YUBOの観てきた!クチコミ一覧

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月の岬

月の岬

青年団

座・高円寺1(東京都)

2012/06/08 (金) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

味わいきれず
大人の芝居だなぁ。舞台美術も役者も音や光も一体となって、まさにそこに人間の営みが再現されているかのようなリアリティー、美しい。物語も、どこまでが本当(現実・真実)で、どこからが嘘(夢・虚構)なのかが曖昧にされていて。更には、おそらくそのセリフや所作一つ一つが、物語の重要なメタファーであり、伏線なんだと思うのですが。きちんと物語を理解している方達と感動を比べると、おそらく半分くらいしか味わえてないんだろうな、とその完成された世界にただただオロオロと圧倒された2時間でした。

キツネの嫁入り

キツネの嫁入り

青☆組

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/05/25 (金) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

すこし不思議
抽象度の高い舞台美術の上で場面によって場所は変わりながら、役者のその繊細な所作で見える空間構成力がすさまじく高いなと感じました。その場、その場で登場人物達が地に足をつけて生きているんだと実感するような生活感と、ファンタジーのつかみどころのない浮遊感を並べて見せてもらって、一挙手一投足が美しいなぁと思いました。物語も平易な語り口なのに、心地よく受け止められる。派手なことや奇抜な事をしなくても、こうやって落ち着いた雰囲気でしっかり物語を上演して観客の集中を途切れさせずに楽しませることが出来るんだな、と実感。美術と音と光と役者と物語と、創り手の総力の結集が、細部までこだわっていて、キレイで。あまりにも目の前に自然にあるものだから、気付くとどんどん通り過ぎてしまい、時間を忘れさせてもらえるような観劇体験でした。

翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

現象だなぁ
全部あって何だかわからない。世界の全てみたいだ。バナナ体験は昨年の大運動会に次いで二度目。今回は、千秋楽、最前列。開演前のアナウンスは「自分の身は自分で守りましょう」最適なアドバイスだなぁと思う。開演早々、演者の一人と握手。最前列だから、演者から色んな小道具も委ねられる。徹頭徹尾受け入れられてるような安心感。その直接的なパフォーマンスに慣れてないので、それだけで満足しきってしまう。あとはもう本当にありとあらゆる事が目の前を通過して、自分も演者もずぶ濡れで、ただただ圧巻。一度だけじゃもの足りないし、何度見ても完全に理解出来ないけど、この瞬間は一度だけなのがもどかしい。

edit

edit

shelf

atelier SENTIO(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

緊張の末
見ているだけで、息を飲み、汗ばみ、背筋を正し、凝視して、集中を強いられるような空間。その居心地の悪さは次第に楽しくなり、達成感へとつながっていく。役者達の動きは在ることで成立するような圧倒的な出で立ち。引用された言葉そのものの力強さは、役者という肉体を通して強度を増す。動きも言葉も最小限に削ぎ落として、最大限の効果を求めるように練りこまれている。そして「編さん」されることで見える、引用元の違う言葉同士のつながりが世界を深化させる。そうか、これも演劇か。

最後にあう、ブルー

最後にあう、ブルー

Crackersboat

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/05/10 (木) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

ノリノリ
騙されたと思って1度見てみるダンスカンパニーだな、と思った。目にも止まらないスピードの美しい動きにビビリ。一方で敢えて要所で脱力してみせる面白さ。見慣れてない者にとって、言葉が無い直接的に訴えるダンスの特異性はとっつきにくいんだけど。この公演には、幾つもの物語、それぞれのダンサーの役割、流れてる曲のこのメロディがこの振り付けに相関している、などと分かったような気がする喜びがあって嬉しい、勿論全部はわからないんだけど。その上でやっぱり非言語的なダンスで魅せる身体性、圧倒的な力強さがあるなぁ。で、結果、最初から最後までノリノリで楽しいなと素直に思える70分位。

闇言

闇言

JACROW

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/05/08 (火) ~ 2012/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★

