KAEの観てきた!クチコミ一覧

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新橋演舞場 花形歌舞伎

新橋演舞場 花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2009/11/01 (日) ~ 2009/11/25 (水)公演終了

満足度★★★★

西のシェークスピア、東の南北
古今東西、数ある劇作家中、やはりこの二人の鬼才に敵う存在はないのではと、強く再認識します。

「盟三五大切」は、南北作品の中でも、特に傑作だと思うのは、悲劇でありながら、笑わせどころが随所にあり、物語の起伏と緩急が実に巧みだと思うからです。この構成力は、今の若い劇作家にも是非、お手本にしてほしいくらい、よく練られた筋運びです。

染五郎の源五兵衛は、二軒茶屋の場での「人でない」の台詞は、もっと、裏切られた怒りと悲しみを搾り出すように言ってほしいものの、大詰は、真面目な男が、狂気へと変貌する凄みをうまく表出していて、胸が苦しくなる程でした。初役の菊之助、亀治郎、共に無難にこなしていたけれど、やや色気不足だったのが、残念。

全然期待していなかった「弥生の花浅草祭」が、松緑、愛之助の四変化が楽しく、若さ溢れるギネス物の獅子の首振りには、感嘆の極みで、久しぶりにワクワクする舞踊でした。

アイーダ

アイーダ

劇団四季

電通四季劇場[海](東京都)

2009/10/03 (土) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★

良くも悪くも四季らしいミュージカル
仕事上、後学のために、行きましたが、やはり、どうも四季のミュージカルは、自分好みでないと再確認。
どうしても、あの母音法の台詞が、気色悪く感じられるのです。
台詞や歌詞は一音も漏れずに聞こえるけれど、感情が伴う演技になかなかならず、だから、アイーダとラダメスがちっとも、愛し合ってるように思えず、客席にいる私も、全然感情移入できないので、ついウトウトしてしまいました。
物語としても、野田歌舞伎や、小池修一郎さんの「アイーダ」の方が、深みがあった気がしました。しかし、楽曲は素晴らしい!
「迷いつつ」は、名曲ですね。 

四季のファンの方々は、大満足して、席を立っている様子でしたから、これは、単に好みの問題なのかもしれません。

グレイ・ガーデンズ

グレイ・ガーデンズ

東宝

シアタークリエ(東京都)

2009/11/07 (土) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★

身につまされ過ぎて
母は自分が不幸せだから、娘には幸せな結婚を望み、結果的に娘の人生を繰ろうとし、娘は、母の一方的な愛情表現に辟易し、母からの自立を試みるも、失敗。 結局、共依存の関係を脱することのできない、母娘関係!
身近に、似たような母娘がいるだけに、終始、身につまされて観ていました。

名優二人の共演は、確かに見ごたえはあるし、駄作だった、新感線の「リチャード3世」で、若く、颯爽たる勇者役で、一人異彩を放っていた、川久保拓司さんと、ご贔屓の吉野圭吾さんが観られたし、私としては、観てよかった舞台ですが、
だけど、これ、おススメ舞台かと聞かれたら、やはり躊躇します。
だって、実話だから、希望的終幕にはならないし、何と言っても、クリエは、チケット代が高すぎます。
私は、格安チケットだったから、良いけれど、クリエの興行って、どれもこれも、全く観客目線とはかけ離れた演目だらけ。企画のセンスが皆無だと、いつも不思議でなりません。これでは、クリエに出演する役者さん、せっかくの佳作でも、お客さんの入りが悪くて、お気の毒な気がします。

奇跡の人

奇跡の人

ホリプロ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2009/10/23 (金) ~ 2009/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

犬まで名演技でした
今まで何回となく上演されたのに、何故か今回が初見。
名舞台だと聞いていたのに、行かなかったのは、きっと役者さんの演技が想定できたからかなと自己分析。
今回は、予想できない新鮮な配役だったから、観たい衝動が湧いて、行ってみました。

あんなに長時間の芝居とは思っていなかったから、ちょっと意外でしたが、その割には全然長さを感じさせられなかったし、最後の場面は百も承知にも関わらず、やっぱり、目がウルウル!
他を観ていないから、比較できないけれど、もしかしたら、この二人、ベストキャストなのでは?
健気なワンちゃんの名演にも、感涙でした。

