1
紅小僧
劇団桟敷童子
桟敷童子も(番外公演を含め)期待を裏切ることのない舞台を観せてくれる。
この公演は会場を下北沢に移して果たしてあの大仕掛けの舞台装置をどうするのだろうという不安があったのだが、劇場の機能を最大限活かして見事な世界を創り上げた。客演の近藤正臣もこの劇団の空気を乱すことなく溶け込んでいたのが素晴らしい。
日本の土着性を強く感じさせた舞台だった。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=211239
2
治天ノ君
劇団チョコレートケーキ
この年で公演数が多く、しかもその全てが並外れて高いクオリティをもっていた劇団といえば、まずチョコレートケーキだろう。昨年のアワード第1位に輝いている劇団なので、そこをまた上位に入れるのはちょっと躊躇いがあるが、こればかりは仕方がない。
ではどの作品を入れるのかとなると、まず再演のものは除いたとして、「親愛なるわが総統」と「治天ノ君」のどちらにするか。
本当から言えば、わずか1時間という上演時間の制約の中、濃密な空気で充分すぎる満足感を与えた「親愛なるわが総統」だったのだが、これは日本演出者協会の若手演出家コンクール最終審査として上演されたものでありアワードの作品リストに単独で掲載されていない。それでこの作品を入れることにした(「親愛なるわが総統」だったら1位だった)。
チョコレートケーキはこれほど優れた公演が多くては票が散らばって不利か…。
詳細な感想は「治天ノ君」http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=214965、「親愛なるわが総統」http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=180140
3
女のほむら
ピープルシアター
ピープルシアターは(小さな空間での少人数の作品や朗読を始めたが)大作であっても舞台の隅々にまで目の行き届いた演出に隙がなく、壮大な世界を描き出す。
秋には「蝦夷地別件」もあり、どちらを入れるか迷ったが、この作品では、3人の女優に高橋お伝を演じさせる構成と、その内の一人である小山明子(20年ぶりの舞台復帰であったが、初日の前日に夫君の大島渚が亡くなった)が全編ほぼ出ずっぱりの舞台上で2回だけ動くその演出の意図に戦慄させられたのだった。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=174461
4
みんな我が子
Artist Company響人
初見のカンパニーだったのだが、さすがに劇団四季の経験者を中心にしているだけあって、アーサー・ミラーのデビュー作であるこの2時間10分に及ぶ舞台を開幕から終幕まで一瞬の緩みもなく、親と子の問題・個人と社会の関わり合いといったものを訴えかけてくる。素晴らしい舞台だった。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=205308
5
ビョードロ 終演いたしました!総動員2097人!どうもありがとうございました!
おぼんろ
前年は豊洲の廃工場を借りて1ヶ月に及ぶ公演をうったおぼんろが、今度はd-倉庫を3週間借りきって、しかも既設の客席を取っ払って、おぼんろワールドを展開してみせた。
内3回観たが、初日こそ前年の「ゴベリンドンの沼」を超えるものではないという印象だったが、回を追う毎に良くなっていった。ただ、観客動員の倍々作戦が役者たちに予想以上に負担となっているのではないかと、それが気がかりだ。公演回数を減らして1ステージ当たりの観客数を増やすということも考慮すべきでは…。
初日の詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=190285、そして千秋楽はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=192740
6
カルナバリート伯爵の約束 【池袋演劇祭‘優秀賞’受賞】
メガバックスコレクション
年間の公演数の多さ、そしてそのいずれもが質の高い舞台であるという点では、このメガバックスコレクションも筆頭となろう。ここも作品毎に票が分散してしまうだろうが、個人的には池袋演劇祭で優秀賞を受賞したこの作品を挙げたい。
普段使い慣れている劇場ではない分、セット組み等で多くの制約があったものと思うが、やはりメガバらしい舞台世界を観せてくれた。役者陣の息のあった緻密な演技、そして子役の並外れた素晴らしさ…小劇場でのエンターテイメントの雄だろう。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=204129
7
Blanc ~空白の抱擁~
芸術集団れんこんきすた
初見の団体で、しかも地の利の悪い劇場だったので、観るかどうか迷ったのだったが、これは観て大正解だった。
フランス革命三部作の一挙上演の内、その完結編となる「Blanc ~空白の抱擁~」しか観ていないのだが、ギロチン執行人を主人公にしてのフランス革命史は見応えのある、個人的には宝塚の「ベルサイユのばら」を遙かに凌ぐ作品だった。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=195810
8
かっぽれ!〜春〜
green flowers
green flowersの「かっぽれ」シリーズは、3月に第2弾となる「春」、そして9月に「夏」の2作が上演されたが、そのいずれもが実に楽しい、充実した舞台だった。で、どちらを選ぶかということだが、「夏」は師匠役の山崎健二が所属する円の公演と被ってしまい出演できなかったこともあり、やはり顔ぶれの揃った「春」を入れざるをえない。
劇中劇として演じられる落語の芝居部分もよくその噺の魅力を伝えており、役者たちの口調や立ち振る舞いもNHK朝ドラ「ちりとてちん」よりもずっと噺家らしさを感じさせる。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=182297
9
森の別の場所
時間堂
日本では埋もれてしまった知られざる世界の名作戯曲を発掘しようという、時間堂の新しいシリーズの第1作はリリアン・ヘルマンのこの作品。上演時間170分という長尺だったが、そんな長さを感じさせない緊迫した家族ドラマを展開した。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=209914
10
アルバローザの花嫁
ミュージカルグループMono-Musica
これも初見の団体だったが、小劇場とは思えないレベルの高いミュージカルを観せてくれた。
歌もダンスもそこそこの技量しかないのに、やたらとミュージカルを謳う劇団の面々は1度この劇団の舞台を観ることだ。その差に慄然とするだろう。ミュージカルというのなら、この劇団に並ぶ技術や心構えを備えていなくてはダメだ。
詳細な感想はhttp://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=215029