土反の観てきた!クチコミ一覧

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月の剥がれる

月の剥がれる

アマヤドリ

座・高円寺1(東京都)

2013/03/04 (月) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★

「正しさ」を巡る群像劇
戦争反対の活動をする人々の物語を通じて、人殺しや幸せといった道徳的なテーマを描いた作品で、単純に戦争反対を訴えるだけではない奥の深さがあって魅力的でした。

自己犠牲的な抗議方法で戦争に反対する「散華」と名乗る集団の成り行きと、その後の時代に学校の授業で彼らの方法論について討論する模様が交互に描かれ、正しさとは一体何に基づくのかを考えさせられる内容でした。
平和を得る為に用いている手段が、平和を脅かす物と概念的に同じであることを、ある有名な文章のパスティーシュによって示すシーンに不思議な情感があって、強く印象に残りました。
「散華」という言葉の選択や、輪廻を思わせる冒頭と最後のシーン等、仏教的世界観を感じました。

興味深い内容でしたが、演出が内容に合っていないと感じることがあり、勿体なく思いました。
衣装や演技スタイルがシリアスな内容に対してファンシー過ぎて、違和感を覚えました。
ひょっとこ乱舞名義時代からの特徴である、ふんだんに盛り込まれた群舞の軽やかなステップや倒れ込むような動きが印象的でしたが、今回はダンスシーンがドラマの流れを停滞させてしまっているように感じられました。
欠けた月をモチーフにした舞台美術が美しかったです。

モーリス・ベジャール・バレエ団 Aプロ

モーリス・ベジャール・バレエ団 Aプロ

公益財団法人日本舞台芸術振興会

東京文化会館 大ホール(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/05 (火)公演終了

満足度★★★

圧巻の『ボレロ』
ベジャールの代表作2本と、現在の芸術監督であるジル・ロマンさんの新作1本のトリプルビルで、男性ダンサー達の充実度が印象に残りました。

『ディオニソス組曲』
長編作品を短縮した版なので、特にはっきりとした物語は感じられず、健康的な官能性がある踊りを単純に楽しめる作品でした。
エキゾティックな音楽に乗せてダイナミックに踊る群舞が爽快でした。終盤では男性ダンサー達が周囲で手拍子や掛け声で盛り上げる中、アフリカのダンスを思わせる熱狂的なソロやデュオが続き、まるでダンスバトルみたいで圧巻でした。

『シンコペ』(ジル・ロマン振付)
心臓が止まった男の心に現れる様々なイメージをユーモラスに描いた作品で、師のベジャールとは全く異なる作風でした。
振付も音楽も一昔前の雰囲気があり、今この作品を作った必然性が感じられませんでした。ヒップホップ系のダンサーが踊った方が映えそうな振付で、バレエの技術があまり活かされていないのが勿体なかったです。

『ボレロ』
体をなぞる手先だけが照らし出される冒頭から、圧倒的な迫力のラストまでノンストップで盛り上がって行く作品で、強烈なインパクトがありました。ムーブメントのそれぞれはゲイっぽさが濃厚なのですが、それを嫌らしく感じさせず、崇高なものに見せる時間的・空間的構成が素晴らしかったです。
ソリストのジュリアン・ファヴローさんのダンスは、周囲の群舞に対するフレンドリーさを感じさせる人間味のあるものでした。

その部屋の踊り

その部屋の踊り

CHAP DANCE

Chapter2(長者町アートプラネット2階)(神奈川県)

2013/03/02 (土) ~ 2013/03/02 (土)公演終了

満足度★★

ノスタルジックな気配
昭和の面影が色濃く残る歓楽街にある、元ダンスホールだったというレトロな内装の空間の中で、4組の出演者がその雰囲気にあったパフォーマンスを行い、全体として1つの世界観が感じられる公演でした。

水越朋×山田あずさ
ダンスとヴィブラフォンを中心にした打楽器の即興で、キレの良い動きが印象的でした。音と動きを合わせ過ぎているように感じられ、お互いにもっと仕掛けて行っても良いと思いました。

