いないかもしれない 静ver. 公演情報 青年団若手自主企画 大池企画「いないかもしれない 静ver.」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    過去と現在
    非常に整った、お手本のような物語。テーマがあって、葛藤があって、驚きがあって、共感がある。演出も効果的で、ラストもまとまっている。1時間弱の中にとてもうまく盛り込まれている。ただ、ひっかかりがない。ツルンと磨かれた物語の先にある、ガサガサした触感が欲しいなと思ってしまう。動バージョンも今からとても楽しみだ。

    ネタバレBOX

    誰もが当事者になることを恐れて傍観して、消極的な加害者であるいじめの問題は、生き辛い現代を表す一端だと思う。

    小学校の同窓会に久し振りに集まった日の帰り道に、2次会として仲間の一人が切り盛りするカフェバーに集まる男女。そこには、当時のいじめっこといじめられっこが同席している。認知症の家族に頭を悩ませる元いじめっこ。いじめられていた当時を払拭すべく、明るく振舞う元いじめられっこ。卒業文集に書いた将来の夢を追い続けることの困難さを、まざまざと実感する年になって改めて振り返る当時のアレコレには微妙な緊張が走っている。同時に、その場にいる誰もが名前を思い出せない女も登場する。女は誰よりも当時の記憶を鮮明に覚えているが、誰なのかわからない。そして次第に明かになる、元いじめっこの怪我の真相。

    舞台上は、「静バージョン」にふさわしく、開演から終演まで音はかすかなものばかり。聞こえるのは、店の出入り口のドアベルの「カランコロン」と、実際に舞台上で飲食している音と、雨音くらい。ビーフンを食べる音が、こんなにはっきり聞こえるとは(笑)無音が、困惑した空気や緊張感を増長させる。

    また、物語の終盤ずっと観客に背を向けながら自身の思いを訴える元いじめられっこの姿。そこにどんな表情が浮かんでいるかは想像するしかない。

    無音と背中はとても効果的なのだが、その意図が明示されてしまうと何だか味気なく感じてしまう。また、ザビエルや絵本の「いないかもしれない」やビッキーなどの、何気ない会話の中に出てきた事が終盤一気に収束していくのは快感なのだが、まとまりが良すぎるなとも感じてしまう。

    多分、一定レベルの秀作はコンスタントに創作出来てしまう作演出家なのだろうと感じた。だからこそ、創作を重ねて進化していく物語を、観劇という形で応援したいと思う。

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    2012/03/31 00:12

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