満足度★★★
ユウ
何しに日本へ
ネタバレBOX
癌に罹った妊婦が成長後の我が子のためを思い自費出版で言葉を残しました。その編集に携わったために母娘の人生に深く関わってしまったライターが、本に縛られ苦しむ思春期の娘のために新たに本を書くことで、娘とライターがそれぞれ立ち直っていく様を描いた話。
本をめくる青年が良く分かりませんでした。ライターの将来の息子なのかなどと考えながら観ていましたが、ホームページによるとライターが書いた『キミが読む物語』の読者ユウということでした。何者かと色々考えただけ時間の無駄でした。読者の代表など要りません。観客席にいるじゃありませんか。
医者のお守りの件はがっかりでした。できることは何でもやるとのことでしたが、無害ならまっいいかという考え方が、金の棒で身体をこするような人を生じさせたり、パワーストーンからの水子供養詐欺へつながるような結果を生むのだと思います。無害ならまっいいかではなく、非科学的なことは排除する姿勢が重要だと考えます。
満足度★★★★★
西遊記って
こんなにいい話だったっけかと再認識しました。
ネタバレBOX
恐らく原作に忠実なミュージカル版西遊記。
悟空を信じられなくなった三蔵法師や、息子を守ろうとする牛魔王夫婦の様子から、家族の思いというものを強く感じました。
とても感銘を受けました。
満足度★★★
初々しい
これからだと思います。
ネタバレBOX
六本木高校演劇部の風紀が乱れた合宿風景に、取って付けたようにそのような実態を盗聴していた女がいたことをオチにした話。
あれっなんだっけという失語症のような感じに、つい初日かと思ってしまいましたが千秋楽でした。
左に女子部屋、右に男子部屋があって、回り舞台ならぬ、観客が首を回すユニークな舞台装置でした。見切りはありませんでしたが、やっぱりコクーンシートのように首が痛くなりました。
満足度★★★★
優しい
不動産屋
ネタバレBOX
いきなりのハリセン登場で、コントテイストだと認識しました。
幽霊物は嫌いですが、恋人も幽霊だったという意外性と、未練が解消して成仏するのかと思ったら、新たな欲が生じたことでこの世に残るという人間臭いところが新鮮で、まっいいかと思いました。
それにしても、幽霊に優しい不動産屋の存在がそもそもの始まりでした。
満足度★★★★
覇気のない人だから
仕方ないのですが
ネタバレBOX
妻子に逃げられ生きているか死んでいるか分からない覇気のない美術教師が、女子高生たちにゾンビの話題でからかわれる不条理劇。
エネルギーの有無で生死を判断しましょう。そもそも、ゾンビという理屈に合わないものを使っての不条理劇は如何なものかと思います。理屈に合ったものを使って不条理な世界を描いてこそ不条理劇のような気がします。
伝言ゲームで真意が食い違っていくように感じられたところで、それぞれの女子高生がクラスメートでもなんでもなかったというのがミソだったのかもしれませんが、そこのところはあまり面白くはありませんでした。それでも、全体として不条理劇らしく楽しめました。
満足度★★★★
しっとり
しみじみ系
ネタバレBOX
短編漫画5編をそれぞれ戯曲化したもの。全体としてギャグ漫画ではなくドカーンと盛り上がることはありませんでしたが、しっとりしみじみ系で心に残るいい話した。
アフタートークで原作に忠実だったことが分かりましたが、原作を知らない者にとって部活を引退する三年生が電車の窓から感慨深い思いで学校を見て首が動いたなんてことはさすがに分かりませんでした。
SMの女王様としもべの関係をペットとご主人様の関係に置き換えた話は、ありがちなご主人様とペットの関係じゃなく、ペットとご主人様の関係にしたところが絶妙で面白かったです。
満足度★★★★
【teamJ】観劇
30歳問題ですか。
ネタバレBOX
1990年頃、ロックミュージカル作家になる夢を持ち、自信はありながらも不安に苦しむ30歳目前のニューヨークで生きる男を描いたミュージカル。ジョナサン・ラーソンの自伝的作品。
演劇界を目指す人たちにとっての30歳問題は万国共通のようです。
ただ、役者をあきらめた友人がビジネス界で大成功を収めているというのは、恐らく非正規雇用でしか採用されないであろう日本の現状を考えると出来過ぎの感がありました。夢を捨てることは辛いですが、次善の策があるとは羨ましい限りです。
また、その友人がゲイだったのいうのは今も昔も洋物にありがちで、さらにエイズを発症して余命いくばくかというところは当時ありがちな設定だったのではないかと苦笑しました。中途半端に古いです。
