モナカ興業#12「旅程」
モナカ興業
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2012/10/19 (金) ~ 2012/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
人生という旅
浮かび上がっては消えていく点の風景が、徐々につながり何本もの線になっていく。とっても静かに始まって終わる、でも中身はとても深い。一見シンプルだなと感じていた舞台空間に役者が立ち、光と音が加わると一気に荘厳な印象を受ける。セリフが独特に感じるのは、要所で文語体のような響きがあるからだろうか。動きも無駄が削ぎ落とされていて、洗練された風景は、一瞬一瞬が美しい。どうなるか先は全然読めない物語の展開は、観客側にも緊張を与える。緊張感のある空間は硬質なのに、とても居心地が良い。テーマも良かった、こういう味わい深い作品は、余韻も楽しい。
『サンタクロース会議』『サンタクロース会議 アダルト編』
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/12/14 (金) ~ 2012/12/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
すごく近しい問題意識
子供参加型は子供も大人も楽しめる作品。もちろん演出の巧みに計算され尽くした自然さはありつつもコミカルなキャラクターや、わかりやすい笑いも多くて、青年団はこういう物語も作れるんだなぁと思いました。子供参加型もアダルト版も両方観劇しましたが、個人的好みとしては子供参加型です、サンタクロースについて精微に調べて書き上げた物語も、子供の感性には追いつかないんだなぁと思ったし、役者さんのタジタジ具合も、子供の生の反応も楽しい。でも可能な限りの現実に即したサンタクロース会議への反証をアダルト版で消化していて納得もさせられました。基本の物語は同じなのに、見え方の違う2バージョンを是非多くの人に満喫してほしいなと思いました。
ソウル市民五部作連続上演
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
昭和望郷編、観劇
「ソウル市民」「1919」に続いて3作目の本作見てみて、改めて現代口語演劇と「ソウル市民」の持つ史実の相性は良いなと感じる。でも、自分の知識の足りなさから「圧倒された」としか言えない語彙能力の浅さが悔しい。「ソウル市民」「1919」と比べると、重たい空気が増すのは時代性なのだろうか。その息苦しい空気さえも伝わってくる感じが魅力だ。「占領された韓国の人への「無関心」に加えて、日本人としての居心地の悪さが印象深い快作。
翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)
バナナ学園純情乙女組
王子小劇場(東京都)
2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
現象だなぁ
全部あって何だかわからない。世界の全てみたいだ。バナナ体験は昨年の大運動会に次いで二度目。今回は、千秋楽、最前列。開演前のアナウンスは「自分の身は自分で守りましょう」最適なアドバイスだなぁと思う。開演早々、演者の一人と握手。最前列だから、演者から色んな小道具も委ねられる。徹頭徹尾受け入れられてるような安心感。その直接的なパフォーマンスに慣れてないので、それだけで満足しきってしまう。あとはもう本当にありとあらゆる事が目の前を通過して、自分も演者もずぶ濡れで、ただただ圧巻。一度だけじゃもの足りないし、何度見ても完全に理解出来ないけど、この瞬間は一度だけなのがもどかしい。
玉田企画『果てまでの旅』
玉田企画
アトリエ春風舎(東京都)
2012/02/24 (金) ~ 2012/02/29 (水)公演終了
満足度★★★★★
こういうのっっ
何でもない事がとてつもなく大事で、空気と友だちが全てで、自分の居場所を作るのに一生懸命で、空回りまくった自意識の暴走が、このみょ~な緊張感を産むのかな。登場人物達の居心地の悪さが、とてつもなく面白い。ふざけたり、遊んだり、それだけなのに、絶妙。何だか、神がかって見える位、笑った。
バカのカベ~フランス風~
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2012/11/15 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
カトケン、満喫っっ
すごいなー、もう冒頭から引き込まれて、ただただ笑って、そして観劇後に見事に何も残さない。満足感と幸福感だけを胸に帰路につける。長年演劇に携わり、劇団公演を重ねてきた貫禄と安心感。普遍的でさりげないし、ありえない様な設定のはずなのに、何でこんなに面白いのか。人間って情けなくて愛らしくて良いなって思える上質なコメディ。ようは、すげー舞台だった。
若手演出家サミット2011
アトリエ春風舎
アトリエ春風舎(東京都)
2011/12/15 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
唯一無二
普段見ることの出来ない演出家ワールドを堪能っっ。演出家の方達の思いを片鱗でも垣間見れる機会、物語以前の役者さん達の躍動、繰り広げられるアフタートークのモロモロ。あぁ、とっても覗き見てる感じで甘美な時間だった。
