中国の不思議な役人【寺山修司×白井晃】公演終了
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
わからないけど、素敵だった
正直言うと、昔から寺山修司はわからない。理解できたためしがない。
どうやら、鏡が出てくる芝居は理解に苦しむ頻度が高いな、私の場合。
でも、演出の白井さんの、寺山への愛は充分伝わった。白井さんの作り出す幻想舞台が、頭ではわからない寺山世界を肌で感じさせてくれた気がする。
ベテランなのに、今尚、新しいチャレンジをし、進化を続ける平幹さんには、感涙もの。だって、10代からファンだもの。平さんが登場した途端、舞台に躍動感が漲り、凛とした声が、劇場の隅々まで魅了するのが実感でき、胸が小躍りしてしまった。
宝塚の男役に引けを取らない秋山さんの軍服姿にも魅了された。彼女のユーモラスな振りには愛嬌があって、思わず顔がほころんだ。
無垢な若者を無垢な演技力の二人に配役したのも、熟練役者との対極が鮮明になり、この舞台では成功したように思う。
佐野洋子の絵本「100万回生きた猫」をふと思い出したりして、よくわからないのに、結構楽しんで観劇できて、不思議な満足感だった。
home【作・演出 田村孝裕】
三田村組
ザ・ポケット(東京都)
2009/10/01 (木) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★
三田村組には喝采、されど脚本は…
最近の田村作品を観ていると、芝居を通して人間を描きたいのではなく、観客騙しのテクニック自慢をしたくて書いてるんじゃないかと疑いたくなる。どんでん返しのオチを如何に描くかに、作為が集約している気がしてならない。
熟練の役者陣だから、皆御自分の役を説得力を持って見せてしまうけれど、よくよく考えると、この人のキャラクター、矛盾あり過ぎ、絶対あり得ないと思える人物が2~3人いた。
顛末を痴呆が進んだ人物の台詞で語らせるのも、作者のご都合主義なルール違反だと思う。
幕開きの主要人物2人の会話も、観客騙しのためだけに用意されたに過ぎず、如何にも不自然。
ギリギリラスト近くまでは、結構登場人物に共感したり、感情移入して観ているだけに、まるで騙まし討ちに会った気分で、余計不快感だけが残ってしまう。
ONEOR8ファンなら、わあ、そういうオチかよ、騙されちゃったようと、爽快な気分になれるかもしれないけれど、三田村組の観客には不向きな作劇ではないかな?
田村作品の最大の見所である、一つのセットだけの瞬時の時空間移動の術が、今回は、高齢観客層を意識してか一切封印されたため、劇作家の狙いに踊らされた感だけが残り、自分の選択眼を後悔する、残念な観劇体験だった。
しかし、熟練役者さん達のブレのない演技には、感銘を受けたし、何より、人物のキャラに合わせた衣装がとてもよかった。
小細工を弄した結末でなければ、とても爽やかな気分で、劇場を後にできたのに、残念無念!
今後、田村さんのオリジナル作品は観ないと心に決めた。脚色だけにしておこうっと。
三田村組の役者さん自体には、元気を頂いたので、次回作品にも期待したいと思いました。
客演を頼む若い役者さんは、観客の目を喜ばすタイプのイケメンさんや美人さんが一人二人いた方が、観客動員に貢献するのではと思いました。
世田谷カフカ
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
ケラ流知的娯楽作品を堪能
やっぱりケラさんて天才だなあ!
日常ゴロゴロ転がってる、当事者には不条理かつ理不尽な大事が、他人には笑い話のネタ程度の小事に過ぎない等の、誰にも思い当たるような、見解の相違による、瑣末なエピソードを織り交ぜることによって、縁も所縁もない、遠い世界のカフカを見事、私達の日常に引き寄せて見せてしまう手腕に脱帽するばかり。カフカ作品を知らない人も、ナイロン100℃のファンでない人も、たぶん観客誰をも置いてけぼりにせず、飽きさせないケラさんの才覚にはただもう感心するばかりでした。
映像を使う舞台ってあんまり好きでないのに、今回ばかりは、これ凄い、最高!と、心の中で喝采した程。 その映像と照明のコラボが、また洒落ていました。まるで、3D映画を観てるみたい!
