しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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ガプリヨツ×横山拓也(iaku)『人の気も知らないで』

ガプリヨツ×横山拓也(iaku)『人の気も知らないで』

劇団ガプリヨツ

 81BOOKS(東京都目黒区青葉台3-18-10カーサ青葉台203)(東京都)

2015/06/03 (水) ~ 2015/06/06 (土)公演終了

満足度★★★★

女性会社員3人のバトル
座ったまま語り続ける短い時間に戦争勃発、一時休戦、仲直り…はせずに戦火再燃…の3人芝居。こんな風に自然な会話劇として戯曲を味わえるお芝居が私好み。

ネタバレBOX

後から登場する先輩が、交通事故で右腕を切断した後輩と同じような「傷」を持っているんだろうと、最初の段階でわかってしまった。戯曲が、人間の対立が深まるためのネタで構成されているように感じた。
カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

俳優
キャサリン・ハンターさん。素晴らしい。全席完売のようですが、55分という短いお芝居なので、当日立ち見席にチャレンジしてもいいんじゃないかと思います。

国際演劇祭 イプセンの現在 tgSTAN『パブリック・エネミイ人民の敵』、アンドレイ・シェルバン『ヘッダ・ガブラー』

国際演劇祭 イプセンの現在 tgSTAN『パブリック・エネミイ人民の敵』、アンドレイ・シェルバン『ヘッダ・ガブラー』

特定非営利活動法人舞台21

シアタートラム(東京都)

2016/12/06 (火) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★

12/9にシンポジウム、レクチャーあり
男女4人と、ト書き&プロンプ1人の計5人で約1時間50分(休憩10分込み)という超特急のイプセン。集会のシーンしかゆっくり聞かせる気ないよねコレ!(笑)
観客に雑に話し掛け、演じる役を何度も変え(主役以外)、小道具はずさんなマイムのみ(笑)。

tgSTANはベルギーの俳優だけのカンパニーで、俳優がドラマトゥルグで演出家。興奮!
12/9昼にシンポジウム(https://m.facebook.com/norembtokyo/photos/a.196447033849367.1073741828.196028183891252/692409657586433/?type=3 )、
夜にレクチャー( http://d.hatena.ne.jp/sfjth-tokyo/touch/20161209/p1 )あり。

ネタバレBOX

自由奔放そうな俳優たちがト書きに服従/反抗する様は社会を映すよう。「たった一人で立つ人間が最も強い」というメッセージさえ茶化すラストが痛快。最後、新聞記者らは「義父との温泉株の操作をバラす」と医師を脅してたのね。やっとわかった。
ゲヘナにて

ゲヘナにて

サンプル

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/07/01 (金) ~ 2011/07/10 (日)公演終了

満足度★★★★

本当にゲヘナ(地獄)だった…
最後の五分は何もかも開ききって裏返しになるほど剥き出しのセカイ?サンプルと松井周さんに興味がある人、例えばオーディションとWSを受けるつもりの人は必見。

ネタバレBOX

ニジンスキーが…
男の60分 -東京場所-

男の60分 -東京場所-

ゲキバカ

【閉館】江古田ストアハウス(東京都)

2009/04/22 (水) ~ 2009/04/29 (水)公演終了

満足度★★★★

客席を巻き込んでいく、明るい見世物魂!
 「舞台はライブ。観客を楽しませてナンボ!」という姿勢が貫かれた“王道エンターテイメント”でした。もう1つの劇団キャッチコピー“分かりやすいのに奥深い”も、しっかり織り込まれていたと思います。

 『男の60分』は愛知公演のために作られたツアー向けの短編なので、舞台美術はダンボール箱のみというミニマムなもの。その分、役者さんが全身を使って魅せてくれました。私は上手通路際の席だったので、全力で走る役者さんが起こす風が体に伝わってきました。スリリングで、思い切りの良さも感じて爽快でした。