恐ろしい
そこまでやるか、と目を見張る驚きの連続が繰り広げられるのは闇の中。目を見晴らせて見入ると、光の明暗の中には、「生死」や「善悪」をあいまいにさせる狭間が浮かび上がる。このおどろおどろしさに、戸惑いつつ、目が離せず、4話構成の物語の最後まで見た時に各話のつながり方にゾッとさせられる。後味は悪いのに、妙にスカッとするのは何故だろう。そして、人間の性を嘲笑うような内容なのに納得させられるのは何故だろう。踏み込んではいけない世界を垣間見た気がして、観劇後の帰り道、路地裏に未知の世界が広がっていたらどうしよう、とビクビクするような怪作。

おかえりなさいII

おかえりなさいII

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2012/05/04 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

その100%が
「星の王子さま」を感じつつも、当たり前の日常が当たり前じゃなくなる現実への葛藤を、おもいっきり動いて見せてもらいました。創り手が稽古して100%に近づけた感情を全力でぶつけても、観客の自分がそのまま受け取る事が出来ないなんて、人間って面倒くさいなと思いつつ、とても共感しました。

ネタバレBOX

原作「星の王子さま」。地球に降り立った王子はキツネに「仲良くなる(飼い慣らす)」ことを教わる。10万人の内の1人である王子と10万匹の内の1匹のキツネではお互いにとって必要な存在ではない。でも、仲良くなれば、お互いにとってこの世でたった一人(1匹)の存在になる。

本作では、かけがえのないたった一人の存在への思いは、学校や職場からの帰り道でのエピソードから生まれる。そして、各々のかけがえのない一人が乗ったフランス行きの飛行機が墜落して帰ってこないことがわかる。会場で配られる公演パンフレットには物語への最たるメッセージ「当たり前に明日もその人に会えると思っているから、ほんとに好きな人にはほんとに言いたい事は言えないけど、でも当たり前に明日も会える保障とかどこにもないよなぁ」とある。

そして、飛行機事故の前と後のそれぞれの思いは「汗と涙でぐしゃぐしゃになる」体に過度に負荷が掛かる(スクワット・劇場の壁を押す動作・他の俳優を持ち上げるなど)、もしくはシアターゲームをやりながら台詞を言う形で表現される。それらの演出は普通に喋るだけでは抑制されてしまう、自分の気持ちや感情を100%発露するための作業だと思う。自分の思いを自分が思ったとおりに伝えることの不可能であること、でももっと伝えたいしわかってほしいこと、その普遍性を体現しているなと思う。何より、その全力な動きは見ていてコミカルで楽しい(役者にとっては相当の負荷だと思うけれど)

物語の冒頭と最後。事故で亡くなった者と残された者が「ただいま」「おかえりなさい」という台詞のやりとりをする。「ただいま」も「おかえりなさい」も相手に向けて発する言葉なんだな、という自明の理を再認識して、その大切さを噛みしめながら、普通に電車に乗って、普通の生活に戻るのだ。

初日乾杯も行われて、ビールまでいただいて。良い芝居観た後に、飲むビールは格別だなぁと思いました。
夢!サイケデリック!!

夢!サイケデリック!!

範宙遊泳

アトリエ春風舎(東京都)

2012/04/25 (水) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★

バカバカしさの先に
公演説明にもあるように。観劇後に、とんでもないサイケな所に誘われた気がする。芸術でもなくて、エンタメでもなくて、でもゲラゲラ笑って、物語の構造にびっくりして、唯一無二な「夢」物語だなぁとおもいます。

12匹の由緒ある猫たち

12匹の由緒ある猫たち

猫の会

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/04/24 (火) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

猫会議
•猫の生活を覗き見ると、人間との驚くほどの類似性!?一年間で最も猫社会に貢献した猫を決めるべく集まったはずが、いつの間にか社会情勢と生命の神秘にまで昇華する壮大さ。劇作家の相馬さんの作品は「Re:カクカクシカジカの話」に続いて2度目の観劇。身近な物語の中に、普段見えない(見ないようにしている)現実があるな、その現実への視点が暖かい。そんな作風は猫の会のゆるくて優しい演劇のコンセプトにもあっていたなと思いました。

ネタバレBOX

様々な猫が「我こそが最も猫界に貢献した猫だ」と立候補する中で、ジャーナリスト猫は「福島の警戒区域から仲間を先導して東京まで逃げ延びてきた無名の猫」を推薦する。推されてるのが野良猫であることへの抵抗感で、誰も賛同しない。その状況から、互いに意見交換を交わす中で次々と無名の野良猫に票が集まる感動は、「12人の怒れる男」の感動に似てるように思う。

