しずかミラクル
コトリ会議
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/06/13 (水) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
人類滅亡が目前にせまる寂寥としたディストピアで、とぼけた会話や素っ頓狂なギャグが独特のタイミングで繰り出されます。狙ったチープさにも味わいがあり、この劇団にしか作れない作品だろうと思いました。
出演者・制作の若旦那家康さんの心の込もった丁寧な前説がとてもよかったです。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/06/14/9896/
巛
ゆうめい
OFF OFFシアター(東京都)
2018/03/02 (金) ~ 2018/03/04 (日)公演終了
満足度★★★★
会社員役の主人公が客席に向かって話しかけつつ、他の登場人物たちとも会話をしていく現代口語劇でした。下手奥に斜めに設置された平台(おそらく)は、表面が緑の芝生のように加工されています。上手にはイスが数脚と棚があり、移動して場面転換します。軽やかでシームレスな場面転換がかっこ良かったです。
弱くて優しい現代の若者が努力するゆえに失敗し、さらに苦しむ様子に、胸がキュっと締め付けられる瞬間が沢山ありました。
ただ、俳優は泣く振り、怒る振り、話しかける振りをしているようでした。ライブ・パフォーマンスはその場、その瞬間に生々しい出来事が起こるもので、次に何が起こるかわからないのが面白いんですよね。その状態を作るのは演じる側にとってはリスキーですが、個人的にはそれが会話劇の前提であって欲しいと常々思っています。
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しあわせ学級崩壊
ART THEATER 上野小劇場(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★
開場中から舞台下手奥のDJブースで演奏があり、出演者は舞台上で柔軟運動や発声をしながら待機していました。舞台面上部には割れたコンクリートがむき出しになっており、廃墟とおぼしき空間の中央には木製のイス5脚とテーブルが1つ。上下(かみしも)に数本立っている細い木の柱に、凧糸のような白い紐がゆわえつけられ、数本の白い線になって舞台を横切っています。舞台面の上下(かみしも)には舞台と客席を遮る木の柵もあり、出演者は舞台上に閉じ込められているようでもありました。
物語があって出演者が役柄を演じるのですが、DJが流す大音量の音楽に合わせてマイクを通してセリフを言うことが多く、次々に楽曲を披露していく音楽イベントのようにも思えました。
当日パンフレットによると脚本・演出・演奏を手掛ける僻みひなたさんは24歳になられたそうで、「24年間のことと、その1日1日のことを思い出しながら、劇を作った」とのこと。登場人物は皆、作者の分身なのかしらと想像しながら拝見しました。
開場時刻が10分ほど遅れ、初日はあいにくの雨だったこともあり、細い階段から客席への誘導は少し手間取っていらっしゃいました。全席自由ですので劇場へはお早目にどうぞ。ロビーで本作の戯曲本を購入しました(800円)。
SUPERHUMAN
ヌトミック
北千住BUoY(東京都)
2018/03/23 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★
開演前に脚本・演出の額田大志さんから、上演中は写真撮影可能でネット上への公開も可能とアナウンスがあり、2階のカフェで販売している飲み物を飲んでもOKと、何度も丁寧に話しかけてくださいました。砂埃が立つ可能性があるので希望者にはマスクも配布。行き届いた心遣いに触れ、開幕前から気持ちが明るくなりました。
終演後のトークではAokidさんと額田さんのお話を聞くことが出来ました。質問の時間では、観客の意見をそのまま素直に受け取って、正直な言葉で応えてくださったように思います。前説もそうでしたが、とても風通しがよくて、公平で、気持ちのいいコミュニケーションができました。
喫茶店やレストランなどが記載された劇場周辺の地図が配布されており、私の知人はそこに載っているお店に食事に行きました。劇場と地域をつないで、観劇だけで終わらせない演出をしてくださいました。
春母夏母秋母冬母
FUKAIPRODUCE羽衣
吉祥寺シアター(東京都)
2018/05/24 (木) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
「母」をテーマにした音楽劇。出演者は深井順子さんと森下亮さん2人だけ。ほぼ全編、私は涙を流しっぱなし!卑近な日常に既にある愛を、輝かしいく、みっともなく、可笑しく描いてくださいました。糸井さんの楽曲はぜひアイドルにも歌ってほしいと思ってきましたが(今も思っていますが)、今回はNHKの「みんなのうた」で流れて欲しいと思いました。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/05/24/9733/