そして、主人公は自身が開いた試演会で才能が認められましたが、結局は成功者の話かと少々盛り下がりました。
役者さんたちは歌唱力はあると思いました。
満足度★★★
白々
千秋楽の後も客入れするんかいって
ネタバレBOX
浅間山荘事件をモチーフに、浅間山荘に飛び込んで人質を助けた男は、破壊されつつある建物のすき間から届く月光を見て、幼い頃に遊んだ秘密基地から見た風景を思い出すという情緒的な話をややこしくしたようなお芝居を、練習したり、本番前にも手直ししたりして、さあ客入れしようとするところまでを描いた話。
浅間山荘事件はテレビの生中継で見ていました。弁当が凍るほどの寒さ、カップヌードル普及の要因になったことは有名な話です。
開場前、開演前の様子を描く手法は、アドリブ風にやればやるほど白々しく感じます。
女優さんの声量は素晴らしかったです。
満足度★★★
殊の外
疲れました。
ネタバレBOX
中央の白い絨毯のところにはスピーカーが8台あり、男女二人の声が立体的に流れ、周囲のモニターにぼやけた男女や景色が映し出されたりする手法で、岸田國士の『紙風船』と動員挿話の一部が流れ、最後は国家総動員体制に関する岸田の評論が朗読されました。観客はオールスタンディング。うろうろしたり、じっと立っていたり、隅に座ったりでした。
動員挿話はきちっとやってほしかったと思いました。
満足度★★★★
ミルセイ君
笑っちゃいました。
ネタバレBOX
傍から見ると笑っちゃう貧困スパイラルに陥った姉弟の話。
ミルクセーキ、まずそうでした。看護師のくしゃっとした笑顔が素敵でした。
満足度★★★★
熱いけど古い
当時の時代を感じました。
ネタバレBOX
昭和30年、演劇の理想に燃えて地方に出た学生たちの苛酷な経験を熱く描いた話。
労働者が立ち上がる様を描くような演劇、古臭くて観たいとは思いませんが、当時の学生は本当に熱かったんですね。そして、肉食系。役者さんも熱演でした。特にやくざの目が良かったです。ただ、どうしてこの演目を取り上げようと思ったのかずっともやのやしていました。
そうでした、荷役とか興業とか、かつてはやくざがつきものでした。やくざとの関係排除が進み忘れつつありましたが、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスが叫ばれる中、吉本興業などが上場廃止したことを考えると今もって根深いものがあるのかもしれないと邪推してしまいます。
荷役作業におけるやくざの不当な天引きに反対する芝居ですが、学生たちが函館で経験したことを取り入れるというのは頭でっかちにならずに済み、とても良かったと思います。
ところで、他人任せのことを他力本願と言っていましたが、五木寛之も若い頃はそのような表現を使っていたんだと驚きました。今なら他人任せ(ひとまかせ、たにんまかせ)と言うでしょうね。
20前後の青年が、青春はすぐに終わるようなことを言い、日常生活を繰り返した後の40年後、50年後はどのような老人になっているだろうかの台詞には、60は老人ですかと少し寂しくなりました。
満足度★★★★
少し切ない
体力系
ネタバレBOX
宇宙兄弟、観たことはないのですが、技術者と飛行士になって夢を叶えようと子供のころ考えていた兄弟の、青年になっても引きこもっている弟の話。
舞台装置をばらしたりするお芝居は観たことがありますが、本作では自転車を組み立てました。そして、いつもと違って今回は体力系パフォーマンスはないのだろうと思っていましたが、自転車を力いっぱい漕ぐという力技があって、そうなんだと少し笑いました。
引きこもりの原因が、後ろに乗せた少女が下り坂の事故で死んだことに因ったのかと思い、漫画家になる夢がついえたのかと悲しい気持ちになりましたが、これまた死ななかったんだと少し笑いました。
満足度★★★
殺陣
迫力ありました。
ネタバレBOX
明治初期、政府転覆を図る徒党の首謀者となった実は生きていた元新選組伊東甲子太郎を、政府側に立って成敗した元新選組原田左之助たちの活躍を描いた話。
切っ先が首の近くを通るなど殺陣は迫力ありました。
しかしながら、政府転覆を図る組織は組織の体をなしていませんでした。政府転覆などできるはずもありません。
満足度★★★★
予定調和
いい話でしたが、カーテンコールですっかり興ざめしてしまいました。
ネタバレBOX
戦時中、陸軍に接収された名古屋東山動物園で、象の殺処分を迫る軍人と命を守ろうとした職員たちの攻防を描いた話。
