金閣寺 The Temple of the Golden Pavilion
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2011/01/29 (土) ~ 2011/02/14 (月)公演終了
満足度★★★★
見応えはある
三島由紀夫の作品を、宮本亜門が舞台化。基本的に何もない舞台上で、椅子や机やロッカーなどをさまざまなものに見立てる手法で、全体に抽象的で幻惑的な表現が多いが、物語自体はきちんと原作の流れに沿っている。実際の金閣寺は舞台上に登場せず、画像で1シーンだけ現われるだけだが、金閣寺に捕われた主人公の苦悩は巧みに表現されている。主たる登場人物の演技も見事だし、大駱駝艦による動きの滑らかさもまた作品の感触にフィットしている。柿落としということもあるのか、舞台美術・音響・照明・装置等、劇場のポテンシャルを存分に発揮しているが、何と言っても休憩込み3時間出突っ張りの森田は健闘である。終演後のオールスタンディングなど、ジャニーズ系のお約束っぽい部分はちょっと気になるが、商業演劇としては一定の成功と言ってよいだろう。
コドモもももも、森んなか
マームとジプシー
STスポット(神奈川県)
2011/02/01 (火) ~ 2011/02/07 (月)公演終了
満足度★★
何だか…
特別なセットを組んでいない温かみのある舞台上で、ある種抽象的で幻想的に展開される芝居は、実は主人公の記憶なんだろうな、と後で思う。前半の途中で、幼児役の演技がリアルでないなぁ、と思った瞬間から、ただただ鬱陶しい芝居になってしまった。後半の抒情性の感触は悪くなく、それを描くために前半にややトリッキーな状況が展開されるのだろうとは分かるが、ちょっと私のテイストではないなぁ、と思った。受付の対応はちょっと納得できなかった。
浮標(ブイ)
葛河思潮社
吉祥寺シアター(東京都)
2011/02/01 (火) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
本当に観てよかった
4時間と聞いて心配しつつ観に行ったのだが、とんでもなく良かった。作者・三好十郎の実生活を戯曲にしたような作品で、愛する妻の看病に専心する主人公の姿が、他の人々との関わりと事件の中で淡々と描かれるだけで、笑えるシーンもほとんどないのだが、10分の休憩2回を挟んでの3時間52分が全く長くない。ほとんどのシーンに出ている田中の力量と緊張感も見事だが、その看病を病身で受け止める藤谷の存在感も素晴らしく、他の役者陣も実に丁寧に役割を演じて、本当に観てよかったと思わせる芝居だった。
ソムリエ
靖二(せいじ)
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2011/01/28 (金) ~ 2011/02/01 (火)公演終了
満足度★★★
丁寧な「いい話」…だが
悪人は出て来ないけれど、それぞれの立場の違いで様々な事件が起こるという、それなりのウェルメイドないい話。ただ、何の伏線もない終盤の出来事は、やはり唐突に過ぎる。2時間は飽きることのない長さだが、細かいエピソードを切ったり、テンポにメリハリを付けたりすることで、もう少し短くした方がインパクトのある舞台になったような気がする。でも、気持ちの良い芝居だった。
世界の百貨店
サモ・アリナンズPRODUCE 劇団ワンダフルズ
駅前劇場(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★★
下らないことを本気でやるのが楽しい
サモ・アリナンズの小松和重が中心となり、荒川良良ほかのメンバーで、大の大人が本気で下らないことをやりきっているという公演だが、2年4か月ぶりの第4回公演。前回も参加した浅野和之も含め、力があるんだかないんだか分からない味のある役者達が、真面目に意味のない芝居に徹する(^_^;)。千秋楽ということもあって、いろいろと余分なファクターが入ったらしいが、とにかく、苦笑と爆笑の2時間だった。家納ジュンコの覚悟を決めたバカさ加減も見事。
雨と猫といくつかの嘘.
