ブスサーカス
タカハ劇団
ギャラリーLE DECO(東京都)
2013/06/26 (水) ~ 2013/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
再演でも見事
初演も観たが、再演でも初演の勢いはなくなっていなかった。5人の「ブス」が置かれた状況が、緻密に計算されたセリフの積み上げの中から浮かび上がってくる前半。そして、+1の女であるノリカに起こる事件をきっかけとして、それぞれの個性に応じた行動から、謎解きのようにして様々な真相が浮かび上がってくる後半。そもそもの脚本がよくできているのだが、女優陣が自分の役割を確実に担っていて、おそらく余人を以て変え難い配役だと思う。満足。
断色~danjiki~
ヴィレッヂ
青山円形劇場(東京都)
2013/06/14 (金) ~ 2013/07/07 (日)公演終了
満足度★★★★
予想外の感触の作品
青木豪の脚本をいのうえひでのりが演出する3人芝居。元々はユニット「おにぎり」に書き下ろしたものを改訂したのだそうだが、役者の雰囲気が全く違っているので、オリジナルが想像できない。死んだ母が残したクローンと住むことになった男を堤真一、母の若い頃にそっくりのクローンを麻生久美子、クローンを造り管理する会社の田中哲司という配役が絶妙である。ちょっとダメな感じの堤と、感情があるんだかないんだかの麻生、仕事熱心なようでいて裏に何かありそうな田中が作り上げる物語は、近未来の日本の有り様を提示しているようにも見えて、円形の独特の舞台感とも合わせて、不思議な感触の作品になっていた。舞台経験が少ないはずの麻生は、初舞台でもそうだったが、そうとは思わせない実に見事な存在感である。
Shut up, Play!!~喋るな、遊べ!!~2013ver.
オリジナルテンポ
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2013/06/21 (金) ~ 2013/06/22 (土)公演終了
満足度★★★
初めて観たけど…
大阪を本拠とする、ノンヴァーバル・パフォーマンスが東京に進出、ということで観に行った。映像と身体的表現を組み合わせ、音楽的な処理で全体を繋げ、観客を巻き込んでの舞台は今まで観たものとは少し違っていると思った。ただし、全体を繋ぐコンセプトみたいなものが感じられなくて、いくつかのシーンがややブツ切りになっている印象は否めない。セリフがないので、海外で評価されるというのは分からなくないが、少し分かり易くしすぎたのではないか、という印象が拭えない。
きれいなお空を眺めていたのに
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2013/06/19 (水) ~ 2013/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
こゆびには珍しい感触の群像劇
教師の父、美容師の母、引きこもりの兄、女子高生の妹、という4人家族のさまざまを描く群像劇。家族のそれぞれが抱える問題や事情や感触は巧みに絡み合い、独特の世界観を描く。こういった群像劇は、こゆび侍には珍しいのではないか。しかし、エンディングに見せる「美しさ」は彼ららしいものをしっかりと残す。
娘役の小野寺ずるが特に印象的。
バイト
カスガイ
テアトルBONBON(東京都)
2013/06/12 (水) ~ 2013/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
勿体ない
前科者ばかりが「バイト」で働く製紙工場。職員寮で、ワンマン社長の愛人だった女が死体で発見され、10人の「バイト」の中から犯人を決めろという命令を受けての会議で、慌てたり憤慨したり当惑したりするバイト達のさまざまなやり取り。登場人物のキャラクターは描き分けられているし、会議の中での緊張感ある演技にも見応えはあるのだけれど、そもそもの設定に相当な無理があるように思う。小劇場系では有名なシッカリした役者陣をこれだけ集めて、このストーリーは勿体ない。緊張感がなければ、もう少し評価は下がるかもしれない。
マリオン
青☆組
こまばアゴラ劇場(東京都)
2013/06/15 (土) ~ 2013/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★
いつもと少し違うけど、やっぱり青☆組
セーシェルゾウガメの物語を演じる旅役者の一座、を思い出している、その中の一人の女と、その女と一夜を共にした男が、翌朝語る会話、というスタイルで、三重構造で物語は展開される。ゾウガメの話は現代(より少し前?)だが、他の2つは、世界が果ててしまった「いつか」の未来、ということで、やや幻想系の感触もある。三重構造や物語の題材など、いつもの青☆組とは少し違ったテイストで芝居は展開されるけれど、ベースにある人間への信頼と失われていくものへの哀しさは吉田小夏らしい感触をしっかり残している。
軸になる大西玲子の成長が著しい。
不道徳教室
森崎事務所M&Oplays
シアタートラム(東京都)
2013/06/08 (土) ~ 2013/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
岩松流「不道徳」
川端康成の「みずうみ」をベースにしたそうで、高3女子と恋愛に落ちる「不道徳」教師が、道で擦れ違った風俗嬢(?)と語るシーンから始まって、高3女子にありそうな展開を含めつつ、岩松了の世界が展開される。ストーリーはそれなりに分かりやすいものの、言葉の選択が岩松ならではの味を持ち、独特の雰囲気を醸し出している。強烈に面白い、とかではないが、何だか不思議な2時間弱。
女子高生役の女優陣はなかなかいい。
劇作家女子会!