幻戯【改訂版】
鵺的(ぬえてき)
「劇」小劇場(東京都)
2013/02/20 (水) ~ 2013/02/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
男の性(さが)
粘りついて絡みついて逃れられない男の性(さが)を見せ付けられた、圧巻の舞台でした。5年前の作品を再構成されたとのことで余計なものをそぎ落とした物語はギュッと濃縮されており、時間を忘れてただただ見惚れて楽しみました。こんなに居心地が悪いような内容なのに、何でこんなに惹きつけられるのか。じっくり溜めのある間の演出がヒリヒリと緊張感を高めていました。そしてその緊張感に耐えうる適役のキャスティングでどの役者さんもとても魅力的でした。
完全版・人間失格
DULL-COLORED POP
青山円形劇場(東京都)
2012/11/01 (木) ~ 2012/11/07 (水)公演終了
満足度★★★★★
人間とは
11月1日に「女版」・2日に「男版」観劇。チラシに観客は観るリンチの共犯者と煽っているが、実際は役者のレベルが高く隙なんてないので2時間圧倒されっぱなし。見とれて時間を忘れるような、歪んで見える心象風景の視覚的聴覚的な演出はもう美しすぎる。ぞくぞくする様なラストシーン、全体通して見える突き放しているようで愛している人間への視点。俺も人間失格だって共感も、ここに描かれてるのは全部自分勝手な甘えだって批判も飛び越えて、新しい境地にたどり着いている。普遍的な価値観と闘ってるなぁ、劇団のこれからの活躍にも目が離せない。女版のコロさんの葉蔵は吹けば飛んでしまうのではと思うほどの寄る辺ない存在感で物悲しい、男版の原西さんの葉蔵には影がつきまとっていてその逃れられない苦しさが伝わってくる。男女版どちらも楽しいし、円形舞台だから見る場所で風景が変わって面白い。両方とも甲乙つけがたく完成度高いです。人間とは何か、じっと考えさせられます。
edit
shelf
atelier SENTIO(東京都)
2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
緊張の末
見ているだけで、息を飲み、汗ばみ、背筋を正し、凝視して、集中を強いられるような空間。その居心地の悪さは次第に楽しくなり、達成感へとつながっていく。役者達の動きは在ることで成立するような圧倒的な出で立ち。引用された言葉そのものの力強さは、役者という肉体を通して強度を増す。動きも言葉も最小限に削ぎ落として、最大限の効果を求めるように練りこまれている。そして「編さん」されることで見える、引用元の違う言葉同士のつながりが世界を深化させる。そうか、これも演劇か。
東京ノート
青年団
東京都美術館 講堂ロビー(東京都)
2012/07/15 (日) ~ 2012/07/25 (水)公演終了
満足度★★★★★
美術館で
劇場でない場所での観劇は初めての体験でしたが、作品に「空間」という様相を添えて一層楽しめるなぁと思いました。当然、劇場ではない訳で上演にあたっては様々な試行があっての事だと思いますが素晴らしい出来栄えで、観劇出来て本当に良かったと思います。個人の葛藤と世界のつながりが、観客として俯瞰で見てジワジワ伝わってくる素敵な作品でした。所作や表情など、台詞以外の部分もとても繊細で自然で、ずっとずっと見ていたかったです。
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR
インディペンデントシアタープロデュース
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
演劇の夏フェスっっ
一人芝居のこの力強さ。エネルギー。生きざま。30分×10団体。一日で満喫してきました。熱いっっ!次回は、5年後??毎年見れないのが、悔しい。…大阪まで行ければ良いんだけど。すっかりはまりきってしまいました。
お母さんの十八番
アジア舞台芸術祭制作オフィス
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2012/12/01 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
日常が崩れる瞬間を
誰しもに起こりうる、当たり前な風景。でも情感あふれ、時にコミカルに、でも要所でものすごく激しく描かれる風景にとても共感しました。「母がいる」というあたりまえの日常が、突然無くなった時の感情。受け入れがたいその生々しさ。韓国の演出家の描く日本の物語ということで、言葉や国籍を超えて、人としての普遍的な感情を共有出きるんだな、という当たり前の発見を改めて感じて、ラストはジーンとしてしまいました。ロビートーク聞いてから観劇したので、見所も広がったように思いました。これを無料で見れるのだからありがたすぎる。
非実在少女のるてちゃん
笑の内閣
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
ちょーぜつバカバカ