8月15日玉音放送直後の園長と大尉の会話シーンでスタートしましたが、と言うことは、空襲が始まる音とともに暗転したラストシーンのときに舞台上にいた人たちは生き残ったということを示すわけで、みんなどうなるんだろうというドキドキ感が全く味わえませんでした。
動物園側ののらりくらり作戦がばれて、殺処分しようとするシーンは緊迫感がありました。ただ、いつまでも象が生き続けていることにそもそも軍の上層部が不審に思わなかったのかという気もしましたが、もうそんなことに構っている余裕もなくなっていたということでしょうか。
手話による合唱の後、一人ずつ頭を下げて去っていくという手法で終わりました。観客にカーテンコールを求めさせるためか、舞台上には少し明かりが残っていて、思惑通りと言うべきか拍手が続いたためカーテンコールがありましたが、左右、後ろから一人ひとり順番通りに出てくるのを見てすっかり興ざめしてしまいました。なんだぁー!物販宣伝の必要性があるとは言えせめてどうもありがとうって感じでどかどかと出てこんかい、ここは演出を付けない演出をせんかいとげんなりしました。
満足度★★★★★
老々
明日は我が身と思いつつ心が痛みます。
ネタバレBOX
行動範囲が狭まった、あるいは寝たきりに近いのか、老婦人が死に至るまでの日々を描いたようなベケットの作品。
(n+1)/(365*100)とn/(365*100)の差は小さいですが確実に変化はあるわけで、因みに100は盛ってみました、一幕では胸から上が出ていましたが二幕目では首から上だけになり、日常生活はままならなくなり、拳銃自殺することもできなくなりました。
そして、動けていた夫の方が先に死ぬと妻も死にました。老々介護の悲惨さを象徴するかのような先見の明のある作品でした。自己をコントロールできるうちに何かをすべきかと心が痛みます。
冒頭の、神に祈るのではなく、神のことを祈るシーンは痛快でした。待っても来ない神です。そもそも神は人間が作った想像物、自分亡き後のペットの行く末を心配するようなものでしょう。
満足度★★★★
まだ続くんかい
もう分かったというのに。
ネタバレBOX
27歳で癌で早死にした弟のことを申し訳なく思い、弟が死の間際に妻のために登録した本気で婚活ドットコムで返答のあった男性のところを一緒に尋ね歩き、義理の妹を再婚させようと奮闘する姉と義理の妹の日本全国二人旅。
山形、愛知、千葉、福岡と回っているうちに、姉にも結婚相手が必要だし、妹も今は亡き夫のことが忘れられない状態ということが分かってきたにも拘わらず、まだ行脚を続けようとするシリーズ物を意識したような展開に、潔さの無さを感じました。
満足度★★★★
なんだかなー
パパゲーナ>パミーナ
ネタバレBOX
主人公の王子タミーノのお相手パミーナよりも、鳥刺しパパゲーノのお相手パパゲーナの方が美人というのが何ともこれでいいのかと気になりました。
約束が守れない如何にもどこにでもいるパパゲーノこそが人間らしく、ご褒美をあげると賛美するのなら納得できますが。
満足度★★★
丹波鈴
タンバリン
ネタバレBOX
一人で生きていくために、女子プロボクサーに、後にプロではないことが分かりましたが、ボクシングを教えてもらうことになった70過ぎの元先生と、一緒に習う先生を慕う人たちの話。
一人で生きるために体力をつけるということでしたが、これだけべったりと慕われていたら一人じゃないじゃん、独居老人が前提じゃないと成り立たないような気がしました。
満足度★★★★
再確認
無害、無味無臭ですら許されない社会だけは御免被りたいものです。
ネタバレBOX
支那事変が始まる頃から太平洋戦争開始以降ぐらいまで、若手絵描きたちが国策に巻き込まれていく様を描いた話。
国のお役に立つために国民が存在するという考え方、一億総活躍社会にはそんな匂いが漂いますが、そんな社会になったら戦時中と同じように、ほっといてくれという権利がなくなり、自由にお芝居など観ていられなくなるのではないかと危惧しました。
満足度★★★★
すごい
徹底振り
ネタバレBOX
クーデターによって一旦地球に逃れることになる月世界のお姫様かぐや姫の話。
シリアスと大ボケが交互にやって来る不思議感覚なお芝居でした。最初は大ボケが浮いているかと思いましたが、とことんやられるとその徹底振りに恐れ入ってしまいました。ただそのために上演時間が2時間半近くにも及ぶことになり、少し長いと感じました。
ところで、月には常に太陽の光が当たらない闇の世界があるとの設定でしたが、地球から見えない裏側はあっても光は公平に当たるのだと思い、もやもやしました。