路上生活者と野良猫を重ねてみると、その偏見と差別がわかる。自堕落で怠け者、努力が足りない、常識がない、騒音の元、悪臭、近づくと危害を加えられそう。僕の毎朝の通勤時の当たり前の風景は、年配の路上生活のベテラン風の方が空き缶をいっぱい集めて自転車で運んでるのとすれ違うこと。何年か前に、ボランティア団体の方と一緒に地域の路上生活者の安否確認「夜回りパトロール」に参加した事があるが、路上生活者の方は皆危害を加えられないように、また周囲になるだけ迷惑をかけないように隠れるように生活している。自分と同じ位の歳の若い路上生活者を街中で見かけるといたたまれない気持ちになる。なりたくてなっているのか、どうしようもないのか。

そして、その無名の野良猫を選出するか否かの議論を通じて学ぶそれでも生きていくこと。地球に生命が誕生して、人間も猫も何万年もかけて進化して生きてきた「生きてることの素晴らしさ」。本作中の猫が市民の代表ならば、劇中に出てくる人間は何を象徴するのだろう。世間か、空気(を読む)か、国家か、社会か。そこから逃れて、自立して生きていく猫達を心強く思う反面、その背中はあまりにもか弱い。飼い猫から追い出された野良猫は保健所に捕まれば駆除されてしまう。優しくて温かい物語のソコココに、1歩足を踏み外すと簡単に底の抜ける現実を見た。
オーシャンズ・カジノ

オーシャンズ・カジノ

北京蝶々

王子小劇場(東京都)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★

カジノ最高っっ
濃いキャラクターと、どファンタジーなエンタメ感満載の物語の中に、こっそり見える世の中への怒りを感じたり何かして。充実の観劇でした。

ネタバレBOX

1%と99%。富は世界中の人口の1%に集中していて、残りの99%は辛酸を舐めてるんだ!2011年ウォールストリート占領運動で出された、格差是正のメッセージはシンプルだが明瞭だ。一方でコンビニでバイトしながら廃棄弁当で日々食いつないでる人がいて、一方で九州の中州ごと買えちゃう人がいるとしたらおかしくねーか、的な思いは観客として見ていて当然ある。

劇中に出てくるのは、賭博を巡る駆け引き≪持たざる者が持つための競争・騙し合い≫と、長崎の地域振興≪共存・皆で生きていく公共性≫が同時に描かれる。一方は個人主義で、一方は全体主義で相反するように見えるけれど、「1%と99%の是正」富の再分配って形で考えればつながるのかもと思う。劇中でも答えが出ないように、僕自身もこの不景気感というか、閉塞感というかの打開に、明確な答えは出ないんだけれど。でも、そこには今を生きる我々の普遍的な怒りのようなものがあるんじゃないだろうか。

公演のチラシに、「日本の未来にいくら賭ける」とあるが、個人の掛け金なんてたかが知れてる。でも、積もり積もれば大きな金額になる。物語の終盤に「自分は人に迷惑をかけてばかりいる」と負け組感満載の男トビオが、船上を支配してる中国人企業家のヤンに「カジノゲームで勝負しろ」と迫る姿が描かれる。そして、無謀だとわかっていながら周囲の人間はトビオに投資する。それを見てトビオ勝ってくれないかなぁと期待してしまうのは、現実と重ねて見ているからだと思う。彼らがトビオに賭けるのは、より多くの富でもあるし、人生の充実感でもあるけど、転じて最終目標は日本の未来に賭けてるんじゃないかなと、1%と99%に強引に引き寄せて考えてしまう。そして、勝負で負けるけど、最終的には計略でヤンを負かすクライマックスに胸をなで下ろすのだ。

でも、パチンコ業界の鉄砲玉とされたトビオを筆頭に、長崎県議のマダラメも、長崎にカジノを作って一攫千金を目指したカラサワも、地権者テラシマも、警察官キリハラも、パチンコ業界の大元ノビルも、お互いに騙して競争しているけれど99%側なんだろうなぁ。本当の1%は、表舞台に出てこないで本作の船上の一幕のように99%を駒にして動かしてるんだろうなぁと思う。トビオとトビオの彼女アンコの人生も劇的な変化は無いんだろうなとも思う。

