鯉之滝登の観てきた!クチコミ一覧

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ARTE Y SOLERA CONCIERTO Vol.28

ARTE Y SOLERA CONCIERTO Vol.28

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

めぐろパーシモンホール(東京都)

2024/04/20 (土) ~ 2024/04/20 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/20 (土) 18:05

 正直、フラメンコダンサーは日本人で、カンテとギターのみ一人ずつスペイン人?が入っていたとはいえ、今回の公演自体が、鍵田真由美·佐藤浩希フラメンコスタジオによる発表会だということもあって、あんまり期待していなかった。
 ただし、実際に観てみると、フラメンコスタジオのスタジオ生メインの発表会の割に、悪いがその辺のピアノの発表会何かよりもよっぽどレベルが高く、プロといっても過言ではなかった。
 具体的には、ダンサーの足捌き、手捌き、一部のダンサーには本場さながらの彫りが深く、思わず引き込まれ、緊張を強いさせる鋭い眼付き、扇情的であり、感情溢れ、激しく迫力があり、時に孤独や悲壮な感じも垣間見えるフラメンコダンサーによるダンスに酔い痴れ、日本人のスタジオ生が踊っていることを全然感じなかった。
 そうは言っても今回のフラメンコのスタジオ生発表会が本場スペインのフラメンコとは比べ物にならないと思うが、少なくともスタジオ発表会の割にアマチュア感は微塵も感じなかった。

 ギターやカンテのほうはスペイン人?がやっているのは当然上手いのだが、それに叶うとまでは言わないまでも、近いレベルまでは、日本人のカンテやギターもいっているのじゃないかと感じた。
 
 あと、ソロでフラメンコを踊るダンサーの女性たちがスタジオ発表会の中でも抜きん出て、とても上手かった。
 そのなかには、現代舞踏協会ダンスプラン2024オーディエンス賞を受賞した人や2023年日本フラメンコ協会バイレソロ部門奨励賞を受賞した人もおり、そういったダンサーはそういった肩書に漏れず、その肩書に見合うというかそれ以上の他のスタジオ生より抜きん出た実力を余すところなく見せてくれ、その凄さに恐れ入った。

ナマリの銅像

ナマリの銅像

劇団身体ゲンゴロウ

新宿スターフィールド(東京都)

2024/03/27 (水) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/03/30 (土) 13:00

 実は、今回観た劇の『ナマリの銅像』は、2022年にも観ているのですが、前回観たさいは確か観客側ではマスク着用とか体温を測ったりなどの色々な制約が多い中での、更にかなり小さな会場での公演だったと思う。
 なので今年の公演では、会場も大きくなったうえ、マスク着用がどちらでも良くなったり、だいぶコロナ前の状況にようやっとなってきて、前回の公演よりも観る側もだいぶ自由になってきたので、前よりもより没入感が強くなるかと思い、更に前回の天草四郎の物語よりも今回のあらすじの解説を読んだ感じだと進化するか、物語が拡がっているものとすごい期待しておりましたが、良くも悪くも前回と変わらない内容、没入感もいい意味で前回と同様だった。

 ただし、前回劇公演の料金が投げ銭制だったのが、今年の公演では普通の小劇場公演で取る料金設定になっていたところが、変わっているとしたら、そういう所だと思う。
 前回よりパチンコ店のマイクパフォーマンス場面での益田四郎(天草四郎)役の初鹿野海雄さんによるマイクパフォーマンスを通した人旋回術というか、そのマイクパフォーマンスの言霊が、最終的に第二次大戦以前や第二次大戦時における天皇の御言葉など、天皇を現人神へと昇華させていった。戦後も天皇という存在自体は日本において存在し、ほとんどの国民が疑問を持っていないこの危機的状況をも内包させているふうに感じ、前回以上の迫力と怖ろしさが滲み出ていて良かった。

 前回より広い会場ということもあってから、所々現実に引き戻されたり、何よりも集中力が続かなかったので、やはりかなり小さい会場やまたは工場跡とかのほうが絶対に合うと感じた。あと、前回観たときと違って、劇の後半で裏切る武将の山田役がいかにも怪しい感じがでているイケオジな男性が演じていましたが、見た目からは何を考えてるか分からない感じで、しかし見るからに怪しいというか、どうせ裏切るといった感じが出ていなかったので、やはり山田役は前回のように女性が演じたほうが良いと感じた。

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

WizArt

Cafe JINDO(東京都)

2024/02/22 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/02/25 (日) 18:00

 主婦のウチダアキ(45歳)、元男の子のクボタカエデ(22歳)、生後すぐに赤ちゃんポストに入れられたので、生みの親を知らない大学生のササキスミレ(20歳)、オネェのタチバナトオル(22歳)、親が元有名アイドル(ノムラナオ)で親への反発やアイドルに対するプロ意識が人一倍強いノムラナツキ(23歳)、キャバ嬢で、元グラビアアイドルをしていたホンダハル(24歳)たち個性溢れ、性格も背負っているものも全然違う、そして性別や年齢までも違うという異色の組み合わせの6人がアイドルオーディションの最終選考まで、何故か残り、最後にこの6人のなかから何人が受かるのかという最後のオーディションを目前にした待ち時間という、普通はあまり取り上げない部分に着目した会話劇ということで、そういう意味では画期的だったと思う。
 アイドルオーディションの最終選考まで残ったそれぞれ異色の経緯やお互いの全然違う性格の6人が、最初はライバル視や緊張から打ち解けられなかったところから、それぞれのコンプレックスやアイドルオーディションを受けようと思った経緯などを時に笑え、時にシリアスな感じで進めていく。そして、そういう話をしながら、ライバルでお互い敵意剥き出しだったり、不安や自身がなかったりといった心境から、ライバルであるのは同じだけれど、意見の相違などから途中激しくぶつかったりしながらも、最終的にお互いを心から信頼し合える仲間のような、それ以上のような硬い絆が生まれていく、6人一人ひとりの短時間で成長していくドラマが見れて、時にハラハラドキドキしながら劇を登場人物たちに感情移入して観れて、大いに楽しめた。
 さらに、オーディション後の彼女たち6人が、アイドルになれたか、それともどうなったかについても、しっかりと描いていて、意外とアイドルのオーディションに焦点を当てたドキュメント番組や映画でも、オーディションに受かった、落ちた後のことまで詳細には描かないと思う。ましてや、演劇でアイドルに焦点を当てた劇だとオーディションに受かった、落ちた後のことを詳しく描くなど皆無だと思うので、そういう意味では画期的だったと思う。
 オーディション場面でアイドル曲?を歌う場面は盛り上がったが、本格的な殺陣を魅せてくれた元グラビアアイドルで現キャバ嬢でアイドルを目指す役の女優さん殺陣さばきが凄過ぎた。
 オネェ役の俳優によるバトンを使ったマジック芸も上手過ぎて、びっくりした。
 
 演劇人がよく使う普通の小劇場を使うのではなく、一般的なライブハウスを使うのでもなく、シンガーソングライターのためのライブハウス『弾き語りCafeひこうき雲』という場所をこの劇のために使用し、更にはその会場がはっきり言って演劇などの文化芸術を理解する層がいるような地盤とは言い難い東久留米市というところを使っているところからしても、かなり思い切った冒険に出たなぁと感じた。
 結果的に、私が観に行った最終日の千秋楽は、人が結構埋まっていて、東久留米市にある弾き語りライブハウスで劇を上演しても、東久留米市民は演劇などに関心が、少なくとも多少はあるのかと驚き、感動した。
 
 ただし、劇の脚本家が一番前で観ていたり、ゲストのお笑い芸人の関係者の芸人の人が一番前の真ん中でアイドルが歌って踊る場面などで、普通のお客さんより目立っていたのには、公私混同?内輪受け?とも受け取れ、複雑な気持ちになった。
 