キャスト陣も、熟練さんばかりで、舞台を終始気持ちよく楽しめました。
特に、カフカ役の中村さんは、まさにカフカがこの世に迷い出たような雰囲気だったし、カール・ロスマン役の三宅さんのカッコよさは特筆ものでした。
ただ、欲を言えば、2幕を15分ぐらいカットしたら、もっと濃密な舞台だったのではと思いました。カフカ作品の主役3人が並んだところで幕でよかったような気もしました。
カフカ作品を全く知らない人には敢えて薦めはしないけれど、劇作家や演出家には、舞台構成の良テキストとして、強くおススメしたいですね。
「美しき背徳」 =ビューティフル マジック=
DIAMOND☆DOGS
博品館劇場(東京都)
2009/09/27 (日) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★
脚本とキャストのミスマッチ度100%
想像以上に、何のための上演か理解し難い舞台でした。
あまりにもリアリティに掛ける脚本とはいえ、もし、どこか小劇場で、キャラの濃いキャストで演じられていたら、もう少し面白みはあったかも。
キャスト陣、推敲されていない台詞が、自分のものにならず、苦慮しているし、9人も登場人物がいるのに、各人の関係性が作者の頭で想起されたに過ぎないので、それぞれの演技が空回りするばかり。
ダンスを封印されたキャストが気の毒に思える作品でした。
まだ、設定を外国にした方が、絵空事に思える頻度が少なかったかも。
最後のおまけのダンスが見られて、少し救われた思いでした。
はちみつ
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2009/09/23 (水) ~ 2009/09/28 (月)公演終了
満足度★★★★
キャストを信頼して書いた脚本
やっとこゆび侍、初見できました。
想像していた通り、成島作品は肌に合いました。
物語自体は、複線も含めて、予想できる展開ではあるものの、随所に光る台詞が散りばめられ、かなり好きな作品でした。
主役二人の演技が素晴らしかった!シャッター叩いて泣き喚く場面、役者さんの演技が良くないと、どうしようもなく白けるシーンになりそうなのに、二人を信頼して書かれた脚本なんだろうなあと、変な部分で感涙を誘われました。
夜と森のミュンヒハウゼン【9/20千秋楽】
サスペンデッズ
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/09/11 (金) ~ 2009/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★
心を刺すファンタジー
いきなり、ディズニーランドのパビリオンに迷い込んだような雰囲気。
落ち葉を踏締め、客席に座って、新たな早船ワールドの展開を心待ちしました。
でも、遅れて来たお客さんはどうなるのかと、ちょっと余計な心配が。
始まってみたら、すっかり森の住人になった気分で、舞台に集中できましたが、時折、スタッフが装置移動に姿を現すのは、雰囲気を壊した気がします。
それに、こういう舞台では、あまりリアルな装置や小道具は不向きかもしれません。
いつもはあまり説明台詞のない、早船戯曲。今回は、逆に、心情を本人に語らせる台詞が多かったけれど、それはそれで、心に沁みました。
最後の、銀平さんの台詞に、思わず涙がこぼれました。
権十郎の傘
蜂寅企画
シアター風姿花伝(東京都)
2009/09/18 (金) ~ 2009/09/21 (月)公演終了
満足度★★★
なかなか感動作でした
普段は、スタイルも抜群で、現代的な女性の中尾さん、こんな、真っ当な時代劇を書かれる方とは、意外でした。
50年以上の観劇人生でも、小劇場の時代劇は初体験でしたが、期待を上回る、緻密な構成で、感心しました。
一つのセットで、内外に場面転換する工夫が巧みで、暗転も素早く、客席を中だるみさせないので、飽きる事が全くありませんでした。
終盤近くの、泣かせどころで、扉の立て付けが悪く、権十郎役の役者さん、大変お気の毒でした。
脚本のレベルに、舞台装置や、役者さんの時代物の所作が追いついたら、かなりの秀作舞台になると、期待大の蜂寅企画旗揚げ公演でした。
静かじゃない大地
G2プロデュース
本多劇場(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/09/23 (水)公演終了
満足度★
脚本家G2に失望!
演出家としてのG2ファンなだけに、今回の作品にはかなり失望しました。
好きだった男の人間性を知って、裏切られたような感じ。
前半、笑っていた、自分自身までが、許せない気分になりました。
病気をネタにしてもいいけど、もっと深い意図の基に、扱えよ!
一つの病気は、笑いのネタにはすべきでないし、もう一つの病気は、浅い知識で扱っている感じで、どちらも、非常に不快でした。
役者さん達、こぞって好演しているだけに、余計残念な思いが募る作品でした。せっかくの、浜田さんの客演舞台、他の作品で観たかった!
内田慈さんの、変幻自在の演技力には、また驚かされました。
お願いだから、G2さん、これからは、演出に専念して下さい。
コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
台詞覚えだけでも、表彰状物
さすがに通しで観る自信はなく、3日間通いました。
2部が一番面白かった!
1部は登場人物が多すぎて、誰が誰やら。台詞に名前が出る度に、配られた配役表で確認するのに忙しく、ようやく、全容が掴めたところで、幕。
3部は、エピソードの羅列に走りすぎた感あり。
2部は、登場人物も絞られ、各人の恋愛感情や友情や革命の志等が、一番細やかに濃密に描かれ、最もドラマチックな舞台でした。
カーテン越しのスタッフの舞台転換が鮮やか!スタッフにまで、演技力を要求する蜷川さんにもビックリですが、皆さん、その要求にちゃんとこたえていました。
押しなべて、男優陣と子役さん達、大健闘でしたが、中でも、ベリンスキー役の池内さんの好演には舌を巻きました。
いつの間に、こんな名優に成長されたのでしょう!
