ヨウの観てきた!クチコミ一覧

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鏡花讀「草迷宮」

鏡花讀「草迷宮」

劇舎カナリア・劇団だるま座

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/06/11 (金) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本のリーディング
小粋な演出でリーディングという手段の面白さを存分に体感。舞台に入り込むというよりは付かず離れずの視点で観劇。
霊魂天地行き交う近代以前の世界観で、祭礼儀式のような拍に物語の緩急を織り込み、日本の美学よろしく制限によって想像力を刺激する。
唄ったり進行したり群像になったりと、コロス的な少女達が結構な働きをしており、朗読ながら立体的な空間を味わえた。
「文字」や「紙」など、リーディングだからこそ使用できる素材を日本的な方法で上手く取込んで、リズムに変化を付けていたのも面白い。
元々どのような上演方法が想定されていた台本だったのかは知らないが、
ト書きなど聞いていると全体的に発想が幻想的で、これを今立ち芝居にするとややもすると剽軽になったり野暮ったくなるんじゃないだろうかと思ったりしたので、あえてこのスタイルで上演した意義が感じられた。
舞台天井奥に吊られた純白の着物にラスト、舞台下側からの光線が当たると、裏地に描かれていた菖蒲の花が透かし見えてくる(「アヤメ」は主人公の女の名)という演出がニクい。

『MIMICRY』 ミミクリ(終演いたしました。御礼申し上げます!!)

『MIMICRY』 ミミクリ(終演いたしました。御礼申し上げます!!)

anarchy film

新宿アシベ会館B1(東京都)

2010/06/01 (火) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★

やりたい事は嫌いじゃない
大きく二つのキツさを感じた。
会場の暑さから起こる慢性的な不快感を吹き飛ばすような、「この会場」である意義が作品に見いだせなかったことが一つ。この内容なら空調のちゃんとしたところでやってもらいたかった。
演劇の呼吸が上手くとれていなかったことがもう一つ。特に無闇に数多く長い暗転には、まだまだ二次元と三次元の質量差を把握しきれていない(か、その質量差に手をこまねいている)演出という印象を受けた。
これは多分演出をスマートにするだけで2時間切って観やすくできる芝居だなと。

庭劇団ペニノ『アンダーグラウンド』

庭劇団ペニノ『アンダーグラウンド』

庭劇団ペニノ

シアタートラム(東京都)

2010/06/06 (日) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★

アングラ再考
これはむしろジャズで観たかった。
タイトルや出演者、そして見世物という立場などからこれは「アングラ」への批評的な舞台だなあというのは容易に窺えたので、その考察を読み解いていくという楽しさで終始退屈しなかった。
とりあえず私見では、論点は合理性の究極システムであるはずの西洋医学が、実はアングラが提示してきた前近代的な奇怪な「身体」を最も本質的な次元でとりあつかっているじゃないか、という所にあると読み取ったのだがどうなんだろ。

医療器具の設置が一つグラグラしていてヒヤヒヤさせられたのはちょっと残念。

ネタバレBOX

あれだけ臓器をゴリゴリ取られているのに心電図が動き続けているだとか、ものすごい形相で(死なせないように)腹に布詰めまくるだとか、冷静に考えたら根本的に馬鹿馬鹿しいことをやっているのに、西洋医学(的な手順)で見せられると、なんだかまだ生きてそう、あり得そうとか一瞬思わせてしまう説得力があるんだなあと。
胃のオカリナが不協和音を奏でるシーンが好き。やっぱり人体で音楽を奏でても和音にはならないでしょう。
わたしたちの白梅事変

わたしたちの白梅事変

黒ヰ乙姫団

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2010/06/04 (金) ~ 2010/06/06 (日)公演終了

満足度★★★

実験的?
同じような演劇空間を目指している舞台でもっと意識的に観せている例を他で体感しているので、特にスタイルが実験的だとは思わず。内容もラストにはにやりとさせるブラックさがあったものの、それまでがどうも記憶に残っていない。いつもの公演と比較して実験的だったということであろうか。
個人的に社会情勢並べ立ててぶった切る的な表現に胸焼けがするタチだというのもあるだろうが。
挿入の物語は一つの出し物として完成度が高かったけれども、「挿入」の域を越えていなかったのは、やはりオムニバスをメインでやっているという劇団だからなのだろうか。