会場入って、前説(コント)が始まった辺りから、何だかいつもと客席の雰囲気が違うなという感じがしました。反応が良いというか、役者への笑いや拍手や時々相槌まで入って、場内の人たちノッテるなぁと感じました。演劇好き、というより笑の内閣好きが集まってるのかなという印象です。僕は初見でしたが、開演して5秒で心もってかれました。馬鹿馬鹿しくてヤバイ、超ヤバイです。役者が男女共に格好つけてなくて、自然体で、かつ体当たりなのも好印象。元ネタを全部わかる人いるんだろうかってくらい、メジャーなものからマニアックなものまで色々なパロディーや風刺がありました。(物販で売ってるパンフレットに細かい文字でびっしりネタバレ書いてありました。)でも、笑わせるだけで終わらせない物語が心地よい。押し付けがましくない、等身大の作者のメッセージに僕はとても共感しました。「非実在青少年」を巡る青少年育成条例の問題が整理されて、当時(2010年)の様子もよくわかりました。日替わりゲストもアフタートークのゲストも豪華っっ。非常に楽しかったです。
ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン
ハイバイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/07/18 (水) ~ 2012/08/01 (水)公演終了
満足度★★★★★
ツーカイっっ
前作の「ある女」は難しかったけど、今作はハイバイ初心者の僕でも安心して楽しめました。何でもない日常の風景を、いつの間にかぐんにゃりと曲げて、歪めて見せるのがとてもうまいなと思いました。馬鹿馬鹿しくて、でもゲラゲラ笑って。でも、観劇後の帰り道に、何だかとんでもないものを見てしまったな、上手すぎるんだなと実感するような痛快な作品でした。
平田オリザ・演劇展vol.2
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/04/05 (木) ~ 2012/04/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
違いを楽しむ
「平田オリザ演劇展vol1」から1年を経て、「3.11」を思い起こしながら味わう「さようなら」と「銀河鉄道の夜」。「隣にいても一人」の3つの地域編を見比べて、個々の作品の独特さを体感。不条理を楽しむ「阿房列車」と「思い出せない夢のいくつか」。一度に色々な種類の作品を楽しむ事が出来て、有意義な企画。今から今年度末の「vol3」にも期待してしまう。
地下室
サンプル
こまばアゴラ劇場(東京都)
2013/01/24 (木) ~ 2013/02/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
閉じた世界
これは他人事ではなくて、誰しもに起こりうる悲しい風景だなと思いました。あまりにも自然に表現されているから、つい笑ってしまうシーンも多かったけれど本当は笑えないようなものすごい怖い風景が繰り広げられている。つながりたい、救われたいという切実な欲求から集まっているのに、どうしてより困窮しなければならないのか。暗鬱とした息苦しい世界が繰り広げられて、ゾッとしました。
テロルとそのほか
工場の出口
アトリエ春風舎(東京都)
2012/12/01 (土) ~ 2012/12/07 (金)公演終了
満足度★★★★★
いまを描く
2012年、いま現在を描き、日本社会への閉塞感を鋭く切り取る、闘ってる演劇だった。思考を共有化しようとする創作の動機が非常に刺激的だし、上演された内容もとても濃くてあっという間の二時間だった。なんというか、我々はもっと調べて学んで疑って、怒らないといけないんだなという内容だった。知れば知るほど、諦めさせられる、どうせ変わらないと思わされる現実だからこそだ。俳優に提出されたテーマに即し、2つずつ作品を書き下ろし、なおかつ1つにまとめる。この4つの全く異なるテーマが並列的に語られるが、個々のテーマ(作品)が面白いから全く飽きずに見れる。硬質で膨大な独白をきちんと伝える俳優も魅力的でした。1つの物語にまとめる事で対話が生まれ、問題意識への反証や発展が起こる。「わかりたいけどわかりあえないこと」、作品内でも葛藤しているし、この作品を創ってる制作者たちも葛藤されたのだと思う。そうして観ると一層味わい深い。声に出して読みたいような言葉の重さの1つ1つを観劇後に反芻しています。
ラ・マンチャの男
東宝
帝国劇場(東京都)
2012/08/03 (金) ~ 2012/08/25 (土)公演終了
満足度★★★★★
退屈の先
役者の表情がオペラグラス使わず見える、ゼイタクな席で観劇っっ!!でも予備知識全く無しで観劇したので、前半1時間は退屈で。この退屈さはとても重要だと思いました。そしてこの退屈さが反転したときに、作品の主題がありありと浮かび上がるなと思いました。松本幸四郎と松たか子の共演は本当に豪華で、それだけでも大満足です。
日本の問題
日本の問題
ザ・ポケット(東京都)
2011/11/27 (日) ~ 2011/12/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
Aチーム観劇
わかりやすく、面白く、深い。見て、いま、こんな世界に生きているんだと新鮮な感動を覚える二時間。そもそも「日本の問題」という企画が良い。1劇団20分弱で「日本の問題」という大きなテーマについて作品を作る無謀さは勿論ある。でも公演のチラシ見た段階から、各劇団の8様の想いが伝わって来て、その無謀さを超えた世界が見れるのではと信じて観劇。結果、想像以上の演出、言葉の力、役者の魅力。こういう世界の見方もあるんだとAチーム4劇団とも息つくヒマ無く感動しました。20分だと、時間的な制約から1アイディアで突き進むしかないけれど、とても刺激的。アフタートークも含めて充実した空間を満喫できました。