YUBOの観てきた!クチコミ一覧

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モナカ興業#12「旅程」

モナカ興業#12「旅程」

モナカ興業

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2012/10/19 (金) ~ 2012/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

人生という旅
浮かび上がっては消えていく点の風景が、徐々につながり何本もの線になっていく。とっても静かに始まって終わる、でも中身はとても深い。一見シンプルだなと感じていた舞台空間に役者が立ち、光と音が加わると一気に荘厳な印象を受ける。セリフが独特に感じるのは、要所で文語体のような響きがあるからだろうか。動きも無駄が削ぎ落とされていて、洗練された風景は、一瞬一瞬が美しい。どうなるか先は全然読めない物語の展開は、観客側にも緊張を与える。緊張感のある空間は硬質なのに、とても居心地が良い。テーマも良かった、こういう味わい深い作品は、余韻も楽しい。

『サンタクロース会議』『サンタクロース会議 アダルト編』

『サンタクロース会議』『サンタクロース会議 アダルト編』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/12/14 (金) ~ 2012/12/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごく近しい問題意識
子供参加型は子供も大人も楽しめる作品。もちろん演出の巧みに計算され尽くした自然さはありつつもコミカルなキャラクターや、わかりやすい笑いも多くて、青年団はこういう物語も作れるんだなぁと思いました。子供参加型もアダルト版も両方観劇しましたが、個人的好みとしては子供参加型です、サンタクロースについて精微に調べて書き上げた物語も、子供の感性には追いつかないんだなぁと思ったし、役者さんのタジタジ具合も、子供の生の反応も楽しい。でも可能な限りの現実に即したサンタクロース会議への反証をアダルト版で消化していて納得もさせられました。基本の物語は同じなのに、見え方の違う2バージョンを是非多くの人に満喫してほしいなと思いました。

ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

昭和望郷編、観劇
「ソウル市民」「1919」に続いて3作目の本作見てみて、改めて現代口語演劇と「ソウル市民」の持つ史実の相性は良いなと感じる。でも、自分の知識の足りなさから「圧倒された」としか言えない語彙能力の浅さが悔しい。「ソウル市民」「1919」と比べると、重たい空気が増すのは時代性なのだろうか。その息苦しい空気さえも伝わってくる感じが魅力だ。「占領された韓国の人への「無関心」に加えて、日本人としての居心地の悪さが印象深い快作。

翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

現象だなぁ
全部あって何だかわからない。世界の全てみたいだ。バナナ体験は昨年の大運動会に次いで二度目。今回は、千秋楽、最前列。開演前のアナウンスは「自分の身は自分で守りましょう」最適なアドバイスだなぁと思う。開演早々、演者の一人と握手。最前列だから、演者から色んな小道具も委ねられる。徹頭徹尾受け入れられてるような安心感。その直接的なパフォーマンスに慣れてないので、それだけで満足しきってしまう。あとはもう本当にありとあらゆる事が目の前を通過して、自分も演者もずぶ濡れで、ただただ圧巻。一度だけじゃもの足りないし、何度見ても完全に理解出来ないけど、この瞬間は一度だけなのがもどかしい。

玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画『果てまでの旅』

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/02/29 (水)公演終了

満足度★★★★★

こういうのっっ
何でもない事がとてつもなく大事で、空気と友だちが全てで、自分の居場所を作るのに一生懸命で、空回りまくった自意識の暴走が、このみょ~な緊張感を産むのかな。登場人物達の居心地の悪さが、とてつもなく面白い。ふざけたり、遊んだり、それだけなのに、絶妙。何だか、神がかって見える位、笑った。

ネタバレBOX

中学生の修学旅行中の宿。夜、男子たちが女子の部屋に勇気を出して遊びに行く。女子部屋で、加藤役の方の膝がバキバキ鳴ったとき、あぁ僕の観た回は笑いの神が降りたなと思いました。自由度が高そうで、でもこの気まずい空気を作り出せる役者さんの力量はやっぱりすごいなと思います。
バカのカベ~フランス風~

バカのカベ~フランス風~

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2012/11/15 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

カトケン、満喫っっ
すごいなー、もう冒頭から引き込まれて、ただただ笑って、そして観劇後に見事に何も残さない。満足感と幸福感だけを胸に帰路につける。長年演劇に携わり、劇団公演を重ねてきた貫禄と安心感。普遍的でさりげないし、ありえない様な設定のはずなのに、何でこんなに面白いのか。人間って情けなくて愛らしくて良いなって思える上質なコメディ。ようは、すげー舞台だった。

