しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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百年の秘密

百年の秘密

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2012/04/22 (日) ~ 2012/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

『百年の秘密』
まず最初の映像でノックアウト。凄すぎる。長い年月を経た数世代にわたるドラマで様々に因果応報で…滑稽なのも皮肉なのも人生そのもの。ナイロンの舞台はナイロンでしか観られないと、当然のことですが、強く感じました。GWが狙い目とのこと。

深海のカンパネルラ

深海のカンパネルラ

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/04/15 (日) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

統一感のある純なファンタジー
 東京の小劇場界で知名度のある、個性的な役者さんがそろっています。知る人ぞ知る、かなり豪華なキャスティングですね。残念ながら私が観た回は、息が合っていないせいなのか心地よいリズムが生まれず、“いつも通りにいっていない”印象でした。魔女的ポジションの2人(小玉久仁子&牛水里美)が登場したところで面白くなったのですが、会心の一撃が出なかったですね。

 シンプルだけど細部へのこだわりが見て取れる抽象美術に、統一感のあるロマンティックな衣裳。照明で切り替えて場面転換するのは、絵として美しく、メリハリもはっきりしています。音楽および音響効果については、オペレーションのタイミングが合っていない気がしました。開場時間に流れていた曲は憂いを含んだメロディアスな曲が多く、「メランコリックなファンタジー」であることをアピールし過ぎているように感じました。美術、照明、衣裳、選曲などのスタッフワークがきれいにまとまった作品で、見た目は確かに美しいのですが、予想の範囲内に収まってしまったのは残念。

 宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」を下地にした創作ファンタジーであることは、タイトルからもチラシのビジュアルからも明らかです。私としては、そのイメージをもうちょっと裏切って欲しかったですね。繰り返しになりますが、たまたま調子の悪いステージに当たったのだと思います。

ネタバレBOX

 プラネタリウムが好きなけんじ(篤海)と水族館が好きなりく(多田直人)。サンシャインシティで偶然会った2人の男子高校生が、心通わせて友達になりますが、間もなくけんじは沖縄の海で溺死。たった一人の大切な友人を失ったりくは、受かった大学にも行かず引きこもり、「銀河鉄道の夜」の物語の中に没入してしまいます。銀河鉄道の中では必ずけんじ(=カンパネルラ)に会えるから。そんなりくを救出するために、実の姉(川田希)や高校時代の友人らが、りくの部屋を訪れて説得しようとしますが…。

 親友を失ったティーンネイジャーの傷心というテーマだけで、2時間以上は持たせられないんじゃないでしょうか。無論、他にもテーマはあったのでしょうが、私にはそれほど重要なものとしては伝わってこず。
 宮沢賢治(中田顕史郎)が登場したのには驚きました。そういえば『ドロシーの帰還』でも作家が登場しましたね。入れ子構造をさらに強固にする演劇的効果はあったと思います。でも賢治に実の妹のことを語らせたのは、やりすぎだったんじゃないかな~。

 最初はお葬式の場面でした。当たった対象物が白黒になる黄色いライトが、あの時間だけのために(たぶん)使われているのは贅沢ですね。回想シーンが冒頭に来ていて、終演後に「あぁ、最初はあの場面だったんだ」と思い出し、味わい深くて良かったです。
アンティゴネ/寝盗られ宗介

アンティゴネ/寝盗られ宗介

岡崎藝術座

STスポット(神奈川県)

2012/04/19 (木) ~ 2012/04/24 (火)公演終了

満足度★★★

インスタレーション
台詞多いし声も大きいお芝居だけど、インスタレーション(展示物など)のように鑑賞。壁一面の絵画の影響かも。法律や掟より大切なもの、非常識でもやり抜きたいことを、命がけで実行する人々。それを演じる俳優は、自らの心身を使って独特の表現を突き詰める人々だった。

ネタバレBOX

白いステージの中央に赤い四角の布。日の丸なのかな~。
自慢の息子

自慢の息子

サンプル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/04/20 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

サンプル「自慢の息子」再演
面白かった~。初演よりも冷静に観ていられた。入り込まなかったゆえに、考えられた。依存と日常的に私たちがしている演技(コスプレ)について。

絶頂マクベス

絶頂マクベス

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2012/04/14 (土) ~ 2012/04/23 (月)公演終了

満足度★★★★

4/18と4/19夜10時半より本編UST放送あり!
面白かった!女優さんがカッコいい!セクシー!「脳殺ハムレット」より演出に主張があるのも好き。90分という上演時間もスッキリ。4/18と4/19夜10時半より本編UST放送あり!