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2011/01/30 (日) ~ 2011/02/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
見事だった
再演で、初演も観ているが、実に優れた作品である。還暦を迎える風太郎の誕生日の記憶。誕生日はなぜかいつも雨、という風太郎と、常に飼っていた猫の物語と、記憶の中で微妙に美化される過去が、時間軸を何度も前後し、事実か幻想か判別し難い感触の、優しい抽象劇として終局に向かっていく。切ない面が強いが、人間の優しさを信じる吉田小夏の脚本が見事で、俳優陣も極めてタイトな演技で丁寧に表現する。安心できる緊張感、といようなものを楽しめる舞台だった。
コイツらありき。
電動夏子安置システム
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
観に行く方も、コイツラありき
通常は主宰の竹田哲士の書く「ロジカル・コメディ」を上演する劇団だが、劇団員の力量が話題になることが少ない(という不満が竹田にある)らしく、劇団員を前面に押し出したオムニバス作品。竹田の作品のほか、殿様ランチの板垣雄亮、ホチキスの米山和仁が提供した作品や、渡辺美弥子がやっている「ある女」シリーズもあり、それぞれに楽しい。その場で抽選して役を決めて即興で演じる「夏の夜の夢」は期待したのだが、意外にハズレてしまったのが惜しい (^_^;)。
くちびるぱんつ
ぬいぐるみハンター
王子小劇場(東京都)
2011/01/27 (木) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★★★
シンプルに面白い!
現代の人々、30XX年の人々、宇宙を旅する銀河鉄道999の人々とそれに乱入した人々、という3つの物語が、途中から混在し絡み合って、ワケが分からないけど、ひたすら楽しい物語を展開する。大型ダンスシーンなどもあり、キャットウォークも舞台として使って動きも激しく、極めて自由で大きいのに、主張はない、という、若さが良い意味で爆発した舞台で、楽しい時間を過ごさせてもらった。東大劇研時代の野田秀樹はこういう舞台をやっていたなぁと思い出してしまった。
『Prism』
*rism
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
カワイイだけじゃない
童話から題材を取りつつ、4人の作家がそれぞれの特徴を出しての短編を4本。全体を通して、女子の「カワイイ」を全面に出しつつ、カワイイだけじゃない実のある芝居をしっかりと作っていた。
最低の本音
月刊「根本宗子」
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/01/26 (水) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★
ちょっと残念
やろうとしていることへの感覚は分からないでもないが、芝居がかえって難しくなってしまっている気がする。テキストも充分に整理されていない感じがあって、ちょっと勿体ないなぁ、という感じか。もうちょっと観てみようとは思う。
明るい表通りで― On The Sunny Side Of The Street―
文月堂
シアタートラム(東京都)
2011/01/27 (木) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
結構ビター
この劇団には、丁寧に練られた物語で何となく「いい話」に終着するような印象を持っていたのだが、本作は結構ビターだ。さまざまな状況から苦しい立場に追い込まれながら明るさを失わない人々の群像劇だが、ある種のハッピーエンドかと思わせておいて、芝居の中で流されていた伏線がエンディングに炸裂する。そこが実にビター(^_^;)。役者陣は皆達者で、脚本の持つ細かさを巧く表現できている。と同時に、小さい劇場でやっている劇団にとっては、トラムの広さは難点になりかねないのだが、勢いのある演技で広さを巧く使っている。特に、鯉和鮎美の元気さは特筆もの。FUKAIPRODUCE羽衣で観たときにはパフォーマンス系だったので、ストレートプレイではどうか、というのが実は最大の興味だったのだけれども、予想をはるかに越えた安定した演技だった。というわけで、相当に満足した2時間弱だった。
水底の静観者
猫の会
「劇」小劇場(東京都)
2011/01/26 (水) ~ 2011/01/31 (月)公演終了
満足度★★★
勿体ない(^_^;)
主人公と覚しきダメ男の抱える孤独の物語なのか、彼を含む家族の物語なのか、全体の群像劇なのか、今一つ焦点が絞れていない感じが勿体ない。また、オープニングでの細かな動きから提示される人間関係が、小さな部分ではあるが、いくつかの違和感を感じてしまった。役者陣は丁寧に演じ、全体はよくできた話になっているだけに惜しい。
新妻聖子ひとり芝居「青空…!」