人間万事金世中
劇団前進座
国立劇場 大劇場(東京都)
2018/05/12 (土) ~ 2018/05/22 (火)公演終了
1879年に初演された河竹黙阿弥の戯曲で、原作は英国作家リットン作『THE MONEY』。和洋折衷空間に三味線と長唄が聴こえるのが趣き深いです。歌舞伎は歌と音楽と舞なのだなぁと改めて感じました。上演時間は約3時間5分、途中休憩30分を含む。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/05/19/9666/
Ten Commandments
ミナモザ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/31 (土)公演終了
満足度★★★★
青く光る鏡面の床に白いイスとテーブル。上手奥には音響卓とオペレーターがいて、白い衣装の男女が登場する抽象空間です。作・演出の瀬戸山美咲さんご本人であろう女性劇作家(占部房子)とその夫(浅倉洋介)の家、または彼女の脳内あるいは宇宙空間であるようにも受け取れました。
原子力とそれを研究する人、作った人、使った人について調べ、思考の海に深く潜るうちに、瀬戸山さんは言葉を扱う劇作家であるご自身の責任を問うことになったのだと思います。その苦闘の過程がさらけ出されました。瀬戸山さんがたどり着いた絶望的な境地と、そこから這い上がる姿を観て涙が絞り出され、終演後はしばらく席を立てませんでした。瀬戸山さんの勇気に感銘を受けました。ありがとうございました。
私は過去にミナモザ『ホットパーティクル』(2011年9月)を拝見したことがあり、今回も冒頭あたりから“セルフ・ドキュメンタリー”であることがわかったので、その心構えで観ることができました。手紙を読み続ける時間が長く、朗読劇のように見えるのは改善の余地ありではないでしょうか。この上演を土台に新しい“物語”を立ち上げる機会を見計らってもらえればと期待します。
主人公を演じた占部房子さんは瀬戸山さんの苦悩を自身のこととして受けとめ、心を尽くして全身で演じてくださっていたように思います。浅倉洋介さんは包容力のある物静かな夫役で、柔和ながらずっしりとした存在感に説得力がありました。私が知らなかった浅倉さんの一面を発見できました。
青春超特急
20歳の国
サンモールスタジオ(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★
高校3年の卒業式当日から始まり、過去3年間の高校生活を振り返る群像劇でした。大道具は学校によくある机と椅子のみで、それらを移動させたり組み立てたりして場面転換します。俳優が高校生らしい服装をしていることもあり、説明がなくても最初から高校生活を覗き見する気分になれました。物の助けがなくても物語が立ち上がる、シンプルな演劇の魅力があります。
『青春超特急』という題名ほど猛スピードな印象はなく、ちょくちょく停車する準急ぐらいの感触でしょうか。会話の間(ま)を長く取りすぎだと感じることが多かったです。個人的には過ぎ去る日々への感傷よりも、前のめりの疾走を観たかったかもしれません。
音楽に疎い私も耳にしたことがある日本の歌謡曲が流れ、歌われました。歌そのものに聞きごたえがある上に、歌詞や音調がエピソードに合っていて、高揚感がありました。ミラーボールもいいですね。照明、音響、群舞による晴れやかで躍動感のある場面を作るのがお上手だと思います。
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
満足度★★★★
一人掛けの丸いベンチが数脚あるのみのシンプルな空間での会話劇です。登場するのは末期がんの母を心配する兄弟、子供を産むかどうか迷う夫婦、そして題名通り粛々と運針をしている謎の女性2人の合計6人。家族2組のコミカルなやりとりから、子供がないアラフォー世代の切実な悩みがあぶり出され、運針する2人ののどかな会話からは、命についての根源的な問いかけがなされます。現代日本人の等身大の会話に数々の社会問題を凝縮し、緻密に編み上げた戯曲でした。
ロビーの物販が充実していて、初日からDVDや戯曲に売り切れが出る盛況でした。個人的希望としては、当日パンフレットに配役表が欲しかったですね。4作品分の情報が掲載されているのでスペースの都合もあったのだろうと思います。※初日時点
ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)(埼玉県)
2018/05/10 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
「平均年齢78.4歳のさいたまゴールド・シアターのメンバーが、自身に起きたできごとを台本化し自ら演じる」という公演で、構成・演出は岩井秀人さん。
実体験のエピソードは美しくて、愛らしくて、切実で、残酷で…少し滑稽。素晴らしかったです。戦争経験者が物語の形式で体験を語って下さるのも貴重だと思います。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/05/11/9522/
Brand new OZAWA mermaid!