ネタバレBOX

マクベスが現代の丁寧語を使っていて、「弱い」人物なのが良かったです。最後の「ありがとうマクベス」の歌にはしびれました。
「4 1/2」 「キッチンドライブ」

「4 1/2」 「キッチンドライブ」

劇団子供鉅人

ポコペン(大阪府)

2012/03/25 (日) ~ 2012/04/16 (月)公演終了

満足度★★★★

古屋の空間を知り尽くした、欲深でやんちゃな演出
 会場は築100年以上の長屋でした。作・演出の益山貴司さんのお住まいでもあり、普段はカフェ・バーとしての営業もされています。益山さんが使い慣れた、知り尽くした空間なんですね。
 『キッチンドライブ』では、台所と、玄関に面した踊り場の2つを舞台として使用していました。描かれるのは倦怠期の若い男女と、見知らぬ客人たちとの不思議などんちゃん騒ぎ。限定20人の観客は、壁で仕切られた2つの部屋を至近距離から覗くように鑑賞します。

 2階へと続く今にも壊れそうな木造の階段を、男性が全力疾走で駆け上がると、階段が大きく音を立てて軋み、本当の意味で生々しくスリリングでした(笑)。台所で所狭しと激しく踊る場面で、陶器の割れた音が響いた時もドキッとしました。破片を踏んで役者さんが怪我をしないかと心配になったのですが、舞台からドバドバと溢れて、飛び出てしまいそうなほど勢いのある演技に引き込まれ、ハラハラしながらも目が離せませんでした。

 ずっと台所にいる聡里役のキキ花香さんがとてもエロティックで、関西の女性ならではの大らかでしっとりした色気を感じました。シャツの首周りがよれっとしてるのもセクシー。無論、○○○エプロンは私にもツボでした(笑)。

ネタバレBOX

 33歳無職の雄介とその恋人で21歳のフリーターの聡里が暮らす古い、古い日本家屋。同棲して3年になる2人の貧しい生活は曲がり角を迎えていた。言い訳ばかりして働こうとしない雄介に、聡里は愛想を尽かしかけていたのだ。そこに突然4人の招かれざる客が訪れる。2人だけの狭い世界が乱暴に、でも広く明るく開かれて、未来に希望が持てなくなっていた2人に、ある変化が訪れる…。

 おかまのリリーと芸術家のサリーは留守宅の台所を狙って食べ物を盗む“キッチン・ドライバー”。2人が初めて登場する時にしばらく完全暗転し、本当の真っ暗闇になったのは特別な体験でした。路地の奥にある長屋で電気を全て消すと、あんなに何も見えない、静かな暗闇になるんですね。その闇と静寂を破るようにカメラのフラッシュが光るのはお見事。
 他人の家の押し入れに勝手に入って高校受験の勉強をする30代のケンゴと、ケンゴを追いかけまわす恋人の大河内もまた、存分に暴れまわって聡里と雄介を翻弄します。2人ともが強烈なキャラクターで、特に1人で勝手にまくしたてるようにしゃべり続け、延々と自己完結する大河内の強引さ、滑稽さには圧倒されました。

 壁を隔てた2つの部屋での同時多発会話や、騒然とした台所と静かな踊り場の対比など、舞台空間の絵づくりが巧妙です。リリー役の益山寛司さんが、台所を破壊することも厭わないほどの勢いで、大いに踊って暴れる様は痛快でした。俳優の身体のみで生み出すスリリングで迫力のあるライブ・パフォーマンスとして十分に魅力的でした。