 出演者7人全員が劇団員。男優ばかりの劇団なんですね。登場するのは、自然がいっぱいの昔の田舎町を舞台に、川や空き地などで暴れまわる少年たち。ギャグは堂々とやりきってくれるし、ダンス(組体操)も肉体を鍛えていることがわかるキレの良さ。モノマネや客いじりなど、観客を意識した前向きなエンターティナー精神にも好感を持ちました。
 自らが見世物であることを自覚して、堂々と自分をさらすことができている役者さんを見られるのは、観客としてとても幸せなことです。 

 初日は終演後に、劇場4階の稽古場にて打ち上げの飲み会がありました。一般客も参加可能なものだったので少しお邪魔したところ、カッパ役の石黒圭一郎さんと作・演出の柿ノ木タケヲさんとお話ができました。ありがとうございました。

ネタバレBOX

 母親の通夜(葬式?)に始まり、少年の頃のやんちゃな思い出の数々を経て、最後は母への思いを伝えて終幕。「あぁ、男って永遠のマザコンだよね!(笑)」とハッピーに感じつつ、これもまた『男の60分』というタイトルにぴったりだと思いました。

 大男(もじゃお:伊藤今人)が街の人々を踏み潰すネタの連発は、ベタだろうがなんだろうが笑えました。笑いに落とすタイミング(間や呼吸など)に技術を感じます。劇団員がエチュード(即興劇)で作っていったのであろうことが伺えました。劇団コーヒー牛乳の役者さんは、外部に単独で出て行っても活躍されることと思います。

 思い出話の最後は、少年たちそれぞれの将来の職業がわかる衣裳(ドレス、作業着など)に着替えながら、踊り狂うシーンで昇華。直後の暗転で拍手が起こりました。多くの観客がそこで終幕すると思ったからでしょうね。なので、エピローグの夏の日のシーンが始まった時は少々違和感あり。ネタが面白かったので、私もあそこで終わっても満足だったんですよね~(笑)。でも、この作品の大事なテーマの1つが“母への想い”であるならば、全体のバランスを練った方がいいかもしれないと思いました。

 スー(鈴木ハルニ)が名前をはっきりと言わないのは、彼が将来イチローになる男だったから(笑)。オツムの弱そうなスーが、ごくたまに大人な発言をするのが可笑しいです。笑いを生むギャップの作り方に、余裕が感じられました。
 カッパ(石黒圭一郎)が川に溺れるシーンのダンスが良かったです。石黒さんは踊り暴れながら、劇場の壁を登ったりするのも凄い(笑)。モノマネのレベルアップにも期待します。
 在日韓国人コチュジャン役(のちにクッパ)の中山貴裕さんは、内から湧いてくる怒りが、まるで体から湯気がたつほどに、のぼり出ていました(もしかすると汗のせい?)。韓国人の熱さがよく出ていて素敵でした。
恋人としては無理

恋人としては無理

柿喰う客

ギャラリーSite(東京都)

2008/04/13 (日) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★

計算された“悪ノリ”にもっとスムーズに乗っかれたら
 イエスと12人の使徒のお話でした。フランスで新約聖書ネタを上演する勇気にまず乾杯(笑)。5人の役者さんは全員が黒装束です。「ヘッドフォンをしている」のはユダ、「マフラーをしている」のはピラトという風に簡単な目印で役の違いを示し、持ち物や被り物を変えてスピーディーに入れ替わりながら演じます。

 5人の男女が次々と演じる役を変えていくのはもちろん、役柄の口癖や発音を演じ分けていく面白さもありました。セリフにはだじゃれやギャグがこれでもか!と言わんばかりに盛り込まれており、独特の単語の並び方に脳みそがくすぐられるような感覚を覚えました。

 観客を圧倒する大量の早口なセリフや、いきなり緊張感の頂点から始まることについては、演出に工夫が必要な気がします。観客が自ら進んで入り込むように誘導してもらえたらなお良くなると思います。
 演技については、きびきびと動いて言葉の重みも表現してくれる達者な人と、そうではない人との差が目について残念。特に大声を張り上げっぱなしにするのは、個人的にとても苦手です。