 このアイドルオーディションに焦点を当てた劇が63分というのは、あまりにも短過ぎると感じた。
 まぁ、今回脚本を書いた女性が初の劇作だというので、仕方がないかと思わなくもない。
 もっと加筆できる点としては、今回出てきた登場人物たちを今回以上に深堀する、新たにインパクトのある、例えば、SM CLUBに勤務していた女性や現役プロボクサーの硬派なボーイッシュ女子、チャラいボーイッシュ女子、10代の頃に世間を震撼させる凶悪事件を起こし、後に少年院を出たような極端な二重人格の女性、ギャル、世間知らずですぐ騙されやすく、貢ぎ癖のあるお嬢様、天真爛漫でハイテンションなザ·アイドルな女性などを登場人物に新たに加えてみる。
 さらに今回の劇では、6人のうち一人を除いて、ほぼ最初からほとんど打ち解け合っちゃってる感があるのが残念。劇を起承転結でより大きく盛り上げる為には、お互いが最初のうちは、もっとライバル心を登場人物全員が持ち不安や疑心暗鬼な感じを露骨に、大げさに打ち出し、後半の仲間意識というか、ある種の絆が芽生えていくまでの過程が、飛躍的な迄にドラマチックになると感じた。
 もちろん、今回の劇が駄作だとは思わないが、改良の余地は、沢山あると思う。
 アイドルオーディションに受かった、落ちた後の描きかたにしても、アイドルの新たに入ってくるメンバーやセンター、そして誰がリーダーになるかを巡っての確執や足の引っ張り合い、陰湿な虐め、裏切り行為、アイドル事務所からの搾取、アイドルのSNSを巡ってのファンによる炎上やストーカー行為、過剰に接触してこようとするファンや出待ち、恋愛禁止などのアイドルの闇の部分も丁寧に描くとより面白くなると思う。

Ms. YAMA-INU

Ms. YAMA-INU

劇団鹿殺し

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2024/01/12 (金) ~ 2024/01/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/01/12 (金) 13:30

 正直、観劇前は、元SKE48/AKB48に所属していた木崎ゆりあさんと、元乃木坂46所属の伊藤純奈さん、能條愛未さんと演出家兼劇作家で俳優の丸尾丸一郎さん含め、男女6人中元国民的アイドルが3人もいるということで、とても豪華で、すごく期待すると共に、不安も感じていた。
 なぜなら、元国民的な女性アイドルや2·5次元舞台俳優が、あらすじを読んだり、チラシの雰囲気を見ても、かなりアングラ劇というか、ゴシック?サイコ?ホラーミステリーな感じが漂っていたので、よほど殻を破るというか、体を張った、良い意味で今までのイメージを打ち壊さないとできない劇だと思うので、なかなか大変なのではないかと感じた。

 実際に観劇してみて、6人しか出て来ない劇というのもあって出ずっぱりの役者がほとんどということもあるだろうが、ハマダマコトという男か女なのかもわからない同級生を巡って、共通の手紙を受け取っていた先生含め3人の男女が裏山に埋めたタイムカプセルを掘り起こし、それぞれ背後から何者かに襲われて、気が付くと、山小屋に閉じ込められ、そのすぐ外を野良犬が徘徊している模様の極限状態中で、狂気に襲われたり、人肉を食べたり、料理する場面、人を刺し殺す場面、虫がたかったチョコレート、何とかハマダマコトのことについて思い出そうとする服部先生と、狂気とグロテスク、エロを彷彿とさせる描写や、生々しい殺人描写に、所々笑える場面含め、背後から襲われる前後や閉じ込められている時など、そういう微々たる差や表情に至るまで元SKE48/AKB48や元乃木坂46、2·5次元俳優とは思えないほどの体を張った演技にただ、ただ、圧倒させられ、劇世界にのめり込んだ。

 また、木崎ゆりあさんや伊藤純奈さんの仲万美さん演じる出自からしても野良犬のような或る女に対して、容赦ない蹴りや罵声が意外にもかなりハマっていた。

 終演後の現役AKBの岩立沙穂さんを交えた、ぶっちゃけていて、時々のほほんとしたトークもかなり笑えた。
 特に、現役AKB48岩立沙穂さんと元SKE48/AKB48の木崎ゆりあさんとの絶妙なボケ突っ込みで、かなりズケズケと言い切る木崎さんと劇中とはまた違った面も見れて面白かった。
 演出家兼劇作家兼俳優の丸尾丸一郎によるそこ聞いても大丈夫なのというような、聞いてるこちらが冷や冷やしてくる質問を木崎さんや岩立さんにしていて大いに楽しめた。


 

恋の焔炎

恋の焔炎

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

日本橋公会堂ホール「日本橋劇場」(東京都)

2023/10/17 (火) ~ 2023/10/18 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/10/17 (火) 19:00

 フラメンコ公演というと普通はスペインの舞踏団とかを思い浮かべる。更に今までは、有料でフラメンコを見たことが一度もなかったが、今回は日本人によるフラメンコ公演でしかも有料で、日本の伝統芸能とのコラボということで、何もかもが初めて過ぎて、正直不安のほうが勝っていたが、公演を見終わったあとは、スペインのダンサーが一人も入ってない割には、かなり良くできた仕上がりだと思った。
 ただ、やはり、本場のスペインのフラメンコダンサーと比べると到底比較出来るレベルには到達できているとは言い難かったが、踊っているのが日本人だと考えると、切れもあり、頑張ったほうだと思う。

 フラメンコと日本の伝統芸能である、日本舞踊、女義太夫、津軽三味線、歌舞伎の附け打ち、太鼓が見事なコラボレーションをしており(もっともフラメンコと日本の伝統芸能側双方がお互いに妥協した部分が多少あったにせよ)、観ているうちに、不思議なことにはフラメンコと日本の伝統芸能の組み合わせがさほど気にならなくなった。
 また、日本語の歌詞に合わせたフラメンコの舞踏や詩、義太夫節の物語に合わせて、フラメンコダンサーと日本舞踊の踊りての組み合わせ、狂気や執念の肉体的表現に心揺さぶられ、いつの間にか常軌を逸した物語状況の中へ引き込まれていった。

Letter2023

Letter2023

FREE(S)

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2023/09/28 (木) ~ 2023/09/30 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2023/09/29 (金) 19:00

 2023年から1945年にタイムスリップしてしまった青年。 そして1945年から2023年へ届いた一通の手紙・・・。 そこには、ある人に宛てた切ない恋心が書かれていた。 その手紙と現代から太平洋戦争末期にタイムスリップした青年の成長していく姿が核となっていく物語。

 劇中において、特攻隊員や予備員たち、それから隊長含めの恋人や奥さんにかける愛情、ハーフの特攻隊員が社会から差別され蔑まれながらも、妹を愛おしく思う気持ちなどが丁寧に描かれ、最初は奇妙がられていた現代からタイムスリップした青年も段々と特攻隊員たちと打ち解けたり、友情を育んだりと、特攻隊員たちの日常を丁寧に描き、タイムスリップした青年の眼を通して現代と比較して描いているところは良いと思った。