人間の依存心は愚かしく。でも、カジノは楽しい。だから人間って愛しい。日本と世界のギャンブル事情を挟みつつも、全体は何でもありなライトでポップなティストで(そしてコンパンニオンの皆さんのセクシーな衣装とダンスに目がクラクラで)見ていて本当に楽しい時間だった。そして僕自身、終演後のカジノタイムで幸運にも8チップ獲得!!DVDと山梨県産ワインを御馳走になって、カジノ最高っっ!って思っちゃいました。
自慢の息子

自慢の息子

サンプル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/04/20 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

へんたい
掴み所のない快感。そうか、感じるままに見たら良いんだなと思うと、何にもなくて何でもある世界は、ワケわからないけど、ワケわからないから楽しい。変態には性的倒錯という意味以外にも、動物が幼生から成体に変わる意味もあって。進化して人間も物体も世界も全部がワケわからないくらい変態しちゃえば良いのに、という妄想が積み重なって出来たような居心地の悪い世界が気持ちよい。

だだこねるハル

だだこねるハル

ひよどり山

アトリエ春風舎(東京都)

2012/04/13 (金) ~ 2012/04/19 (木)公演終了

満足度★★

まとも
きわめてまっとうな駄々、わがままだなぁと思った。

ネタバレBOX

劇中、流れていたミュージカル「CATS」の代表曲メモリー。天上に昇るジェリクルキャッツに選ばれたグリザベラ。死を受け入れる存在としてのグリザベラは、本作の残されたハルの孤独や現実を直視できない苦しさに転化するのかなぁ。そんな事を考えながら見てた。
平田オリザ・演劇展vol.2

平田オリザ・演劇展vol.2

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

違いを楽しむ
「平田オリザ演劇展vol1」から1年を経て、「3.11」を思い起こしながら味わう「さようなら」と「銀河鉄道の夜」。「隣にいても一人」の3つの地域編を見比べて、個々の作品の独特さを体感。不条理を楽しむ「阿房列車」と「思い出せない夢のいくつか」。一度に色々な種類の作品を楽しむ事が出来て、有意義な企画。今から今年度末の「vol3」にも期待してしまう。

ネタバレBOX

「さようならver2」(Eの回)前作同様、アンドロイドと人間の区別があやふやになって錯覚してしまう。「3・11」を経て生まれた続編部分は秀逸。アンドロイドと引越し業者のやり取り。持ち主が死んだ後、アンドロイドは福島県双葉町の海水浴場に送られるようだ。人が立ち入れない被ばく地域で、亡くなった多くの人のために詩を読み続けるために送られるアンドロイド。劇中、壊れたかのようにずっと詩を読み続けるアンドロイドに、ちゃんと喋れるか問いかけると「はい、大丈夫です」を繰り返し、繰り返した理由を問うと「わからない」という。その「わからない」は機械と人間の狭間をあやふやにする言葉だと思う。プログラムにはないものだから。

「銀河鉄道の夜」(Cの回)は昨年も見て、泣きそうになって、今年も見て泣きそうになった。前売り完売で、ダメ元で、当日券狙って行ったら、3階席を用意してもらえて感激。友人の死を通して学ぶ、人間の孤独と本当の幸せ。子供の頃に本で読んで以来、現在まで何度も「銀河鉄道の夜」に触れているけれど、こんなに繊細で、前向きな物語なんだなと再発見出来る内容です。東北でも公演するとの事で、被災した子供達にも、是非たくさんのものを感じて欲しいです。

4/7のアフタートークで、平田オリザさんが≪不条理劇は「朝起きたら何かに変わっている」か「永遠に何かを待ち続けるか」どちらかだ≫と話していたのが印象的でしたが。「思い出せない夢のいくつか」と「阿房列車」は「永遠に~」系、「隣にいても一人」は「朝起きたら~」系だ。