すナマき(砂川佳代子&高橋牧)
ウクレレを弾きながらの歌とポエトリー・リーディングに空間の移動を交えた、密やかなパフォーマンスでした。少しシュールなテクストが独特な雰囲気を醸し出していました。

Rie Tashiro
ヒップホップやダブのトラックに合わせて踊る、ストリートダンスのスタイルの振付ですが、エネルギーの発散だけでなく内向的な深みが感じられたのが魅力的でした。時間が短く、もう少し長くても良いと思いました。

矢嶋久美子&伊佐千明
ゆっくりと変化する静と、激しい動きを繰り返す動の対比が鮮やかなデュオ作品でした。無音の中で踊る終盤は美しかったのですが、公演全体のバランスからすると引っ張り過ぎに思えました。

会場全体に配置された、水を入れた様々な形状のグラスや、統一感のある衣装がノスタルジックな雰囲気を作り上げていました。
全体の方向性は良かったものの、それぞれのパフォーマンスは魅力を出しきれていない感じがあって、もどかしく思いました。

オペラ研修所公演  『カルディヤック』

オペラ研修所公演 『カルディヤック』

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★

歪んだ職人魂
パリを舞台にした連続殺人事件にまつわるサスペンス的な物語が、はっきりとしたリズムの音楽に乗せて展開する作品でした。何をテーマに打ち出しているのかが分かり難く、演技も硬さが感じられて、演劇としては少し物足りなさを感じましたが、音楽的には楽しめました。

天才金細工師が自分の作品に執着するあまり、客に売った作品を取り戻す為に殺人を繰り返す物語を中心にして、その娘が父と恋人との間で揺れ動く様子が描かれていましたが、登場人物達の感情が伝わって来ず、ドラマとしてはあまり魅力を感じられませんでした。

冒頭で紗幕にタイトルが作曲当時の映画みたいな雰囲気で映し出されたは洒落ていて良かったのですが、そのアルファベットの並びがM字型に変化して、今回の演出のインスピレーションとなったフリッツ・ラング監督の『M』を示唆するのはあざとくて無粋に思えました。
回り舞台を用いてダイナミックに場面転換を行うのが印象的でしたが、
チカチカと派手に明滅する照明は落ち着きがなく軽い感じに見えました。

音楽は無調に近い音の使い方でしたが抽象的ではなく、感情や雰囲気が伝わって来る、聴き易い曲調でした。早いテンポの中でいくつもの旋律が複雑に絡む、いかにもヒンデミットらしい曲が多く、聴き応えがありました。

ルル

ルル

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★

魅力的な役者達
ステージ上に設けられた、17世紀のヨーロッパの公開解剖学講義の客席を思わせるU字型の客席に囲まれた細長い空間で、身体的な存在感の強い役者達の演技が繰り広げられ、一部アングラ的な部分はあるものの、基本的には奇を衒わないストレートな作品でした。

イヤホンガイドによる通訳が用意されていましたが、イヤホンをすると普段聞くことのないルーマニア語の響きや、生演奏の音楽の魅力が損なわれるように思われ、芝居のテンションやリズム感とのズレも感じられたので、最初の数分以降はガイドなしで観ましたが、ベルク作曲のオペラ版『ルル』で内容は知っていたので、台詞が分からなくても演技を観ているだけで十分楽しめました。

小悪魔的な魅力で男達をたぶらかすルルが悲惨な死を迎えるという官能的で退廃的な物語にスラップスティックな演出が施されていて、笑える場面が多くあったのが意外でした。
1幕と2幕でストーリーや小道具等、色々な要素がシンメトリックに対応していて、それを象徴するかのように鏡を多用していたのが印象的でした。
上半身裸や下着姿等、露出の多いエロティックな雰囲気が濃厚でしたが、セックスシーンは直接描かずに見立てを用いることが多く、ユーモアが感じられました。

主人公のルルを演じたオフェリア・ポピさんは多様な表情と声色で男達を引き寄せては突き放す姿が魅力的で、まさに「ファム・ファタール」といった感じでした。
他の役者達も極端に太っていたり長身だったりと独特な外見や佇まいで、見世物小屋的な雰囲気があり、印象的でした。