 開演前はフランスでの劇団員の様子を撮った映像を流していました。長時間のフィルムをしっかり編集したサービス精神は素敵だと思いますが、あのはしゃぎっぷりには引いちゃう人もいたんじゃないかと、少々心配になりました(笑)。屋根にワンワンニャンニャン(だったかな)と書かれたお店は、私もパリで見つけて笑いました。

ネタバレBOX

 12使徒それぞれのキャラクター設定が面白かったです。例えば中心人物であるユダが女で、イエス君を恋愛対象として愛しているとか。切なさも伝わってきました。

 エルサレムの市民がイエスの来訪を心待ちにしており、使徒たちを歓待します。でもイエスが一向に現れないため、徐々に不安、怒り、恨みへと気持ちが移り変わっていきます。手をぐにゃぐにゃと動かす“エルサレム市民”が、同じ動き・話し方をしていても変化していることが上手く表現されていました。

 「バナナを持っている」のが特徴の小ヤコブが、バナナを1本ずつ分けて持つことで複数人に増えるのがめちゃくちゃ面白かったです。
 フランス公演向けに「ダ・ヴィンチ・コード」ネタが満載だったのも気が利いてました。
ヘンリー四世 第一部 ‐混沌‐・第二部 ‐戴冠‐

ヘンリー四世 第一部 ‐混沌‐・第二部 ‐戴冠‐

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2016/11/26 (土) ~ 2016/12/22 (木)公演終了

満足度★★★★

第一部から観るが吉。
衣装、照明のデザイン、色分けでスムーズに理解できた。貴族と平民、高貴と下賤、老いと若き、父と息子、新旧など対比山盛り。配役も対照的(特に鍛治直人さん)。大勢の「噂」はネット社会のよう。音楽は鳴る度にドギマギ(笑)。
2009年の『ヘンリー六世』三部作一挙上演、2012年の『リチャード三世』から継続出演の方が大勢(スタッフも継続)。ベテラン俳優の方々が今も現役であることに感謝。若い俳優が息長く活躍できる演劇界であって欲しい。観客には何ができるのかな…。
私的には立川三貴さんと小長谷勝彦さんが素晴らしかった。立川三貴さんはこまつ座『紙屋町さくらホテル』でも感動した。小長谷勝彦さんは元文化座の俳優で、今は静岡県舞台芸術センターSPAC公演でよく拝見。鍛錬し続けてくださる全俳優に再び感謝。

ネタバレBOX

ファルスタッフ(佐藤B作)がなぜあんなにモテるのかわからなかったな~。おじいちゃん役の戯れタイムが厚かった。
遊び半分

遊び半分

中野成樹+フランケンズ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2007/09/20 (木) ~ 2007/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★

おしゃれなfringe演劇鑑賞のお手本
会社帰りに大人のたしなみとして鑑賞したい演劇。 “フランケンズ”とよく呼ばれますが、“ナカフラ”が良いそうです。

ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」

ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」

わらび座

パルテノン多摩【旧情報】(東京都)

2008/03/28 (金) ~ 2008/03/29 (土)公演終了

満足度★★★★

力のある美しい歌声に涙
とにかく歌声に圧倒されました。澄んでいて美しい、そして声量も文句なし。オープニングの合唱でまずノックアウト。自分の出番だからじゃなく、作品のために、歌のために歌ってる役者さんによって作られているミュージカルだと思います。プレビュー2000円はオトク過ぎ!来月も行きます。

ネタバレBOX

速魚とブチが対照的ですごく良かったです。聖女と娼婦が神(火の鳥)になるシーンが凄い。
焼肉ドラゴン

焼肉ドラゴン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2008/04/17 (木) ~ 2008/04/27 (日)公演終了

満足度★★★★

CoRichに動画が上がってますね
涙なしには観られない、昭和40年代の在日コリアンの家族のお話。アボジとオモニが凄い!