不条理劇をまとめて見れる幸せを感じつつ、思った事は。自分の見えてる世界が全てでは無い感じ、「世界はなんだかよくわからない」という感覚が面白いなと思った。電車に乗る事、食事をする事、起承転結のない雑談。目的があって手段があるとか、原因があって結果があるといった事抜きに、現象だけがポツンとそこにあってそれを当惑しながら受け入れる。そのつかみどころのなさが、自分の知らない世界を広げてくれて心地よい。「阿房列車」は昨年元祖演劇乃素いき座の上演を拝見しての初見の印象は簡素な装置で役者の生々しさが目立ったが、今回の現実味のないひょうひょうとした感じはつかみ所がなくて面白かった。「思い出せないいくつかの夢」は、阿房列車と銀河鉄道の夜との相関を意識した構成が楽しく、重なる所と違う所の妙を眺めて見ていた。

「隣にいても一人」せっかくなので3つ共、と思い、三重→広島→関西の順で観劇。夫婦になるという在り方がとても不思議に思える、でも夫婦になる事がとても魅力的に思える作品でした。方言や地域の違いで、同じ内容もこんなに見え方が違うのかと新鮮な発見でした。三重編は、物語を一番自然に見せてくれた。広島編は、キャストが若いからかその初々しさがたまらない。関西編のノリは他2編とは異質、ボケとツッコミがニュートラル過ぎて、脚本内の笑い所より、何気ない会話の方が笑いが大きい。感情の起伏も他2編と大分違って見えた。関西・三重の2編に出演の二反田さんに一際存在感を感じました。
絶頂マクベス

絶頂マクベス

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

絶頂っっ
女優のみ90分でマクベス。脚色・演出・役者全て文句なし。エンタメ感満載で、場転までが美しく、演劇愛溢れる作品でした。女体シェイクスピアがシェイクスピア作品とのファーストコンタクトな観客が増えると柿のシェイクスピアが、ベーシックスタンダードになったりして。それでも良いと思う位、敷居は低く、クオリティ高い。圧倒的フィクションっっ!!

ネタバレBOX

場転は、ダンスの様。台詞回しも登場人物も過剰な程濃く、でもきちんとマクベスの物語を演じきっている。

1労働者として、領主に従順に仕える象徴の執事の服を身にまといながら、権力の絶頂目指して頑張るマクベスは、キングになってもその劣等感や猜疑心から快楽は感じず、鬱屈して、溜まってしまう。溜まったものは破裂し暴走する。マクベスが一線を越えてしまう瞬間を現代人の自分に置き換えるまでは想像しきれなかったけれど、シェイクスピアの描くマクベスの葛藤はとても強く訴えられていた。クライマックスのマクベス以外の全キャストの歌い上げるシーンは圧巻。

最後まで、笑いと驚きに溢れる演出で、そしてその世界観を体現できる女優陣のパワフルさに、もっともっと女体シェイクスピアシリーズを見たいと思ってしまう。
NMSグレイテストヒッツ

NMSグレイテストヒッツ

石原正一ショー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/03/21 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇愛あふれる
東京公演は12日間で、26ステージ。10作品連続公演で、全部の公演に石原正一+ゲストの2人が出演する形で上演された。関西の気鋭の作家10人の、「1時間の2人芝居」で「公演タイトルが曲名から取ること」以外は自由という内容。音楽に疎い僕は、ハイロウズとスピッツしかわかりませんでしたが…。毎日のように、初日→(中日→)千秋楽がやってくる怒涛のスケジュール。こんな(演者にとって)すさまじい演劇祭を堪能することが出来て幸運だ。唯一、SUNDAYだけは前身の世界一団時代からのファンであったものの、関西の小劇場で活躍する劇作家の作品に触れる機会は少なかったのでそれも嬉しい。でも、なるだけ観ようと位にしか思っていなかったが気付けば、9作品見ていた(あと、1つだったのに…)。何よりの魅力は、もう石原正一としか言えない。役柄も設定も世界観も何もかも違う作品の中で、石原正一というキャラクターが物語に溶け込んでいるように見える。その人柄が愛しかった。アフタートークでお話されていたが、そとばこまち時代からこういう無茶な事をやっていたとの事。膨大な台詞と段取りを覚えて、汗をかいて、肉体を酷使して、それでもカーテンコールで疲弊しながら笑顔で挨拶している姿を見て、演劇好きじゃなきゃ出来ないよなぁ、カッチョイイなぁと思いました。

いないかもしれない 静ver.