若手演出家サミット2011

若手演出家サミット2011

アトリエ春風舎

アトリエ春風舎(東京都)

2011/12/15 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

唯一無二
普段見ることの出来ない演出家ワールドを堪能っっ。演出家の方達の思いを片鱗でも垣間見れる機会、物語以前の役者さん達の躍動、繰り広げられるアフタートークのモロモロ。あぁ、とっても覗き見てる感じで甘美な時間だった。

幻戯【改訂版】

幻戯【改訂版】

鵺的(ぬえてき)

「劇」小劇場(東京都)

2013/02/20 (水) ~ 2013/02/26 (火)公演終了

満足度★★★★★

男の性(さが)
粘りついて絡みついて逃れられない男の性(さが)を見せ付けられた、圧巻の舞台でした。5年前の作品を再構成されたとのことで余計なものをそぎ落とした物語はギュッと濃縮されており、時間を忘れてただただ見惚れて楽しみました。こんなに居心地が悪いような内容なのに、何でこんなに惹きつけられるのか。じっくり溜めのある間の演出がヒリヒリと緊張感を高めていました。そしてその緊張感に耐えうる適役のキャスティングでどの役者さんもとても魅力的でした。

ネタバレBOX

劇中に(売春する行為に対して)「割り切っても割り切れなくても(不特定多数の男に体を許すことが)辛いならばどうやって折り合いをつけるのか」。相手を尊重して大事にしたい気持ちとは別物として、肉体的な快楽を求めたいのは男の性なのだろうか。自分自身を省みても、この性(さが)から逃れられてないなと実感し、身につまされる作品でした。

黒崎(男)は新進の小説家・板倉(男)を馴染みの売春旅館に連れてくる。板倉は30代後半でも童貞で、「行為をすることで自分が大事にしていたものを失うのが怖い」と性交を拒んできた。板倉は自分の相手をしようとする玖美子(女)の誘いを断り、その場に居合わせる形となった口の利けない布見繪(女)と付き合いだす。次の機会に再度、旅館を訪れた板倉は「気持ちと体を一緒に考えていたから良くなかった。別々に考えればうまくいく」と玖美子を純粋に性欲のはけ口として交わる。交わった事を想起させるシーンで暗転し、フェードインした照明に浮かんでくるのは、先程まで玖美子の着ていた衣装を着た布見繪の姿だった。徐々に精神的に追い詰められていく玖美子は自殺し、板倉は夜な夜な遊び歩いて売春していることが提示され終幕する。

「幻戯」という公演タイトルに思いを馳せてみました。売春する仕事を迷いながらも10年以上続けてきた布見繪を「彼女がこれ以上汚れないように、僕は彼女には触れない」と言い家に囲い込む板倉は、一方で性欲の発散のために売春を続けます。口の利けない女に自分の思うとおりの理想像を押し付けて、理想像=幻想と戯れて生きる男の自分勝手さ、傲慢さが浮かんでくるように思います。実際、玖美子を抱く時の板倉のおぞましい存在感、こんな表情を人が見せるのかというような迫真の演技でした。そして、それでも客だからと受け入れる玖美子の姿は買われる側に選択肢のない悲哀を強く感じます。

ここから、勝手に観劇後に自分なりに物語を妄想してみました。布見繪は本当はいないんじゃないかという説です。その姿を見た者が板倉以外いない事(あの子とか口の利けないお姉さんと別の呼び方で存在が提示はされますが)や、そもそも板倉と布見繪を結びつけた日記を書いたのが玖美子なのではというシーンが提示されます。そうだとすると、板倉は玖美子と付き合っていたのか、だとすると玖美子との精神的なつながりを家に置きながら、旅館で玖美子と肉体的に交わっていたのか?物語の冒頭、玖美子の死を悼むシーンで「ある部分では死んでいるが、ある部分では生きている」というセリフが投げかけられました。もし死後も布見繪という名を借りた板倉の幻想の中で玖美子が生き続けるんだとすると、その狂気は一層深化するなと思いました。物語終盤に、暗い部屋の中で一筋の強い光の中で独白する玖美子の姿をした布見繪の姿、その光と影は同一人物の中に同在する2人の人格なのかなと思いました。