 だが、まず、衣装に関して言わせてもらえば、第二次世界大戦中の日本において、富国強兵と同時に、貧富の差に関わらず、贅沢は敵だといったスローガンが出回るきっかけとなった贅沢品の製造·販売の制限七·七禁令が1940年(昭和15年)には出され、さらに米の供出と配給が始まっている事実から考えて、きらびやかな着物や色が派手なもんぺ、また中流かそれ以上の家庭であっても、とにかく物資が不足している訳だから、ご飯ももちろんのことながら、一汁三菜食べれたとは到底思えないところからもリアリティーに欠けると感じた。
 また、特攻隊のなかから志願した特攻隊員や特攻隊長が覚悟を決める場面において、表面上は家族や恋人、仲間を心配させまいと思って平静を装ったり、ワザと冗談をいったりして場を和やかにさせていても、心の奥底では、不安と恐怖に苛まれいても立ってもいられないといった一見矛盾しているかのように見えるが、実は一番人間らしい心の機微を、演劇なんだから、独白という形で表すべきだった。独白場面を入れずに、表面上の部分だけを切り取っていたのは非常に残念。特攻隊長や隊員の特攻しに行く覚悟や、特攻前夜の奥さんや恋人、妹との温もりあり、悲しみありな所に重きをおくのも良いが、それ以上に特攻隊長や隊員の心の奥底の声を拾い上げたほうが、簡単に切り替えて自分の命を軽んじているように、さらには、特攻という行為を劇全体として美化しているような在り方に、違和感を感じた。

 劇の最後の方で、2023年からタイムスリップした青年が、結局自分は特攻の人たちを助けることができない、どうしたらと思った時に、自分も特攻隊員として志願し、敵機に突っ込む覚悟を決める。それがおじいちゃんになる予定の人を救う唯一の方法でもあると思い決行する。でもこれは、この青年が散々言っていた、お国のため、家族を守るため、奥さんや彼女を守るためといくら美辞麗句を並べたところで犬死に、無駄死にするだけだ、命を粗末にするなと言っていたこととも矛盾する。友達になり、脱走を図り殺された特攻隊員に夢を諦めるなと言われ、一回持った信念は曲げるなと激励されたにも関わらず、どう考えても道理に叶わず、腑に落ちない終わり方に疑問を抱いた。そして青年がどう言おうが自殺行為に他ならない特攻隊員として敵機に突っ込むことが、夢を諦めないこと、信念を曲げないことに無理やり繋げて、皮肉にも、美辞麗句、特攻礼賛、靖国礼賛といった終わり方に、むしろ腹が煮えくり返りそうなほどの激しい憤りと悲しさを覚えた。

 特攻という題材が難しいのは分かるが、もうちょっとちゃんと向き合って欲しいと感じた。最低でも、命は何者にも変え難いものだと思うので、主人公の青年は周りに流されず、ほだされず、生きることを選択すべきだった。一人でも多く生き残ることが、10代後半で散っていった人たちも多い特攻隊員たちの無念を晴らすことにもつながると感じた。あと何度でも言うが、特攻に行くことはたとえどんな理由を当てつけようとも、正当化されて良いはずがない。ましてや、特攻に行ったことが現代になっても英雄しされるような描き方は前代未聞だと感じた。

ロリコンとうさん

ロリコンとうさん

NICE STALKER

ザ・スズナリ(東京都)

2023/08/30 (水) ~ 2023/09/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/09/01 (金) 14:00

 実際に30人以上のロリコンの人に取材しているという大変興味深く、いわく付きの劇だった。
 実際のロリコンの人に聞いた体験談とフィクションの部分、更には、ロリコン父さんの役を父親の娘が演じているという設定の役を子どもっぽい女優が演じているという、複雑怪奇、入れ子構造もここまで来ると、やり過ぎなんじゃないかと思わせられ、一筋縄ではいかない作品だった。

 ロリコンといっても、色々なロリコンが劇中出て来て、主人公含めた多種多様なロリコン像を描き出すに当たっては、実際のロリコンの方々に性癖や性格、趣味や仕事、意見に至るまで色々聞いたこと虚実無い混ぜにして作り上げていったということで、なかなか感慨深いものがあった。

 ロリコンに対する世間一般の負のイメージ、現実にロリコンの人が近くにいたら嫌だというような率直な意見、実際に起きている幼女性暴行事件、それに対するロリコン側からのロリコン=事件を起こす、子どもを変な目で見るとは限らないなどのそれぞれの側の言い分を掲示して、お客さん自身の判断に委ねる在り方、劇の終わりでもはっきりと劇作家の意見やメッセージを示さず、白か黒かと答えを急がず、曖昧な終わり方に帰って、ロリコンの在り方について、深く考えさせられた。

韓国新人劇作家シリーズ第7弾

韓国新人劇作家シリーズ第7弾

韓国新人劇作家シリーズ実行委員会

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/16 (日) 15:00

 私は今回、韓国新人劇作家シリーズという、韓国の新人劇作家の作品を日本人の俳優と韓国人の俳優を使って上演するという試みで、それを観るのは初めてだった。
 しかし私が観た回は、全員日本人の俳優で韓国の新人劇作家作品を演じたので、正直そんなに期待はしていなかったが、結果的には非常に楽しむことができた。

Aの『罠』(韓国日報 新春文芸戯曲賞受賞)では、閉店時間の近づいたデジタルカメラ販売店を舞台に、消費者及び善良な市民としての権利を強引に主張し、まるで正論を言っているようでいて、時々屁理屈を捏ね、なんかしら理由を付けては店を出ようとしない、かなり厄介な客、その酷いわがままに手を焼く販売員の女性、そして店長、さらには地元の警察官までをも巻き込み、段々事が大きくなり、よくある日常の風景の延長線上から、もはやお客の側の主張、店側の主張、どちらが正しいかとかはどうでも良くなってきて、物事がどんどんエスカレートしていき、不条理な展開になるにつけ、そのブラックで過激で、スラップスティックでもあるコメディに大いに笑った。
 しかし、最後にお客が不敵に笑って劇が終わるに至って、どこか他人事ではないような気になってき、また、お客の心の底が読めない終わりかたに、背筋が凍りつき、冷や汗が出た。

Dの『名誉かもしれない、退職』(慶尚日報新春文芸戯曲部門受賞)では、カフェが舞台で、同じ会社だが、年齢も立場も違う3人が互いに相手に探りを入れつつ、時々一人を味方につけつつ、退職を押し付け合う、エゴイズムが表面化し、醜く露骨な、感情が激しくぶつかり合う、修羅場と化していく光景に、人間味を感じ、そんなに他人事とも言えないと感じ、大いに笑いつつ、観劇後は、すーと寒くなった。

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/29 (木) 19:30

 長年連れ添った最愛の妻サチ子が急死し悲しむ田所治とその家族たち。
これからはばあちゃんの分も精一杯生きよう、そう誓った家族の元に現れたのは…
AI化したサチ子だった!?
唖然とする家族たちにサチ子から課せられたミッションは『死んでからさせたい100の事』を成功させていくという劇で、色々とぶっ飛んでいて、ハチャメチャで、無茶振りの連続、果ては個人的な願望まで含まれた『死んでからさせたい100のこと』を最初は巻き込まれ、振り回され、迷惑がりながらも協力する田所治とその家族たちとAIサチ子との温度差やお互いの勘違いによる笑い、想い出を巡る笑い、サチ子の若い頃を坂道系と表現し、サチ子を演じる俳優は同じことによる大きなギャップ笑い、ポスターを貼る場面における、有名映画をパロったポスター、サチ子を演じる俳優の顔写真だけをグラドルの顔に貼り付けたポスターなどが出てくる小細工による笑いなど大いに笑えた。
 
 だが、劇の後半になるに連れて、近隣の電波障害の問題でAIサチ子が危機に見舞われたり、『死んでからさせたい100のこと』の最後がサチ子との想い出の品を全部焼き捨てることと、田所治は究極の決断に迫られ、サチ子の死とも真っ向から向き合わざる負えなくなるというシビアで、手に汗握る展開になっていく。田所治やその家族が『死んでからさせたい100のこと』を通して、自分と向き合い多少の成長をしていく過程で、悩み、頓挫しながらも前に向かって進もうとする姿に、人間味を感じ、日常の延長線上のSFなのに、AIサチ子もかなり生々しすぎて、登場人物たちひとり一人に感情移入し、気が付くと感動していました。