 リリーたちが嵐のように去った後、聡里はふらりと冷蔵庫の裏側に行き、そのまま消えてしまいます。聡里はリリーたちを追って家を出て行ったのか、この物語自体が雄介の幻想だったのか(最初から聡里は居なかった)、さまざまな解釈が可能です。玄関の戸が開く音がしなかったので、私は「家を出て行った」という可能性は低いと思います。「人間が消えた」という現実では起こり得ない、不可思議な怪奇現象ともいえる事件を起こすことで、観客に時空の広がり、深まりを体感させる効果があったと思います。

 蛇足ですが、物語の外枠が深田晃司監督の映画「歓待」と似ていると思いました。でも聡里が消えてしまうのは、「歓待」とは随分と異なる結末ですね。
淋しいマグネット

淋しいマグネット

ワタナベエンターテインメント

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2012/04/08 (日) ~ 2012/04/28 (土)公演終了

満足度★★★★

REDS鑑賞
スコットランド戯曲が予想以上に面白かった上に、茅野イサムさんの演出が良かった!あのアイデアは素晴らしいな~。堂々エンタメでありながら苦く、残酷で。イケメンファンだけじゃなく演劇ファンが観てもずっしり来るお芝居じゃないかな。

ネタバレBOX

腹話術の人形ヒューゴが、最後の「淋しいマグネット」の物語に出てきた、というか全員ヒューゴだったのが凄い。演出の勝利だなと思いました。
パブリックイメージリミテッド

パブリックイメージリミテッド

かもめマシーン

小劇場 楽園(東京都)

2012/04/04 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★

チェルフィッチュに似てる、と思わせるのは損
素舞台で俳優の体と言葉だけで見せると言っていい作品。それにしては力量不足の役者さんが多かったように思います。

ネタバレBOX

日々、死者とともにあると私は普段から思っているので、それを教えていただく必要はなく。
まほろば

まほろば

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2012/04/02 (月) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞後に議論したくなるお芝居
子役1人を除き初演と同じキャストという、貴重で贅沢な再演で、期待していた以上にブラッシュアップされていました。お薦めの舞台を紹介しているメルマガで号外を発行しました。よかったら覗いてみてください:http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2012/0407231520.html 東京の後、松本、神戸、山形の3地域ツアーあり。

ストレンジャー彼女

ストレンジャー彼女

tsumazuki no ishi

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/03/28 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★

猥雑と滑稽のバランスの妙。誰も真似できない家族劇。
 実在した殺人事件を多数とりあげ、B級スプラッター・ホラーの要素も盛り込んだSF仕立ての家族劇という、誰も真似できない物語でした。込み入った複雑な設定を、しれっと当然のように説明して成立させてしまうのは、演技、演出、スタッフワークの賜物だと思います。

 息の詰まるような緊張感に支配された、うすら恐ろしい時間が静かに流れています。そのムードを敢えて破るように間の抜けた皮肉なギャグが挟まれ、空気が一瞬なごむのが快感!
 ただ、私が鑑賞した初日のステージについては、密室感覚や恐怖、猥雑さなどが期待していた完成度には届いていなかったように思いました。

ネタバレBOX

 舞台は廃屋化しているビルの搬入用(と思われる大きな)エレベーターの中。降霊術を行う家族がアジトにしています。母親(大高洋子)は人を洗脳して触媒(霊魂が入る器)にするのに長けており、4人の息子たちは触媒で、娘のワカナ(亜矢乃)には降霊の能力があります。とはいえ息子たちもワカナも母親に殺された幽霊で、檻のようなエレベーターは生者と死者が混在する空間でした。エレベーターがガタガタと上下するのを照明と音響でうまく表現していて、客席に座りながら自分も揺れているように感じるほどでした。

