『逆柱 ―追憶の呪い―』
鬼の居ぬ間に
小劇場B1(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/04 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/03/01 (金) 19:30
ひたすらダークな芝居だった。本劇団を観るのは3作目だが、いつも時代がはっきりしないで始まる。本作では途中で「第1次世界大戦」というセリフがあり、大正期の出来事を昭和20年くらいから回想しているのだと分かるが、時代は登場人物の言動の必然性を決める上で重要なものだし、何故そんなことするの?、という疑問がいっぱいで観ている芝居というのはややシンドイ。エンディングは希望と絶望がないまぜになる終わり方で、巧いと思った。
世界は一人
パルコ・プロデュース
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/02/24 (日) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/02/28 (木) 19:00
不思議な舞台だった。最近、ハイバイなど岩井秀人作品を観ていないのだが、路線が変わったというより、今回だけのチャレンジだったのだと思う。田舎町に育った3人(松尾スズキ・松たか子・瑛太)の子ども時代から高校生くらいまで、そして2人(松尾・松)が東京に出て、偶然に出会い、結婚し故郷に戻って瑛太と再会する…、という物語は確かに流れているのだが、抽象的なセリフや時間軸が不明になる場面などがあり、正体が掴み難い。生演奏を入れて音楽劇としたり、時に音とセリフを被せる手法を取っているが、そのことでやや冗長感が増したことは否めないように思う。
エーデルワイス
ブス会*
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/02/27 (水) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/02/27 (水) 19:00
ブス会らしい芝居だったけど、毒は少なかったように思う。鈴木砂羽演じるマンガ家は、一発ヒットで有名になったが、最近は書けなくなっている。編集の高野ゆらこにいろいろ言われるけれど、なかなか書けない。自分のマンガを読み始める内に、実はそのマンガが私小説的作品であることが分かり、藤井千帆が鈴木の若い頃に戻って、マンガ世界を再現する……。女子あるある的な作品だが、そこにリアルを感じるというより、40代女子の思いを込めているように思った。
莫逆の犬
神保町花月
神保町花月(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2019/02/25 (月) 19:00
ONEOR8の2008年の作品を、よしもとの役者も使ってリメイク。『ゼブラ』再演の直後の作品で、テイストが似ている。何か犯罪に絡んで(後半で事情は分かる)家に閉じこもる男と、その世話をするために一緒にすむ恋人の、10年に渉る物語。父が用意したアパートで一緒に繰らし始めるのだが、その関係が必然的に変わっていく流れを巧く描いてはいる。終盤の、恋人の「そういうのは思い出って言わない。出来事って言うんだ」というセリフは効いてる。ただ、ONEOR8らしさ、みたいなものが少し足りない気がするのは、役者が変わったことによるのだろうか。面白いけど喰い足りない気がした。
オルタリティ
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2019/02/22 (金) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/02/22 (金) 19:00
劇団員の6人だけで真っ向勝負の作品を作ったと言える。とある町の、「まちづくり推進課」窓口のある部屋だけが舞台。推進課と言いながらも、ただの苦情処理係と化しているような場所で、「正義・善」と「世の中・みんな」との対立を描く。極限状況の中でも正義や善は意味があるのか、を問い掛ける作品と言えるが、その答を出しているようで、実は出していない気もして、中津留らしい巧い戯曲になっている。最後は個人の感情を見せて終わるあたりが、私がトラッシュが好きな理由なんだろうな、と改めて思った。
休憩なし2時間35分という舞台は、本来は初心者に薦めるべきではないと思うが、演劇の持つ力を観てほしいという意味で、敢えて「初心者にお薦め」しておきたい。
平田オリザ・演劇展vol.6
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/02/15 (金) ~ 2019/03/11 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/21 (木) 20:30
『ヤルタ会談』を観た。元々は落語として書かれた作品を舞台化したものだということで、現実の「ヤルタ会談」がこんなだったらオソロシイ/面白いだろうなぁ、という30分。何だか不思議な感触に捕われる。
月に瞳のあこがれて。
perrot
王子小劇場(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★
初見の劇団。何だか面白かった(^_^;)。日本の過去/現在/未来を描く三部作の最後という位置付けの作品だそうだが、日本の話とも思えず、どこの何を描いたか分からないファンタジー作品として観た。ファンタジーなので、一応の設定はあるのだが、時折設定が破綻することがあったり、無理矢理な状況を描いたりもするのだが、エンターテインメントとして許せる範囲で一応は楽しく観ることができた。