劇作家女子会×時間堂presents
王子小劇場(東京都)
2013/06/13 (木) ~ 2013/06/16 (日)公演終了
満足度★★★
面白い企画ではある
4人の女子劇作家が短編を書き、時間堂が黒澤世莉の演出で上演する企画。 黒川陽子の「彼女たち」はオープニングで第1部、エンディングで第2部と分かれるが、ありそうでなさそうであるかもしれない女2人の展開を面白く描く。第1部が笑い中心で、第2部は少し切ない感を出しているのが面白い。キャラの全く違う女優2人も好選択。 オノマリコ「Compassion」 とモスクワカヌ「バースデイ」は、どちらもそもそもが不条理系の作品を書く作家で、訳が分からないところはあるけど、それぞれある感触を残す。 坂本鈴「親指姫」 は、小学校3年生という予想外のベースに、メール・ラブレターを代筆する親指姫と仇名される女子と、一旦繋がった男女の縁を切らせて新しい付き合いを作り出す代筆男子(名前が秀逸)、という設定が実に巧み。存分に笑わせてもらった。
感触の異なる作家を集めた企画は面白く、時間堂の役者陣も成長を見せて、楽しい舞台だった。
帝国の建設者
アンサンブル室町
北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)
2013/06/12 (水) ~ 2013/06/12 (水)公演終了
満足度★★★
とにかく不条理
ボリス・ヴィアンの遺作である戯曲を、音楽ユニットであるアンサンブル室町が、石丸みち子を演出に迎えて、演劇的に上演する。ヴィアンだから、そもそもが不条理な物語で訳が分からないのだけれども、追い詰められていく家族の漠然とした不安/恐怖は巧く提示されていて、音楽がそれを効果的にフォローしていると言うことはできる。特に、エンディングの曲は、ひたすら上昇する家族の状況を音楽的に表現していたと思う。だが、演劇的に見て音楽が必須か、と言うと、そこには疑問がないとは言えないし、そもそもが音楽の側からの企画なのだから必須なのだけれど、不条理なだけに冗長感を感じる面もあったことは確か。舞台美術等、見るべきところはいっぱいある。
遅れて来た観客を、上演中の舞台を遮る形で案内するのはいかがなものか。
ヒットパレードvol.10
tea for two
キッド・アイラック・アート・ホール(東京都)
2013/06/10 (月) ~ 2013/06/11 (火)公演終了
満足度★★★★
手慣れた造り
この劇団の連続レパートリーであるシリーズだが、久々の上演だった。『まちぶせ』は妄想癖のOLが「まちぶせ」する物語を西尾早智子が巧みに演じる。『守ってあげたい』は再演で、男女の2人芝居だが、ダメ男を演じさせたら小森は巧く、今回の相手の天野が良い存在感を見せてる。『家族になろうよ』は、少しダメなサラリーマンを大岡が演じるが、これも巧い。
曲が変わることで、作り方は変化するのだろうけれど、いつも一定レベルをしっかり保つ、手慣れた作品群だと言える。
つく、きえる
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2013/06/04 (火) ~ 2013/06/23 (日)公演終了
満足度★★★
何だか難しい
いわき(と後で分かる)海沿いのホテルで、不倫し合う3組の夫婦と、ホテルをやっている青年、その青年とメールで繋がっている彼女、ら、が、それぞれの状況や感情を主としてモノローグで綴る物語。ドイツ人作家から見た3.11の断片という作品なのだけれど、不条理な感触も多く、分かりやすいとは言えない。シンプルな舞台美術に映像を重ねたヴィジュアルは見事だし、役者陣が役割をしっかりと演じていたことは確かだが、単純に面白い、とか、良かった、とかは言い難い作品だった。
帰還