 この劇は、全体としては悪くないが、所どころ、女性は家で家事、男性は仕事、ニートは絶対ダメなど旧価値観が押し付けられているように感じたので、重苦しい部分があった。
 今の時代多様性が強く言われる世の中において、必ずしも働かない人間は良くないというようなスタンスはどうかと思う。LGBTQが認められてきている世の中において、多様な価値観を認め合うのが劇においても重要なんじゃないかと感じた。だからといって、世の中がニートだらけになれば良いというわけではないが。
 また、始まる前にも、劇が終わったあとにも似たようなことを演出家が言っていたのが気になった。それは「うちは、劇団員も演出家も本当のファミリーみたいに普段から仲が良いから」というようなことだったが、物を投げたり、恫喝したりして、圧倒的な威圧感で劇団員を演出家兼劇作家がまとめあげたり、劇作家が芸の肥やしになるからと劇団員にセクハラしたりといったのは違うと思うが、だからといって、稽古の休憩中にスマホをいじったり、劇団員同士で仲良くお喋りしたり、そういうことを全て良しとするのは絶対に違うと思う。劇作家兼演出家は妥協するべきじゃなく、パワハラにならない程度のぎりぎりのところで厳しく、追い込み型の指導を劇団員にすべきで、劇団員同士が仲良しこよしなのはむしろ厳しく取り締まるべきで、劇が終わるまでは、1日が稽古という感覚に劇団員ひとり一人をさせるべきだと感じた。

キューちゃんは僕を探さない

キューちゃんは僕を探さない

projecttiyo / 藤井ちより

元映画館(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/23 (金) 13:00

 CoRichに載っていたチラシのデザインが斬新で、良い意味で演劇の雰囲気じゃなくて、どちらかと言うと実験映画や写真美術という感じに惹かれた。また、あらすじに当たるところには、詩的に文章が書かれていて、どんな内容なのか気になり、元映画館というのも引っかかるところがあったので、とても期待して、実際に観に行った。

 主人公のひろは、自分の祖母に対して屈折した感情を抱いていて、その原因は生前あまり構ってもらえないどころか、祖母にかなり厳しく指導され、突き放されて無視され、ネグレクトになったのを彷彿させ、祖母の支配から抜け出せず、解放されたいがために友人であるあい子、太郎と祖母の家の中にあるピアノを壊し、火を付ける。しかし、壊れ燃え上がるピアノが消え、そのピアノが2足歩行で歩くピアノの赤ちゃんとなり、天からピアノの赤ちゃんの見守り役として塚井がどこからともなくやって来たことにより、祖母との生前の関わりを吹っ切れるどころか、むしろ深く関わらざる負えなくなり、そのピアノの赤ちゃんに「キューちゃん」と名付け、みんなで育てることにするが、生前の祖母とのピアノを通したトラウマがキューちゃんを見るたびに呼び起こされ葛藤し、祖母の呪縛に悩まされ、一人で抱え込もうとし、友人たちとの溝も深まっていき、どんどん孤独になっていく、ひろの人間らしさや自分探し、一歩進もうとするが、祖母とのことが頭を離れずなかなか前へ進むことができない、そのもやもやした感じに、途中イライラさせられつつも共感できた。
 一方の主人公、ピアノの赤ちゃんから少女へ急速に成長していくキューちゃんは、純粋無垢で、言葉を覚えたり、算数や英語の上達も早いが、ひろの友人たちとをも狂わせていく、本人も気付かない魔性さを秘めており、ひろにとっては、唯一最後まで慰め、諦めずに一緒にいて、元気付けてくれる存在でもあるキューちゃんだが、このままでは、キューちゃんの影響によって世界が崩壊しかねない状況で、ピアノの少女人間体のキューちゃんを壊すしか世界を元に戻せない状況になって、決断に悩むひろと、その究極の状況において、キューちゃん自身が壊されるのに、それを承知のうえで、おおらかに、のほほんとし、ひろに笑いかけ、優しく語りかけ、一緒に踊る場面に至っては、何とも言えずやるせない思いに駆られ、感動し、思わず涙が出た。
 それに究極の選択の場において、仮にその行為で世界が元に戻るとしても、自分を犠牲にすることをそうやすやすとはできないと思うので、キューちゃんがにこやかに自分が犠牲になることを了承したあり方に、関心してしまった。
 ピアノの少女になったキューちゃんとひろが最後のほうの場面で、キューちゃんが結婚式に着る白のドレスを着て、ひろと手を握って一条の光が放たれる開いたドアのほうに向かって仲睦まじく、しづしづと歩いてく姿は、ピアノの少女キューちゃんの人間体としての最後をイメージシーン風に幻想的に描いてるとも取れるし、ピアノの少女と人間のひろとだって、プラトニックな純愛は成立し、成就できるんだとも解釈できるのだが、いずれにしろ感慨深かった。

 劇中使われた音楽や音響、照明の的確さや実験性、劇内で使われる言葉の端々が詩的で、絶妙な間や文芸作品のようにゆったりと、また情感豊かに湿り気がある、それらが見事にマッチしていて心地よく、引き込まれた。
 ファンタジーなのに、そこはかとなくところどころ現実味があったり、社会問題がさり気なく練り込まれているように感じ、深く考えさせられた。
 元映画館という特性にあった、あんまり本編の劇には直接関係のない実験性に富んだ映像が時々流れているのも、良かった。

 劇の後のトークショーでは、脚本家、演出家の女性それぞれの静かな対話の中で、お互いの美的感覚やここでしか聞けない裏話、苦労話なども聞けて、ためになることも結構ある気がしたので、良かった。

当然の結末

当然の結末

シベリア少女鉄道

俳優座劇場(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/22 (木) 19:30

 あらすじを読んだだけでは、何のことやら正直さっぱり分かんなかった。何がやりたいのかとか、大体どういうジャンルでどういう内容で、どんなメッセージを伝えたいのかとか、全く予想がつかず、想像も出来なかった。
 さらにチラシのイラストも劇を観始めてから分かったことだが、劇の内容と直接あまり関係がないことが分かってきて、良い意味で二重三重にしっぺ返しを喰らったような気持ちになった。
 さらに、劇を観終わった後にイラストが載ったクリアファイルのなかに入っていたネタバレ注意の紙の内容を読んで、劇が始まる直前に主要な役を演じるはずの5人の役者が降板になったので、代役の5人に出てもらうことや、機材トラブルといったことで、開演時間が予定より3分遅れて本編が始まったことの奇想天外な理由や状況を飲み込むことができた。

