15 Minutes Made TOUR
Mrs.fictions
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/04/07 (木) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
今までで最も面白かった
6劇団が15分ずつのオムニバス公演だが、今回は初めて関西の劇団が参加し、大阪ツアーもやるのだという。
大阪の劇団ミジンコターボはベタな高校生コメディだが、途中で「長い」と言われて、そこまでのシーンを一気にダンスで見せてしまうあたりとか、全体のスピード感とか、若さを感じさせてくれる。競泳水着は劇団員による2人芝居だが、少し笑えて少し泣けての抒情的な展開は、期待通りの競泳スタイルだと思う。続くロロは、夏の熱さの中で展開される、不条理だけど感触のある舞台を作ってて、その感触が心地好い。
休憩後に登場した大阪の劇団ガバメンツは、ファーブルの昆虫記をベースに、かなりキチンと笑えるストレート・コメディ。続く、FUKAI PRODUCE 羽衣「浴槽船」は、歌とパフォーマンスという点で他の劇団とテイストが違うので少し得してる感はあるように思うが、お風呂の至福への讃歌は実に見事(^_^)v。ステキだった。最後の Mrs. fictionsは2人芝居。出産に関わる2人の会話は、思いがけない方向に進んで、巧みな物語が展開される。発想の巧みさで楽しませてくれる。
東京の劇団も厳選されている感じがして、全体として非常に面白いものばかり見せてもらった気がする。
東京の空に
オーストラ・マコンドー
王子小劇場(東京都)
2011/04/02 (土) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
感触の芝居
ワンルームマンションの隣人である3人の若い女性(岡田あがさ・和希沙也・梅舟惟永)を巡る物語から、東京の孤独、みたいなのを描きたいように思えるが、ロジックというより感触の芝居になるのはマコンドーの特徴かと思う。悪くはないが、今回は何か足りない感じがしてしまう。力量ある役者を集めているのだから、もっと巧く使えるはず、という感じなのかもしれない。
時間創造部
ワーサルシアター
ワーサルシアター(東京都)
2011/03/09 (水) ~ 2011/04/10 (日)公演終了
満足度★★★
ハイブリッドっていうのは…
矢部大の書籍をベースにしたハイブリッド演劇、というので、ちょっとオッカナビックリな感じで観に行ったのだけれど、割と普通の演劇として楽しめるものであった。ちょっと普通の演劇ファンが敬遠してしまわないかな、と心配。 個々の役者の個性を際立たせているあたりは巧い。
国民の映画
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2011/03/07 (月) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
堪能
2幕3時間の大作だが、三谷幸喜らしい実に計算された見事な作品が展開される。三谷の得意なリアルタイムの芝居の中で、それぞれの登場人物のキャラクターがしっかり設定され、芸術を愛しながらも、ナチスの不合理に協力していってしまう人々の心の動きが丁寧に描かれる。今回の役者陣の中では相対的に若手である吉田羊が、いかにも場違いな駆け出し女優をしっかり演じる。そして、風間杜夫の重厚でしっかりした演技と、その風間と対決する新妻の凛々しさも際立つ。また、老優という設定の小林勝也の演じるシーンも見事である。また、映画シーンほかでピアノや効果音を出すピアニスト(荻野清子)は、セリフは全くないものの重要な存在である。しかし、何と言っても小林隆があまりにも素晴らし過ぎる。いかにも重い内容の作品だが、堪能、という言葉がぴったりくる舞台だった。
トップ・ガールズ
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2011/04/01 (金) ~ 2011/04/24 (日)公演終了
満足度★★★★
女優陣の見事さを楽しめる
オープニング、強烈な個性の女性陣の会話が爆笑というより苦笑を起こすのだが、現実の話題に戻ると、そこでは厳しい話題が様々に展開される。いろいろなタイプの、ある意味典型的な女性像を並べ続けることで、基本的にはチャーチルが戯曲を書いた時期の女性が置かれた状況を描いているように見えるのだが、そこにはある種の普遍性があり、エンディングはちょっと恐ろしくもある終わり方となる。終始、キリリとした女性を演じる寺島や、貫禄の麻実の存在感は明らかで、この2人が対決するシーンの緊張感はなかなかのものである。他の女優陣ももちろん見事なのであるが、軽やかさをまとった小泉、そして、粗野な男勝りのフリートから16歳の少女に転換する渡辺の怪演ぶりはスゴイ。見て損はない、ある意味で壮絶な舞台である。
とても個人的な物語【公演終了いたしました!ご感想お待ちしております!】
Minami Produce