とにかく、役者さん達、よくあのロシアのややこしい名前の羅列と、馴染み薄い革命論の長台詞を叩き込み、消化され、自分の言葉として、表現し切られたものだと、感心するばかり。敬意を表します。
ギリギリ圏外
子犬会議
プロト・シアター(東京都)
2009/09/11 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★
コントは間が命
私の若き仲間達が、頑張ってコントやってるので、ずっと応援しています。
コントを書きながら、出演もしてで、皆大忙し。
今回は、出演メンバーが少なかったせいか、その余裕のなさが、舞台に影響して、コントに大事な間をうまく取れていない様子が、気の毒であり、残念であり…
頑張ってやるコントを脱したら、きっとすごく面白いカンパニーになると期待しています。
ジェーン・エア
松竹
日生劇場(東京都)
2009/09/02 (水) ~ 2009/09/29 (火)公演終了
満足度★★★★★
感動に打ちのめされました
橋本さとしファンとして、ファン冥利に尽きる舞台でした。
遥か昔、原作を読んだ時は、こんなに感動しなかったのに、やはり生の舞台の成せる業でしょうか?
構成、演出、楽曲、キャスト陣、全てに大満足!
だいたい、これだけ演技力あるキャストが揃ったミュージカル、日本ではなかなかお目に掛かれません。
子役さん達の名演技もあり、最初から、目がウルウルしっ放しで、もしかしたら、人生最良のミュージカル作品に巡り会った気さえする程。
おばさんの臨終シーンの台詞に、胸が苦しくなったり、随所に、心を刺激される、素敵な作品でした。
松さん、今年の演劇賞、受賞される予感がしました。
ハッピーエンドクラッシャー
ゴジゲン
シアターブラッツ(東京都)
2009/09/09 (水) ~ 2009/09/15 (火)公演終了
満足度★★★★
リアルじゃないのにリアルな若者達
ゴジゲン体験3度目。またしても、松居ワールドに、してやられた感あり。
粗筋に出来にくい状況展開や台詞のやり取りが、あまりにも自然で、男性キャスト陣の台詞が全く演技っぽくないので、何だかファミレスで、隣の席の会話を盗み聞いているような不思議な感覚を覚えました。
異色な松居ワールドと、実社会の人間以上にリアルなキャストで作り上げられる、ゴジゲンの魅力は、いつも不可思議ですね。
物凄く感激するわけでも、腹を抱えて笑うのでも、何か哲学的示唆に富むわけでもないのに、何だかまた観に行きたくなる、他に類を見ない魅惑の劇団。
また次回が楽しみになりました。
でも、「童貞」のキーワードは、そろそろなくてもよいのでは?
そのキーワードを入れることに、ちょっと縛られ始めているのではと感じました。
吉川嬢の台詞、とっても愉快でした。
ゴジゲンの役者さん達の映画が無性に観たい気がしています。
ぼくらは生れ変わった木の葉のように
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2009/09/08 (火) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
青年座らしからぬ衝撃作に唖然と賞賛
いやはや衝撃的な幕開けでした。
そのくせ、ラストはやけに淡々と余韻を持って終わり、そのコントラストまでが、作劇の妙を感じさせる秀作でした。
オンタイムでは、清水邦夫作品、どれも未見でしたが、最近清水作品の面白さに嵌っています。
キャストの皆さんも、いつもの青年座にはない柔軟な演技で、押しの強い芝居の味わいを体現していて、濃密な怒涛の1時間があっという間に感じました。
中でも、妻役、加茂さんの小気味良い演技に魅了されました。
音楽劇「サマーハウスの夢」
俳優座劇場
俳優座劇場(東京都)
2009/08/27 (木) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★
アラン・エイクボーンの才能に感服
大して期待もなく、畠中さん目当てで行きました。
最初は、普通のストレートプレイ風で、会話のテンポもイマイチで、これは眠りそうと思っているうち、話は予想をどんどん外れ、ついでに舞台もスピードアップ。素敵な音楽ファンタジー劇に、ちょっとホロッとしたり。
思わぬ収穫満載の舞台でした。
それにしても、あの喜劇作家エイクボーンが、こんな音楽劇も物していたとは!改めて、彼の才能に脱帽しました。
久しぶりに聴いたほのかさんの歌声、昔と変わらず、愛らしくて、素敵でした。
狭き門より入れ
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2009/08/17 (月) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
前川作品、大好き!
前川さんの作品は、イキウメでも、他の劇団への書き下ろしでも、とにかく期待外れがないので、大好きです。
蔵之介さんの、瘤取り爺さんの話のたとえ、そういうちょっとしたところに、前川さんの知性と教養が感じられ、観劇中、いろいろ楽しめる要素ばかりで、ワクワクしました。
キャスト全員、その前川ワールドを、上手に体現されていて、何もかも満足度100%の舞台でした。
テレビでしか拝見していない中尾さんの名演技にも、感心しました。