いないかもしれない 静ver.

青年団若手自主企画 大池企画

アトリエ春風舎(東京都)

2012/03/26 (月) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

過去と現在
非常に整った、お手本のような物語。テーマがあって、葛藤があって、驚きがあって、共感がある。演出も効果的で、ラストもまとまっている。1時間弱の中にとてもうまく盛り込まれている。ただ、ひっかかりがない。ツルンと磨かれた物語の先にある、ガサガサした触感が欲しいなと思ってしまう。動バージョンも今からとても楽しみだ。

ネタバレBOX

誰もが当事者になることを恐れて傍観して、消極的な加害者であるいじめの問題は、生き辛い現代を表す一端だと思う。

小学校の同窓会に久し振りに集まった日の帰り道に、2次会として仲間の一人が切り盛りするカフェバーに集まる男女。そこには、当時のいじめっこといじめられっこが同席している。認知症の家族に頭を悩ませる元いじめっこ。いじめられていた当時を払拭すべく、明るく振舞う元いじめられっこ。卒業文集に書いた将来の夢を追い続けることの困難さを、まざまざと実感する年になって改めて振り返る当時のアレコレには微妙な緊張が走っている。同時に、その場にいる誰もが名前を思い出せない女も登場する。女は誰よりも当時の記憶を鮮明に覚えているが、誰なのかわからない。そして次第に明かになる、元いじめっこの怪我の真相。

舞台上は、「静バージョン」にふさわしく、開演から終演まで音はかすかなものばかり。聞こえるのは、店の出入り口のドアベルの「カランコロン」と、実際に舞台上で飲食している音と、雨音くらい。ビーフンを食べる音が、こんなにはっきり聞こえるとは(笑)無音が、困惑した空気や緊張感を増長させる。

また、物語の終盤ずっと観客に背を向けながら自身の思いを訴える元いじめられっこの姿。そこにどんな表情が浮かんでいるかは想像するしかない。

無音と背中はとても効果的なのだが、その意図が明示されてしまうと何だか味気なく感じてしまう。また、ザビエルや絵本の「いないかもしれない」やビッキーなどの、何気ない会話の中に出てきた事が終盤一気に収束していくのは快感なのだが、まとまりが良すぎるなとも感じてしまう。

多分、一定レベルの秀作はコンスタントに創作出来てしまう作演出家なのだろうと感じた。だからこそ、創作を重ねて進化していく物語を、観劇という形で応援したいと思う。
くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

くろねこちゃんとベージュねこちゃん【ご来場ありがとうございました!!】

DULL-COLORED POP

アトリエ春風舎(東京都)

2012/03/14 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

たんのう
開演前から非常にホスピタリティに溢れていて(楽しかった!)、本編もとても緻密に計算されていて、迫真の演技で、ポップで、グロテスクで、アフタートークまで堪能でした。全国回って、東京に凱旋してきた時に、更なる魅力を発見しにもう1回見れたら良いな、と計画中です。

ネタバレBOX

開演前の素の状態の役者さん達を見ている分(お茶ご馳走になりました。とてもおいしかったけど、緊張したっっ。)、本番中の役者の芝居に一層圧倒される。特に猫とお母さん。いや、それは一人と二匹でワンセットなんだけど。母親って不思議な存在だと思う。その不思議さを楽しく悲しく描いていて、いつまでも見ていたいなぁと思った。同時に、うちの両親もいずれはこうなるのかぁと考えると、漫画「ヘルプマン」でも読んで介護の事とか考えとかなきゃだなぁと思った。

母親という不思議な存在。ごくごく平凡な当たり前の日常に幸せを感じる。でも一方で父さんは自殺なんじゃないかと思う瞬間もある。子供達はいつまでも子供で、父さんにはいつまでも働いていてほしい。勧進帳を読み上げている際に泣く人のメンタリティ。瞬間瞬間で変わる感情の極端な起伏。頭の中で二匹の猫を飼う感覚。一瞬一瞬でキャラが変わるおばちゃんの不思議さ。ラストシーンで猫がいなくなるのは、安堵からか、本気でイカレちゃったからか。色々考えさせられる。
アイ・アム・アン・エイリアン

アイ・アム・アン・エイリアン

ユニークポイント

シアター711(東京都)

