劇と短歌『飽きてから』
ロロ
ユーロライブ(東京都)
2024/08/23 (金) ~ 2024/09/01 (日)公演終了
実演鑑賞
同居する雪之、青、しっぽの3人組とその周りにいる、ちょっと不思議な人々をめぐる話。時系列が行ったり来たりし、彼らの人生の悲喜こもごもが語られる。場面転換の際にスクリーンに現れる上坂あゆ美の短歌もおしゃれなものばかりだった。偽名?を使うしっぽ、恋人の息子が好きなプリキュアのグッズをプレゼントしようとする薔薇丸など、キャラクターも魅力的。カップルや夫婦、親子と異なり、あまり一般的でない人々の同居は、きっと当人が飽きてからが踏ん張りどころなのだと思う、たぶん。
朝日のような夕日をつれて2024
サードステージ
紀伊國屋ホール(東京都)
2024/08/11 (日) ~ 2024/09/01 (日)公演終了
実演鑑賞
おもちゃ会社「立花トーイ」の社員の世界、『ゴドーを待ちながら』の世界、そして哲学的な「私」をめぐる世界が次々に移り変わり、演じ分けられる。俳優の早いセリフと大きな動きと軽薄なやりとりで、文脈はつねにずらされ、遅延させられる。物語の核心にはいつまでたってもたどり着けない。あるいは、はじめからすでにたどり着いている? 新商品・メタライフは完成するのか、ゴドーはやってくるのか、そして私は、誰なのか?
笑の大学
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/02/08 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
広い舞台で瀬戸康史と内野聖陽のふたり芝居だが、広さを感じさせない巧みな演技だった。ストーリーもよく練られており、検閲をめぐる喜劇が最終盤で悲劇に大きく変わる。観客の感情の操り方を熟知している脚本家による上質な観劇体験だった。
紙屋町さくらホテル【7月17日~18日公演中止、山形公演中止】
こまつ座
高崎芸術劇場スタジオシアター(群馬県)
2022/07/30 (土) ~ 2022/07/30 (土)公演終了
実演鑑賞
1945年、新劇の団十郎の異名を持つ丸山定雄と元宝塚の園井恵子を主軸とする移動演劇隊「さくら隊」は、国の方針で広島へ根をおろすこととなる。空襲警報の鳴る中、演劇経験のない市民も巻き込んで「無法松の一生」上演に向けて練習を積む一行だったが、8月6日はやってくる。そして8月15日も……。史実を基にしたレベルの高いフィクション。笑いもあり、平和への切実な願いもある、濃密な演劇だった。
ハリー・ポッターと呪いの子
TBS/ホリプロ
赤坂ACTシアター(東京都)
2022/07/08 (金) ~ 2025/06/26 (木)上演中
実演鑑賞
ハリー・ポッターらの子ども世代がホグワーツに入学するところから物語ははじまる。原作か、せめて映画にひととおり目を通しておかないと楽しみにくいと思う。さすが赤坂ACTシアターを事実上の専用劇場にしているだけあって、舞台装置も大がかりで豪華。演劇でもあり、ショーでもあるといったところか。ストーリーも面白く、娯楽体験としてレベルが高かった。
最高の家出
パルコ・プロデュース
紀伊國屋ホール(東京都)
2024/02/04 (日) ~ 2024/02/24 (土)公演終了
実演鑑賞
高城れにが主演。家出した主婦が迷い込んだ先の劇場では、ひとりの客のためにいつまでも演劇が行われていて……という不思議な話。SFともいえるような愉快な設定で、展開も楽しかった。単に面白いストーリーというだけでなく、脚本の三浦直之なりの真摯で丁寧な思考をセリフから聞くこともできたのだけど、物語の核心に触れそうなのでネタバレ欄へ……。
S高原から
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2024/04/05 (金) ~ 2024/04/22 (月)公演終了
実演鑑賞
平田オリザ『東京ノート』と並ぶ、いわゆる「静かな演劇」の筆頭格。結核に似た架空の病気療養のためのサナトリウムが舞台。患者、見舞い客、看護師、医師らのやりとりは劇的な展開を生まず、ただ淡々と時間が過ぎる。ところどころに展開のタネのようなものは示されるが、それは最後まではっきりと開花しない。「静かな演劇」は、このような構成が「ゆるい」戯曲とセットで生まれるのだな、とよくわかった。
木ノ下歌舞伎 勧進帳
木ノ下歌舞伎
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/09/01 (金) ~ 2023/09/24 (日)公演終了
実演鑑賞
名作「勧進帳」を木ノ下裕一が補綴、杉原邦生が演出。ラップや電子音のBGMで「勧進帳」の世界がわかりやすく描き出される。シアターのほぼ中央に細長い舞台をつくり、それを挟んで客席をつくるという珍しい構造だった。義経一行と富樫ら関守は基本的に向き合う恰好で話が進んでいく。服装も言葉遣いも現代風でありながら、「勧進帳」のエッセンスが取り入れられている。この舞台では富樫が怪しい山伏の正体を見抜いていたのか、考え直すのも面白いと思う。
日本文学盛衰史
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2023/01/13 (金) ~ 2023/01/30 (月)公演終了
実演鑑賞
高橋源一郎の同名小説の舞台化。名だたる文豪たちが次々に登場、ナンセンスなやりとりを繰り広げ、最後には日本文学の未来へも思いを馳せる。腹を抱えて笑いつつ、文学の未来を真剣に考えたくなるハイクオリティーな演劇だった。夏目漱石や太宰治の名前がなんとなくわかるだけでもじゅうぶん楽しめる。もちろん文学の知識があればあるほど面白みが増す、味わい深い舞台でもある。