ストレンジャー彼女 公演情報 tsumazuki no ishi「ストレンジャー彼女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    猥雑と滑稽のバランスの妙。誰も真似できない家族劇。
     実在した殺人事件を多数とりあげ、B級スプラッター・ホラーの要素も盛り込んだSF仕立ての家族劇という、誰も真似できない物語でした。込み入った複雑な設定を、しれっと当然のように説明して成立させてしまうのは、演技、演出、スタッフワークの賜物だと思います。

     息の詰まるような緊張感に支配された、うすら恐ろしい時間が静かに流れています。そのムードを敢えて破るように間の抜けた皮肉なギャグが挟まれ、空気が一瞬なごむのが快感!
     ただ、私が鑑賞した初日のステージについては、密室感覚や恐怖、猥雑さなどが期待していた完成度には届いていなかったように思いました。

    ネタバレBOX

     舞台は廃屋化しているビルの搬入用(と思われる大きな)エレベーターの中。降霊術を行う家族がアジトにしています。母親(大高洋子)は人を洗脳して触媒(霊魂が入る器)にするのに長けており、4人の息子たちは触媒で、娘のワカナ(亜矢乃)には降霊の能力があります。とはいえ息子たちもワカナも母親に殺された幽霊で、檻のようなエレベーターは生者と死者が混在する空間でした。エレベーターがガタガタと上下するのを照明と音響でうまく表現していて、客席に座りながら自分も揺れているように感じるほどでした。

     地底人ポール(寺十吾)が、問題を抱えた依頼人たちにぴったりの霊を呼び出します。死霊、生霊が次々と湧いて出て、さらには触媒である息子たちも霊に乗り移られて別人となり、人間の輪郭や、あの世とこの世の境界が曖昧になっていきます。いかがわしくて気持ちの悪い空気が充満する中、地底人ポールのとぼけた演技がいいスパイスになり、独特の滑稽さでバランスが取れていました。刺激的で小気味良かったです。

     降りてきた霊には凶悪犯罪の加害者と被害者の両方がいて、依頼人たちとの議論は人間とは、命とはという根源的な問いへと発展していきます。
     好きな人を殺す代わりに猫を殺す少女は、憧れの存在であるサカキバラの生霊(福原冠)と出会い、虐待を受けていた女性は、かつて自分が殺してしまった友達の幽霊と出会います。2人ともがそれぞれの救い、もしくは現時点での答えを見つけたようでしたが、特にサカキバラの件についてはスッキリ腑に落ちる顛末ではなかったです。彼が実在の有名人(の生霊)だからかもしれません。

     共感して一緒に考えたくなったテーマもありました。セックスも暴力も人間の愛の形だけれど、肌を重ねても、相手を切りつけても、人間と人間は一体には成り得ない。愛(=暴力)を求めても、絶対的な孤独を身を持って知ることになるだけなのに、それでも人間は、他者を求めずにいられない。そんな致命的なジレンマから逃れる方法はあるのだろうか・・・。スエヒロさんいわくの「凶悪犯罪とオカルト」を材料にした「ディスカッション劇」に私も参加できました。

     最後はワカナが、母親を背後から抱き締めるという意外な行動を起こしました。ワカナは自分を絞殺した母親を憎んでおり、死ぬまでとりつくと決めてそばに居るのですが、その恨みと執着は、愛情と紙一重であることがよく伝わるシーンでした。家族だんらんの食事シーンもそういう効果があったのだと思います。ただ、背筋がゾクっとしたり、何かがぐっと喉もとまで込み上げてくるほどの味わいにならなかったのが残念。きっとステージを重ねるごとに密度が増していったのだろうと思います。

     何度も笑わせていただきましたが、躊躇なく爆笑したのは母親が「(飲酒は)未成年はダメ!」と言い切ったところ。子殺し犯なのに妙なところで厳しい!(笑)

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    2012/04/05 15:48

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  • tsumazuki no ishiにしか作れない空気があると実感できる作品でした。ありがとうございました。

    2012/04/18 11:24

    このたびはご観覧をいただき、そしてコメントを頂戴し、誠にありがとうございました。
    御礼が遅くなり、申し訳ございません。

    初日でも、お届けするものをしっかりお届けできるように、これからも精進したいと思います。
    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    2012/04/15 20:20

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