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2013/05/31 (金) ~ 2013/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
題材は良いが…
川辺川ダム,八ツ場ダム等の題材を、坂手風に料理して、燐光群らしい作品に仕立て上げている。もともとは大滝秀治に当てて書いた作品だそうだが、老境の画家である主人公の過去と現在が混在する中で、社会的な話題を個人の感情を元に表現する手法は坂手らしい。ただ、作品の性質もあるのか、どうしても説明的なセリフが多くなってしまうあたりは勿体ない気がする。
キャンベラに哭く
桃尻犬
王子小劇場(東京都)
2013/06/05 (水) ~ 2013/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
何だか切ない
普通に笑わせる芝居かと思っていると、笑いが不条理な方向に向かい、不条理な切なさ、不条理な日常、普通の日常、等、いろいろな要素が入り交じって最後は少し切なく終わる。惜しむらくは、やや冗長かな、と。個別のエピソードを整理したり、収束をスッキリさせたりして、100分の芝居だったら、とても良い感じになるのだろうという気がしてしまった。メインの長井短は19歳らしいけれど、ヴィジュアルも含めた存在感は強い。
お客様の中にツリメの方はいらっしゃいますか?
ツリメラ
VUENOS TOKYO(東京都)
2013/06/03 (月) ~ 2013/06/03 (月)公演終了
満足度★★★
とりあえず楽しんだ
3人の女優が、独特の設定の下でユニットを作っての、CD発売イベント。それぞれが女優として出ている舞台を何度も観ているので、舞台上のキャラが「作られた」ものであることは分かってしまうから、そこを楽しめるかどうかがポイントかな、と思う。こういう「遊び」(余裕という意味)があってもいいと個人的には思うし、楽曲やパフォーマンスにも力を入れているのも分かって、ライブとして楽しいものだった。
今後の展開がどうなるか、注目したい。
ひょうたん池のたまりBAR
浅草リトルシアター
浅草リトルシアター(東京都)
2013/06/01 (土) ~ 2013/06/07 (金)公演終了
満足度★★★★
ストリップと演劇は巧みに融合
電動夏子安置システムの渡辺美弥子が出るというので観に行った。通常はストリップ小屋に出ている踊り子さんと女優が合体しての舞台で、通常はお笑いや一人・二人芝居用の小さな小屋での公演。浅草にある「あの世」と「この世」の境目にあるBARを舞台に、そこに関わる女たちの物語を、ストリップを交えて展開する。BARのママとしての渡辺と常連客の水野さやかが環境を作り、次々と4人の踊り子の人生が踊りを交えた芝居で展開される。
このユニットの旗揚げを観損ねていたのだが、正直言って踊り子さんの演技は大丈夫なのか、という不安がなくもなかった。しかし、考えてみれば、毎日シッカリ舞台に立っている人達なので、下手な小劇団の若手役者よりも遥かに確実に自分の存在感を主張できている。それらを必要以上に絡めないことで、芝居として何となく各々の女の人生/半生が透けて見えてくるのが巧い。その意味で、脚本の経験は少ないらしい牧瀬茜の力量はなかなかのもの。楽しい舞台だった。
客のほとんどは踊り子さんの本拠地での常連らしく、芝居の小屋とは少し違った雰囲気もまた楽しい。
短編集2013
ピンズ・ログ
劇場MOMO(東京都)
2013/05/22 (水) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
地味だが丁寧で秀逸