 劇が始まると、同棲と言えば聞こえは良いが仕事もせず家でブラブラしているニートで減らず愚痴だけは一人前の駄目人間半間真人と、恋人で仕事も家事もこなす人吉ひと美との噛み合わない価値観や倫理観、こだわりの違い、趣味の話などでの絶妙にズレていく会話や、時々挟まる独白と言うにしてはラジオがかなり大きめの音量でかかったような心の愚痴を代弁する独白と、とにかくコミカルでテンポ良く、自然と笑えた。
 メインは家族の話なはずなのに、劇の最初のほうでゲームのRPGの話があったからか、世界の終わりが来たらどうするといった話があったからなのかは分からないが、腹違い?の妹入来一恵を除いて、ひと美の父がドラキュラ伯爵であるのにその場に居合わせた全員その異常さに気付かないどころか、普通に話していたり、ニートの半間真人の浮気相手間島茉優花が明らかに蛇女なのに誰も気付かなかったり、ひと美の元恋人が人食い鮫ジョーズ人間だったり、半間の元働いていたバイト先の店長マイルスのマスターがRPGのファンタジー又はアドベンチャーゲームによく出てくるゴブリンであったり、謎の男·松島は植物人間(本当にそのままの意味)、そして劇の最後のほうに出てくる最後の客人·丸山は腰の低いUber Eats店員だがどう見てもダンジョンに出てきたら確実にラスボスな不気味な王髑髏人間と、個性豊かどころか、異物が居座っているのに、驚いたり、恐怖に慄くどころか、それらをも日常の一環として生活に埋没させ、平静に対応している感じの奇妙な間や、あまりの同時無さに呆れ、また大いに笑えた。
 また、最後のほうでは、それらの怪物どもに弱みや嫉妬に付け込まれて襲われ、この世から半間真人や入来一恵が消えるが、人吉ひと美が半間真人との一緒にアニメ映画を梯子したことや一緒に夢中になったRPGゲームなどの良い思い出話をする度、怪物が一人、また一人とさり気なく撃退されていくという、良かった思い出話によって怪物を倒すというやり方が新鮮で、斬新で良かった。
 劇全体としても不条理やブラックユーモアが光っていて、家族の話や金銭トラブル、浮気問題に元恋人との関係性など、盛り込んでいるテーマを普通に演ると真面目で救いようがない苦虫を噛み潰したような悲劇になるところが、怪物を日常の延長線上に入り込ませることで、ユーモアが生まれ、どうしようもないほどくだらなく、それでいて憎めない仕上がりになっていて大いに楽しめた。

 間島茉優花役のアイドルラフ×ラフというグループの現役リーダー齋藤有紗さんは、間島に扮しているときはアイドル感が抜けきれていないものの(まぁ、天真爛漫で純粋無垢、ハイテンションな感じのキャラなのであっていると言えばあっているが)、蛇女の本性が現れてくる劇の後半では、豹変しつつ、可愛らしい名残も残しつつという感じで、その独特な感じはお見事だった。現役アイドルでもここまで出来るのかと、その役者としての素質に感動してしまった。
 半間真人を演じたラブレターズというお笑い芸人の塚本直毅さんは、こういうひねくれていて、屁理屈だけは一人前、かなり面倒臭い無職のニートをその辺にいそうだなと観ていて思わさせられた。芸人だけれども役にあまりにもその駄目人間っぷりがハマっていて、上手いと感じた。

 ただ、時々『シベリア少女鉄道』という劇団のファンによる内輪受け的な雰囲気が見受けられたのが、かなり気になった。

オリニフレテ。

オリニフレテ。

インプロカンパニーPlatform

川崎H&Bシアター(神奈川県)

2023/05/03 (水) ~ 2023/05/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/05/05 (金) 19:30

 私が観た回は女囚版でしたが、あらすじを事前に読んだ感じから、記憶喪失の女殺人犯を主人公に、癖強な女囚たちの殺すに至るまでの動機が語られ、それをヒントに女主人公が犯した罪を、謎の男2人の話も参考にしつつ、観客自らが解き明かしていく、観客参加型の没入型本格シリアスミステリーなのだと思って途中まで劇を観ていた。
 事実、私の予想通り途中までは大体そんな感じで進行していった。ただし、ミステリーであると同時にインプロ劇でもあったので、劇中役者が、劇が始まる前にお客さんが書いた紙が入った箱から適当に取った紙に書かれたことを即興で歌にしてみたり、いきなり大喜利を始めてみたりと観ていて飽きず、ミステリー劇とは普通は頭を使うものなので、構えて観がちな気がするが、肩の力を抜いて、大いに笑える場面も多くて、大変面白かった。

 しかし、劇の中盤で主人公以外の女囚が殺人を犯すに至った経緯が語り尽くされたあと、もちろんこの流れは、記憶喪失の主人公の犯した殺人事件が明らかになるんだと確信していた。
 ここに至って、2人の謎の男の推理論戦が始まるのだが、2人それぞれの意見のどちらかに会場にいる観客に挙手してもらったり、配信のコメント欄に役者の名前を書いてもらったりと、予測不能な観客巻き込み参加型ということで臨場感が味わえたことは良かった。
 けれども、2人の謎の男のうち1人が出した意見、カメ人間だったり、女主人公に拾われたカメ人間が5年経つと成人して告白するだとかといった悪ノリに観客までもが便乗したことにより、奇想天外で支離滅裂、どう考えても辻褄が合わなすぎて、おそらくミステリー劇としては大失敗だと感じたが、これが爆笑必須な何でもござれな不条理要素も入ったくだらない大人なコメディだとしたらば大いに成功だといえると考えると、何とも言えない気持ちになった。

 終わった後の役者のコメントで、「この劇はインプロ劇なので、いつも結末がこんな感じで終わるわけではないです。千秋楽はしっかり締められたらと思っています」みたいなことを口走っているのを聞いて、本当だろうかと疑問に感じた。

立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

Peachboys

ザ・ポケット(東京都)

2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/21 (金) 19:00

 劇が始まる前のMCの俳優が、自虐あり、ぼやき芸あり、ツッコミあり、客いじりありと、観客を飽きさせず、自分の話術に観客をいつの間にか参加させていく、その巧みさ、可笑しさは前回を飛び越えていて、大いに楽しめた。

 ケン・ヨーヘイ・ハヤオの3人は仲良し童貞3人組。
「絶対に好きになった人としかヤッてはいけない」鉄の掟で結ばれた彼らだったのだが、今回、それどころではない事態に直面する!!!
3人の前に現れる、よく知らないおじさんの科学者「毒(どく)」。彼は突如、自身の作ったタイムマシン「ペロリアン」を彼らに見せびらかし、前日に性欲を異様に増大させるクスリを飲んでいたハヤオが暴走し、「毒」の腹を自らの股間で貫いて殺してしまう!逮捕され、連行されていくハヤオ。ケンとヨーヘイは「ペロリアン」に乗ってハヤオが暴走を止めようと思い、暴走前の時間に戻ろうとするのだが、辿り着いたのは、30年前の1993年!
令和5年と平成5年!2つの時代を行き来あいながら、童貞3人組は「今からそいつを殴りに」行って、ヨーヘイの父の童貞を捨てさせ、歴史を変えることが出来るのか!?
あと、多分尺的に無理そうだけど、3人組は童貞を捨てられるのか!?
あと、Peachboysは、本当に、ザ・ポケットの広さを使い切れるのか!?といった疑問も持ったが、前作を良くも悪くも凌駕し、今回かの有名な映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を下敷きにしつつ、あまりにもしょうもなく度を越したレベルの露骨な下ネタ満載、時事ネタ、政治話題を徹底的に揶揄り、これでもかというほど市井の目線で下らなく、面白おかしく、それでいて鋭く斬り込んでいて、そのあまりの自由っぷりと、何でもありなうえ、今流行のものから昔懐かしいものまで詰め込めるだけ詰め込みすぎて、大体の予定時間を大幅に過ぎてもやり続け、収集がつかないと思いきや、意外と最後は上手く締めくくっているあり方に、演劇として、一表現としての無限の可能性を感じた。

 令和5年の現代の場面において、フワちゃんはそんなにイメージを崩しては来なかったものの、ユッキーナこと木下優樹菜が極端に誇張されたギャルキャラなうえスシローの店長をやっているという無茶苦茶な設定のうえ、Breaking dawnの朝倉未来が主催するYouTubeで生配信される公開オーディションに何故か、かつて一斉を風靡したドラマ『家なき子』の家なき子がヤバ過ぎる情緒不安定なサイコパス少女として登場したり、今話題筆頭中のアドちゃんが毒(博士)の元ダッチワイフ人形で現在は毒の改造によりアンドロイドという奇想天外で支離滅裂、こじつけがましく、あまりに本人に対して失礼すぎるが、さらに主人公の一人ハヤオに対してアドちゃんが○○○しよっと抱きついてみたり、何かというとアドちゃんが過去に行っている時でも「新世界だっ」と言っていたりと、呆れを通り越して大いに笑えた。
 令和5年の現代の場面で、ガーシーがドバイから謝罪動画を配信しているのだが、謝る気ゼロどころか、つらつらと文句を並べ立て、ところどころ苦しい言い訳をするあたりが妙に生々しく、それでいて馬鹿らしく大いに笑えた。