ヴァイオリン、チェロ、ピアノによる演奏はあまり生演奏である必要性が感じられず、曲数が少なくて同じ曲が変奏もされずに何度も使われていたのも残念に思いました。

二月大歌舞伎

二月大歌舞伎

松竹

日生劇場(東京都)

2013/02/04 (月) ~ 2013/02/26 (火)公演終了

満足度★★★

福助さんが魅せる
市川染五郎さんが昨年の転落事故で怪我をして以来、初めての舞台でしたが、染五郎さんは控え目な感じがあり、むしろ他の役者達が印象に残った公演でした。

『義経千本桜 吉野山』
中村福助さんの品のある踊りが美しかったです。中盤から登場する逸見藤太を演じた中村亀鶴さんがおおらかなユーモアを感じさせ、楽しかったです。染五郎さんは動きが硬く感じられましたが、ラストで狐に戻る時の表情の変化が良かったです。
竹本と清元の掛け合いは少々不安定さが感じられ残念でした。

『新皿屋舗月雨暈』
怪談を元にした作品で、前半は策略にはめられ無実の罪を着せられ殺されてしまう妾の物語が痛ましい雰囲気で描かれ、休憩を挟んだ後の後半はその女の兄である酒癖の悪い男が真実を知って殿様の所に行く様子が思いの外コミカルに描かれていて、テイストのレンジの広さが魅力的でした。
目を引く大仕掛けや派手な立ち回りはありませんが、充実した内容に引き込まれました。
松本幸四郎さんの酔っ払い演技の間合いが絶妙で、笑えたりしんみりさせられたりしました。中村福助さんの全く異なるキャラクターの2役演じ分けが良かったです。

2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」

2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2013/02/14 (木) ~ 2013/02/24 (日)公演終了

満足度★★★

シンプルでエネルギッシュ
オイディプス王の呪われた運命をストレートで熱い演技で描き、強烈なエネルギーが感じられました。

ほとんどのシーンが絶叫調な台詞回しだったり、メインキャラクターの台詞に反応するコロスの動きが過剰だったり、効果音・音楽の使い方が説明的だったりと個人的に好みではない表現が多かったのですが、セットや舞台機構を用いたこけ脅し的な趣向や、スター役者の客演に頼らず、何もない空間の中で劇団のメンバー達の演技だけで冗長さを感じさせずにドラマを進めていたのが魅力的でした。

ロングコートに旅行鞄を持った姿で舞台の遥か奥の暗闇からゆっくりと手前に歩いて来るプロローグ的なシーンは、とても美しかったものの、本編との関連において必要性が感じられませんでした。
その後に続く、舞台中央に胎児のようなポーズで寝そべってゆっくり動く姿が、後に自ら目を潰し、のたうち回るオイディプスの姿と重ね合わされていて印象的でした。

ボロボロの衣装で、布でくるんだ遺体(?)背負ったコロスはメインキャラクター達以上に感情を露にして演じ、感情が高まるシーンでは叫びながら全員で三味線を掻き鳴らしていたのがインパクトがありました。

稽古期間中に蜷川さんが入院したため演出補の井上尊晶さんが演出を引き継いだ旨が当日パンフに書いてありましたが、蜷川さんも客席で観ていて、体調が回復している様子だったので良かったです。

ふりつけされたえんげき『君の知らない転び方』

ふりつけされたえんげき『君の知らない転び方』

ホナガヨウコ企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/02/16 (土) ~ 2013/02/25 (月)公演終了

満足度★★★

心地良いナチュラル感
ダンサーとミュージシャンのコラボレーションによる作品で、「ふりつけされたえんげき」と題されている通り、身体表現をメインにしつつも一貫性のある物語を感じさせる内容でした。

以前に工業高校で同期だった女性2人が東京で偶然出会って同居することになりつつもお互いに手紙のやりとりをするという不思議な距離感が描かれていて、特にドラマティックな展開がある訳ではない淡々とした描写ながら、退屈さを感じさせませんでした。
各エピソードをあまり詳細には描かず、色々と想像を巡らせる余白を残していて、開放的な雰囲気があって心地良かったです。

