実演鑑賞
満足度★★★★
被災して亡くなった者、被災して生き残った者、被災者に寄り添う者、被災地から離れて暮らし、震災から最も遠い者。様々な視点から描くことによって、震災の全体像がリアルに浮かび上がってくる。そういう配役の中でも、ポイントだったのは斉藤こず恵さん演じるキヨコ婆さんだ。単なるにぎやかし(失礼)かと思いきや、さにあらず。織部治一の先輩、杉浦友蔵の妻、典子に向かって「被災した当事者のことなんて絶対わからないんだ、わかったふりをすればいいんだ(“思いやって寄り添う”という意味だろう)。」というセリフが我々が被災者に接するときの正に答えなのだ。ラストのファンタジックな展開には少々面食らったが、亡き夫(織部治一)から生き残った妻と娘に対する最後のメッセージと捉えると胸が熱くなる。妻と娘を両手に抱きしめながら「二人が生きていて本当に良かった。」というセリフは、東日本大震災で亡くなったすべての犠牲者から家族に宛てたメッセージのような気がしてならない。
2022/02/24 21:35