遊民の観てきた!クチコミ一覧

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笑顔の砦

笑顔の砦

庭劇団ペニノ

吉祥寺シアター(東京都)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

全てにおいて究極のリアルを追求したらこうなったという感じの作品。一般的に考えられる「物語」の概念とは少々趣を異にする。作りものでなくただ淡々と現実を写し取ったような印象。これがなぜか心に沁みる。
主人公の中年漁師は自分の「砦」で安穏と生活していた。しかしそこから外界を見た時、(隣室に引っ越してきた認知症の老親と息子の姿)少なからずショックを受け彼の中で何かが変わったようだった。しかしそれも一時のこと、お隣が引っ越していくと何事もなかったかのように居心地のいい「砦」で以前と変わらない生活が続いていく。これが何ともリアルじゃないか。だって人生をそんなことの連続のような気がするから。
セットの見事さには目を見張ったが、私はなぜか、誰もいない空気の澱んだようなアパートの部屋が強烈に脳裏に焼きついている。この空虚さは何だろう。それでいながら何か言いたげな饒舌さも持ち合わせている。
不思議な時間と空間を体験させてもらった。この作品に出会えたことに感謝。

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

SPPTテエイパーズハウス

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

主人公(霧島隆子)が無理やり「空想時代旅行」に持っていくような展開には違和感を感じた。また、もう一人の主人公であるニコラ・テスラの人生を描きながら、霧島隆子の過去が台詞の端々に現れ、ラストには行き別れた娘との再会というのはちょっとドラマとしては薄っぺらく感じてしまう。ダブル主演にしたことによって二人とも中途半端な描き方になってしまった感がある。桂ゆめさんをはじめ役者陣の奮闘には好感が持てた。

ダイバシティーファミリー

ダイバシティーファミリー

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2022/08/03 (水) ~ 2022/08/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

意外性のある展開で物語にどんどん引き込まれ、最後は安心のハッピーエンドで心和む。
親子や夫婦といった「家族」を軸としたエピソードが次々と紡がれるが、決して性急ではなく各シーンとも心理描写が丁寧だ。心温まるドラマかと思えば、随所に笑いが散りばめられ、ショウパブのシーンでは観客を巻きこんでのショウアップも忘れない。
約1時間40分の作品でエンタメのエッセンスをこれでもかと詰め込んでくるのは「お見事!」と言うほかない。

ことし、さいあくだった人

ことし、さいあくだった人

藤原たまえプロデュース

シアター711(東京都)

2022/07/14 (木) ~ 2022/07/18 (月)公演終了

実演鑑賞

気軽に楽しめるコメディではあるけれど、正直、登場人物のキャラの立ち方とか物語の展開とか、笑いのテイストは好みとは言えなかった。

畳屋のあけび

畳屋のあけび

CROWNS

シアター代官山(東京都)

2022/07/06 (水) ~ 2022/07/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

登場人物が多い分、前半は各人の役柄や関係性を把握するのに費やしてしまい、舞台上の出入りが激しくにぎやかな群像劇だな、くらいに思っていた。
しかし聡一の若年性認知症が始まり小春と二人のシーンがメインとなるにつれ、完全に魅了されてしまった。抒情的で何と美しい愛情の風景だろうか。こんな光景を舞台で観られるとは思わなかった。

小春役の國立幸さんの表情、セリフ回しの見事さに心を揺さぶられた。

ほおずきの実る夜に

ほおずきの実る夜に

藤原たまえプロデュース

シアター711(東京都)

2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

物語はシンプルだけど、思いがたくさん詰まった素敵な作品でした。冒頭のホラーなシーンが芝居の稽古だったとは...、やられた。一人二役もありそうでなかなかないし斬新です。ゾンビのダンスと気合いの入った盆踊りなど、この団体は見せ方が巧いです。今後も立て続けに公演があるようですね。期待しています。

小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

前回の「たましずめ」の時にも感じたことだが、なんだかふわふわしていて捉えどころがない作品だなという印象。何故だろうという疑問がぬぐえなかったので両作の作家、はせひろいち氏について検索してみた。すると今作のジャブジャブサーキットの公演時のはせさんのインタビュー記事が目に留まった。《最近、起承転結とか、観客を伏線とかで引っ張り込んでおいて、ここでこう見せよう、みたいなのが嫌で嫌で。》と語っておられた。そうか、それで合点が行った。私は起承転結があって伏線が張られて、回収されて...という「物語」に慣れ過ぎてしまっていたために違和感を覚えたようだ。長いこと観劇してきたつもりだが、今回、新鮮な驚きがあったと同時にこの作品の滋味を感じられなかった自分が情けない。

たぐる

たぐる

ここ風

テアトルBONBON(東京都)

2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

愛すべきキャラクターが揃っていて、観ていてこういう芝居が一番楽しい。それに笑いのタイミングとセンスが絶妙で飽きさせない。(ふいに挟んでくる小ネタも外れなし)多数の人物が登場するシーンではにぎやかでスピーディーに展開、二人のシーンでは静かにスローで、と緩急も巧い。単なるコメディかと思いきや、終盤ほっこりしたり、しんみりしたり。お薦めです!