ホナガヨウコさんの動き・台詞も、木下美紗都さんの歌もあざとさのない自然体な雰囲気で、表現が素直に伝わって来る感じがありました。
70分と少し短めの上演時間でさらっと終わるのも後味が良かったです。

音や台詞と動きの関係が特徴的で、特にオノマトペを連ねた歌詞とシンクロして動くシーンがユーモラスで印象に残りました。
前半はマイム的な動きが多く、動作の止まり方が美しかったです。終盤ではホナガさんらしいキュートなダンスもあり楽しかったです。

セットや照明も手が込んでいて良かったのですが、作品の持つ穏やかな雰囲気に対して少々主張し過ぎなところがあったのが勿体なく思いました。

崩壊寸前

崩壊寸前

21世紀ゲバゲバ舞踊団

nitehi works(神奈川県)

2013/02/15 (金) ~ 2013/02/17 (日)公演終了

満足度★★★

魅力的な素っ気なさ
それぞれソロや他のカンパニーで活動しているダンサー達が全員で振付・演出をしたとのことで、良く言えば多彩、悪く言えばまとまりのなさが作品に現れていて、勢いを感じました。

金色の下着か水着のような衣装を着たダンサー達が、ドラムンベースに乗せてそれぞれが数秒のシークエンスを繰り返し続ける迫力のあるシーンで始まり、動きが少な目なソロと複数のダンサーが踊るシーンが交互に続く構成でした。
冒頭と最後以外は全員で踊るシーンはあまりなく、後半に進むに従って音楽が用いられなくなり、静かながらも充実した内容でした。
終盤はとても長い間隔を空けてカウントアップの声がダンスの流れとは無関係に流れ、不思議な効果を生み出していました。

振付は様々なスタイルが混在していて、笑ってしまうような妙なポーズやムーヴメントもあったりするのですが、変に笑いを取ろうとせずに素っ気ない感じで踊っているのが魅力的でした。
ユニゾンが多用されていて、同じ動きをするのが観ていて単純に気持ち良かったです。タイミングは揃っていましたが、形がたまにバラバラだったのが惜しかったです。

シャウレイの十字架

シャウレイの十字架

冨士山アネット

横浜にぎわい座・のげシャーレ(神奈川県)

2013/02/14 (木) ~ 2013/02/17 (日)公演終了

満足度★★

バベルの塔
男性5人が家具や家電に囲まれた中で、どこまで段取りが決まっているのか分からない無茶で危なっかしいパフォーマンスを繰り広げ、台詞や具体的な物語はありませんが、人類の欲と罪について考えさせられる作品でした。

床面が白いラインで台形に囲われ、その中にソファーやスチール棚、冷蔵庫、洗濯機等が乱雑に配置される中に男達が倒れこんでいる状態から始まり、十字に切れ込みが入っていて中心が光る天井面に触れようとして、家具や家電を積み重ねて登ろうとしては崩れ落ちるシークエンスが繰り返されました。その様子が、欲にまみれて神の逆鱗に触れたというバベルの塔のエピソードのようでした。

「テアタータンツ」と称しているものの、躍動感のある動きはなく、もがく様な緩慢な動きが多く、想像していた物と異なりました。アンバランスに物を組み上げた上に人が乗っては崩壊と共に高い所から落下するので、出演者が怪我をしそうでヒヤヒヤしました。

影絵を用いたシーン等、ところどころに印象に残るシーンがありましたが、全体としては冗長さが感じられました。もう少し動きのスピード・精度を高めて、上演時間もコンパクトにするとより魅力的になると思いました。

映像が投影される天井や、透け感のある衣装がスタイリッシュで、散らかった家具や家電と対照的だったのが良かったです。

DANCE TRUCK PROJECT vol.2

DANCE TRUCK PROJECT vol.2

Offsite Dance Project

TPAMメイン会場周辺(2月14日:開港広場、15日:象の鼻パーク、16日:KAAT神奈川芸術劇場)(神奈川県)