玖美子と布見繪の関係は、はっきりしませんでしたが、いずれにしろ強く印象にこびりつくような濃密な空間を楽しめて、色々考えさせられました。
完全版・人間失格

完全版・人間失格

DULL-COLORED POP

青山円形劇場(東京都)

2012/11/01 (木) ~ 2012/11/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

人間とは
11月1日に「女版」・2日に「男版」観劇。チラシに観客は観るリンチの共犯者と煽っているが、実際は役者のレベルが高く隙なんてないので2時間圧倒されっぱなし。見とれて時間を忘れるような、歪んで見える心象風景の視覚的聴覚的な演出はもう美しすぎる。ぞくぞくする様なラストシーン、全体通して見える突き放しているようで愛している人間への視点。俺も人間失格だって共感も、ここに描かれてるのは全部自分勝手な甘えだって批判も飛び越えて、新しい境地にたどり着いている。普遍的な価値観と闘ってるなぁ、劇団のこれからの活躍にも目が離せない。女版のコロさんの葉蔵は吹けば飛んでしまうのではと思うほどの寄る辺ない存在感で物悲しい、男版の原西さんの葉蔵には影がつきまとっていてその逃れられない苦しさが伝わってくる。男女版どちらも楽しいし、円形舞台だから見る場所で風景が変わって面白い。両方とも甲乙つけがたく完成度高いです。人間とは何か、じっと考えさせられます。

edit

edit

shelf

atelier SENTIO(東京都)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

緊張の末
見ているだけで、息を飲み、汗ばみ、背筋を正し、凝視して、集中を強いられるような空間。その居心地の悪さは次第に楽しくなり、達成感へとつながっていく。役者達の動きは在ることで成立するような圧倒的な出で立ち。引用された言葉そのものの力強さは、役者という肉体を通して強度を増す。動きも言葉も最小限に削ぎ落として、最大限の効果を求めるように練りこまれている。そして「編さん」されることで見える、引用元の違う言葉同士のつながりが世界を深化させる。そうか、これも演劇か。

東京ノート

東京ノート

青年団

東京都美術館 講堂ロビー(東京都)

2012/07/15 (日) ~ 2012/07/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

美術館で
劇場でない場所での観劇は初めての体験でしたが、作品に「空間」という様相を添えて一層楽しめるなぁと思いました。当然、劇場ではない訳で上演にあたっては様々な試行があっての事だと思いますが素晴らしい出来栄えで、観劇出来て本当に良かったと思います。個人の葛藤と世界のつながりが、観客として俯瞰で見てジワジワ伝わってくる素敵な作品でした。所作や表情など、台詞以外の部分もとても繊細で自然で、ずっとずっと見ていたかったです。

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR

インディペンデントシアタープロデュース

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

演劇の夏フェスっっ
一人芝居のこの力強さ。エネルギー。生きざま。30分×10団体。一日で満喫してきました。熱いっっ!次回は、5年後??毎年見れないのが、悔しい。…大阪まで行ければ良いんだけど。すっかりはまりきってしまいました。

ネタバレBOX

a101人ねぇちゃん
100人の女と同時に付き合う男が、新たに出会った最高の女と付き合うために100人全員を振る話。舞台中央に置かれた、101と書かれためくり。めくる度に数字が段々減っていく。減っていくのは男の事を好きな女の数。男はどんどん、付き合ってる女性を振っていく。ラストの馬鹿馬鹿しくも最高のオチで彼の愛の爆走はまだまだ続く。ドタバタコメディで最高。

bマラソロ
やりたいから始まる恋は意外と清純なんじゃないか。幼なじみの女子中学生への突っ走った一方通行な思いが暴走する童貞哀歌。観客が見ていてひくぐらい、相手とうまく距離がとれなくて、向き合って触れて解ろうとすることを飛び越えてしまう性春。わかるわかる。過激な演出に応える男優さんの演技も見事にはまってた、ラップも良かった。

c1041≒3088
男性の家を渡り歩きながら女は食べる食べる食べる話。食べる女性は何だかエロイ。普段まじまじと見る事のない、食べる行為とは、本能的な欲求で、そんな人間の営みを見続けるのは、何か不思議な体験だ。また、出演の女優さんがとても美味しそうに、食べるんだ。劇中、「私美味しそうに食べてる、それとも不味そうに食べてる?」の質問に『食べなければならないように食べる』って答えが出されて、あ~良い言葉だなと思いました。