2012/03/13 (火) ~ 2012/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

物語とは
答えは出ないけど、それでも生きていくって、やっぱしんどいよなぁ、という感想。

ネタバレBOX

私達が求めている物語とは何か。作中にも物語という言葉が出てくるが、言い換えるならば人生を生き抜く為のマニュアル(手引き)だろうか。

日本初の臓器移植審議会に集められた、無作為に選ばれた市民達は「緊急度も適合率も同じ4歳児の2人の内、どちらに心臓移植をするか」を迫られる。議論をして満場一致で答えを出すという強引さはさておき、とても丁寧に心臓移植の抱える問題を説明していて語られる内容は興味がつきない。ただ物語の核たるものは「心臓移植」ではなく「貧困」だろうと、「二代政党」だろうと構わないと思う。大事な事は、答えの出ない問題に取り組む第三者が、当事者性を獲得する姿にあると思うからだ。実際、言外に3・11の震災が根底に横たわっているのをありありと感じた。

こうした、哲学的な問答のような物語に向き合う時に、自分がどんな姿勢で観たら良いかがわからなくなる。答えを求めるのは安易だし、現実を当てはめるだけなのも絶望的に思える。だから、答えなど出ないと知りながら、救われたいと願ってしまう。

世の中がどんなに激変しようと(それはもしかすると3・11を経てもなお)、自分だけは大きな不幸も幸せもない、終わらない日常を生きてる気になっているとして。そうすると、あらゆる問題が他人事だった自分が、当事者になって初めて戸惑い困窮するだろう。そんな時の救いの物語(マニュアル)が本作だとすると心許ない。いや、そもそも物語に救われたいと願う自分の生き方自体が危ういのだろうけど。当事者にならずに今日も生き延びて安心してる僕も、立派なエイリアンだと思う。
スケベの話

スケベの話

ブルドッキングヘッドロック

サンモールスタジオ(東京都)

2012/02/29 (水) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃縮された笑いの塊
バットとボール編、観劇。すさまじい笑いのバリエーション。パッと見、僕が観た回は、観客の平均年齢高めだな(30代以上の方が多いな)という印象なので、やっぱ大人の楽しむ(懐かしむ)秀逸なコメディだなと感じました。下ネタが嫌いでなければ、見て損はないはず…と、ブルドッキングヘッロック初観劇の自分が言ってみる。どストレートなタイトルだけど、不快なエロは一切無かったです、と、男性の自分が男性視点で言ってみる。個人的には、明確な起承転結はあってないような物語なのに、生々しく躍動する登場人物の魅力が圧倒的な刺激で、大爆笑&大満足でした。平日なのに、当日券キャンセル待ちになるほどの人気で、その理由もわかるなというクオリティーでした。

ネタバレBOX

勘違いとエロを想起させる多様な隠語(韻を踏む言葉)が笑いの肝で、その構成がとても秀逸。大人な役者陣が、高校生になりきって、その設定を見事に演じ抜いてる。個々のキャラクターがきちんと立ってるので、女子マネージャーに自分をよく見せたいとか、抑え切れない性衝動への葛藤とか、観客の思い(次はこうなるのでは)の逆をいく感じに、グイグイ引きこまれてしまう。ここ数年TVで年末にやってる「笑っちゃいけない○○」ならぬ、「オナニーしちゃいけない甲子園出場高校球児」の話。やっちゃいけないと言われたら…そりゃーね。
玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/02/29 (水)公演終了

満足度★★★★★

こういうのっっ
何でもない事がとてつもなく大事で、空気と友だちが全てで、自分の居場所を作るのに一生懸命で、空回りまくった自意識の暴走が、このみょ~な緊張感を産むのかな。登場人物達の居心地の悪さが、とてつもなく面白い。ふざけたり、遊んだり、それだけなのに、絶妙。何だか、神がかって見える位、笑った。

ネタバレBOX

中学生の修学旅行中の宿。夜、男子たちが女子の部屋に勇気を出して遊びに行く。女子部屋で、加藤役の方の膝がバキバキ鳴ったとき、あぁ僕の観た回は笑いの神が降りたなと思いました。自由度が高そうで、でもこの気まずい空気を作り出せる役者さんの力量はやっぱりすごいなと思います。

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