2013/02/14 (木) ~ 2013/02/16 (土)公演終了

満足度★★★

14日の回鑑賞
スピーカーや照明がセットされたトラックの中で踊る屋外公演で、第1日目はフェリーターミナル近くの開港広場で4組の出演者がそれぞれ10分程度の作品を上演しました。

きたまり
白のブラウスに紺のロングスカート姿で観客の視線に驚くそぶりをしながらウォームアップする導入に続いて、ストラヴィンスキーの『結婚』に乗せて踊る作品でした。オリジナルのニジンスカ版の振付と同様に、縦にジャンプし続ける姿が印象的でした。

白井剛
中央に吊した裸電球の明かりだけの中で静かに踊る作品で、振り子のように揺れる電球によって人物や木の幹の影が常に変化するのが美しかったです。トラックのエンジン音や船の汽笛等、周辺環境と同化する音響が逆に非現実的な雰囲気を生み出していて興味深かったです。

ほうほう堂
足を観客に向けて仰向けに寝た2人がゾンビや幽霊のように手足をぎこちなく動かす前半と、立ち上がってラップミュージックに乗せて踊る後半からなる作品でした。素っ気ない雰囲気の中にユーモアが感じられて楽しかったです。

向雲太郎
白パンツ一丁に横浜にちなんだ赤い靴という格好で奥の壁で十字架に磔られたキリストのようなポーズから始まり、様々な感情を動きと顔の表情で表現する作品でした。様々に色が変化する照明によって照らし出された剥き出しの肉体が美しかったです。

½PAナイッ!?

½PAナイッ!?

KUNIO

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2013/02/13 (水) ~ 2013/02/14 (木)公演終了

満足度★★

中途半端な意図
普段はいわゆる商業系の演劇やミュージカルを上演している大劇場での公演で、パフォーマンス的な内容になるかと想像していたのですが、物語性のある作品でした。しかし、大空間の使い方とラッパーのZEN-LA-ROCKさんの登場のさせ方に力を注いでいて、それ以外の要素の扱いが大雑把で残念でした。

舞台の上にイントレでT字型に組まれたステージがあり、そこに向かって客席の後ろから次々と役者達が歩いて行く印象的なオープニングの後、杉原さんが出てきて舞台上に置かれたクッションに移動するように指示され、近い位置で芝居を観る形になり、クライマックスでまたしても移動を指示され、普段経験出来ない光景が見られて楽しかったです。

ヒップホップに憧れる男子中学生の青春物語をハイテンションでスピーディーな演技で見せる内容でしたが、とても安っぽいストーリーで、その安っぽさを相対化するような意図や手法も感じられず、演劇としての面白さが感じられませんでした。

空間が広く、役者もマイクを使用していたので、音楽をもっとガンガン鳴らした方が観客を巻き込めると思いました。大勢の役者が出演しているのに、冒頭のシーン以外ではあまり活かされていなくて、宣伝文にあるような「パレード/行列/行進」というモチーフが見えて来なくて残念でした。

ロックオペラ モーツァルト

ロックオペラ モーツァルト

ネルケプランニング

東急シアターオーブ(東京都)

2013/02/11 (月) ~ 2013/02/17 (日)公演終了

満足度★★★

現代と過去の併置
モーツァルトの生涯を、映画で有名な『アマデウス』と同様にサリエリを語り部にして描いた作品で、歴史物というよりかはエンターテインメント性を強調した内容でした。

モーツァルトの少年時代から成功、挫折、そして死ぬまでが次々に展開するのですが、各エピソード間の連続性が弱くてドラマとしての盛り上がりに欠けると思いました。それにも関わらず、各シーンで感情が高ぶった演技や歌唱が行われることに違和感を覚えました。
モーツァルトとサリエリが会う前の時代を描いた第1幕で既にサリエリは登場するものの台詞だけで歌がないので、もしかしたら日本ヴァージョンを作る際に『アマデウス』に似た構成に脚色したのかもと思いました。
頻繁に出てくる、運命と苦悩を象徴する異形のキャラクターがあまり活かされていなくて勿体ないと思いました。