dスクラップベイビィ!
ストリートチルドレンの二人が助け合い生きていく話。正反対の性格の2人が、助け合いながらお互いをわかりあっていくコテコテにショーアップされたファンタジー。入れ替わり激しく二つのキャラクターが演じ分けられ、少年ジャンプのマンガみたいな純粋にワクワクドキドキできるポップで、でも悲しい寓話でした。

eはやぶさ
今話題の(同じテーマで映画にもなるんですよね)人工衛星はやぶさを擬人化して一人芝居で体現する。壮大な宇宙の中での人工衛星の孤独と希望。宇宙規模のこんなにでかい世界を一人でやる、その挑戦が凄まじくパワフル。

fいまさらキスシーン
猛進して盲進する女子高生の世界は一人、世界は私を中心に回ってるという自意識。大好きな柿食う客の世界観で満足。あっという間の高校三年間を満喫せねばと東大と駅伝と恋で全て成果をあげようとするが…何故かラストには頭から血を流し、口の中は胃酸まみれで、片手に千円札を握りながら、オトコマエダ先輩にキスをしてもらいにひた走る。何でそ~なるんだぁぁ!!とにかく怒濤のセリフ、そして想像もつかない位の圧倒的妄想。背筋ピーン、として女子高生は走り続けるんだなぁ。

g頼むから静かに聞いて
夫を刺してしまった女の裁判に立つ、幼馴染のオカマと女の兄。『あなたとわたしは違う』幼なじみのオカマが性別を越えても女と一緒でありたい気持ちと、実の兄貴が一緒でないからわかりたいという気持ちが告げられ、3人の思いが浮かび上がる。男女オカマ3役の演じ分けも秀逸。


h赤猫ロック
放火が趣味の父と、父が趣味の母と、優秀な兄の4人家族で笑い合う風景が理想だと語る女は、ウェディングドレスで走り続ける。75調で歌うようにセリフをしゃべりながらずっと走り続ける女優さんの演技に圧倒される。家族という病に取りつかれて自分が人形となって燃え尽きないよう、まるで逃げるかのように走り続ける。『偉い人も火葬場では平等に焼かれるんだ』ってセリフが印象的でした。

i或るめぐらの話
青森弁は想像以上にわからない。わからないけど、面白い。発される言葉の数々が、メチルアルコールでめくらになった一人の男の生き方を、臭い立つように現す。空気感が楽しくて、今度の劇団野の上の公演も楽しみっっ。

j暗くなるまで待てない!
盲目の女が見る世界はいつも暗闇か。見えないものを観客として見てるつもりが、ラストには盲目の女にしか見えてない世界を見せつけられる。こうきたか~、と、やられた。幼少期に自分の母親は宗教団体の教組で、自分が失明しても治してもらえず自分を未来を予言する奇跡の子として育てる。そうして大きくなった女は盲目の占い師として働くも、教団を再建するを口実に金を奪おうとする男、隣の家に住むDVを受けてて親を殺してしまった中学生、スケベな大家などに囲まれ惨劇に巻き込まれる。そんな中起こる、奇跡。
お母さんの十八番

お母さんの十八番

アジア舞台芸術祭制作オフィス

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

日常が崩れる瞬間を
誰しもに起こりうる、当たり前な風景。でも情感あふれ、時にコミカルに、でも要所でものすごく激しく描かれる風景にとても共感しました。「母がいる」というあたりまえの日常が、突然無くなった時の感情。受け入れがたいその生々しさ。韓国の演出家の描く日本の物語ということで、言葉や国籍を超えて、人としての普遍的な感情を共有出きるんだな、という当たり前の発見を改めて感じて、ラストはジーンとしてしまいました。ロビートーク聞いてから観劇したので、見所も広がったように思いました。これを無料で見れるのだからありがたすぎる。

非実在少女のるてちゃん

非実在少女のるてちゃん

笑の内閣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

ちょーぜつバカバカ
会場入って、前説(コント)が始まった辺りから、何だかいつもと客席の雰囲気が違うなという感じがしました。反応が良いというか、役者への笑いや拍手や時々相槌まで入って、場内の人たちノッテるなぁと感じました。演劇好き、というより笑の内閣好きが集まってるのかなという印象です。僕は初見でしたが、開演して5秒で心もってかれました。馬鹿馬鹿しくてヤバイ、超ヤバイです。役者が男女共に格好つけてなくて、自然体で、かつ体当たりなのも好印象。元ネタを全部わかる人いるんだろうかってくらい、メジャーなものからマニアックなものまで色々なパロディーや風刺がありました。(物販で売ってるパンフレットに細かい文字でびっしりネタバレ書いてありました。)でも、笑わせるだけで終わらせない物語が心地よい。押し付けがましくない、等身大の作者のメッセージに僕はとても共感しました。「非実在青少年」を巡る青少年育成条例の問題が整理されて、当時(2010年)の様子もよくわかりました。日替わりゲストもアフタートークのゲストも豪華っっ。非常に楽しかったです。