新宿眼科画廊(東京都)
2011/03/26 (土) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
感覚の芝居…、かな
現実と妄想と、そして実は過去が混じった一種幻想的な舞台。ロジックの積み上げと言うより感覚で見せる。印象は悪くないけど、主人公の小説家の、書くこと/書いたこと/書けないことへの根拠はもう少し見せてもいいのではないかとは思った。
月にぬれた手
舞台芸術学院
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2011/03/25 (金) ~ 2011/03/31 (木)公演終了
満足度★★★
落ち着いたファンタジー
舞台芸術学院60周年を記念して、卒業生による公演を行なうことになったという。渡辺えり(25期の)脚本、鵜山仁(27期)の演出で、高村光太郎を描く。さまざまな年代の役者陣が折りなすファンタジーは渡辺えりの幻想性が良い形で出てきていると思った。発見があるわけではないが、心が落ち着く楽しい舞台だった。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
『変な穴(男)』
昨日観た作品を男女を入れ替えての上演で、MUではよくある「反転」バージョン。元々は、こちらの男バージョンがオリジナルだった。女編に比べると、残念ながら主人公の狂気が今一つ弱く、ドレーに対する乱暴な言葉遣いが似合わないのが惜しい。登場人物によっては男編の方が説得力があるので一長一短はあるけど、個人的には女編が好きかな、っていうところか。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★★
『変な穴(女)』
まぁちょっとありえない設定なのだけれど、「穴」という存在に強い説得力があり、それを埋めたいために一種の狂気に走る男(太田守信)が切実な存在として浮かび上がる。一方で、それを虚無的に共感する外山弥生の存在が見事で、この2人の狂気に、そこまではいけない他の人々が翻弄される展開が、結構切なく迫って来る。その意味で、キャラを書き分けた脚本と、それをしっかりと演じた役者陣は巧いが、なかでも狂気を背負った太田と外山が秀逸である。
無い光/変な穴(御来場ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/24 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了
満足度★★★
『無い光』
全体に、20分を65分に延ばしただけみたいな印象が拭えないのが惜しい。短編では活きていた題材が、65分ではあまり活きていない。やはり、短編とは違うエピソードがもう一つ必要だったのではないだろうか。それと、かなり笑えるはずのシーンがいくつかあるのに、笑ってはいけないような感触があり、その辺の焦点の当て方も工夫の余地があるように思う。面白いテーマの作品なのだから。
裏屋根裏
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2011/03/20 (日) ~ 2011/03/31 (木)公演終了
満足度★★★
「裏」の意味が…
「屋根裏」と呼ばれる小さな部屋のようなものが作られ、様々な人々がその中で行なう様々な行為が、短い場面の連鎖で展開される。全体を通して、「屋根裏」を作ったのは誰か、という謎も関わっており、徐々に様々な感触があぶりだされる感じが面白い。ただ、基本的には言葉が大切な作品だと思うので、あえて外国人を起用して字幕でセリフを見せる、ということの意味が重要には思えなかった。
カラスの国
サスペンデッズ
シアタートラム(東京都)
2011/03/17 (木) ~ 2011/03/23 (水)公演終了
満足度★★★
分からないけれど…
全体を通して、父、というキーワードが一つあるのだが、物語としては何だか分からない。しかし、何だか分からないけど何だか面白い、というタイプの不思議な芝居だった。石村みかの佇まいは、どんな芝居で見ても美しいと思う。
怪盗ルパン 竹久夢二の双曲線
月蝕歌劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2011/03/19 (土) ~ 2011/03/23 (水)公演終了
満足度★★★
構成がやや複雑過ぎか
竹久夢二が、大正デモクラシーの中心人物である大杉栄や神近市子などと関わりがあったことをベースにして、そこに残酷絵で有名な伊藤晴雨を加えての男女の関わりも含めた人物関係を中心に置く。竹久と伊藤をデモクラシー運動と絡めたまではよかったが、ルパンの介入がやや唐突で、ちょっと流れが分かりにくくなっていたように思う。やや役者不足な印象は拭えず、特定の役者の力量に依存してしまったのも惜しい。
オペレッタ 黄金の雨
ピーチャム・カンパニー
タイニイアリス(東京都)
2011/03/18 (金) ~ 2011/03/28 (月)公演終了