 地底人ポール(寺十吾)が、問題を抱えた依頼人たちにぴったりの霊を呼び出します。死霊、生霊が次々と湧いて出て、さらには触媒である息子たちも霊に乗り移られて別人となり、人間の輪郭や、あの世とこの世の境界が曖昧になっていきます。いかがわしくて気持ちの悪い空気が充満する中、地底人ポールのとぼけた演技がいいスパイスになり、独特の滑稽さでバランスが取れていました。刺激的で小気味良かったです。

 降りてきた霊には凶悪犯罪の加害者と被害者の両方がいて、依頼人たちとの議論は人間とは、命とはという根源的な問いへと発展していきます。
 好きな人を殺す代わりに猫を殺す少女は、憧れの存在であるサカキバラの生霊(福原冠)と出会い、虐待を受けていた女性は、かつて自分が殺してしまった友達の幽霊と出会います。2人ともがそれぞれの救い、もしくは現時点での答えを見つけたようでしたが、特にサカキバラの件についてはスッキリ腑に落ちる顛末ではなかったです。彼が実在の有名人(の生霊)だからかもしれません。

 共感して一緒に考えたくなったテーマもありました。セックスも暴力も人間の愛の形だけれど、肌を重ねても、相手を切りつけても、人間と人間は一体には成り得ない。愛(=暴力)を求めても、絶対的な孤独を身を持って知ることになるだけなのに、それでも人間は、他者を求めずにいられない。そんな致命的なジレンマから逃れる方法はあるのだろうか・・・。スエヒロさんいわくの「凶悪犯罪とオカルト」を材料にした「ディスカッション劇」に私も参加できました。

 最後はワカナが、母親を背後から抱き締めるという意外な行動を起こしました。ワカナは自分を絞殺した母親を憎んでおり、死ぬまでとりつくと決めてそばに居るのですが、その恨みと執着は、愛情と紙一重であることがよく伝わるシーンでした。家族だんらんの食事シーンもそういう効果があったのだと思います。ただ、背筋がゾクっとしたり、何かがぐっと喉もとまで込み上げてくるほどの味わいにならなかったのが残念。きっとステージを重ねるごとに密度が増していったのだろうと思います。

 何度も笑わせていただきましたが、躊躇なく爆笑したのは母親が「(飲酒は)未成年はダメ!」と言い切ったところ。子殺し犯なのに妙なところで厳しい!(笑)
ファウスト

ファウスト

モナカ興業

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/04/04 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

Faust
何もない空間を怒濤のセリフとシャープな照明で満たす1時間35分。まさかこのまま…?のまさかで、最後にまんまとヤられました。俳優の中に、…あーネタバレなので書けないっ。森新太郎さん演出。女優の渡辺樹里さんが健闘。

ネタバレBOX

渡辺樹里さんがファウストを演じます。「なぜ女性がファウスト役?」という疑問は、最後の最後に渡辺さんがマルガレーテを演じ始めた時に、解けました。

人間は孤独で、どんない愛し合っても傷つけ合っても、肉体がある限りひとつになることはできない。でも、演劇ならそれが可能なんだと証明してもらえたように感じました。
にわか雨、ときたま雨宿り

にわか雨、ときたま雨宿り

公益社団法人日本劇団協議会

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2012/03/23 (金) ~ 2012/03/27 (火)公演終了

満足度★★★

戯曲賞受賞作の初上演
期待して観に行ったので、がっかり度が高かったかも。石原都知事が客席にいらっしゃいました。そういえば文化庁主催公演ですね。

ピーター・ブルックの魔笛

ピーター・ブルックの魔笛

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2012/03/22 (木) ~ 2012/03/25 (日)公演終了

満足度★★★

「ピーター・ブルックの魔笛」
オペラと思うと貧弱で、演劇と思うと退屈で。何を目指した作品だったのかな。歌は片手間でいいから(聴き惚れるほどは上手くないので)、豊潤な沈黙が欲しかった。パパゲーノは可愛いらしかった。

被災地の子ども達による平和宣言3.11

被災地の子ども達による平和宣言3.11

CARE-WAVE

【閉館】日本青年館・大ホール(東京都)

