立ってて良かった。面白かった。主役2人のキャラはつかみどころがよくわからんかなと。終盤の告白シーンに応援したくなるようなね。
衣装やしゃべりにも萌えがあるにせよ、作品としての萌えポイントのようなものが、もっとはっきり分かるといいかな。あと、声に出して笑えるとこがもっとあると充実の舞台になったろうなと思った。
満足度★★★
幸せはいつも小さくて…
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。
ネタバレBOX
小田(松下仁)、星野(稲垣千城)、仁村(小角まや)がルームシェアする家に、監禁されてたという三谷(山村茉梨乃)がやってくる。童貞な小田は、三谷に頼まれるまま、警察に届けず、家に置くことを決めるが、病的な愛情が走り出し、仕事をやめ、三人はバラバラになる。そして三谷は姿を消す…。
終盤の、小田の持論展開に、共感できてしまう。それってちょっと怖いなと。危険だなと。
三谷が実際に監禁されてたとか、監禁犯を殺したとか、小田が狂ったとか、そんなんも結局社会のほんの一部分に過ぎないというテイなのかな。個人という小さな存在の勘所(基準)と社会という範囲における勘所(価値)の違いというのか。その個人から生まれる幸せが社会に点在しているというのか。また、同じくらい不幸も点在しているというのかな。
満足度★★★
遺書
面白い。休憩込みの3時間半。
ネタバレBOX
柏木家の話。
立子(犬山イヌコ)…長女。幼少より大人びてた。十代から小説を執筆。疾病による失明の危機を迎える。
艶子(峯村リエ)…次女。物分りのいい、色々我慢しちゃうタイプ。寅夫と結婚した。イラスト描いてる。
類子(坂井真紀)…三女。父の再婚を機に失踪し、芸能プロダクションへ。回し蹴りが得意で、威勢のいい女。
伸彦(廣川三憲)…父。小説家。基子と離婚(死別)し潤と再婚するも、潤は男に走り、捨てられる。写真の裏に遺書を残した。
基子(松永玲子)…母。潔癖症で、類子らにつらく当たる。精神疾患に陥り、離婚話時に自殺した。
母の自殺、父の再婚、継母の失踪、親のドタバタで落ち着かない家庭。成長し仕事や恋愛、結婚、親族、病気に悩む三姉妹。重めな内容が中心だけど、存外笑いの絶えない作品。
ラストの写真のシーンは暖かで、後味はいい。その分、闇って感触が薄く感じた。家族の情っていう明暗がテーマだろうからそれでいいとも思うけど。家族(三姉妹と父母に焦点の当たった)の濃いめな舞台を期待してたせいかな。劇としてやや淡白に感じた。
1幕が二時間近くあって、途中ダレた。2幕は面白かった。
岡田義徳は、カツゼツが微妙と感じることがままあった。大倉孝二の笑わせスキルは非常に高い。坂井真紀の威勢のいいキャラと演技は気に入った。
満足度★★★
木馬亭
面白い。
ネタバレBOX
「喫茶室あかねにて。」
売れない劇団の主宰・ゲシュタルトが書けないことに頭を悩ませる、女性劇団員らの話…。
面白いけど、もう一声笑いを引き出すパワーが欲しい。セリフの掛け合いのリズムとか、もっと良くなりそう。(ゲシュタルトと浮気してた)小出(はしいくみ)らが、テーマソングを熱唱するシーンの爆発力とか物足りない気もした。客席と舞台が離れてるので、そう感じたのかもしれない。
「改正、頑張ってるところ、涙もろいところ、あと全部。2013年初夏」
売れない劇団の劇団員・美津恵(梨木智香)とOL・加奈子(根本宗子)が、好きなアイドルのスイカ割りイベント参加券を奪い合う話…。
面白い。小劇場自虐ネタもいいけど、卑屈で卑しい美津恵のクズっぷりが眩しい。加奈子もそれに負けてない、女性女性なキャラなのが良かった。キャラがわかりやすくて素直に笑える良作品。
「はなちゃん」
修学旅行に来たハブられる女子高生3人組と、元苛められっ子な仲居さんと、その同級だった壇蜜の話…。
仲居の特訓を経て、はなちゃんが仲居を継ぎって展開自体悪くないけども、ちょっと求心力に欠けたかなと。いじめの原因がおっぱいだってのは、なかなか面白い視点だけど、前半がなんとなく平坦な印象で、その分後半とのメリハリが利いてないと感じた。
満足度★★★★★
あと30回言って