最初のヘレンの発病場面やサリバンの盲学校の場面等は、なくてもよいのではと思いましたが、とにかく若い二人の体当たり演技が清々しくて、これからも、ずっと上演し続けてほしい作品だなと、強く思いました。

プレイバック Part3

プレイバック Part3

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2009/10/30 (金) ~ 2009/11/03 (火)公演終了

満足度★★★★★

超一級茶番劇、お見事です!
最近、作者の手腕自慢的な、辻褄の合わないオチのついた芝居に出会うことが多く、ちょっと食傷気味のところへ、凄い作劇術のこの芝居に出会い、再び元気100倍!  演劇好きで良かったと思わせられた、傑作茶番劇でした。

楢原さん、相当、博識な方とお見受けしますが、その見識ぶりをさりげないユーモアセンスで味付けして、舞台に乗せる手腕が、見事! 半世紀に及ぶ観劇歴の私でも、完全に、してやられました。

相変わらず、この劇団、役者さんが、誰も彼も、素晴らしいし、今現在の、私の今年度ベスト1の舞台かもしれません。

たぶん、この劇団、近い将来、小劇場の雄になると、期待大です。

ただ、カセットテープ、もう少し古びた感があった方がリアルだったかも。

台詞に、百恵ちゃんの歌の歌詞やタイトルが隠されているのも、一興でした。

3on3 Part2 喫茶店で起こる三つの物語

3on3 Part2 喫茶店で起こる三つの物語

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2009/11/01 (日) ~ 2009/11/08 (日)公演終了

満足度★★★

企画倒れにならないようにと祈ります
企画としては、面白いのですが、前回も感じた、3作品のレベルの差が、今回も気になりました。
でも、今回の並べ方は、妥当でした。だんだんレベルアップする順番だったので。

一話目の「みぢかうた」、作者の思いつきの人物造型と状況設定に、終始気持ちが入り込めず。客演陣は、青年座にはいないタイプの古川さんは別として、後のメンバーが、しっかり演技の基礎を勉強している、青年座の役者さんと、あまりにも、演技の色が違いすぎ、その色が最後まで、混ざり合わない落ち着きのなさが最大のネックでした。

2話目の「青島先生」、観客騙しの作劇のために、種明かしされた後、思い返すと、役者さんの演技に腑に落ちない部分が多々ありました。
それに、二人芝居は、もっと経験豊かな役者さんでないと、舞台を持たせられない気がしました。

3話目の「はひふへほ」、これは、かなりレベルの高い上質な作品でした。
養成所時代から注目している、嶋田翔平さんが、新人とは思えない素晴らしい演技で、圧倒されました。全作品中、最優勝俳優賞は、嶋田さん以外いないと、心の中で、大喝采しました。
作品が良いと、役者さんも、役としての居住まいが作りやすいのでしょう。
三話目のキャスト陣は、全員好演されていました。
ただ、高科梢の人物造型上、どうしても、リアルでない、状況設定があったのは、残念でした。過去はともかく、今の彼女には、あり得ない設定だった気がして、しっくり来ない違和感が残りました。

第三弾があるのなら、もっと3作品、切磋琢磨してほしいと思います。

甘い丘

甘い丘

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2009/10/30 (金) ~ 2009/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

KAKUTA には全てが揃っている!
勝手に女性のみの芝居かと思い込んでいたら、しっかり、男性も同人数ぐらいいて、まずビックリ!

しかし、いつ観ても、ここの芝居は、全てが揃っていて、その舞台の圧倒的空気感に絶句します。

脚本、演出、美術、照明、役者…、こんなに全てにおいてクオリティの高い劇団ってそんなにない気がする。役者さん、全員、存在感があって、その上、作・演出の桑原さんが、女優としても、素晴らしい演技をされるので、もはやマジックを観るような気分でした。

客演の青年座の椿さんも、今までのどの舞台より、素敵な演技をされていたように思いました。
一瞬、メロドラマ風になりそうな展開になりながら、桑原さん流の外し方が巧みで、これからも、注目して行きたい方だなと改めて思いました。

レ・ミゼラブル

レ・ミゼラブル

東宝

帝国劇場(東京都)

2009/10/06 (火) ~ 2009/11/20 (金)公演終了

満足度★★★★

何度観ても厭きない崇高な作品
今期は、今日が初観劇。ですが、これまで100回は下らない程、通っています。
自分にとってのベストキャスト揃い踏みの公演が皆無なため、何度も通って、まさに東宝さんの策に乗せられているけれど、何度観ても、厭きることがないので、もはやレミゼ中毒の感あり。