演劇LOVE 〜愛の三本立て〜

演劇LOVE 〜愛の三本立て〜

東京デスロック

リトルモア地下(東京都)

2007/09/30 (日) ~ 2007/10/09 (火)公演終了

満足度★★★★

3本続けて拝見
「社会」「3人いる!」「LOVE」を連続上演。演劇って何なのか、何ができるのかを、サラリと軽く体験できたように思います。そういう意味で初心者向けと言えるかもしれません。
どれも面白かったですが、一番楽しめたのは「3人いる!」でした。

ロジェ・ベルナット『パブリック・ドメイン』

ロジェ・ベルナット『パブリック・ドメイン』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

池袋西口公園(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/28 (日)公演終了

満足度★★★★

広場でみんな一緒に質問にこたえる
異なる意見・考え・感覚を持つ人たちが目の前に居ること。それだけで楽しかった!

「ダム」

「ダム」

メメントC

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

骨太だが深刻すぎないし色気もある
大変面白かった。ダム建設を巡る数十年の攻防史が軸の社会派ドラマだが、深刻過ぎない。親子、男女の愛憎を絡め、終盤は怒濤の展開。だらしなく生き続ける人間、なし崩し的に積み重なる歴史、全てを受け入れ、時に猛威をふるう自然。諦念ではなく覚悟を受け取った。約2時間20分。

新・こころ

新・こころ

劇団フライングステージ

駅前劇場(東京都)

2008/03/19 (水) ~ 2008/03/26 (水)公演終了

満足度★★★★

「こころ」を読み直したくなります
フライングステージならではの解釈で「こころ」の隠された(?)世界を見せてくださいました。すごく面白かったです。上演時間は約2時間10分。ポストパフォーマンストークも濃密・充実。

ネタバレBOX

いかにも演劇エンゲキした演技には、ちょっと恥ずかしくなることもありましたけど、それが気にならなくなるぐらい構成と演出が面白かったです。
スネークさん

スネークさん

青年団

アトリエ春風舎(東京都)

2007/06/20 (水) ~ 2007/06/25 (月)公演終了

満足度★★★★

声の力、身体の力
中盤までよくわからなかったのですが、終盤からは涙が溢れっぱなし。

ムネモパーク

ムネモパーク

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2008/03/14 (金) ~ 2008/03/17 (月)公演終了

満足度★★★★

おじいちゃま・おばあちゃまが超カワイイ!
脱力系ドキュメンタリー。87分の1スイス模型も圧巻。3/17(月)まで。英語&ドイツ語上演で日本語字幕です。

岡崎藝術座『レッドと黒の膨張する半球体』

岡崎藝術座『レッドと黒の膨張する半球体』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2011/10/28 (金) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★

全部自分に還ってくるんだなと
どうやって観たらいいのかとジリジリ緊張感を持って、考え続けてすごく面白かった。最初はドイツ現代劇みたいで、でも変化して。自分で盛った毒も自ら招いた汚染も全て還ってくる。役者さん皆素晴らしい。体育館を生かしたダークマターな装置も良かった。

ネタバレBOX

過激な性描写は苦手な方なんですが、「肉」がテーマでもあったので必要性があると思えました。私はすごく面白かったんですが、初めて舞台を観る人にはちょっと刺激が強すぎる気がするので、すすんでお薦めはできないかな、と。なので初心者バツマークです。
寝台特急”君のいるところ”号

寝台特急”君のいるところ”号

中野成樹+フランケンズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★

生きてる自分の時間は特別で、でも平凡で。
いつもながらきちんと作りこまれている、おしゃれで優しい時間でした。幼稚園で上演される園児によるペープサートを思い出しました。

ネタバレBOX

列車、コンパートメントに小分けされた1つ1つが、世界の縮図。そして列車から飛び出して、宇宙まで飛んで行って・・・。
ショウジさんの息子

ショウジさんの息子

渡辺源四郎商店

アトリエ春風舎(東京都)