 30年前の1993年(平成5年)の場面では、意味もなく漫画でアニメ化もされた『ドラゴンボール』の曲に合わせておそらく初代〜現代のドラゴンボールのアニメの戦闘シーンや飛ぶ場面を、かなりチープに作り込んでいたり、漫画でアニメ化もされた『ワンピース』の主人公が現実にいることになっていたり、喫茶店で漫画『タッチ』のヒロイン朝倉南が働いており、さらに病院でも働いていることになっており、さらにはSTEP細胞の開発にまで携わっていたと、歴史の整合性以前に、あまりに荒唐無稽な設定すぎて唖然とした。
 家なき子がこの時代では令嬢で、漫画『白鳥麗子でございます!』の主人公白鳥だったといういくら何でも苦し紛れ過ぎる設定、シンスケ(紳助)が、後に漫画『タッチ』の朝倉南と結婚して、その子どもがBreaking dawnの朝倉未来だという、誰がどう考えたって突飛で無理矢理過ぎて、あまりにあり得ない設定の連続で面白すぎて、気がつくと爆笑していた。
 最後のほうで、メガヒット映画『シン·ゴジラ』をパロってシン·平成は出てくるし、一大ブームを巻き起こしたRPGゲーム『ドラゴンクエスト』を再現した場面でかなり尺を取るわ、敵役ピーチ姫をの妨害をかわし、シン·平成を倒すため大ヒットゲーム『マリオカート』で勝負したり、最終的にシン·平成にドラゴンボールを投げつけるとシン·平成が爆発し、かつて流行ったゲーム『ポケットモンスター』に出てくるポケモンボールが開き、シン·令和が出てくるというファンにとっては嬉しい限りかもしれないが、盛り込み過ぎて、玉石混交で、何でもありで、色々同時多発的に起こり過ぎて、前作以上にお腹がよじれるほど連続して大笑いしていた。

 途中の場面で、WBCの栗山監督の2刀流と言っているところの音声が変な意味で無駄に使われていたり、ジュリアナ東京は出てくるわ、大谷翔平選手が、主人公のケンに対してヌートバーを静的な意味として使われたりとイメージダウンもいいろところなうえ、最後の場面であのちゃんはイメージ通りででてくるわ、喫茶店のマスターとして出てきた藤井風に至っては、主人公の一人ハヤオの背後から立ちバックするオジサンとして描かれるという扱いが雑なうえ、最悪な描き方に、現実とはあまりにかけ離れ過ぎていて、吹き出した。

 第2部のレビューショーでは1970~80年代くらいのアメリカンポップスをあまりにしょーもない下ネタが露骨に歌詞に入った替え歌になっていて、馬鹿馬鹿しくて大いに笑いつつも、役者人に歌が上手い人も多くて、ノリつつ、感動した。
 レビューショーの最後のほうで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公が最後のほうで言う有名なセリフをオマージュしたセリフをヨーヘイ役の俳優がいっていたのに胸を打たれた。

Laghu prarthana

Laghu prarthana

中央大学第二演劇研究会

ザムザ阿佐谷(東京都)

2023/03/09 (木) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/03/09 (木) 18:00

 中国西部のとある国。そこでは国を挙げて1つの宗教が信仰されており、教えでは教祖は寿命を終えるごとに輪廻転生を繰り返し人々を理想郷(シャンバラ)へと導くとされていた。しかしある日、その国で新たな転生者は現れなかった......ことと、現代の日本にて新人刑事の結城は署内で煙たがられている先輩刑事見取と共に事件を調べていき、出どころが分からない銃が使用されたことで難航する捜査の中、見取は15年前のとある事件の資料を結城に渡す。とある宗教団体が起こしたというその事件は今回捜査している事件と類似点が多いこと、更に虐待を受け、不良仲間とつるんで学校をサボっている郷田ツカサがこの物語全体において最重要人物であり、その幼馴染の比丘レンなども絡み、ただの宗教2世の悩みや新興宗教による犯罪を取り扱った刑事サスペンス劇かと思いきや、思った以上の2重3重に物語が展開して、賛否両論を呼びかねないラストを観るに至って、一気に引き込まれた。

 警察の刑事を束ねるパワハラを通り越した恐怖で周りを威圧し、叩き上げの女班長常田、はみ出し刑事見取と新人女性刑事結城を中心とした刑事サスペンス、郷田ツカサ、その親でやたらとツカサに暴力的な郷田清、ツカサの幼馴染の比丘レン、ツカサの不良仲間達を取り巻く他愛もない、だがいつ崩れるかもわからない青春群像、新興宗教団体の儀式や絆の物語、第二次世界大戦中の中国における国を挙げてのトゥルク王を中心とした1つの宗教を日本政府の命を受けて中国共産党の役人による大規模な弾圧の物語、これらの物語、あんまり噛み合わないようでいて、そこに郷田ツカサという人物が全ての話において深く関わりがあり、人々を誠に救済できるのはツカサだということがわかってくるという、徐々に物語を回収しつつ、劇の後半では生死の間でツカサが殺されたお母さんに会い、過去に遡ったりと一気に激的な急展開に持っていくあり方が、作品の構成として、とても学生劇団のレベルを遥かに飛び越えており、これからの可能性を感じ、見事だった。

 郷田ツカサに対して、親父である郷田清が酒浸りで、ツカサに対して暴力的に振舞う行為は傍から見立ても、ツカサからみても虐待だが、そういう行為をするようになった経緯は、ツカサを守るために仕方なくやっていたことが後になってわかるが、息子であるツカサは信用しきれないところもあり、その事実に複雑な心境になりつつも、急に親父を抱きしめるという親子の絆の場面で、色々と感慨深くなり、感動して、思わず、涙が出た。

 全体的には、緊張感、臨場感ある劇だったが、ところどころ笑える場面もあって、程よく肩の力を抜くところは抜くというふうに加減して観ることができたので、思ったよりかは疲れなかった。

 個性的だったり、アクの強い登場人物、それにコミットした役者が多くて、可能性を感じた。
 特に、女班長常田役の夏炉冬扇
がボーイッシュな上、過剰にパワハラ的で、鬼の如くに高圧的な態度と喋り方が普段からそうなんじゃないかと錯覚させるほど、出てきたときから雰囲気が感じられて良かった。

 ただ、強いて言うなら、途中10分ほどの休憩を入れたのは間違いだったと思う。なぜなら、この手の刑事サスペンスで途中休憩を挟むと集中力が一旦途切れるから。案の定、後半戦が始まってすぐは客席がざわついていたきらいがある。
 あと、あまりにも声が枯れ、言葉に詰まったり、噛んだりするところを気を付ければプロになれると感じた。
 最後に、この劇のラストには賛否両論あると思うが、個人的にはラストで、郷田ツカサとトゥルク王が過去を彷徨い続けながら、だからといって過去が変えられるかは皆目見当がつかないが、人々を救済する至高の実態のない神のような存在となっていく終わり方は、上手い逃げ方をしたなと感じ、多少の不快感さえ感じた。
 本当の意味で、戦争や争い、弾圧を止めさせ、抑圧され、自由を奪われた人々を救済し、全ての人が平穏な日々を遅れるようにするためには、過去は変えられる可能性なんて薄いのだから、今、この生きている瞬間を大事にしつつ、今私たちにできることを、小さなことからでも良いから実践していく。そうするといずれ平和に結び付いていくというような終わり方のほうが私的には、トゥルク王と郷田ツカサを自己犠牲にすることによって全てが救われる在り方よりかは、よっぽど共感出来るんじゃないかと感じた。