満足度★★★
音楽劇にする意味はどうかな
生バンドを入れての音楽劇は、意外な面白さに満ちていた。中沢新一の「アースダイバー」をベースにして、現在の新宿が「新宿」になる物語を描く。中沢の作品は小説ではなく東京論らしいのだが、そこを巧みに使ったストーリー作りが面白い。また、誕生時の歌舞伎を現代的に解釈すれば、ロックバンドの演奏と英語を交えたセリフという展開は理解でき、全体に、壮大なフィクションをしっかりと維持する構成力はある。残念なのは、歌がイマイチ。ミュージカルとかオペレッタとかのレベルは期待していなかったが、音楽劇としても、どうかなぁ、という人がいたのは確か。全体には非常に面白く見せてもらっただけに惜しい。
シングルマザーズ
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2011/02/20 (日) ~ 2011/03/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
笑うしかないけど笑えない
ソシアルな題材を個人の立場や心の動きからしっかりと描くのは永井の得居とするところ(たとえば『歌わせたい男たち』)だが、いつもだともう少し笑いの要素が大きいように思う。今回は、震災後という環境もあるのだろうが、笑いの題材となるシングルマザーの状況がやっぱり悲惨で、ちょっと笑っていられないかなぁ、という感じもあった。でも、全体には丁寧に題材と向き合って、5人の登場人物もしっかりと描いてあるし、それを役者陣もきちんと表現した、優れた舞台になっている。吉田栄作は、初舞台も永井の脚本による『柔らかい服を着て』だったが、そこでの、段々とダメになる男とは逆に、シングルマザーとDVに段々としっかり向き合う男を演じて、永井脚本との相性が良いと思った。秀逸な作品。観られる人は観といた方がいい。
劣る人
elePHANTMoon
サンモールスタジオ(東京都)
2011/03/16 (水) ~ 2011/03/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
見事な「劣る人」たち
それなりに興味深いキャラクターの人々が描く物語は、トリッキーな部分は少ないが、少しずつジワジワと気持ちの中に入りこんできて、90分という長さながら、起伏と緊張感をしっかりと維持して見応えがある。もっと毒のある物語かと思ったが、こういった路線は、それはそれで充分以上に面白く観られる。実に秀作。佐藤みゆき演じるホステスの悪さが際立って見事で、彼女とえばら大介が対峙するシーンの緊張感はelePHANTMoonならではといってよいように思う。久々に観る重実百合健在も嬉しい。
解ける/恍ける
セカイアジ
OFF OFFシアター(東京都)
2011/03/17 (木) ~ 2011/03/21 (月)公演終了
満足度★★★★
奇妙な味がセカイアジ
かなり奇妙な感性の人々が描く物語は、ストーリーがあるようでいて何か変。さまざまな材料が解決しないままに終わって、奇妙な味が残るのが、返って面白い。 この味がセカイアジ?
デンキ島〜松田リカ篇〜
モダンスイマーズ
あうるすぽっと(東京都)
2011/03/09 (水) ~ 2011/03/16 (水)公演終了
満足度★★★
しっかりとした物語
日本海の架空の島での、どうしようもない所に落ち込んでいってしまう若者の物語。どうしようもない貧乏の中で、どうしようもない状況に追い込まれてい主人公くリカを前田亜季が好演。不良だったのに、オープニング・エンディングで真当な人間として語る野口かおる、従来からはあまり見せない独特の衣装・メイクで存在感を示したサツキ役の松永玲子、と、女優陣に見所は多いが、ショボイ不良を演じた野本光一郎が何となく気にいってしまった。全体に暗い内容だが、少しだけ希望を見せて終わるあたりに救いがあるように思った。
FILM STAR
TUFF STUFF
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2011/03/10 (木) ~ 2011/03/13 (日)公演終了
満足度★★★
アイデアが面白い
少年社中が2003年に上演した作品を、近年、少年社中で演出助手をしているという佐藤信也が脚色・演出しての作品。ストーリーが興味深いのと、割りと良く考えられた演出や舞台美術の巧みさで、飽きることなく緊張感を持って観ることができた。
未来永劫(再演)
年年有魚
相鉄本多劇場(神奈川県)
2011/03/09 (水) ~ 2011/03/13 (日)公演終了
満足度★★★★
丁寧な脚本、丁寧な演技
恋人との結婚を考える次女を中心に、長女・長男・次女・三女という4人兄弟それぞれの特徴や生き方が絡み合って、家族であることの意味を確認する、ウェルメイドな物語ができ上がっている。家族でない登場人物3人の内2人のキャラクターがかなり「不思議な人」になっていて、その「異物」が存在することで、逆に家族であることの意味が際立ってくるような良い脚本を、役者陣が丁寧に上演する。