2012/03/17 (土) ~ 2012/03/17 (土)公演終了

満足度★★★

福島県のあさか開成高校演劇部
福島県のあさか開成高校演劇部の方々を観たくて、また、知人の関係で鑑賞。感想はトラックバックしましたので、よろしければ。

【耳のトンネル】満員御礼!ありがとうございました。

【耳のトンネル】満員御礼!ありがとうございました。

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/03/09 (金) ~ 2012/03/19 (月)公演終了

満足度★★★★

全人類ひっくるめて愛してくれる、劇薬のような音楽劇
 純で甘酸っぱい初恋から清濁合わせ持つ大人のアバンチュールまで、全人類ひっくるめて何が何でも愛してくれる妙ージカル。幕開けの場面から感動で涙が出てしまいました。劇団おなじみのあからさまな性描写は全体的にいつもより少なめで、私には見やすかったです。お友達も誘いやすいかも。
 
 「観てきた!」を書くために歌詞カードを読みなおすと、原始的で熱くてロマンティックな小空間へと、心身が一瞬のうちに戻りました。FUKAIPRODUCE羽衣を観る度にいつも思うのですが、糸井幸之介さんにはぜひアイドル歌手のための歌を作詞・作曲してもらいたいです。ジャニーズ事務所の若い男の子とか、AKB48の若い女の子とかに、きっとフィットすると思うんですっ!

ネタバレBOX

 上手奥のロフトに西田夏奈子さんが登場し、長い髪をブルン!と下から上へと振り上げるのが開幕の合図。それだけで心奪われました。そして下手のベッドの中から次々と成人男子が抜け出てきて、お乳をねだる歌「おはようからおやすみまですみからすみまで」を絶唱。母から生まれ、脈々とおっぱいを欲しがり続ける人類の歴史があらわされて、早くも涙腺決壊。
 幼児から少年になった息子(日髙啓介)はギターを手にしてミュージシャンを気どりますが、楽器入手もマイクのコードの処理も、全部お母さん(西田夏奈子)がお手伝い。子供はいつも母の無償の愛で支えられ、守られていると解釈しました。

 そして中学生になった息子とそのクラスメートたちはいわゆる思春期を迎えます。金子岳憲さんと鯉和鮎美さんの初体験シーンは、甘酸っぱくて照れくさくて、強烈に不格好で愛らしいです。キャラメルをほうばるとその美味しさに夢中になって他のことはすっかり忘れ、女の子に触れると泣きそうになるほどドギマギしちゃう金子君。おしとやかそうな素ぶりを見せておきながら、いざとなると好奇心の塊となってどんどん男の子をリードする鯉和さん。

 いきなりプロデューサーの深井順子さんが登場し、これまでの物語は自分の恋人(日髙啓介)の過去のエピソードだったとわかります。『耳のトンネル』という舞台自体が彼の人生のコンセプト・アルバムだという構成になり、劇中劇として妙ージカルが展開していきます。いわば“お約束”の深井順子ご本人登場シーンですが、今までにない艶っぽさというか、大人の落ちついた色気を感じて、深井さんにすっかり見とれてしまいました。かっこええわ~。

 成長して大学を中退してしまった息子(高橋義和)は、アルバイトで稼いだお金で海外へと一人旅に出かけます。“高橋名人(懐かしのファミコン名人)”の大冒険は青春時代の無鉄砲な情熱、知識と経験がないからこその闇雲な前向きさ、若さゆえの体力、弱さなどをそのままに肯定したパワフルなシーンで、やや内向きの回想から、外向きのファンタジーへと転換するのがダイナミック。

 帰国して成人になると、息子(たち)は異性を性行為の対象とした、恋の駆け引きをするようになります。男性はシルクハット型の大きな帽子にジャケットをはおり、「青年」から「男」になりました。ぱっと見はパジャマのような男性の衣裳ですが、首もとがレースだったりきれいな白い襟になっていたのは、上からジャケットを着た時に紳士に見える仕掛けなんですね。女性のふんわりとしたロングドレスからはお母さんの温かみが伝わり、紳士の隣りにぴったり合う淑女のイメージも兼ね備えています。