ライブ会場のようなスチールトラスに囲まれた舞台の中央には古典建築の柱頭を模した大きな回り舞台があり、衣装も現代的なデザインとクラシカルな服装が混在し、芝居の部分のBGMはモーツァルトの曲を弦楽四重奏で演奏して、歌う曲は80年代的雰囲気の漂うロック調、と現代と過去の様式を併置していたのが印象に残りました。
曲に関してはモーツァルトの名曲に比べてオリジナルナンバーが弱く感じました。

山本耕史さんと中川晃教さんを初めとした歌唱や、アンサンブルのダンスは良かったので、モーツァルトという人間を描いたドラマとしてより、豪華で華やかな衣装や照明を駆使したロックコンサートのつもりで観た方が楽しめると思いました。

+GOLD FISH

+GOLD FISH

株式会社エンタテインメントプラス

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/02/07 (木) ~ 2013/02/16 (土)公演終了

満足度★★★

歌手達によるミステリー劇
歌手として活躍している人達が出演するミステリー作品ですが、ただ謎を解く話ではなく、自分の過去と向き合うというテーマが描かれていました。

本当の名を知る事ができれば過去を振り返ることが出来るという魚の名を明らかにするためにイギリスの片田舎にある洋館に集まったミステリーファン11人と館の執事が、近所で起きた殺人事件の犯人が紛れているかもしれない状況に置かれる物語で、終盤ではドンデン返しが続きスリリングでした。
ラストでこの作品のインスピレーションとなった現実にあった事件が明らかになるのですが、その事件をそれほど詳しくは知らなかったので、色々仕込まれていたと思われるネタを楽しめなかったのが残念でした。

途中から恋愛にまつわるエピソードが多くなっていくのは、話が安っぽく見えてしまい、面白さを感じませんでした。
所々にコミカルな場面があり程良く緊張感を解いていましたが、面白いとは思えないギャグに限って何回も繰り返されていたのには辟易しました。

歌手で固めたキャスティングながら演技が自然で、すんなりと物語の世界に入り込めました。歌はそれぞれの個性が出ていて良かったのですが、期待していた程には歌う場面がなく、せっかくのキャスティングが勿体なく思いました。
ドリアン助川さんが独特の存在感を放っていて、シリアスな場面でも笑いを取る場面でも表現力があり、印象に残りました。

リアルな質感がある洋館の大広間のセットがいかにもミステリー物の雰囲気を醸し出していて良かったです。

ドッグヴィル

ドッグヴィル

東葛スポーツ

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2013/02/07 (木) ~ 2013/02/11 (月)公演終了

満足度★★★★

ダンシング・イン・ザ・ダーク
家や道路が床に白線で書かれただけの空間の中で人間のおぞましい面が明らかになって行く様子を描いた映画『ドッグヴィル』(ラース・フォン・トリアー監督)を、全編ラップの台詞でヒップホップテイストにカヴァーした作品で、癖になる脱力感と時折見せるエッジの鋭さが魅力的でした。

映画と同様に白ビニールテープで家や道路が表され、壁面に映画の各章の冒頭から数分が映された後、役者達の演技に引き継がれる構成で、時には映像をチラチラ見ながらシンクロして演じる場面もありました。
レイプシーンや主人公が大事にしていた人形を壊されるシーン等、エグいシーンはカットしたり可愛い表現に置き換えられたりしていて気楽に観ることが出来ました。時事ネタや演劇業界ネタが楽しかったです。

最終章の主人公と父が車で街を出る場面で急にミュージカル映画『バンド・ワゴン』の『ダンシング・イン・ザ・ダーク』のシーンが映され、それに合わせて役者2人が外に出て夜の公園で踊るのですが、『ダンシング~』の最後が馬車に乗り込んで終わるのと『ドッグヴィル』のラストシーンが繋がり、さらにトリアーさんの前作のタイトル『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を想起させつつトリアーさんが偽善的な「良きアメリカ」を嫌っていることにも繋がり、幾重にも意味を重ね合わせた見事な演出となっていて素晴らしかったです。
ちなみに外の公園ではサイリウムを持ってヲタ芸の練習をする若者達が沢山いて、その中を駆け抜けていく様子がシュールでした。