ネタバレBOX

初日だったのか、それが持ち味なのか台詞はカミカミな場面も。小道具が落ちっぱなしのシーンもあったし、歌もダンスもグダグダな場面も。でも、別にそんなの気にならない位勢いがあって、ウケようがウケまいが全力で演技してる感じが良かったです。

ベタなお約束やそれに突っ込みを入れるドタバタ劇を多用しつつ、キレイな格好したPTA評議会会長が床を転がったり、日替わり刑事をゼイタクに使ったり(金八先生の往年の名シーンのパロディですが、今の若い子は知らないのでは)と体張ってるなというシーンも多くて楽しめました。ラストのエヴァのシーンも爆笑でした。(こっちは逆に年配の観客の方がポカンとして見てました…。)

悪の都知事と、それに対抗する正義のヒロインというわかりやすい勧善懲悪ものに仕上げつつ、警察OBの天下りの話や違憲逮捕につながりかねない問題があるなど、管理社会への批判と表現の自由の重要性をしっかり訴えて、訴えるシーンが続くと、それをまた茶化して。ヴォルテールやマルチン・ニーメラの有名な言葉も、この公演見て初めて知りました。全体通して笑いとマジメとバランスが取れてると思います。また、是非東京に来て欲しいです。
ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン

ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン

ハイバイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/07/18 (水) ~ 2012/08/01 (水)公演終了

満足度★★★★★

ツーカイっっ
前作の「ある女」は難しかったけど、今作はハイバイ初心者の僕でも安心して楽しめました。何でもない日常の風景を、いつの間にかぐんにゃりと曲げて、歪めて見せるのがとてもうまいなと思いました。馬鹿馬鹿しくて、でもゲラゲラ笑って。でも、観劇後の帰り道に、何だかとんでもないものを見てしまったな、上手すぎるんだなと実感するような痛快な作品でした。

ネタバレBOX

物語の後半の1シーンで、面白すぎて笑いの止まらなくなった観客がいて、その場がちょっと浮いた事がありました。その観客を突然チラッと見て、ニヘって笑った岩井さん。それを見て、会場中の大爆笑が起きました。不測の事態へのナイスアシスト。あぁ今この会場は一体となって演者に支配されてるんだな、安心して見れるなと思いました。ゆるそうに見えて研ぎ澄まされたこの空気感、すさまじかったです。また、荒川良々さんの小学生は本当に好演でした。
平田オリザ・演劇展vol.2

平田オリザ・演劇展vol.2

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

違いを楽しむ
「平田オリザ演劇展vol1」から1年を経て、「3.11」を思い起こしながら味わう「さようなら」と「銀河鉄道の夜」。「隣にいても一人」の3つの地域編を見比べて、個々の作品の独特さを体感。不条理を楽しむ「阿房列車」と「思い出せない夢のいくつか」。一度に色々な種類の作品を楽しむ事が出来て、有意義な企画。今から今年度末の「vol3」にも期待してしまう。

ネタバレBOX

「さようならver2」(Eの回)前作同様、アンドロイドと人間の区別があやふやになって錯覚してしまう。「3・11」を経て生まれた続編部分は秀逸。アンドロイドと引越し業者のやり取り。持ち主が死んだ後、アンドロイドは福島県双葉町の海水浴場に送られるようだ。人が立ち入れない被ばく地域で、亡くなった多くの人のために詩を読み続けるために送られるアンドロイド。劇中、壊れたかのようにずっと詩を読み続けるアンドロイドに、ちゃんと喋れるか問いかけると「はい、大丈夫です」を繰り返し、繰り返した理由を問うと「わからない」という。その「わからない」は機械と人間の狭間をあやふやにする言葉だと思う。プログラムにはないものだから。