ただし、Corichでは90分と書かれていて、Twitterでは120分と書かれていたが、実際は125分で、冗長感は否めない。
怜々蒐集譚 Reirei Syusyu Tan
Zu々
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/02/16 (土) ~ 2019/02/27 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/02/19 (火) 19:00
瀬戸早妃、久々の舞台を楽しみに観に行った。大正浪漫風味を加えたミステリー仕立てで、なかなか面白かった。マンガが原作の、所謂イケメン芝居ということになるのだと思うが、併映の映画が前日譚としてセットになっているらしい(映画は観てない)という作り方も興味深い。久々の瀬戸は相変わらず美しく知的な役所をしっかり演じていたが、元カクスコの岸博之が渋い味を出していたのも面白かった。
ただし、「入水(にゅうすい)」「潔い(いさぎいい)」などのセリフを聞かされると、役者または演出家の力量を疑いたくなってくる。そう考えると、間を取りすぎてて長くなってる気もした休憩込み140分(-_-;)。
接点 vol.1
チーズtheater
新宿スターフィールド(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/16 (土) 19:00
カラーの違う3劇団が持ち寄った作品を、オムニバス上演するのではなく、シーン毎に交互に上演するという面白い形式にチャレンジした。3つの作品そのものはそれぞれに面白い題材を扱っているのだが、チャレンジが成功したかどうかはやや疑問である。というより、敢えて混在させる意味は何か、というのがポイントで、混在させて出てくる味と、損なわれてしまう部分のバランスが問題だろう。チャレンジそのものには敬意を表したい。
芸人と兵隊
トム・プロジェクト
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/15 (金) 19:00
トム・プロジェクトらしい実直な舞台だった。劇団チョコレート・ケーキの古川脚本/日澤演出だが、社会派として知られる同劇団のカラーを出すというより、トムに合わせた作品作りになっていて、戦闘シーンが出て来ない反戦劇というのはなかなか興味深い。同じく社会派として知られるトラッシュマスターズのカゴシマジロー・高橋洋介がいい味を出しているが、やはり村井国夫の貫禄は流石で、エンディングの独白は実に見事だった。
カーテンを閉じたまま
Ammo
シアター風姿花伝(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/14 (木) 19:30
かのカンボジアの独裁者ポル・ポトの若き日を描いた、興味深い舞台だった。フランスに留学中のカンボジア学生たちが集まるアパルトマンで、新人歓迎のため『リア王』を上演することになるが、その稽古での支配-披支配の関係作りが、後のクメール・ルージュの手法と重なるあたりは面白い。インテリで後にポル・ポトの妻となる役を演じた石井舞などが、いい味を出していたが、登場人物が多すぎて、キャラクターを描き分けきれていないように感じたのがやや惜しい。タイトルは実に秀逸である。
雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた
流山児★事務所
座・高円寺1(東京都)
2019/02/01 (金) ~ 2019/02/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/10 (日) 14:00
千秋楽に観劇。本戯曲は2009年にコクーンで蜷川演出を観たが、それとはまた違った味のある芝居になっていた。客演の松本紀保の存在感が軸になっているが、圧巻は30人のジュリエットを多様に揃えたことだと思う。ある意味でアングラテイストを濃くしたものと言えようか。優れた戯曲を優れた役者(とスタッフ)が演じれば、優れた舞台になるという典型だとも思った。
夜が摑む
オフィスコットーネ
シアター711(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/12 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/09 (土) 18:00
1974年のピアノ騒音殺人事件を扱った大竹野の作品というので、もっとシリアスなものを予想していたが、不条理劇だったのに驚いた(*_*)!。面白かった。もっとも28歳の時の作品ということなので、今までに観た大竹野の作品とは作風が違っていても、不思議はない。アフタートークによれば、ト書きが如何様にも解釈できるものらしく、演出家の解釈で多様な舞台になることが予想されるのだが、詩森はある意味、真っ向勝負しているように思った。
卒業制作
しあわせ学級崩壊
王子小劇場(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/10 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/02/09 (土) 14:30