トム・プロジェクト
赤坂RED/THEATER(東京都)
2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
熱演である
少し面白い(ある意味ありえない)環境の中で、自分を再生する女性を新妻が演じる。一人芝居の常套手段として会話の相手を作るのだけれども、それが亡くなった祖母ということで見えないことに違和感がない。ただし、彼女が自分の苦難を乗り越える物語なのか、祖母が経験した戦争の物語なのか、その辺がやや曖昧な脚本には若干の違和感がないでもない。途中、新妻の歌を4曲入れるなど、彼女の特性を活かした作りは、全体としては成功していると思うけれども…。
パパ・タラフマラの白雪姫
パパ・タラフマラ
あうるすぽっと(東京都)
2011/01/20 (木) ~ 2011/01/24 (月)公演終了
満足度★★★
それなりに楽しんだ
ここを観るのは初めて。演劇というよりパフォーマンスという印象で、分からなかったらどうしよう、と思っていたが、元の物語が有名なので、筋を追いつつ、独特の「解釈」の部分も何となく伝わってきていて、パフォーマンス系に弱い私でも、それなりに楽しめる舞台だった。
国民傘
森崎事務所M&Oplays
ザ・スズナリ(東京都)
2011/01/21 (金) ~ 2011/02/13 (日)公演終了
満足度★★★
若い
一応は3つ物語がありつつも、それらが複雑に入れこんでいて、しかも、岩松らしく適度に不条理。エンディングもやや呆気なく、非常に不思議なテイストの作品だった。初舞台も含めて舞台経験の少ない役者も多い中、全体の感触に未熟な部分はなく、面白い、という表現が適切かどうかは分からないけど、意味はある2時間半だった。
アレルギー【公演終了!!!ご来場誠にありがとうございました!!!!】
ギグル
王子小劇場(東京都)
2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★★
即興、……なんですよね
登米裕一が構成と演出をしているものの、基本的には役者のエチュードの連鎖で作品を作るという試みの第1回。ほとんどの部分でセリフは決まっていなくて、設定とキーワードで上演するということで、毎日違った作品になっていくのだという。コント集っぽい作品なので、全体の感触はU-1グランプリにちょっと近い気もするけど、微妙なユルサが何となく楽しい。
エモーショナルレイバー【ご来場ありがとうございました!】
ミナモザ
シアタートラム(東京都)
2011/01/20 (木) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★★
母性、…か?
振り込め詐欺をする人々の中で様々な事件が起こる群像劇。全く感じが違う2人の女が「母性」というポイントで繋がっていくことが一応の軸になっているように思う。男性陣にはリアリティを感じるのだが、女2人は少しステレオタイプな印象があり、にもかかわらず繋がるというのが狙いなのかとは思うが、少し飛躍がある感じがしないでもない。
SWEETS
ehon
座・高円寺1(東京都)
2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★★
痛い物語に少しの救い
少しずつ痛んだ「家族」と周辺の人々の物語は、葛木らしい毒のあるファンタジー、かと思っていたら、終盤に悲惨な方向に向かってしまうのだけれども、最後に少し救いを残して終わるあたりでようやく気持ちを前に向けることができる。痛いがそれなりに分かりやすい作品だが、物語の展開を字幕で進めるという手法は多用しない方がいいように思った。
水飲み鳥+溺愛
ユニークポイント
「劇」小劇場(東京都)
2011/01/18 (火) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★★
傾向の異なる2作品
感触の全く違った1時間程度の2作品を上演する。1本目の『溺愛』は、実話をベースとしつつも、抽象的で幻想的な表現で実話の持つ悲惨さを和らげているが、事件の全体をタイトルで表現しているあたりは面白い。もう1本の『水飲み鳥』は打って変わってのリアルっぽい作品。高校時代、同級生で演劇部だったメンバーの一人の葬儀の夜、地元に残って小学校の教員をしている森(泉陽二)の家に、東京で今も芝居を続ける小林(洪明花),地元で結婚して暮らす山下(森宮なつめ),東京で会社に勤める磯部(古市裕貴)の4人が集まる。語り合う内、4人の中で様々な記憶と、現状での微妙な食い違いが表出する。ディテイルを丁寧に描いた好作品。
ヒールのブーツ
オーストラ・マコンドー
JORDI TOKYO(東京都)
2011/01/14 (金) ~ 2011/01/19 (水)公演終了
満足度★★★
感触の芝居
とあるブティックを舞台にした群像劇。物語はいろいろあるが、基本はマコンドーらしい感触の舞台で、ロジックで説明できない/しない部分が含まれているのは、いつもの通り。この感触を楽しめるかどうかがポイントなんだろうなぁ。