「銀河鉄道の夜」(Cの回)は昨年も見て、泣きそうになって、今年も見て泣きそうになった。前売り完売で、ダメ元で、当日券狙って行ったら、3階席を用意してもらえて感激。友人の死を通して学ぶ、人間の孤独と本当の幸せ。子供の頃に本で読んで以来、現在まで何度も「銀河鉄道の夜」に触れているけれど、こんなに繊細で、前向きな物語なんだなと再発見出来る内容です。東北でも公演するとの事で、被災した子供達にも、是非たくさんのものを感じて欲しいです。

4/7のアフタートークで、平田オリザさんが≪不条理劇は「朝起きたら何かに変わっている」か「永遠に何かを待ち続けるか」どちらかだ≫と話していたのが印象的でしたが。「思い出せない夢のいくつか」と「阿房列車」は「永遠に~」系、「隣にいても一人」は「朝起きたら~」系だ。

不条理劇をまとめて見れる幸せを感じつつ、思った事は。自分の見えてる世界が全てでは無い感じ、「世界はなんだかよくわからない」という感覚が面白いなと思った。電車に乗る事、食事をする事、起承転結のない雑談。目的があって手段があるとか、原因があって結果があるといった事抜きに、現象だけがポツンとそこにあってそれを当惑しながら受け入れる。そのつかみどころのなさが、自分の知らない世界を広げてくれて心地よい。「阿房列車」は昨年元祖演劇乃素いき座の上演を拝見しての初見の印象は簡素な装置で役者の生々しさが目立ったが、今回の現実味のないひょうひょうとした感じはつかみ所がなくて面白かった。「思い出せないいくつかの夢」は、阿房列車と銀河鉄道の夜との相関を意識した構成が楽しく、重なる所と違う所の妙を眺めて見ていた。

「隣にいても一人」せっかくなので3つ共、と思い、三重→広島→関西の順で観劇。夫婦になるという在り方がとても不思議に思える、でも夫婦になる事がとても魅力的に思える作品でした。方言や地域の違いで、同じ内容もこんなに見え方が違うのかと新鮮な発見でした。三重編は、物語を一番自然に見せてくれた。広島編は、キャストが若いからかその初々しさがたまらない。関西編のノリは他2編とは異質、ボケとツッコミがニュートラル過ぎて、脚本内の笑い所より、何気ない会話の方が笑いが大きい。感情の起伏も他2編と大分違って見えた。関西・三重の2編に出演の二反田さんに一際存在感を感じました。
地下室

地下室

サンプル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/01/24 (木) ~ 2013/02/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

閉じた世界
これは他人事ではなくて、誰しもに起こりうる悲しい風景だなと思いました。あまりにも自然に表現されているから、つい笑ってしまうシーンも多かったけれど本当は笑えないようなものすごい怖い風景が繰り広げられている。つながりたい、救われたいという切実な欲求から集まっているのに、どうしてより困窮しなければならないのか。暗鬱とした息苦しい世界が繰り広げられて、ゾッとしました。

ネタバレBOX

個人的に、ダークな役を演じる山内健司さんが見れて新鮮な感じがしました。下で他の方も触れられてますが、物語の終盤「いいかげん目を覚ませよ」投げかけられた言葉に「あんたこそ、目をつぶりなさいよ」と返答するシーンはガツンとやられました。
テロルとそのほか

テロルとそのほか

工場の出口

アトリエ春風舎(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/07 (金)公演終了

満足度★★★★★

いまを描く
2012年、いま現在を描き、日本社会への閉塞感を鋭く切り取る、闘ってる演劇だった。思考を共有化しようとする創作の動機が非常に刺激的だし、上演された内容もとても濃くてあっという間の二時間だった。なんというか、我々はもっと調べて学んで疑って、怒らないといけないんだなという内容だった。知れば知るほど、諦めさせられる、どうせ変わらないと思わされる現実だからこそだ。俳優に提出されたテーマに即し、2つずつ作品を書き下ろし、なおかつ1つにまとめる。この4つの全く異なるテーマが並列的に語られるが、個々のテーマ(作品)が面白いから全く飽きずに見れる。硬質で膨大な独白をきちんと伝える俳優も魅力的でした。1つの物語にまとめる事で対話が生まれ、問題意識への反証や発展が起こる。「わかりたいけどわかりあえないこと」、作品内でも葛藤しているし、この作品を創ってる制作者たちも葛藤されたのだと思う。そうして観ると一層味わい深い。声に出して読みたいような言葉の重さの1つ1つを観劇後に反芻しています。