私と踊って

私と踊って

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団

新宿文化センター(東京都)

2010/06/08 (火) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

タンツテアター
何度も繰り返される「私と踊って」というほとんど金切り声のような叫び。
すさまじい感情とダンスの身体と、白と黒と光と影のビジュアルイメージ。「男達」と「女達」の気持ち悪さと逞しさ。そして思わず吹いてしまような面白さ。
言語の段階での誤読可能性が高いので自分が果たしてどれだけ作品を理解してるのかはわからないけれど、とにかくこんなダンスなのか演劇なのか音楽なのかわからないようなものを、ダンス界が70年代にやってのけてしまっていたということが衝撃。やー、ダンスもっと観よう。

『SHIBAHAMA』  遂に本日千秋楽!!!当日券出ます!!ぜひぜひおこしください。

『SHIBAHAMA』  遂に本日千秋楽!!!当日券出ます!!ぜひぜひおこしください。

快快

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2010/06/03 (木) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

ポジティブさに恐怖
どうもこれはChim↑Pomに遭遇した時と似た感覚。
今はまだただ、UMAに遭遇した直後のような放心状態。
芸術劇場ってああいう空間になるのか。
おすすめはしないが観ておくべき舞台な気はする。

恋女房達

恋女房達

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2010/06/03 (木) ~ 2010/06/08 (火)公演終了

満足度★★★★

女房よりどりみどり
「女房」をテーマに、コントのような状況から心揺らす愛情まで幅広く扱って口語であえた、栄養バランスに優れた静かな良作オムニバス。
さすが女性作家というべきか、井戸端会議的なお喋りなど女性社会の描写が客観的ながらきめ細かくて面白い。
どうも「女房」を謳った作品ってその男性の懐古主義的な願望の反映に陥っているものが少なくなくヤな感じを味わうのだが、このオムニバスの女性達にはあまりヤな感じがしない。確かに懐古的ではあるのだが。

個人的には、噂の「恋女房」含めた前半の短編では着地点の感触がいまいち掴めずふわふわが続いたのだが、結末をガッチリ固めていた4編目以降の後半戦はグイグイと引き込まれた。変種の3編目も後で納得。
今回はいつもの公演と一味違うということなので、本来の公演も観てみたい。

ネタバレBOX

高野文子の代表作『田辺のつる』を思わせる6編目で、ラストに三男が「おかあさん」と呼ぶ所で笑い声が起こったのは本当に残念だった。
自分は『田辺のつる』を読んでいたから状況を把握するのは特別早かったのだろうが、舞台を追うだけでも状況を推測させるだけに十分な情報は織り込まれていたと思うので、あのシーンを安易に笑いにつなげてしまう想像力には首を捻る。
露出狂

露出狂

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

スポ百合
好き好き大好き楽しいな。
演出に舌を巻くのはいつものことだが、今回は女優達が一心同体となってトルネードのような運動を産んでいた印象。中屋敷さんが「サル山」と表現したセットに相応しい、ジョシコーセー幻想を叩きかち割る野生のメス達ここにありけり。
白百合なんちゃらとか聖なんちゃらとかでなく、高天原って校名がなんとなく、日本全土を産んどきながら最終的に黄泉の国の鬼神になって夫殺そうとしちゃうイザナミとか、天岩戸にひきこもって皆を困らせちゃうアマテラスとか存外パワフルな日本の女神を連想させていいなと思う。
女の顕在的な恐ろしさをあますところなく肥大化すれば、むしろドロドロ泥試合になりそうなものなのに、実際残るのはちょっとしたすがすがしさというのがすごい。
もう一回観たかったなー。

ネタバレBOX

個人的に、なあなあ→革命→濃密→能率→なあなあの高校集団活動の弁証法はすっごく身に覚えのある光景だったので、昔の作文を発見しちゃったような気恥ずかしさ。けれどここまで極端に誇張されると笑える。
寝台特急”君のいるところ”号