本劇団は初見。ハウス系ミュージックを爆音で流し、役者はマイクを使ってセリフをラップ調でしゃべる、というのは、この劇団の基本形らしい。物語らしい物語を展開するわけではなく、何となく状況からストーリーが分かる部分もあるのだが、最後まで分からないものも残る。新しいものを作ろうとしていることは分かるが、理解を超えてる部分もあるのだが、終演後、大拍手を送る観客が結構多いのに少々驚いた。
僕らの力で世界があと何回救えたか
タカハ劇団
小劇場B1(東京都)
2019/02/08 (金) ~ 2019/02/14 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/08 (金) 19:00
タカハらしい興味深い芝居だった。タカハらしい、と書いたものの、タカハらしさとは何か、良く説明できないのだが、込み入った謎が何らかの解決を見せるまでのプロセスの面白さということだろうか。高校時代、アマチュア無線部の部員だった3人が7年ぶりに部室に集まると、7年前に死んだと思われていた友人の声が、無線機から聞こえてくる…、という導入はいかにもありそうだ。しかし、新科学施設への反対運動やら女性市長と息子の対立やら、さまざまなエピソードを交えつつ、パラレルワールドまで持ち出しつつ、一定の解決を見るのは興味深い115分だった。
「いいもの見せてもらいました」と言ったときの、主宰・高羽彩の笑顔が忘れられない。
怪童
劇団献身
OFF OFFシアター(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/13 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/02/06 (水) 19:30
生まれてすぐ山奥に捨てられヒッピーに育てられた少女ユリカと、その山奥の小学校で育った少女オサムの2人の生涯の物語。本劇団はいつもそうなのか、前回観たとき同様、破天荒で無茶苦茶な物語が展開するが、悪い感じではなく終わるところに救いがあるものの、回収しきれないエピソードもあったりして勿体ない印象が残る。
この劇団は、役者の友人が観に来るケースが多いらしく、物語ではなくて、あいつがこんなことしてる、という笑いが多いのは、やや見苦しい。それと不要に長い前説も賛成できない。
本作後、再度留学する永井久喜はあんまり目立たない役だが、若い2人を立てる役割をしっかり演じてた。
PARTY PEOPLE
艶∞ポリス
駅前劇場(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/05 (火) 19:30
笑いっぱなし、というのではない面白さだった。とある金持ちの家でのパーティシーンと、安アパートの4畳半が対置され、お金があっても、なくても、幸せになったり、不幸せになったりするんだよ、という物語だと思った。時間軸を動かすのもありだと思うが、作・演出の岸本が「異物」を演じるのはちょっと反則技という気がしないでもない。ただ、TVドラマの劇作を通じて、一歩抜けた感じがするのは興味深く見せてもらった。
わが家の最終的解決(再演)
Aga-risk Entertainment
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2019/01/25 (金) ~ 2019/01/29 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/01/28 (月) 19:00
ナチスのゲシュタポのハンスがユダヤ人のエヴァと恋に落ち、家にかくまう、…、というシチュエーションコメディ。面白いのは分かるが、笑えない話題だと思った。巧妙な設定とある種無理矢理な展開は、いつものアガリスクだと思うが、当のハンスの言い訳があまりにもバカバカしく、すぐに破綻することが分かってしまう方向に展開する。そんな賢くない青年がゲシュタポになれるのか、という疑問と、序盤の「収容所に送らないでください」というセリフでいきなり萎えてしまった。結局の最終的解決も、ナチスの構造から考えて無理がありすぎる。日本人はナチスに関してハードルが低く、ちょっと無謀な展開に思えた。
帰郷
エイベックス・エンタテインメント
俳優座劇場(東京都)
2019/01/25 (金) ~ 2019/02/03 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/26 (土) 18:00
入江雅人企画による福岡県出身の役者6人での福岡を舞台にした作品だが、奇妙な面白さに溢れてた。1980年、中3だった5人組の内、向井(入江)と辰彦は東京に出るが、しげお(池田成志)ら3人は地元に残る。2011年、ヨーロッパで流行っていたゾンビウィルスが日本にも上陸し、命からがら日本を彷徨いつつ福岡に戻る向井だが、帰ってみると…。終盤30分以上を費やすドライブシーンが圧巻だが、そこでの池田の演技が物凄い。福岡愛に溢れた作品である。客席に微妙に空席が残るのが、なんとも勿体ない。
APOFES2019
APOCシアター
APOCシアター(東京都)
2019/01/11 (金) ~ 2019/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/01/25 (金) 20:30
「三好康司×永村閏」を観た。3年連続参加の常連だそうだが、興味深い舞台だった。神がハリネズミを作り、ハリネズミが人形を愛する。いわゆる「ハリネズミのジレンマ」を逆に取り、物言わぬ人形を愛したハリネズミが愛おしくなると同時に、何かの比喩ではないかとも思わせるのだが、そういうものではなかったようだ。それにしても『語彙カタルハリネズミ』というタイトルでの上演だが、「彙」という字に「ハリネズミ」と言う読みがあるとは知らなかった。