満足度★★★★
予想外の感触の作品
青木豪の脚本をいのうえひでのりが演出する3人芝居。元々はユニット「おにぎり」に書き下ろしたものを改訂したのだそうだが、役者の雰囲気が全く違っているので、オリジナルが想像できない。死んだ母が残したクローンと住むことになった男を堤真一、母の若い頃にそっくりのクローンを麻生久美子、クローンを造り管理する会社の田中哲司という配役が絶妙である。ちょっとダメな感じの堤と、感情があるんだかないんだかの麻生、仕事熱心なようでいて裏に何かありそうな田中が作り上げる物語は、近未来の日本の有り様を提示しているようにも見えて、円形の独特の舞台感とも合わせて、不思議な感触の作品になっていた。舞台経験が少ないはずの麻生は、初舞台でもそうだったが、そうとは思わせない実に見事な存在感である。