EPOCH MAN〈エポックマン〉
APOCシアター(東京都)
2018/05/05 (土) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
現代の東京が舞台のアダルトな「人魚姫」コメディーで、1人で何役も軽快に演じ分ける面白さに加え、ハイテンションのギャグや気の利いたブラックユーモアが満載です。小さな劇場に建て込まれた美術は照明と仕掛けも贅沢で、衣装もヘアメイクも小道具も工夫が凝らされていて見応えあり。俳優1人でこんなにまで出来ちゃうなんて…!カーテンコールは拍手が鳴り止まず計3回。私も拍手し続けました。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/05/15/9582/
たいこどんどん
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/05/05 (土) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
9年にわたる東北の珍道中を描く、江戸時代末期が舞台の3時間超えのお芝居ですが、テンポよく進み、パワフルかつコミカルな歌と踊りもあって飽きさせない演出でした。お笑いあり、お色気あり、批評精神ありの時代もので、方言を含む長い語りもしっかり聴かせるエンターテインメントでした。“新しいこまつ座”を観せていただいた気がします。上演時間は約3時間15分、途中休憩20分を含む。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/05/06/9444/
いたこといたろう
渡辺源四郎商店
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/01 (火) ~ 2018/05/06 (日)公演終了
約1時間25分。作・演出は畑澤聖悟さん。青森のイタコと、ホトケオロシを頼みにきたワケあり女性の二人芝居。ホラーやお笑いのネタを散りばめた濃厚な愛憎ドラマ。降霊術だけでなく、二人が語る言葉も不確かさを増していき…。軽やかかつ繊細で、振れ幅大きく変化する三上晴佳さんがまたもや素晴らしい。高校生はワンコイン500円。一般3000円。「愛とか死とか見つめて」と二本で一般5000円。
愛とか死とか見つめて
渡辺源四郎商店
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/03 (木) ~ 2018/05/06 (日)公演終了
約1時間15分。少子高齢化、過疎、市町村の統廃合、核廃棄物再処理場の誘致などを背景に、ごく身近な愛と死を見つめた「いたこ」コメディー。急展開の物語に引き込まれ、突然降りかかる不幸とやり切れない思いのひとつの着地点に納得。見せる場面転換がスマートで、各人物の個性、役割もはっきり。さすがの工藤千夏作・演出作。高校生はワンコイン500円!
さようなら
オパンポン創造社
王子小劇場(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
淡路島でほそぼそと生きる平凡な人々の小さなコミュニティーに、「変わりたい」と強く願った1人の女性が激震を起こします。
黒い幕と壁でほぼ真っ黒な額縁舞台でした。舞台奥に膝の高さぐらいの黒い通路が横切り、道具は椅子が数脚あるのみです。場面転換はシャープでリズミカル。ドアの開閉はマイムと音響で表し、飲み物やタバコもマイムです。シンプルな空間で演劇的効果を生かした、密度の濃い会話劇でした。80分という短時間に収まっているのもいいですね。
登場人物それぞれの人物造形がはっきりしていて、全員に魅力があります。怒鳴っても、威張っても、いじけても、どこかに愛らしさがあり憎めません。演技だけでなく設定やセリフで、人物像がふくよかに肉付けされていると思います。
大阪ならではの、方言を活かしたコミュニケーションがとても心地よかったです。特にスナックのママ(美香本響)と客との会話で、大阪らしさを感じました。ママの機転の利かせ方、セクハラやクレームの受け流し方、切り返し方が見事で、大阪の女性の優しさとたくましさを感じ取れました。積極的に繰り出されたギャグや笑いのネタが、観客に媚びていないことも好印象でした。
地底妖精
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早稲田小劇場どらま館(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
すごく刺激的で面白かったです。目に見えていないものは存在していないのと同じ。人間の目には見えない(はずの)妖精と、目がないもぐらが登場して、私たちがあえて見ないようにしていること、見えてない振り(演技)をしていることを、乱暴に炙り出していきます。
メリー・ポピンズ
ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場
東急シアターオーブ(東京都)
2018/03/18 (日) ~ 2018/05/07 (月)公演終了
絵本の中のような舞台装置と衣装が豪華!照明や映像とのコンビネーションも華やか!カラフルな空間での群舞が迫力!歌と踊り、そして大勢の人間が心を合わせるミュージカルの力が、ストレートに届きました。シンプルでわかりやすい、ハートウォーミングな物語ですが、「決して説明はしない」という信念を持つ子守りのポピンズさんと、彼女の魔法が引き起こす微笑ましい奇跡から、学ぶことも多かったです。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/03/27/8945/
Take Me Out 2018
シーエイティプロデュース
DDD AOYAMA CROSS THEATER(東京都)
2018/03/30 (金) ~ 2018/05/01 (火)公演終了
2016年の日本初演がとっても面白かった、2003年度トニー賞受賞作の再演。上演時間はカテコ込みで約2時間5分。スポーツ苦手な私が「野球スゲー!」って感化された(笑)。友情、恋、家族、差別、階級社会、忖度、怒りの連鎖、殺人、赦し…。高評価の初演をまっさらにして再創作した藤田俊太郎さんの新しい座組みに感謝。翻訳は小川絵梨子さん。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/04/05/9028/
砂塵のニケ
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2018/03/23 (金) ~ 2018/03/31 (土)公演終了
日本、フランス、ギリシャに想像を飛躍させることが出来る、熱い恋愛あり、家族ドラマあり、有名絵画、古代遺跡ネタありのエンターテインメントでした。
詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/03/28/8954/
5DAYS
ワタナベエンターテインメント
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2018/04/03 (火) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』を下地にしていますが、創作部分がとても多く、結末にも驚かされました。上演時間は約2時間、休憩なし。小劇場のミュージカルは贅沢。手が届く距離で俳優の演技が観られますし、走り抜ける風も届きました♪
少し詳しい目の感想:http://shinobutakano.com/2018/04/04/9016/