kazuoga5409が投票した舞台芸術アワード!

2012年度 1-10位と総評
幕末純情伝

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幕末純情伝

劇団EOE

抽選による完全招待制のシークレット・ライブ、特にその初日。1月の公演であるが、私としては結局これを上回るパワーと情熱を感じさせる公演に年間を通じて出会えなかった。稽古場を借りての、照明も蛍光灯のみ、役者も全員ジャージ等の稽古着姿でありながら、そこから発散されるエネルギーは凄まじいもので、作品の完成度としても文句なし。私はこれまでこの劇団が好きでありながら☆5つは付けたことがなかったが、これはためらうことなく付けた。この公演の「観てきた!」投稿者全員が☆5つであることからも、それが贔屓でないことは了解いただけるだろう。

ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

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ゴベリンドンの沼  終了しました!総動員1359人!! どうもありがとうございます!

おぼんろ

廃工場を借りての1ケ月ものロングラン公演、しかしその廃工場の構造を最大限利用しての上演は見事だった。作品の質もそれまでのおぼんろの作品群を凌駕して聳え立ち、5人の役者の息のあった熱演も素晴らしく、何度でも観たいとの思いを抱かせるものだった。

泳ぐ機関車

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泳ぐ機関車

劇団桟敷童子

役者陣の迫真の演技、大掛かりなセット、照明、音響…桟敷童子の舞台はいつも驚きに満ちているが、骨太な人間ドラマが前提にあればこそ単なるスペクタクルに終わらずに、深い感動と覚めやらぬ余韻を与えてくれる。この作品もどこも文句のつけようがない。芝居の面白さを堪能した。

狂おしき怠惰

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狂おしき怠惰

TRASHMASTERS

休憩なしの3時間5分という長さの上演時間を、少しの緩みもなく、グイグイ引っ張っていく。わずか数分での大幅な装置転換は驚嘆の一言。脚本・演出・役者・美術・音響のどれをとっても最高水準の舞台であることは疑いない。

骨唄

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骨唄

トム・プロジェクト

父と娘、姉と妹、それぞれの間の愛憎と心の機微を高橋長英、新妻聖子、冨樫真の3人だけで実に見事に演じきっている。劇団桟敷童子の東憲司氏が作・演出であるが、桟敷童子の多人数での濃厚な群像劇とはまた違った濃密な空気が舞台上に存在していた。

琉歌・アンティゴネー

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琉歌・アンティゴネー

ピープルシアター

これほど沖縄の問題に精神面から深く斬り込み、心を揺さぶった作品は初めてである。人間としての誇り・尊厳の前に何があるというのか…人々の魂がひとつに融け合って迫ってくる圧倒的に象徴的な終幕の場面は、忘れがたい心の震えを覚えさせる。ピープルシアターは、船戸与一原作の舞台化を主としたテアトル・ノワール、海外現代戯曲シリーズ、そして森井睦のオリジナル戯曲を活動の3本柱とするということであり、目が離せない劇団だ。

HOTEL CALL AT “杉並演劇大賞”受賞

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HOTEL CALL AT “杉並演劇大賞”受賞

メガバックスコレクション

脚本がしっかりしており、役者全員の演技に隙がない、そういう劇団はいくつかあるが、これにセットがリアルに組まれているということと、公演間隔の短さという2つの条件を加えると、メガバックスコレクションをおいて他に思いつかない。12年は6本の公演を行なったが、そのどれもが期待を裏切らなかった。殊に私が好きだったのはこの作品。観終わった後に深い満足感を覚えさせる舞台だった。

点描の絆

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点描の絆

東京ストーリーテラー

観終わった後、感動がじんわりと身を包む―東京ストーリーテラーの作品はそういう実感が得られるものばかりであるが、この舞台は特にその気持ちが強かった。2時間10分という上演時間を少しも長く感じさせず、私を物語世界の中に引きずり込み、ミステリーとしての面白さと同時に、泰山と俊介の間に流れる感情の「絆」の深さに強く胸打たれた。

泡

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劇団 東京フェスティバル

3・11震災からの復興に関する問題を、ソープランドという特殊な世界からの視点で描いた異色作。群像劇として、骨の通ったしっかりしたものに仕上がっており、人間の篤い志の尊さを教えてくれる作品であった。

口紅を初めてさした夏 (再演) 無事公演終了致しました!ありがとうございました!

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口紅を初めてさした夏 (再演) 無事公演終了致しました!ありがとうございました!

TOKYOハンバーグ

心に染み入る―そんな言葉がぴったりくる舞台だった。 決してハッピーエンドとはいえない幕切れ…、しかし、だからこそ、観客の心には重い余韻となって残る。

総評

2012年の観劇数350本からベスト10を選ぶのは骨の折れる作業だ(なお、4月上旬から1ケ月強は、事故により本当に背骨を折って脳挫傷という重傷で入院していたために、この間に上演された舞台は観ておらず、当然対象になっていない)。6位以降に挙げた作品は実際のところほとんど差がない。選択に困って、年間複数回の公演を行なっていて、いつも期待を裏切らない素晴らしい舞台を観せてくれるお気に入りの劇団を選んだというのが正直なところだ。 

と、いう訳でベスト10には入れれなかったものの、これらの作品群と比肩する作品を並べておこう。
 劇団チョコレートケーキ「熱狂」、
 劇団6番シード「ギブミーテンエン~昭和29年のクリスマス~」、
 時間堂「星の結び目」、
 渋谷ハチ公前「慣れの果て」、
 オフィス再生「正義の人びと ~神の裁きと訣別するための残酷劇~」、
 Toshizoプロデュース「靴の中の小石」、
 らくだ工務店「火葬」、
 ワンツーワークス「ジレンマジレンマ」、
 スポンジ「魚のいない水槽」。 

さて、最後に苦言をひとつ。遅れてくる予約客のために開演時間を遅らせるのが日常化している。だが、大多数の客はきちんと時間を守って来場し開演を待っているのだ。そうした大勢の客と、時間を守れない2~3人の客のどちらが大切なのかよく考えてほしい。遅れても開演せずに待っていてくれると思うからルーズになるのだ。開演時間を守るという姿勢を明確に打ち出してほしい。

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