2008/05/22 (木) ~ 2008/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★

ここでしか作れない、「生」と向き合った会話劇
 舞台は80歳になる老人・正治(ショウジ)とその義理の息子・真佐彦が2人で暮らす家の居間。壁や家具などのほぼ全てが、コンパネや角材などのおそらく廃材であろう木材でできています。無造作に打ちつけられたような、不器用に組み重ねられたような家具の佇まいがいとおしい。

 ごく普通の人々の日常を描く現代口語劇で、役者さんは実年齢に近い役柄を自然体で演じます。いわゆる“静かな演劇”というジャンルに入る作品です。現代日本で「生きる」ということについて、真っ直ぐ目をそらさずに向き合った戯曲でした。登場人物1人1人を愛情いっぱいに見つめる視線も感じました。

 舞台の上にいる人たちご自身の優しさ、大らかさが体に染み渡るように伝わってきました。青森の方言が話されているからだけでなく、この空気はこの人たちにしか作り得ないものだと思いました。

 作・演出の畑澤聖悟さんが演じるローカル芸人と彼の弟子のカップルは、ちょっと元気が多い目に演技をして、空気をパっと変えるスパイスのような役割を果たしていた気がします。初日だったせいもあるかもしれませんが、少々ぎこちない印象でした。

ネタバレBOX

 はじめのシーンで、ノートを持った真佐彦が電話をかけたのは介護サービス会社(に順ずるもの)だとわかりました。私も介護していた経験があるので、ノートと電話のセットを見ると胸にズキンと来るんですよね。そして真佐彦の病気がどんなものかも(若年性アルツハイマー?)その時点で察しがつきました。だから、正治と酒屋の純平が真佐彦にお見合い相手・由香里を紹介するシーンで、早々と涙がこぼれ出てしまって大変でした(苦笑)。

 正治は真佐彦にこれからずっと一緒に暮らしていくお嫁さんを、真佐彦は自分が居なくても正治が生きていけるように老人ホームを、それぞれにプレゼントすることになります。親しい者同士が小さな食卓を囲む幸せな時間のはずなのに、善意や希望が徹底的にすれ違い続けます。素朴で素直な笑いが散りばめられるので、より一層悲しみが際立ちます。

 一度は意地になって老人ホームに向かった正治ですが、すぐに戻ってきて真佐彦に「一緒に暮らしたい」と頭を下げます。誰かを求める気持ちがあふれて出て、なりふりかまわずに起こしてしまった行動は、不恰好だからなおさら美しいんですよね。ひたむきさに胸打たれます。

 真佐彦が病気のことを告白すると、正治は思わず「(病気は)治るよ!」と叫びますが、真佐彦も観客も、もしかすると正治もそれが叶わないことを知っています。そして、何も言わずに寿司をほうばる男2人。食べるという行為は生きることそのものです。何の解決もなく、明るい未来も見えない結末ですが、そこには今、生きていることを肯定し、愛する覚悟がありました。人生はそんな「今」の積み重ねなのだと思います。

 真佐彦が元ローカル芸人という設定は初演とは違うそうです。由香里が真佐彦のファンで、彼が出ていたラジオ番組を聴いていたというエピソードも新たに書かれたのですね。実際に80歳でいらっしゃる正治役・宮越昭司さんの圧倒的な存在感は言うまでもありませんが、私は由香里役の工藤由佳子さんの正常なのか異常なのかが一見はわからない、不安定で危なげな声とまなざしにも惹かれました。
関数ドミノ

関数ドミノ

イキウメ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/05/08 (金) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

満足度★★★★

面白くて、手放しに楽しんでしまった
これからどうなるのかな、と、素直に引き込まれて超エンジョイしちゃいました。小さい劇場なので、気になる方は早めに予約した方がいいかも。

ネタバレBOX

人物を舞台に残して、次につなげる演出がクール!

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