 道端で出会った美男美女(澤田慎司&幸田尚子)および他のカップルのラブホでの熱々のアバンチュールを、ノリノリの激しい歌と踊りで見せていく場面では、私も音楽にノって体を動かしたくなりました。あからさまな性描写は相変わらず苦手な私ですが、美男美女がカッコよすぎてしびれた!
 ラブホカップルはすぐに結婚し、次々と生まれる赤ん坊の誕生を喜んだのもつかの間、子育てに忙殺されて、お互いに浮気を繰り広げる新婚夫婦たち。相手を変えていくことで、無数の男女による肉体関係の無限ループの闇が深まっていきました。

 やがて人間たちは記憶の中の旋律を求め、劇団の過去作品で使われた楽曲がメドレー形式で歌われていきます。深井さんの恋人(日髙啓介)の過去の回想でありながら、同時に、劇団員が積み重ねてきた過去公演を振り返ることにもなり、演劇ならではの多重構造が刺激的。そして名曲ぞろいです。俳優が上手奥に置かれた巨大な耳の穴から出入りすることで、脳の中の深層意識への旅、身体の神秘の探究など、奥深い想像をふくらますことができました。

 自分のコンセプト・アルバムを演奏してきた自称ミュージシャン(日髙啓介)は、恋人(深井順子)を置いて一人旅に出ます。大学時代の一人旅と同じく、無邪気な子供みたいに心がはしゃいでいる様子。ところが宿屋の女将さん(伊藤昌子)との熱い一夜を経た翌日、山中で足をすべらせて転落してしまいます。誰にも見つけてもらえないであろう暗闇で一人、「おっぱい好きを卒業し、今はお尻の方が好き」というたわいない歌を作って歌う日髙さん。幼少期から全然成長していないことが露呈し(笑)、彼はそのまま死んでしまった・・・と匂わせて終幕。

 あっけない、みっともない最期でした。人生はほんのひとときの夢で、人間は誰でも死ぬまで子供のままなのでしょう。それを自分にも他人にも認めて、赦した時に、人間は大人になっているのではないかしら。糸井さんは立派な大人の男性だと思いました。
フェニックスプロジェクトvol.4

フェニックスプロジェクトvol.4

一般社団法人 日本演出者協会

笹塚ファクトリー(東京都)

2012/03/10 (土) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

高校生による上演4作品
知識として知っているはずのことなのに、お芝居で観て初めて本当に知った気持ちになる。私はそういうことが多いので、お芝居を頼りにしています。12時から17時にわたり約5時間弱、かしら。劇中で観客も一緒に黙祷ができました。ありがとうございました。

ネタバレBOX

2本目。亡くなった女子高生の「助けて!」という言葉で終幕。ああ、本当の声を聞けた、と思いました。
十一ぴきのネコ

十一ぴきのネコ

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2012/01/10 (火) ~ 2012/01/31 (火)公演終了

満足度★★★★

ラストが良かった
今回の公演は1971年初演版の台本だそうです。ラスト泣けてしまいました。

ある女

ある女

ハイバイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/01/18 (水) ~ 2012/02/01 (水)公演終了

満足度★★★★

“境”を描いた演劇
中盤までは苦笑・爆笑。帰宅してからゆっくり考えて、やっと咀嚼できたように思います。私は菅原さんの回でした。

びんぼう君

びんぼう君

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2012/01/17 (火) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

満足度★★★

お餅ごちそうさまでした
やはり時代が変わったんだなぁと確かめつつ拝見。飛躍してくのが楽しかったです。

ネタバレBOX

家からはみ出るのがいいですね。にいなさんの「ままごと」がすごく可笑しかった。皆で月を見上げる場面が美しかったです。
ボニー&クライド

ボニー&クライド

ホリプロ

青山劇場(東京都)

2012/01/08 (日) ~ 2012/01/22 (日)公演終了

満足度★★★★

群像劇
ひさしぶりにゴージャスなミュージカル。満足しました。

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