おもしれー。110分。
ネタバレBOX
四谷(土屋亮一)の喫茶店のドタバタ+α。
七尾こずえ(佐々木幸子)…五代と付き合ってると勘違いな34歳。病的。
六本木朱美(篠塚茜)…ウェイトレス。五代や三鷹、二階堂、四谷から愛される小悪魔。
五代裕作(加藤雅人)…七尾に別れ(付き合ってないけど)を切り出せない。ワンシーンだけIQ300になった。
四谷…店長。いらっしゃいませと言えない朱美にキレた後、求婚した。
三鷹瞬(加藤雅人)…テニスやってる風な男。五代に似ている。
二階堂望(前野俊雄)…競馬に嵌る。一の瀬とともに色々苦労する。
一の瀬花枝(川田智美)…七尾の遠い親戚。七尾に振り回される。
基本ストーリーは、七尾、五代、朱美と他の男らの色恋ドタバタ話。序盤からちりばめられる、競馬の話、各人のキーワードセリフ、雨がやんだら虹を待てって要素が終盤花開く。舞台上部に虹とかけた7色のレーンと馬。キーワードを発する毎に1つずつ進むという趣向。セリフもレースの状況にマッチした上手いとこ突いている。このアイデアに心掴まれる。二階堂が言ってた、言葉で心が届くとはこういうことかと。
順位は2-3.。朱美が捨てられて終演。
佐々木幸子は白目向くような病的(悪魔的)演技とニヤっとした笑顔の切り替えが好印象。篠塚茜のウェイトレスは、小柄さも手伝ってとってもキュート。あと声が非常に魅力的。店長(土屋)が突如キレ出した展開もいい。
満足度★★★★
不思議の国
初英国ロイヤル。面白い。180分。
ネタバレBOX
アリス(サラ・ラム)のボーイフレンド・ジャック(フェデリコ・ボネッリ)がタルト泥棒の冤罪で追い出されてしまい、一方のアリスは不思議の国に迷い込む。そこにはヘンテコなキャラたちが住んでいて、ハートの騎士(ジャック)が、やっぱりタルト泥棒の容疑で追われていた。厳しいハートの女王の裁判で処刑されかけるも、アリスの助けでハートの女王は転落し、難を逃れる。そして、家の前で目を覚ますアリスは、ルイスキャロルにスマホで写真とってもらって、ジャックとともに出かける…。
コミカルな調子とドロっとした調子が交じり合って、いい感じ。衣装や舞台美術の彩りもいいし、セットがドンドン変わっていき飽きない。アリスの落下シーンとか映像の工夫が効いてるし、二幕のラストの処刑斧のインターバル表示とか庭園の植物とか色々と粋な作りが好印象。
3幕のハートの女王のシーンは大いに笑えた。いいキャラもってきたなと。アリスは表情が良かったかな。3幕はドタバタ逃走劇なシーンもあって、もっと活躍するシーンがあっても良かったかな。ファッション的にもかわいかったけど。
ポップでコミカルな作品だけど、フリはかっこいい。音楽も好み。世界観を色濃く演出した舞台に満足した。
満足度★★★★★
灰色な母と子
面白い。DVD出たら買いたい。
ネタバレBOX
北(ジジババばかりで子の生まれない荒れた地域で保や刈谷の生まれたとこ)・中央(栄えてる)・南(保の菜園がある)という呼ばれる地区割りのできた近未来設定。クローン技術も確立されてる。
保(堤真一)の母・朝子(麻生久美子)が死に、(移植のために作られた?)そのクローン・夕子(麻生)を「解放」することにした保。借金チャラのため、借金取りと寝ては淋病伝染される夕子に戸惑いながらも、クローン会社の刈谷(田中哲司)とともに、父や朝子と暮らした実家へ移る保だったが…。
保…色盲。実はクローンであるが、夕子が死んで思い出した。酒飲みの父から「クローン」と蔑まれ殺されかけたところを朝子に助けられる。父の記憶や朝子の記憶が定まっていなかった。実際の保は、朝子の絵を描いた健常者。
朝子…保の母。乳がんを患い、夕子から移植を受けた。保(クローン)を守るため父を殺した。産業医とデキていた。母であり女であった。
夕子…朝子のクローン。殺されるために生きてきたが、「解放」されたことにより「生(性)」に目覚める。下ネタが豊富。保の母にはなれないと知りつつ、借金取りと寝たり刈谷と寝たりし、保との生活を守ろうとする。保をオカズにシテいる。女であり母であった。
刈谷…クローン会社勤務。北出身のラストチルドレン。貧しい地域で生まれ、親からの愛情も乏しかったのか歪んでいる。