ネタバレBOX

亡き父が可愛がっていたイルカの化身の登場や、彼(久右エ門)が一花に(亡き父のコレクションである)貝殻の入った瓶を手渡す辺りはファンタジーの様相を呈しているが物語上の違和感を感じさせない。それはこの物語がすべてを許容し優しく包み込む力を内包しているからに違いない。
ムーランルージュ

ムーランルージュ

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

著名な劇作家の既成戯曲に小劇場で遭遇することはまずない。「斎藤憐」という名前は知っていても作品を拝見するのは初めてだ。この機会がなければ今後も観る事はなかっただろう。それだけでもありがたい。
舞台の方は約2時間半という長編ながら、時間を感じさせなかった。もちろん戯曲の力もあるが、それにも増して演者、スタッフの寄与するところは絶大である。その昔、新宿にあった小さな芝居小屋で、躍動し苦悩する人々の「生」が正に眼前にあった。観客は束の間、それを垣間見て納得したり、考えさせられたり...。これぞ芝居の魅力だ。
歌や踊りも素敵だったが、小道具や衣装もしっかり時代考証されていた。(衣装チェンジの素早さには驚いた)「ムーランルージュ」用語集も知らないことが多く、ありがたかった。感染対策も徹底されており、全てにおいて観客に「安全に楽しんで帰ってほしい」という演者、スタッフの気概が感じられた気持ちいい舞台だった。

一枚のハガキ

一枚のハガキ

劇団昴

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2022/03/16 (水) ~ 2022/03/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

当日パンフの演出ノートで北村さんは「戦争という得体の知れぬ暗夜の底に突き落とされた人間が、崩壊から再生へと必死に這い上がる生命力を賛美し、その姿を粛々と再現したいと考えています。」と書かれている。なるほど、森川友子が慟哭する場面もサラッと暗転したり、暗雲に覆われた日々にどこかカラッとした場面が現れたりと、当時のリアルな日常が再現されていた。だからこそ戦争の狂気や悲惨さが痛切に伝わってくる。もちろんそれは昴の役者さんたちの確かな演技によって裏打ちされていました。

凪のように穏やかに

凪のように穏やかに

雀組ホエールズ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/02/17 (木) ~ 2022/02/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

被災して亡くなった者、被災して生き残った者、被災者に寄り添う者、被災地から離れて暮らし、震災から最も遠い者。様々な視点から描くことによって、震災の全体像がリアルに浮かび上がってくる。そういう配役の中でも、ポイントだったのは斉藤こず恵さん演じるキヨコ婆さんだ。単なるにぎやかし(失礼)かと思いきや、さにあらず。織部治一の先輩、杉浦友蔵の妻、典子に向かって「被災した当事者のことなんて絶対わからないんだ、わかったふりをすればいいんだ(“思いやって寄り添う”という意味だろう)。」というセリフが我々が被災者に接するときの正に答えなのだ。ラストのファンタジックな展開には少々面食らったが、亡き夫(織部治一)から生き残った妻と娘に対する最後のメッセージと捉えると胸が熱くなる。妻と娘を両手に抱きしめながら「二人が生きていて本当に良かった。」というセリフは、東日本大震災で亡くなったすべての犠牲者から家族に宛てたメッセージのような気がしてならない。

溺れるように走る街

溺れるように走る街

吉祥寺GORILLA

劇場HOPE(東京都)

2021/12/09 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「深夜ラジオ」というキーワードを通して描かれる絆とか愛とか。
伝えたいことは理解できるが表現がどこまで追いついていたかについては疑問が残る。例えば脳梗塞の後遺症を負ったミュージカル女優の姉がラジオを通して妹に語り掛けるシーン。物語のクライマックスであり、迫真の演技が求められるところだが不自由な言葉遣いは作りものの域を出ていない。(演じた日下さんは努力されたと思うが)これはどんな名優にとっても難役だろう。ミュージカルという身体表現の対極にあるものとして脳梗塞による身体不自由を選んだのかもしれないがそうだとしたらいささか安易だろう。女子大生の妹が姉の病気の発症を自分のせいにして見舞いに行けずにいる、という設定にも違和感がある。逆に毎日見舞いに行くのじゃないかな、という気もする。お笑いコンビの復活の過程もあっけなく淡白な印象。