ラ・マンチャの男

ラ・マンチャの男

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

退屈の先
役者の表情がオペラグラス使わず見える、ゼイタクな席で観劇っっ!!でも予備知識全く無しで観劇したので、前半1時間は退屈で。この退屈さはとても重要だと思いました。そしてこの退屈さが反転したときに、作品の主題がありありと浮かび上がるなと思いました。松本幸四郎と松たか子の共演は本当に豪華で、それだけでも大満足です。

ネタバレBOX

劇中「最も憎むことはありのままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ」という台詞が出てくるが、これが主題かな、という実感を持ちました。

観客が主観的に見ると、寂れたハタゴ(宿)に集まった、食い詰めた男女はどう見てもみすぼらしい姿。それを劇中のドンキホーテは、素晴らしい城と、紳士淑女だと言い、ハタゴで働く女アルドンサを姫だといい続ける。この一貫したギャップに観客は笑うし、戸惑う。何しろずーーーっと、言い続けるのでドンキホーテは本当に頭がおかしいのかなと思う。退屈だ。でも、徐々に世界が反転していく。ドンキホーテの周囲の人達が戦ってないだけで、この世界は見方を変えると素晴らしく映るのかもしれない、と。アルドンサの置かれた境遇や社会的な立場は悲惨だ。そして彼女自身「最大の罪は生まれてきたことだ」と言い放つほど、自己肯定感を損なっている。暴行を受けて、ボロボロの彼女が「私の本当の姿を見て」と迫っても、ドンキホーテは「姫」と言い続ける。誰にも承認されてこなったアルドンサはそこで世界を反転したのではないか。

その世界の反転は、「21世紀の日本で3次元ではうだつが挙がらない(非正規雇用で異性にモテず自分に自信を持てない)が2次元の世界(ネトゲとか)では神なんだ」みたいな現実逃避ではないと思う。そうではなく、自分の置かれた境遇や立場と、自分自身の尊厳は独立した別々のもので、アルドンサは世界と自分を肯定的に捉えなおしたんだと思う。人間はどんなに過酷な環境や境遇でもそこに希望を見出して生きれば、幸福を追求し続けられる。でもその戦いは、あまりに孤独で、あまりに過酷だ。サンチョも劇中に「ゾウがネズミをかじっても、ネズミがゾウをかじっても、どちらも痛いのはネズミだ。」みたいな台詞があったが、大きなものと闘う個人は勝ち目がない。それでもそんな戦いをし続けるドンキホーテは、何だかとても神々しく見えるのだ。そして観劇していて物語の序盤にドンキホーテに感じていた退屈さは、そのまま自分の生き方へと跳ね返ってきて、自分の人生の退屈さを思い知らされる。ありのままの人生に折り合いとつけてるなぁ、と。

いつの時代もこの世界は不平等で不完全なものだという指摘は正しいかもしれないが、指摘したあなたはその事実をどう変えるのか?ドンキホーテは、その問いにドンキホーテは1つの答えを示しているなと思う。
日本の問題

日本の問題

日本の問題

ザ・ポケット(東京都)

2011/11/27 (日) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

Aチーム観劇
わかりやすく、面白く、深い。見て、いま、こんな世界に生きているんだと新鮮な感動を覚える二時間。そもそも「日本の問題」という企画が良い。1劇団20分弱で「日本の問題」という大きなテーマについて作品を作る無謀さは勿論ある。でも公演のチラシ見た段階から、各劇団の8様の想いが伝わって来て、その無謀さを超えた世界が見れるのではと信じて観劇。結果、想像以上の演出、言葉の力、役者の魅力。こういう世界の見方もあるんだとAチーム4劇団とも息つくヒマ無く感動しました。20分だと、時間的な制約から1アイディアで突き進むしかないけれど、とても刺激的。アフタートークも含めて充実した空間を満喫できました。

ネタバレBOX

アフタートークは当たりハズレがあるんでしょうか?僕の見た回は「永井愛さん」だったので、断然当たりでした。もっともっと話聞きたかったなぁ。

作品の感想の合間に、「3.11」や大阪市長選に触れながら、我々にとって身近な政治との関わりについて、また情報統制の怖さについてお話されてました。「情勢を皮肉った喜劇のつもりの作品が、時間が経つにつれて喜劇でなくなる」というご自身の話が印象的でした。

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