橋本バルジャン、優しさが増していて、より好きになりました。松原アンジョルラスは初見でしたが、久しぶりに自分のイメージに近い、颯爽たるリーダー振りのアンジョルラスで、惚れ惚れ。  

終演後、山口さんの歌唱指導で、ABCカフェの歌の観客との大合唱のおまけまで付いて、やはり、レミゼには生涯通い詰めたいと思いを新たにしました。

ネタバレBOX

もし、初めてご覧になる方は、バルジャンとジャベール以外のキャスト全員、あちこちの場面に何役も登場しますから、どこに誰がいるか、探してみるのも一興です。
OH!マイママ

OH!マイママ

劇団NLT

博品館劇場(東京都)

2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

大好き!こういう作品
ただ単にドタバタコメディに終始せず、ほろっと人情を感じさせる、心憎い上質コメディで、こういう舞台は大好きです。
私の好きなミュージカル「ラカージュオフォール」にも通じる世界観で、最初から最後まで、快く笑って楽しめる舞台でした。

NLTの中でも、素敵な演技をされるキャストの集結だったので、安心して、話の流れに身を委ねることができました。

最初のダンスシーンが、後になって種明かしされる構成も、小粋で、しゃれた演出でした。

コメディ老舗劇団の面目躍如たる公演でした。

翻案劇 サロメ

翻案劇 サロメ

アトリエ・ダンカン

東京グローブ座(東京都)

2009/10/19 (月) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

見事なコラボレート音楽劇
スズカツさんが、アフタートークで、これは音楽劇だと言っていましたが、まさにそんな感じ。
邦楽お囃子さんによる生演奏サロメなんて、意表をつくコラボレーションでしたが、見事に融合して、感覚に響く舞台でした。

全員、素晴らしい配役でしたが、中でも、森山開次さんのヨカナーンは、彼を置いて他に思いつかない程、ベストキャスティング!!
彼のコンテンポラリーダンスは、彼独自の世界で、それが、この役に見事に同化して、素晴らしかったの一言でした。
それと、ヨカナーンの首が、森山さんと瓜二つで、その技術の高さにも舌を巻きました。

篠井×スズカツコンビの舞台は、これからも、注目したいと思いました。

組曲虐殺

組曲虐殺

こまつ座

天王洲 銀河劇場(東京都)

2009/10/03 (土) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

名脚本とベストキャストの幸運な出会い
私にとってワースト1の演出家の舞台で、買おうか買うまいかさんざん迷ったけれど、観られてよかった!
今まで、神野三鈴さんと、山崎一さんが出た舞台でダメな作品にお目に掛かったことがないので、今回もお二人が作品に深みを与えてくれるに違いないと思った通り、本当にこのお二人が、情の通った素晴らしい人物を造形して下さっていました。

最初、ミュージカル界の貴公子が多喜二?と心配したのも、杞憂に終わり、いつもは、ミュージカルの歌唱の井上さんが、地声の歌唱で、見事に多喜二役を好演。特に、独房での歌は心に沁みました。

多喜二が主役ではなく、むしろ、周りで彼を支えた家族や、彼を見張る刑事達の心情に光を当てた描き方が、さすが井上ひさしさん!
あんな悲惨な題材をよくこれだけ笑いに満ちた物語にできるものだと、ただもう感心しました。
多喜二の台詞が少ない分、一層彼の言葉の一つ一つが胸にずしんと響きました。
小曾根さんの静かな音楽ともマッチングして、秀逸でした。

ただ、最後の多喜二のアップ映像は、どうも興醒めの感が。あれは、、多喜二ではなく、井上芳雄のCDのジャケ写のように見えて、ちょっと肩透かしな気がして、残念でした。

蛮幽鬼(ばんゆうき)

蛮幽鬼(ばんゆうき)

松竹

新橋演舞場(東京都)

2009/09/30 (水) ~ 2009/10/27 (火)公演終了

満足度★★★★

全キャスト好演にニンマリ
待ちに待った久々のいのうえ×中島作品。それだけでも、楽しみなのに、今回のキャストは、全員好きな役者さんばかりで、今日の日をどんなに待ったことでしょう!
その期待が大き過ぎたのか、1幕はややテンポも悪く、あれっという感じでしたが、でも、やっぱり全員口跡も良く、安心して、舞台を堪能できて、久々に感激観劇体験!