マツバラQ

マツバラQ

グワィニャオン

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/11/24 (水) ~ 2021/11/28 (日)公演終了

実演鑑賞

初見の団体だったが正直、私の好みではなかった。殺陣あり、ムード歌謡コーラスありとエンターテイメント性はあるものの肝心の物語には面白みを感じなかった。特に、どんなプレゼンも一蹴してきた出版社の二代目社長が(いくら編集長の熱意あるプレゼンがあったとはいえ)簡単に「松原忠司」本の出版を許可したのは合点がいかなかった。(何か伏線あったのかな?)ハッピーエンドの娯楽作品として細かいところはサラッと流して楽しめればいいのだが...。 

異常以上ゴミ未満、又は名もなき君へ

異常以上ゴミ未満、又は名もなき君へ

good morning N°5

小劇場B1(東京都)

2021/11/25 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いやーまいった、こんなにエネルギッシュでバカバカしい芝居を観たのは初めてかもしれない。最高!。こんな芝居を探してたぜ。特に「双数姉妹」時代から推しの野口かおる嬢が弾けまくってたなあ。うー、たまらん。中村中さんの音楽にも痺れた。無理やり引っ張り込まれるような強引さはあるが、入ってみるととても気持ちよく温泉の様な世界でした。

ME AND MY LITTLE ASSHOLE

ME AND MY LITTLE ASSHOLE

藤原たまえプロデュース

シアター711(東京都)

2021/11/17 (水) ~ 2021/11/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「これは一人の人間の、たった二つの物語」とチラシにあるが、色々あったのち「一人の人間が、やっと一つになれた物語」なのかもしれない。人間とは何と滑稽な生き物かということを味わえた素敵な喜劇でした。

たましずめ

たましずめ

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2021/11/10 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了

実演鑑賞

数年ぶりに拝見。トートバッグのプレゼントを継続されていることに感服。作品世界をより深く体感できる舞台美術も相変わらず素晴らしい。鑑賞マナーのアナウンスも心配りが行き届いている。ただ正直、作品は(あまり好みでない作風だったというっこともあるが)少々物足りないという印象です。特に3本目は1本目の後日談とはいえ、サラッとしすぎているような気がしました。

ちーちゃな世界

ちーちゃな世界

青春事情

駅前劇場(東京都)

2021/10/27 (水) ~ 2021/10/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

これだけ何度も自然と笑いがこみ上げてくる芝居に出会えたのは久しぶりだ。日常で出会いそうな人々や場面が生き生きと描かれているからだろう。登場人物の配置や配役も絶妙でした。これぞ小劇場の醍醐味を味わえる作品!。

ネタバレBOX

寓話のようなラストにはちょっとびっくりしたが、いやこの作品にはピッタリだなと納得。後藤飛鳥さんを舞台で拝見するのは十数年ぶりでしたが相変わらず魅力的な女優さんでした。
好きで嫌いな珈琲と煙草

好きで嫌いな珈琲と煙草

ふれいやプロジェクト

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2021/09/15 (水) ~ 2021/09/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

チラシに「何時までも続くエンタメを貴方に」とあるが、小劇場という空間にピッタリのエンタメ感が心地よかった。七味さんの存在がまさに七味のようにピリッと物語にアクセントをつけてくれたのが印象的。ピアノの生伴奏は素晴らしかった。

ネタバレBOX

暗転の後、それまで和気あいあいだった「私」と「彼」が急にいがみ合うようになったシーンと喫煙シーンの多さには違和感を覚えた。(暗転中に映し出された時計が時間の経過を象徴していたのだろうが)
春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉

春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉

ENGISYA THEATER COMPANY

シアター風姿花伝(東京都)

2021/07/06 (火) ~ 2021/07/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

女優たちが生き生きと舞台上で語り、動き回る姿は観ていてそれだけで楽しいものだが、物語としては響いてくるものがなかった。群像劇では間々あることだが、人物紹介から各人にまつわるエピソードなども盛り込んでいくと肝心の作品のテーマが描き切れずに終わってしまうことがある。今作もシェアハウスにおける老女たちの友情はほのぼのするが、死生観がどれだけ伝わったかは疑問として残る。セットにブランコを取り入れたことやBGMとして流れるクラシックの名曲の数々は印象的。

『crash~M銀行人質事件~』

『crash~M銀行人質事件~』

singing dog

小劇場B1(東京都)

2021/04/08 (木) ~ 2021/04/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

小劇場の芝居の魅力のひとつは限られた空間、シンプルな舞台装置で観客の想像力をいかに喚起するかという点にあると思う。この作品は、役者の台詞や音響効果で現場の緊迫感が十分に伝わってきて最後まで集中して観ることができた。前作もリアルで見応えがあったが今回も素晴らしかった。

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