主宰・平林亜季子による短篇を4本。それぞれが独立していて、全体の流れのようなものはない。『ナポリの男』は夫婦とウェイトレス3人でやってるイタリアンレストランの隣の男が夫婦の知り合いに似ているという話。何だかほんわかする。『花嫁の友』は、ある女優の結婚を機に同じ劇団にいた女優陣が集まった夜の物語。明確かと思われた心情の背景に、実は…、的な話題を盛り込むことで、切なさと心安らぐ感じが共存し、4作の中で、最も私にフィットしてた。『鍵』は、退職する男と上司が、送別会の帰りに交わす会話。なるほどね、的な面白さはしっかりある。『スナックこいわ』は小岩のスナックで働く女性陣・常連に、突然入ってきた若い女性を交えた、そういうこともあるかも、的な真当な物語。ネタは途中で分かるけれども、それは作品の味わいを損なっていない、というより、やはりそうか、的に楽しめる。
全体に、物語の激しい起伏はないけれども、丁寧に言葉を積み上げていって、秀逸な舞台を作り上げていると思う。これでしばらくピンズ・ログとしての公演がないとは勿体ない。
獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは凄いぞ
イキウメは、一種SF的な仮設フィクションの世界を描くが、今回の設定も極めて興味深い。そして、それに動かされていく人々の描き方が巧妙で、2時間を少し越える芝居の中で、息をも継がせない展開と緊張感が見事である。このところのイキウメ作品では大窪人衛が面白い役割を演じているが、今回もなかなかの存在感である。ゲスト的存在の池田成志の演ずる役割も、彼ならではのものである。とにかくスゴイ舞台だった。
全長50メートルガール
踊れ場
RAFT(東京都)
2013/05/21 (火) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★★★
確かに会話劇
池亀三太は、ぬいぐるみハンターでは割りとブッ飛び系の芝居をやるのだけれど、この踊れ場では様々な試みをしている。今回は、23歳田舎女子5人が深夜のファミレスでとりとめもない会話を続ける形で物語が繋がれるけど、最初の4人のキャラクターが定まったところに、「あーぽん」ことあやかが登場し、このキャラが周りの4人にとってもブッ飛んでいて、なかなか手に負えない、という展開。3つの大きなフィクション(ありえない設定)を加えて、それらをまとめる作りは楽しい。ファミレスのウェイトレス役の中園も、一見マトモながら実は結構変なキャラで、全体として楽しい舞台だった。
アジア温泉
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
予想とは違ったが面白い
『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』に続く、鄭義信の新国立劇場3部作のラストというので、同じ系列の舞台を予想していたのだが、作品は新宿梁山泊に書き下ろした最後の作品なんだそうで、韓国演劇界の重鎮・芸術劇団の孫桭策が演出したことで、前2作とは相当にテイストが異なった作品となっている。歌と踊りを加え、観客も巻き込んでの、一種祝祭り的な舞台は、マダンノリの手法を感じる。物語は基本がロミオとジュリエットなのだけれど、寓話的な要素や希望を感じさせるエンディング等、観ていて安心できる楽しい舞台だった。
て
ハイバイ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2013/05/21 (火) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
安定した舞台作り
2008年の初演、2009年の再演、2011年のプロデュース公演を経て、劇団として再々演される。作・演出の岩井秀人の代表作と評されるだけの価値がある、安定した舞台だった。ほぼ実話に近い岩井の家族を描いたらしいのだが、同じ時間と空間を共有したはずの家族の間で、記憶や認識が食い違っていくのを、時間軸を何度も前後させながら巧みに描く。役者陣も手慣れたメンバーではあるが、それゆえに新しさよりも安定感が目立ってしまうというのは、贅沢な願いだろうか。しかし、面白く過ごさせてもらった時間だった。