早乙女太一さんの殺陣の美しさ、聖子さんの笑わせつつ、泣かせる役者技術の妙技、じゅんさんの、客の心を掴む魅力、颯爽たる山本さん…と脇役陣もどなたも適材適所の名配役で、そこに、上川・堺・稲森と来たら、最強の舞台にならない方が不思議だけれど、本当にこれだけ、全てが充実したら、高いチケット代も惜しくは感じませんでした。

ただ、最後列、端っこの席だったため、開演中の、ロビー従業員のおしゃべりがうるさくて、それだけは、非常に残念でした。

死すべき母の石

死すべき母の石

劇団桃唄309

テアトルBONBON(東京都)

2009/10/15 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

満足度

予感的中
たぶん長谷さんは、性に合わないだろうの予感的中。
戯曲がではなく、演出が、私の体質には合いませんでした。
これ、新劇場の杮落としには不似合いではとずっと思って観ていました。
有料の公演ではなく、無料のワークショップ的趣の作品で、キャスト陣、特に女優さんの演技が生理的に受け付けない部類で、久々、途中で退座したい思いに駆られました。
キャストの中では、主演の男性と犀川役の男性の演技が素直で、好感が持てました。でも、一番良かったのは、演技していないDJ役の方だったかもしれません。

屋根の上のヴァイオリン弾き

屋根の上のヴァイオリン弾き

東宝

日生劇場(東京都)

2009/10/05 (月) ~ 2009/10/29 (木)公演終了

満足度★★★★

久しぶりにレベルの揃ったキャスト陣
何度となく観てきた作品だけに、なかなか昔の感激以上の感動はないものの、やはり良く出来たミュージカル作品だなあと改めて思いました。
ただ、上演時間が短くなり、場面転換もスムーズになって以来、どうも情感が薄まった気がして、感情移入がし辛くなったのは、残念です。
市村デビエは、初公演時より、おふざけが少なくなり、好感が持てました。
久しぶりに、上手な女優さんの三女役で、物語が最後までしっかりと骨太の作品になって、嬉しく思いました。
「愛しているかい?」のご夫妻ぶり、久々の名コンビで、堪能しました。

それにしても、益田キートンさんの司祭様が懐かしい!!

らくだ

らくだ

劇団民藝

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/19 (月)公演終了

満足度★★★

大滝さんの健在振りがただただ嬉しい
古典落語の名作「らくだ」が、別役ワールドでお色直しされた舞台。
別役芝居には必須アイテムの電信柱と死体が登場して、落語の世界とうまく色が混ざった舞台だったけれど、らくだの馬さんが躍る場面は、絶対、歌舞伎の方が面白かったし、別役さんの世界も、最近青年座でやった芝居と重複すような内容で、ちょっと新鮮味は感じなかったかも。

とにかく、大滝秀治さんの健在振りが、演劇ファンとして、素直に嬉しくなる舞台だったけれど、これ、民芸の公演でなく、勘三郎さんとかとのプロデュース公演で観てみたかったと、ちょっと物足りない感は否めませんでした。

それにしても、民芸の芝居は、初老の男性観客が多く、いつも驚きます。
初老の観客が笑って舞台を楽しんでいるのが、無性に心地良く感じました。

千里眼の女

千里眼の女

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2009/10/10 (土) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★

全てにおいて中庸な芝居
青年座の舞台を見る度、気になっていた役者さん、檀臣幸さん演じる福来が、なかなか好きなタイプのキャラクターだったので、厭きることなく、観劇したものの、何かスパイスが足りない印象の舞台でした。
新聞記者役の蟹江一平さんは、今までにない役柄を好演されてはいましたが、時々福来に対して敵意を持っているような印象を与える演技で、これでいいのかなという疑問が湧いたりもしました。
でも、青年座の役者さんは、活舌も口跡も良く、観ていて本当に気持ちがいいなといつも感じます。
千鶴子役の勝島さんは、懸命に演じていましたが、作者の心情台詞を主に受け持たされた感じで、何だかお気の毒に感じました。

全体的に、可もなく不可もないという無難な舞台という印象でした。

劇読み! vol.3

劇読み! vol.3

劇団劇作家

TACCS1179(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/12 (月)公演終了

満足度★★★

興味深い試みに賛同
劇作家で劇団を立ち上げ、主に、その作品の売り込みのために、リーディングの会を開いている、劇団劇作家。
私は、旗揚げの時に一度観て、今回が二度目ですが、会場も、公演のクオリティも、ずいぶん高くなっていて、驚きでした。