寝台特急”君のいるところ”号

中野成樹+フランケンズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★

月子さん
誤意訳・ワイルダー初体験。
誤意訳というのは日本語を話す現代の身体に合わせて適宜調整された翻訳(翻案?)ということで大筋間違っていないだろうか。名前は西洋圏のままだったけど、身体感覚は日本のものだったので、新劇調の翻訳物に感じるような違和感がなかったのはとても新鮮だった。おかげで変な所に惑わされず本質に近い(と思われる)ところで内容を追うことができたと思う。
どこまでが原作通りでどこまでが演出なのかはわからないのだが、物理的な制限から自由な視点が内、外、さらに外へと向かって同心円状に拡大する軌道を描く涼やかな時間が美しい。ワイルダー好きかも。 

ネタバレBOX

劇中劇の部分とそうでない部分の差が演技のレベルで上手く区別化されておらず、観ていてすんなり理解につながらない場面があったのが残念。
シアター・オブ・インプロ

シアター・オブ・インプロ

インプロ・ワークス

Xanadu(東京都)

2010/05/27 (木) ~ 2010/05/27 (木)公演終了

満足度★★★★

訓練された即興演劇
即興演劇も役者の力がちゃんとあれば面白いライブになるんだなと関心。
観客と対峙する緊張感を常に保っているから全然飽きさせないし、ふわっとした状況になったらすぐさま誰かのフォローが入る。
メインの、トレインなんとかという場面連結型即興なんかは特によかった。
いくつかの場面が直列で並んでいく前半と、前半に出てきた人物や状況があちこちに混入し物語に回収されていく後半。
荒技のような総括でパズルのピースが巧いこと嵌ったラストシーンに落ち着いてちょっと感動。結局この日は生命の進化と家族の話になったのかな?
歌などちょっとした小ネタもありつつ、ほどよく観客参加もありつつのポジティブな楽しい時間だった。
今回のように軽く飲み食いしながら好きなように観るのがベストなスタイルの舞台かも。

バイ・バイ・ブラックバード

バイ・バイ・ブラックバード

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2010/05/13 (木) ~ 2010/06/06 (日)公演終了

満足度★★★★

潔し
小・中学生の頃唯一ちょくちょく連れていってもらっていて、アンビバレントな想いもそれなりにあるキャラメルボックス。
今回はAIRの音楽フィーチャーというのでどんなものかと久しぶりに観劇。
役者や客席には時間の流れをひしひしと感じたが、観せているものは10年前とちっとも変わらない。逆に新鮮な感覚はないので自分はもはや懐古的にしか観ることができないが、ここまで変わらないというのは一つのパワーだなあと思う。

ユーフラテス/Euphrates<舞台写真を少しずつ公開し始めました>【公演終了いたしました。ご来場頂きました皆様、どうもありがとうございました!!】

ユーフラテス/Euphrates<舞台写真を少しずつ公開し始めました>【公演終了いたしました。ご来場頂きました皆様、どうもありがとうございました!!】

一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド

atelier SENTIO(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

奇々怪々な情念
奇怪という単語が脳裏をよぎる、およそ予想だにしない視覚空間。
原作と原作者が意図した公演形態を確認していないので確かなことは言えないが、元々読み込み可能性が広い脚本の余白を、異なる可能性の方角に向かって読み込んでいった演出をしているのではないかと思う。それ以上に、余白以外の部分も読み替えているのでは。
しかし涎を垂れ流し奇妙に絡み合い、時に全く抑揚がなく、時に怒号のごとき台詞回しで語られる「ソレ」は、プレッシャーが擬態化したかのように主人公を言外で締め付け、「結果」に至るまでの道程を導きだす。
圧倒されるにはあと一歩何か欲しい印象だったが、記憶には残りそう。
役者も達者という以上の何かを持っている人が多くてよかった。

笑う魔女の罠~Traps of the Laughin' Witch~

笑う魔女の罠~Traps of the Laughin' Witch~

劇団三年物語

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2010/05/16 (日) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★

