公演情報
縁劇ユニット 流星レトリック「Cordemoria」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/11/08 (土) 18:00
主に48分と45分位の不思議な古書喫茶店が舞台で、そこを訪れるお客の悩みや願いを叶える短編2つと、その2つの短編劇のキーパーソンとなる、2つの短編より短い戦後直ぐの混乱期に古書喫茶店『コルデモリア』を創業した真壁八重子の創業のきっかけとなる話。
この3つの短編、時代、店長も、主人公となる人たちも違えど、古書喫茶店『コルデモリア』が舞台となっているということでは共通しており、母親と殆ど一緒に過ごしたことがない30代の女性や会社でのミスで上司や同僚から酷い冷遇を受け、そのうちに会社に行けなくなって、引き籠もりになってしまった男性など、昨今の社会問題を物語のなかに組み込んでいるが、その解決方法がどこか少し不思議で、劇中暖かく笑える場面も多くて、肩の力を入れ過ぎずに楽しめながらも、最後には心温まるほっこりとした気持ちにさせ、知らず、知らず、感動させる終わらせかたが、非常に映画化もされた小説『コーヒーが冷めないうちに』と似たような空気感のある作品だと感じ、この戯曲を書いた人は『コーヒーが冷めないうちに』を読んで、相当影響されたんじゃないかと感じ、意外とここまで演劇で『コーヒーが冷めないうちに』と似たような空気感の劇はないと思うので、新鮮だった。
また、本にだって意思がある、本が人に早く中身を見てもらえないかとソワソワする場面等が3つ目の短編で描かれるが、そういった視点が非常に面白く、興味深かった。
古書喫茶店コルデモリアを舞台とした短編劇の総まとめとしての3つ目の劇の最後のほうでは戦後直ぐの混乱期が舞台ということもあり、第二次世界大戦中の日本の言論が封殺され、着たいものを着れず、自由に話せず、どんな本でも自由に読めるとは言い難い不自由な世の中からようやっと脱却しようとし、物資には相変わらず不足しながらも、これから戦後日本を踏ん張って行こうという時だからこそ、戦中の反動で人々は知識を欲しているはず、もう2度と戦争なんか真っ平御免だ。だから、本を読んで、知識を吸収して、戦時のようにお上の号令になんの疑いもなくただ従うのでなく、知識をつけることで、簡単に利用されないようにすると言ったようなことを真壁八重子役の人が言い切るのを聞いて、深く考えさせられた。
そして、どことなく今年が戦後80年だということを考えさせずにはおかなかった。
最近では、日本でも『日本人ファースト』を声高に叫ぶ政党が躍進したりと排外主義や軍靴の足音がすぐ側まで迫ってきていてもおかしくない状況になってきている。
だからこそ、無関心を決め込まず、おかしいことをおかしいと言うことができる社会、著作権侵害にならない限り自由に創作できる状況、演劇含む文化が軽んじられない世の中、本を読み、知識を吸収して、簡単に政府や行政に丸め込まれないようにすることが大事だと改めて感じた。