私が観たのは、有吉朝子さん作の「月、白き水晶の夜」。
作品の雰囲気としては、新派か何かで上演したらと思う内容でした。

岡倉天心の不倫相手、星崎はつ子をモデルにした芝居で、キャストは皆台本は手にしているものの、照明にも工夫があり、結構本公演を観ているような気持ちで、物語に溶け込めたのは、意外でした。
キャスト陣、皆演技力のある方ばかりだったからでしょう。
私のご贔屓の日下部そうさんが、好青年役を好演されていて、素敵でした。

この作品に関して言えば、もう少し上演時間を短く、内容を煮詰めて、作者の岡倉に関しての知識を無理に台詞で説明するような箇所を推敲したら、民芸とか、新派とかの老舗劇団向きの人情芝居になるのではと思いました。

渇いた人々は、とりあえず死を叫び

渇いた人々は、とりあえず死を叫び

劇団俳優座

あうるすぽっと(東京都)

2009/10/08 (木) ~ 2009/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

青木豪作品には愛がある
冷静に考えると、大雨で避難している校舎で繰り広げられる会話ではないなと思うものの、何だか作者の思惑に従順になってしまう自分がいた。
 
青木豪さんは、いつも、登場人物各人に愛情を注いで、劇作していることがわかる。
今回の作品も例に漏れず。だから、作者に都合の良い登場人物の行動や台詞にも、さして違和感を感じない。
基本的に、人間描写や役者に対する敬意や愛が感じられるから。

昔から、大ファンだった岩崎加根子さんが、相変わらずいい芝居をされていて、嬉しかった。 

客席が、気の毒を通り越し、悲惨に思う程ガラガラな上、70代80代の観客の寝息があちこちで聞こえたけれど、私には心地良い舞台でした。

赤と黒【脚色・演出:赤澤ムック】

赤と黒【脚色・演出:赤澤ムック】

avex live creative

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/10/01 (木) ~ 2009/10/11 (日)公演終了

満足度★★★★

木村了の魅力に全てが凌駕された舞台
題名しか知らなかった、スタンダールの「赤と黒」、それを小劇場でどんな風に料理するのか、興味と不安とない交ぜの気持ちで観に行ったら、まあ、いろいろ難点はあるにしろ、木村了の圧倒的魅力が、全ての欠点を補って余りあり、後半は、ただもう、彼の美しさにたじろぐ思いさえ感じながら、見入ってしまいました。
フジTVのドラマや、大河ドラマで、楽しみな若手俳優が出現したと楽しみにしていたけれど、新感線と今回の舞台で、舞台俳優としても、逸材であると確信できました。

赤澤ムックさんの作品は初見ですが、フランスの歴史に疎い観客にも、わかりやすく、噛み砕いた脚色の才には感心しました。
ついでに、あまりの理解不能のために、途中で投げ出した「王妃マルゴ」の解説まであって、2冊の内容を勉強させてもらって、感謝したい気分です。

フランスの歴史や、キリスト教の教義に詳しくなくても、充分理解できる構成で、本当にありがたい舞台でした。

その人、女優?

その人、女優?

劇団東京ヴォードヴィルショー

テアトルBONBON(東京都)

2009/10/03 (土) ~ 2009/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★

劇団と脚本家の相性が良い舞台
テアトルBONBONのこけら落とし公演、まだ新しい建物の匂いがした。
ところが、舞台の内容は、日本の喜劇の王道を行くような作品。このアンバランスに受けてしまった。
そう、普通に面白かった!
これは、私的には、高評価の部類。
最初から最後まで、安心して笑えた舞台だった。

この劇団には、三谷作品より中島作品の方が、相性が良いなと思った。
中島さんは、職人劇作家だなあとつくづく思う。
笑わせどころを心得ていて、決して観客を不快にさせない術を身につけている。

単なる、脇役に過ぎないかに見えた、連れ込み宿の女将が、あんな重要な役どころだったとは!
こういうどんでん返しなら、大歓迎です。

出演されていないB作さんの、携帯電話の忠告アナウンスも愉快でした。

宮崎弁が、泥臭いコメディの良い薬味となり、久しぶりに、余計な雑念なく、楽しめた舞台でした。

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