延々と罠に引っ掛かる
それなりに楽しかったが、展開も笑いも自分にはノり切れず時間が長く感じた。
和田成正さんの眼と動きの気持ち悪さは、出てくるだけで笑ってしまうほど抜群だった。

背馳【公演終了しました!ご来場誠にありがとうございました!】

背馳【公演終了しました!ご来場誠にありがとうございました!】

ヲカシマシン

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

フラクタルスピード狂
三次元の布切れを、「かもしれなかった」四次元の糸でパッチワークした、100年弱の時間と神の視点。
言葉の濃度と、演出や構成や場所との関わり合い、それがどう舞台として立ち上がっているのか説明しようとしてもできない、挑戦を見届けたい人必見な舞台。
わざわざパンフの表紙にまで載せている「混乱しよう」の言葉の通りに、観客は言葉と時間空間の混乱に興じるのが吉。しかしそこで付いていくことと考えることをやめてしまってもおもしろくない。おもしろい舞台。

残念だったのは空間環境。ルデコの壁は音を反響させるので、せっかくのスピード(主に言葉)が四方八方に拡散してしまって、展開とは関係ない所に集中力を割かざるをえなかったのは観客としては大変だった。
「舞台上」の概念に挑む演出は全くルデコ向きだったので一概に会場設定を否定はできないのだが。

演技で特に眼に付いたのは作・演の橋口周公。「舞台」への入退場を含めた奇妙な佇まいが興味深かった。

スイングバイ

スイングバイ

ままごと

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

ビルの記憶
悔しいことに「わが星」は観に行けなかったので、これがままごと長編初観劇。
好きだ嫌いだという以上に、ままごとの言葉の温度と見据える視野は自分の感覚のあどけない部分ににしっくり馴染んで心地がよい。そして観終わって充足感がこぽこぽ沸き起こる幸せな空間の作り。
これがこれだけ面白くて、じゃあ皆の評価が高い「わが星」は一体どんだけなんだと今からワクワク期待が高まって仕方が無い。
「わが星」待ち遠し。戯曲は買いたいけど公演まではぜったい読まない!

ネタバレBOX

人類が経てきた数千年ぽっちの年月を具象化したビルという建造物。
観客は、ビルが経験してきた(経験する)記憶のあちらこちらを観ているのだなあと思った。
「物語」を真正面から肯定できるほど素直な世の中に育ってきていないと自負している立場として、明確な「物語」でない、このスタイルだからこそすんなりと受け取れる要素があるのではないかと考えることが多い。
例えばそれは、この作品が「働く」ことに関して肯定してゆくもの。
掃除のおばちゃん、熱い新人。過去、今、未来の中でバトンを受け渡す者として映し出される彼らは、「今」の中での意味に追い回され息切れする肩を「いいんだよ」とポンと叩く。
この視野は、誤解を恐れずに言えば宗教のふところに似ているのだと思う。

自分も近頃「働く」ことに関してグルグル考え出す時期が始まり、度々この「いいんだよ」というまなざしを思い出しては深呼吸する。
この舞台を必要とする人は、確実にどこかにいるだろう。だからもっと色んな人に観てもらいたい、と強く思った。
とにかく、観ることができてよかった。
『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2010/05/13 (木) ~ 2010/05/26 (水)公演終了

満足度★★★

辛かった
現代生活のあらゆる面を「自殺」になぞらえた、風刺を含んだ議論。
改札鋏の音や美術や照明・歌などの雑な手作り感、時々上から聞こえる水音など観劇環境で不快だった点が多く、作品が始まる前から嫌な部分の方が目に入る見方が出来上がってしまったのが辛かった。
それが災いしてか、笑い声が目立つ客席だったが、笑いとしても作品としても受け取るものがなにもなく、舞台としての面白みを感じ取れなかった。

マーブル、お風呂

マーブル、お風呂

とりととら

C.A.Factory(東京都)