幽霊塔と私と乱歩の話

幽霊塔と私と乱歩の話

木村美月の企画

小劇場 楽園(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/03/02 (木) 19:30

 かつての奇妙な縁の宮地一郎、駒込いちこ、清掃員大月春吉とともに権正さとみは幽霊塔に入っていき、不可思議で不安と恐怖、そして途中から江戸川乱歩の孫の?江戸豊も加わって、物語の前半から中盤にかけてはごく平凡でありきたりな若者の屈折した青春群像劇劇で、劇のタイトルと、主演の女優さんの個性的な雰囲気や独特な喋り方とは裏腹に全然期待はずれだったのが、一気に乱歩的な世界観と現実が交錯してきて、劇世界にいつの間にか引き込まれていた。

 特に幽霊塔内で主人公も含め、それぞれの登場人物が仲間とはぐれ、自分の過去が立ち現れてくるという自分との闘いであり、そして少し不思議な場面でもあるが、非常に現代において、ふと立ち止まって考えることの大切さを感じた。

15 Minutes Made in本多劇場

15 Minutes Made in本多劇場

Mrs.fictions

本多劇場(東京都)

2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/24 (金) 19:00

 15 Minutes Made(フィフティーン・ミニッツ・メイド)はMrs.fictions(ミセス・フィクションズ)が2007年の旗揚げ当初から継続的に開催しているオムニバスイベント。
 6つの団体(Mrs.fictions含む)がそれぞれ約15分ずつの短編作品を一挙に上演することで、多様な舞台表現をより身近に、手軽に楽しんでもらいたいというコンセプトの元、これまでに東西ツアー等を含め延べ17回開催されているということで、今回は、このイベントの主催劇団も含めて6団体が参加しており、そのなかには緒方恵美が設立した声優事務所や、女性お笑い芸人を迎えての劇団など特殊な団体も混ざっており、それぞれの個性が存分に発揮されていて、全体として良かった。

 最初のロロという劇団による『西瓜橋商店街綱引大会』という劇では、よくありそうな平凡なタイトルとは裏腹に、実際には寂れた商店街の端から端までを使って行う綱引大会というぶっ飛んだ設定の上に、俄然乗り気の中年夫婦の夫モダが綱を引っ張ると、綱を引っ張り合う相手がなぜかエイリアンで、しかもグイグイと捕食しようとしてくる上に、その状況の中でゆったりと妻ずみがしょうもない理由で離婚を切り出してきたりと、奇想天外で、不条理で、ブラックユーモアに富んでいて、ポップでサブカルな要素もあって、大いに笑え、時に背筋が凍りつき、気付くとそのどこか噛み合わない世界観に引き込まれていた。
 モダ役の亀島一徳さんとずみ役の望月綾乃さんの絶妙に噛み合わない会話と独特な喋り方、身振り手振りに強烈な個性を感じ、これから俳優としてもっとグレードアップしていけると感じた。

 演劇集団キャラメルボックスは、芥川龍之介作の『魔術』を息のあったボディーパーカッションと、台詞をもあくまで語り手の延長線上で話していく実験的な朗読劇の手法をとっていて、『魔術』という妖しくも摩訶不思議な掴みどころのない作品に合っていて、聴き惚れ、その完成度の高さに眼を見張りました。

 ZURULABOという団体の『ワルツ』という作品では、最初のうちは交通事故で亡くなった父親が娘のピアノの発表会に行って娘に会いたい未練を謎の声が叶えてくれる所までは、どこかの少し不思議で最後は幸福になれる感動話として、映画や演劇、小説などでよくありがちだ。しかし、そこから先が予想を遥かに裏切って、露骨な下ネタ満載、余りにくだらなく、しょうもなく、シュールな内容に、思わず吹き出し、少し考えさせられた。


 休憩明けは、声優緒方恵美が設立した声優事務所BreatheArtsによる朗読劇『真夜中の屋上で』から始まった。
 声優さんたちだけあって朗読劇が下手ではないのだが、演劇的要素0で、声優が生で朗読している感が強かったのが非常に残念だった。つまり、キャラに特化しすぎていて、更に内容が少し不思議ではあるが、ボーイミーツガール感が露骨過ぎるのも気になった。

 オイスターズという劇団による、女性お笑い芸人を役者に迎えての『またコント』という劇では、職を失った会社員が無気力に踏切で飛び降り自殺しようとしているところへ、お笑い芸人を目指し、相方探しに邁進する素人の女と、あまり乗り気でない男が飛び込んできた。
 そして、その男と女に振り回され、自分が思い詰めていたことなんかどうでも良くなり、ひたすら慣れず息の合わないツッコミをし、多少滑っていることに気付かない元会社員の男とイビツで噛み合わないが、凸凹コンビで、女役の女性お笑い芸人安田遥香さんの軽妙だけれどマイペースで、鋭い毒のあるツッコミと大いに楽しめた。

 最後のMrs.fictionsによる劇『上手も下手もないけれど』では、どこかの国のどこかの街のどこかの劇場、楽屋の鏡前に座り化粧をする二人の男女という設定で、子役上がりの男優初舞台を控えた新人女優に訪れる開幕と閉幕を描いた物語。
 人生は演劇のようだとはいったもので、まさにこの劇を言い当てるのにぴったしな言葉だと感じた。最後、女優が舞台に向かって去っていく際に紙吹雪が飛んでくる辺り、人生の終着点と重ねているようにも思え、深く感動した。
 また清水邦夫の名作『楽屋』にインスピレーションを経て、またすごくリスペクトしてできた作品のようにも思えた。

血の婚礼

血の婚礼

劇団東京座

中野スタジオあくとれ(東京都)

2023/01/19 (木) ~ 2023/01/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/01/21 (土) 18:30

 ガルシア·ロルカ作『血の婚礼』という何ともおぞましく、血生臭い感じを連想させるタイトルと、CoRich舞台芸術!に載っている不穏な雰囲気が出ているチラシを見て、かなり期待に胸膨らませて観に行った。

 最初のほうの場面で息子にどこか不穏な感じを感じさせるぐらいに異常に依存し、ある一族に対して狂気じみて執着し、憎んでいる母親が登場し、途中で死神を具現化したような、闇を具現化したような怪しく、どこか底しれない怖さを持った老婆が登場したり、敵対する一族の若者で気性が激しく、自由気ままで、粗野な男レオナルドが出てきたりと一癖も二癖も癖が強く、個性的でアクの強い登場人物が登場し、シリアスな音楽も相まって、この劇の緊迫感、得体の知れない恐怖、暗闇の場面が多いことによる心理的に不安や恐怖を煽る演出、小さな劇場を見事なまでに使い切った臨場感、一体感が相まって、気付くと、その禍々しく、血生臭く、呪わしく、恐ろしい劇世界のなかに没入していた。

 死神を具現化したような、闇を具現化したような怪しく、どこか底の知れない怖さを持った老婆を演じた俳優が、手足がまるで骸骨のように痩せ細り、顔も極端に骨張って見え、声も含めて、観客に恐怖を与えるの十分な肉体を使った演技で、才能を感じた。
 花嫁役を演じた役者は、あんまり色気が出せてはいなかったのは難だったが、二人の男が自分を巡って闘って、二人共命を落としたあとの気丈な振る舞いの演技は迫真に迫っており、見事だった。
 昔の恋人レオナルド役の俳優の今の奥さんに対してのDVじみた演技や、花嫁に対して粗暴でありながらどこか女性を惹き付ける魅力、どこか憎めない感じが滲み出ていて良かった。
 母親役を演じた役者は、息子に対して異常に依存している感じは現れていたものの、ある一族に対して狂気じみて執着し、憎んでいる感じは出し切れていないのが非常に残念だった。
 息子役の俳優は、好青年役のときは比較的上手かったが、復讐の鬼となり変わってからも、あんまり変わって見えなかったので、俳優の伸びしろの限界を感じた。