ラップがビート乗り切れていない箇所が結構あったり、マイクがハウリング気味でリズムトラックとのバランスも悪くて台詞が聞き取りにくかったのが残念でした。

「Books, Phantoms」パフォーマンス

「Books, Phantoms」パフォーマンス

大橋可也&ダンサーズ

NADiff a/p/a/r/t 店内(東京都)

2013/02/09 (土) ~ 2013/02/10 (日)公演終了

満足度★★★

店内を漂う幽霊達
大橋可也&ダンサーズの写真集の出版に際したアートブックショップでのインスタレーション展示の関連企画で、男1人と女3人のダンサーにチェロの生演奏が加わった、殺気とエロティシズムが感じられるパフォーマンスでした。

前半は4人のダンサーがそれぞれに店の中をゆったりと移動し、時には店の外にも出て踊り、後半はエントランスのギャラリースペースと店内の照明が消された店内とに2人ずつに分かれて踊る構成でした。
いわゆるダンサンブルな動きはほとんどなく、もがくような動きの振付でしたが緊張感があって引き込まれました。時折急に走り出したり、螺旋階段を上り下りするのが不穏な雰囲気を生み出していました。

ダンサーの写真が貼られていたり、窓のガラスに姿が反射したり、踊る姿をリアルタイムで壁に投影したりと、ダンサーの像が増殖していく様が、まさにタイトルになっている幽霊の様でした。
展示スペースには音がフィードバックするようにベースとアンプがセッティングされていて(実際には音を出していませんでした)、映写された壁面をカメラが撮ることによってフィードバックする映像と相似形をなしていたのが興味深かったです。

ココロミの種

ココロミの種

深林クラゲ

RAFT(東京都)

2013/02/08 (金) ~ 2013/02/10 (日)公演終了

満足度

空間サイズに合っていない演技・演出
若手3団体のオムニバス公演で、それぞれ30分程度の短編を上演しましたが、空間サイズに合わせた演技・演出になっていないことが多く、心地良く観ることが出来ず残念でした。

ビッケの一派『イヤミンイヤミン』
韓流アイドルのコンサートを聴きに行くために東京の従姉妹の家にやって来た姉妹とその従姉妹3人による、モテない20代後半ガールズトークを描いた作品でした。
狭い会場なのに、やたらと叫ぶ台詞があって聞き取りにくかったです。実際に食べた直後に観客の目の前で正面を向いて喋るのは気分が良くなかったです。
(満足度:★)

こじんしゅぎ『しろいカラス』
会社員の男と学生の女のカップル、男の上司の捻れた恋愛の物語で、ちょっと意外な展開が新鮮でした。上司の女装癖という設定で笑いを取るのは安易に感じましたが、後半の悲痛な嘆きに繋がっていたのが良かったです。
冒頭、舞台上で服を着替えることによって、言葉を用いずに年月の経過を表していたのが印象に残りました。
(満足度★★)

森林クラゲ『孤独なフラクタル』
毎日日記を書かないと死んでしまうという世界に迷いこんだ男が自分の過去の日記から生まれた人物と出会うことによって、自己を見つめ直すというファンタスティックな物語でしたが、青臭くて薄っぺらい印象が残りました。フラクタルの概念をもっと活用して欲しかったです。
個人的に児童演劇みたいな稚気を強調した演技が苦手なので、世界観に入り込み難かったです。
(満足度:★)

点滅、発光体、フリー

点滅、発光体、フリー

バストリオ

nitehi works(神奈川県)