2010/05/14 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

女と男と男、と排水溝
正直あまり期待せずに行ったのだが、いい意味で裏切られた。

時間空間の断片が「生活」を通してゆらゆら現れては消え、こがとばと空間と役者と演出が絡み合い切ないが美しいハーモニーを奏でる。
抽象的なようでいて、しっかりと3人の人間をめぐる一つの物語と、人間の単純でない性を描く。
静かなロロだなあとなんとなく思った。
都会のギャラリーよりもざっくりとした空間のからんとした広さと奥行き、声の反響、電車の音、装置、大黒柱、光、出入り口、換気扇、奥行き、そこにある環境全ての表情にハッとさせられ、この空間を動かしているのがたった3人しかいないということに驚き、しかし3人以上の何者もいらないのだと気付かされ。
かそけき抱擁に、息をするのも忘れた。

キラキラちゃんの所作が何だかいちいちグッときたので、暫く脳内でリフレインしそう。方言が入る部分も好きだなあ。

「ユー・アー・マイン」

「ユー・アー・マイン」

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

駅前劇場(東京都)

2010/05/12 (水) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

浮気はコメディの元
おもしろすぎる。
総合的な完成度の高いシチュエーションコメディだったのだが、笑いツボがモロ自分好みで、久しぶりに展開を追う以外のことを何も考えることなくあひゃあひゃバカ笑いさせてもらった。

個人的に、役者の演技が一人でも自分の基準水準の下にいるとそっちが気になって舞台自体に集中できないことがままあり、コメディだとさらに役者ごとの目指す笑いの性質の違いなども気になったりするのだけども、皆コメディ役者として魅力的な演技をしている役者ばかり、笑いの方向性も調和が取れていたので気持ちがいい。
そこに、次から次へと状況が変わっていく、観客を待たないスピードのコメディの展開が加わって超楽しかった。
逆に言えば大きな見所と笑い所はその怒濤の状況変化に由来するものだったので、観る側の状況を読む力が試されるという意味では非常に頭を使うし、頭を使っていてもなお混乱する場面がある作品だったといえるかも。
でもだからといって語り口調や話が難解という訳ではないので、中学生ぐらいでも全然楽しめると思う。
頭が混乱していく中で、起こっていることへの判断力が正常に働かなくなっていくのだってなんだか楽しい。

キャラや独特の動きとかではなく、奇妙に緻密な脚本と役者の演技力で笑わせるようなコメディが好きな人なら、明日の活力を貰う娯楽として観るには間違いなくおすすめ。
頭が疲れたという人もいるようだが、自分は観賞後いっそ爽快な気分だった。あえていえば、笑い過ぎて疲れた。

『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!!

『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!!

津田記念日

王子小劇場(東京都)

2010/05/12 (水) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★

世界の終わりと夜明け前
内容は全く異なるが、村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の「世界の終わり」部分の読後感や、市川春子『虫と歌』あたりの感性を想い起こさせる雰囲気があった。
だが全体的に舞台としての仕上がりはもったいないなという印象。脚本の世界観がわりと好みだったので余計。

ネタバレBOX

非日常的な世界観を説明なく観せるのは好きな手段なのだが、後半指示代名詞での抽象的な会話が展開する所あたりから、観てる自分と観ているものの間に感覚のズレができて、クライマックスにはどうも白けてしまった。
そういった演技に関して、あるいは場転や間など演出面が洗練されていなかったことなど諸処原因はあるだろう、体感時間が上演時間より長く感じた。

「エレベーター音楽」の想像力は美しく魅力的だった。あの音響も好き。
日本の音楽ってあまりこの感性を持っていないような(持っていても純粋な形で出来ていない)気がするのだけど、音楽って本当はこういうことだろうと思う。
日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『老花夜想』 

日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『老花夜想』 

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/09 (日)公演終了

満足度★★★★

リーディング演出
太田省吾戯曲が性に合わず途中何度か寝そうになったがなんとか堪える。
本を開く、背もたれから背を離す、身体の向きを変える、といった朗読の邪魔をしない最小限の動きだけで演劇的な空間の移動が見えて見事。今回の企画が自分にとっての初リーディング体験だったので、なーるほどなこれがリーディングで演出するということかと興味深く観させてもらった。
最後の今回の演出3名が揃ったアフタートークも、小劇場演劇の今後に対しての3様の意識を聞けて大変有意義だった。
ところでリーディングと朗読の違いってなんなのだろうか。

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