クローンである保の記憶障害の効果もあってか、朝子夕子の切り替えが絶妙。子を守る母と、母との思い出にすがる子の描き方が秀逸。クローンって設定とか、舞台には現れぬ父の存在とか、研ぎ澄まされた効果がビシビシ響いてくる。
舞台設定で名言されていないけど、転換時の黒子の衣装が放射能防護服でもあり、放射能事故での社会の崩壊が示唆され、そこから派生した貧困による家庭の崩壊と人間が生まれ持ったサガのドロッとした感触が伝わってくる作品だった。
3人ともいい演技だった。麻生の美人さがハンパでなく、女性性と母性が溢れるような演技が冴えてた。田中のマッドな演技もいい。
チラシイラストのように気味悪い話でもあるが、クローンという非人間を配置し、ナマの人間を浮かび上がらせ、そこに光を当てるような(そう希望を持ちたくなるような)舞台だった。
満足度★★★★
神様たち
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。
ネタバレBOX
作家たちの創造とその終焉の物語。
ひかる(芝原弘)は、知人の作家らと世界を創造し物語を作り、世に広め神となろうとする。一見順調に進むプロジェクトだったが、次第に現実と物語に混同が生じ始め、ひかるは物語の中で穢れたシノブ(チバアカネ)と出会い、そしてシノブの消失を受け入れる…。
ひかる…プロジェクトの発起人。最愛のしのぶを失ったことから、世界を創造し、その中のシノブを追い求める。
吾妻(和知龍範)…ひかるから最初に打診を受けた。ラスト、ひかるの再生を認める。
えみり(石井舞)…ひかりに密かに想いを寄せる。ファッションがいい感じ。
亘(青木柳葉魚)…ひかると衝突する。
城戸(西川康太郎)…吾妻らの編集。声がでかい。
しのぶ…亡き人。
荒木(浜野隆之)…実在しない作家。
芳美(吉原小百合)…実在しない作家。
鷲津(橋口克哉)…実在しない作家。
シノブと会うため、自身らを物語の中へ入れると提案するひかるの読み通りか、物語の中に入り込んだひかる。また、物語の中の住人が現実の意識の中にも登場するという設定がナチュラルで上手い。突飛なプロジェクトであるが、徐々に設定を厚くし世界に具体性を持たせ、また床の地図も手伝ってイメージが掴みやすい。その分舞台に入っていけた。
次第に物語と現実が混同する過程の(見せ方の)スピードもいい塩梅。ひかるが物語に入って(ジョナサンがシノブを殺しにかかる頃)からの、不穏さもいい。演じた西川の他者とのテンションの違いとコミカルな調子が光ってた。物語でのポジションもいいとこ担ってたし。マント装着時の気味悪い動きも良かった。
総じて面白かった。ただ、売れっ子作家な感じが少々弱かった気がする。また、ひかるの「再生」(しのぶとの決別)が、もっとジーンと来るとなお良かった。ちょっとサッパリしすぎに見えた。
満足度★★★★
才能と人格
太宰作品はあまり知らない。面白い。
ネタバレBOX
津島修治(菅原永二)らが無名の頃、静岡の田舎の酒屋に居候していた際の話とその後の話…。
言葉の面白さと見た目の面白さで、120分飽きずに楽しめる。太宰にしても、宮沢賢治(今野浩喜)、中原中也(三土幸敏)にしても経歴とか知らないが、説明過多なく人物や物語の広がりを感じられる。
太宰と妻・美知子(広澤草)の関係性がたびたび描写される。あれやこれや言い訳がましく理屈を重ねる太宰に、直球を投げ続ける美知子。
そんな太宰とネズミ(中也)の関係性では、双方の人間性が語られる。
ネズミと薬屋の書簡のやりとりでの関係性も面白い。一線ひいたような薬屋を面白くないと(出さない手紙で)両断するネズミ。そしてそれを察知する薬屋。
作家の卵な男同士の摩擦で起こる、どこか哲学的で中身があるんだかないんだかな話。傍からみれば停滞した空気が充満してる内容だけども、コチョコチョ笑わせてくれる演出に、舞台の面白さが生まれてた。
ネズミの「才能で人が集まる人間はそのうちダメになる。人格で人が集まるほうがいい」的なセリフが気に入った。そして、それって併せ持つことができないんじゃないかとも思った。