 ガルシア·ロルカの『血の婚礼』という作品自体は何となく知っていたので、劇団東京座がどう料理してくれるのかと過度に期待して観に行ったら、肝心の男同士の殺し合いの場面がはっきりと描かれなかったので、拍子抜けして、かなりがっかりした。

昭和歌謡コメディVol.17〜バック・トゥ・ザ 築地!~

昭和歌謡コメディVol.17〜バック・トゥ・ザ 築地!~

昭和歌謡コメディ事務局

ブディストホール(東京都)

2023/01/12 (木) ~ 2023/01/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/13 (金) 17:00

 年2回定期上演している「昭和歌謡コメディ」シリーズということですが、私はかつて何度かこのシリーズを観たことがありましたが、前回の公演で目玉の女優さんが退団したので一時はどうなることかと思いましたが、今回新たに癖の強い登場人物を演じる新キャスト(野上こうじ・細川量代)を迎えての新春公演ということで、大いに楽しむことができた。

 第1部のコメディ「バック・トゥ・ザ 築地!(仮)」は、築地の寿司屋「ひろ寿司」を舞台に、現在と過去(昭和50年代)が交錯する築地版バック・トゥ・ザ・フューチャー!というふうに銘打ってはいたものの、実際には、過去にタイムスリップするというような大逸れたことではなく、単なる回想シーンではあったが、漫画原作、映画化もされた『今日から俺は』の世界観に限りなく近いバタ臭いヤンキーの青春群像劇風に過去をコミカルに協調して描いていて、大いに笑えた。 
 出てくる登場人物たちのアクが強く、個性豊かな感じも、ギャップネタ、過去書き換えネタも含め、大いに楽しめ、ちょっぴり感動した。

 第2部の歌謡バラエティショーでは、昭和歌謡&70年代フォークが展開されたが、ノリの良い曲や盛り上がれる曲、知っている曲があったり、ちょくちょく挟まる懐かしのお笑いのネタが面白かった。
 ただ、出来れば、どうせなら60年代フォーク、1960/70/80年代ロック、1980年代後半〜2000年代のアイドル曲、1960~2000年代にかけてのアニメ、映画、特撮曲などをちゅうしんにすると、もっと会場が一体となって、より盛り上がれた気がした。

YEAR END MUSIC PARTY vol.2

YEAR END MUSIC PARTY vol.2

MPinK(ミュージカルプロジェクトin神奈川)

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2022/12/27 (火) ~ 2022/12/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/28 (水) 17:00

 MPinKというミュージカルの子役養成所による生バンドミュージカルコンサート。
子役時代から有名ミュージカルに出演していたメンバーが有名ミュージカルソング、MPinKオリジナルソング、マッシュアップ、邦楽などあらゆるジャンルを踊り歌いハモリ続けるナマバンドによるミュージックレビューショーと盛り沢山な内容で、思っていた以上に、その辺の市民ミュージカルよりよっぽどクオリティ、レベル共に高く、歌ももちろんのことながら、ダンスに、身体が尋常じゃないくらい柔らかい運動神経抜群で、床に比較的近いところでの空中バク転やブリッジなどのアクロバットを歌いながらこともなげに見せてくれる現役女子高生や女子大学生もいて、その天賦の才に脱帽した。

 また、特に、女性陣のアイドル顔負けの派手で可愛かったり、美人さんだったりの見た目もさることながら、ソロパートやデュエット、マッシュアップにラップ、ハモり、アカペラ、ソロさえも卒なくこなしているのには、さすがに驚き、眼を見張った。

 大根田岳さんによるソロでミュージカル曲を英語で前編歌うのは、その何個か前の曲紹介の際に、構成·演出、そしてMCも担当している笹浦さんが大根田さんが英語が苦手なことを暴露していただけに、一時は大丈夫かと心配になったが、いざ歌が始まると英語も勿論のことながら、段々と上げていく曲調や曲の雰囲気も壊さずに力強く歌い上げていて、感動した。

 田中杏佳さんや遊佐夏巴さん、永利優妃さん、富田明里さんがプロデュース曲として、マカロニえんぴつさんの曲やLittle Glee Monsterさんの曲、YOASOBIさんの『怪物』など選曲も良く、ダンスや歌の指導はもちろんのことながら、照明などにも支持を出していたことなどのエピソードをいろいろと、構成·演出、MCも担当している笹浦さんから聞かされて、将来有望に感じた。

 構成·演出の笹浦さんがMCも卒なくこなし、自虐や楽屋ネタ、裏話、練習時の話、MPinKにいる子どもたちを褒めそやしてみたり、カルチャーギャップネタなど、観客の注意を引きつつ、面白可笑しく、飽きさせないというのも、MCが向いてるタイプに見えなかっただけに、驚き、関心した。
 しかしそれ以上か、それに近いかぐらいにMCで話を回したり、話題を振ったり、相槌を打ったりというのが自然に子どもたちは、男性陣、女性陣問わず出来ていて驚き感じ入った。

 川崎のアイドルグループの曲をグループの許可を取ってアレンジも加えたバージョンでやってみたり、ディズニーメドレーにジャニーズメドレー、モーニング娘時代の石川梨華さんが参加した『ピース』という曲など、私でも聞き覚えのある曲もたくさんあって、アドレナリンを上げやすかった。
 

 

獄中蛮歌

獄中蛮歌

生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した

四谷OUTBREAK!(東京都)

2022/12/28 (水) ~ 2022/12/29 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/29 (木) 19:00

 檻の中にいる方が楽だろう?別に何不自由なく生きられる。だから何?お前らはそれで良いのか!?そうやって自分とちゃんと向き合わず、自分の殻に閉じこもったままで良いのか!?実際の監獄は勿論のことながら、心の檻からも脱獄しないと本当の自由は得られないという二重の意味を脱獄という行為に込め、教訓的じゃなく、押し付けがましくなく、ハイスピード、パンク・ロックあり、激しい社会批判や過激な言葉やえげつない言葉、大麻などを連発するラップを取り込んだ、ダンスあり、アクションあり歌ありの一風変わったミュージカルで、音楽も含めて、気付くと、その独特な世界観にのめり込み、自分も迷える囚人の一人と錯覚させられるほどに没入していた。

 囚人を演じているのは全員男優だったが、男優たちの実際の実生活やアルバイト、ホームレスなどの真実、男優たちの性格や感情の機微を個性的でアクの強い囚人たちの性格やその囚人たちの今までの生い立ちに、ところどころさり気なく混ぜられていて、抱腹絶倒したり、悲しくなったり、感動したりと感情移入し、あまりに俳優が演じる囚人に俳優が寄せてきている感があって、男優が囚人を演じているのか、それとも、囚人が男優を演じているのかの見境がつかないほど、肉体全身を使って全身全霊で表現していて、眼を見張る程見事だった。

 ロックやラップに乗せて2.5次元俳優を猛烈に批判したり、自虐があったり、社会、政治批判に、戦争批判、現状批判、常識に対して鋭く疑問を叩きつけたり、ディズニー批判に、しまいにゃ著作権問題に対して辛辣に批判、さらには個人的な恨み辛みもねじ込んでくるその無神経さ、図太さ、言いたいことを言う感じに、共感し、大いに笑い、時にハッとさせられた。
 『獄中蛮歌』というパンク・ロックな曲が劇の終盤とアンコールでも再び流される頃には私も、ノリに乗って、体中のアドレナリンが爆発し、公演が終わってもしばらくは興奮が覚めやらなかった。

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