2013/02/07 (木) ~ 2013/02/11 (月)公演終了

満足度★★

センチメンタルな断片
特徴的な台詞回しや身体表現を用いて断片的なエピソードを繋いで行き、失われていくものに対しての悲しみが浮かび上がって来る作品でした。

各エピソードの頭に「○○の話をします」と言って始まり、時には全然その話になっていないエピソードもありつつ展開し、話が収束するわけでもクライマックスがあるわけでもない、不思議な感覚が新鮮でした。中盤からはしんみりとした雰囲気が支配的で、あまり物語的に動きがないので、少々退屈に感じました。
受付やオペレーションのスタッフがさらっとパフォーマンスに加わっていたのがユーモラスで良かったです。

奥の壁や床面に映し出された、絶えず動き続ける抽象的なグラフィックの映像が美しかったです。特に流れるような多数の線が体を照らして変化する様が印象に残りました。キネクトを用いたリアルタイム処理の映像だったそうなのですが、何をトリガーにしているのかが分からず、もう少し関連性がハッキリと見えるシステムの方が良いと思いました。

音楽も良かったのですが、音量が少しだけ大き過ぎて台詞が聞き取れないことが何度かあったのが残念でした。

『モジョ ミキボー』再演

『モジョ ミキボー』再演

モジョミキボー上演委員会

OFF OFFシアター(東京都)

2013/01/30 (水) ~ 2013/02/11 (月)公演終了

満足度★★★★

目まぐるしい2人芝居
信仰する宗教が異なる2人の少年が無邪気に遊ぶ姿を通じて北アイルランド内の不安定な情勢が浮かび上がってくる物語で、根底にはシリアスなテーマがありながらも、2人芝居で17役を演じるというアクロバティックな手法を用いることによってエンターテインメント性が高い作品となっていました。

偶然に知り合った2人が夜に映画を観に行ったり、秘密基地を作ったり、他のグループに喧嘩を売ったりとしている中、テロが起こって片方の少年の親がそれに巻き込まれてしまうことから、2人に別れが訪れるというストーリーで、子供の世界に大人の政治的事情が入り込んで来る様子が物悲しかったです。

舞台上で次々に役が替わって行き、場面によっては1人で2人の対話を演じることもあるのを声や表情だけで表現していて、それだけでも瞬時に誰を演じているのかがはっきりと分かる演技力に圧倒されました。
途中で壁に映される映画のパロディーも2人だけで演じていて、馬鹿馬鹿しさが楽しかったです。

鵜山さんが演出した作品は大きな劇場での物しか観たことがなく、個人的には演出手法がしっくりと来ないことが多かったのですが、この作品では映像や照明や音響の使い方もとても効果的で、演劇ならではの表現になっていて素晴らしかったです。

インナーヴォイス ―内なる声―

インナーヴォイス ―内なる声―

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2013/02/06 (水) ~ 2013/02/08 (金)公演終了

満足度★★

シニカルなホームドラマ
新国立劇場の演劇研修所の修了公演として、イタリアの国民的劇作家(とのことです)エドゥアルド・デ・フィリッポの作品が上演されましたが、全体的に雰囲気がぎこちなくて流れが悪く、90分程度の上演時間にも関わらず時間が長く感じられました。

あるアパートに住む一家が隣人から殺人の嫌疑を掛けられたことによって家族に対するそれぞれの内なる声が露になって行くシニカルな物語を、次々に人が訪れて同じような台詞やシチュエーションが繰り返されるといったコメディータッチで描きつつ、最後は寂しく終わる作品でした。

虚仮威しのないオーソドックスな内容なため、役者の演技力がはっきりと現れていて、笑いを取れる箇所が沢山ありそうな戯曲なのに、間の取り方や台詞回しが上手く行ってなくて滑っているように感じました。笑いの要素がしっかりと表現されていないので、シニカルな要素もあまり引き立っていませんでした。前半で台詞を噛むのが目立ったのも残念でした。

登場人物の年齢が子供から老人まで幅広いのを20代後半の役者達だけでカバーするのは無理があると思いました。海外の戯曲を選んだことを含めて、研修生の人達に日常感覚に頼るだけでは形にしにくい役を演じるというハードルを課す目的があるのだと思いますが、公演として楽しめるレベルには達していないと思いました。

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