公演情報
四喜坊劇集※台湾の劇団です!日本で公演します※「えがお、かして!」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/16 (土) 15:00
今回の台湾の劇団による『えがお、かして』という公演は、生まれつき顔面神経麻痺により、口をすぼめたり、笑ったり泣いたり、怒ったりといった感情を面に表すことが出来ない「モービウス症候群」(PCで調べてみたら、実際にはモービウス症候群というような病名は見つからなかった。しかし、モービウス症候群と同じような症状のメビウス症候群というものが見つかったので、現実に顔面神経麻痺といったものがあることは事実で、それへの正確な対処方法が見つかっていないことも事実なんだと考えると、感慨深くなってしまった)の王曉天(ワン·シャオティエン)とその家族、交通事故で父親の王克強(ワン·クァチャン)の実際の肉体は病院で生死の間を彷徨っていた。
だが、どうしても王曉天(ワン·シャオティエン)や家族のこれからが心配で、気にかかっている父親の王克強(ワン·クァチャン)の思いが強すぎて、自分の分身である謎の少女を生み出してしまい、王曉天(ワン·シャオティエン)にしか見えないその少女との不思議な交流を主軸とした、学校の教師や生徒、近隣住民のモービウス症候群の王曉天(ワン·シャオティエン)に対する無理解や差別、侮蔑、支え合わなきゃいけない家族内での意見のすれ違い、不和といった深刻な社会問題を内包したシリアスになりがちな劇を、ミュージカル劇として上演されていて、時に緊迫して観ながら、モービウス症候群や障害のある子どもを育てる大変さを真剣に考えつつ、肩の力を抜いて観れて良かった。
またこれだけ深刻なテーマ(モービウス症候群を持った王曉天(ワン·シャオティエン)、障害を持った子どもに対する世間の無理解、差別や侮蔑、家族の不和や少しでも普通の人と同じになってほしい姉との確執)などをそのままリアルに描いて、心理描写や人間関係に重点を置いて描くと全然救いがなくなるが(王曉天(ワン·シャオティエン)が追い詰められて、自殺しようとする場面が劇中に出てきたり、父親の王克強(ワン·クァチャン)が現実としては交通事故で病院のベットで生死を彷徨っていたりしていることからも)、輪廻転生の要素や転生オークション会場責任者の地縛霊を劇中に出したり、王曉天(ワン·シャオティエン)に対する想いや家族への未練が強すぎて、父親の王克強(ワン·クァチャン)が分身の少女が生み出されたりといったどこかミステリアスで、ファンタジックな要素を混ぜ込むことで、少し救われた気がした。
それに、王曉天(ワン·シャオティエン)の母親が家族の前では、気丈に振る舞い、学校の先生や保護者に対しても息子を守ろうと強気で振る舞ってきたが、一人になるとこれで良かったのか(息子のために会社も辞めたことが本当に正解だったのか)と、自問自答する場面が描かれたりと、王曉天(ワン·シャオティエン)の姉も本人の前では時に辛く当たることもあるが、実は弟のことを愛しており、モービウス症候群という障害を持つ弟を理解しようと陰ながら努力し、弟が思い悩みながらも頑張ろうとする姿を陰ながら応援していたりと、この劇に出てくる登場人物たちは1枚岩ではない人物が数多く登場し、物語自体も複雑に絡んでおり、そこがミステリアスでファンタジックな要素もありつつ、何よりも現実の人間関係や1筋縄ではいかない社会を表していると感じ、他人事とは思えなかった。
自分も愛の手帳(障害福祉手帳)を保持しているし、癲癇持ちで(これも劇中のモービウス症候群の王曉天(ワン·シャオティエン)とほぼ共通で完全に治すことはできない。ただし、癲癇の場合は、無理をしないことと、薬を飲むことである程度癲癇発作を抑えることはできるが)、モービウス症候群の王曉天(ワン·シャオティエン)と全く同じ条件かは分からないが、どこかシンパシーを感じた。
ただし、自分は愛の手帳(障害福祉手帳)を普段使いして長いもので、もはや他人に自分がどう見られているかといったことをそんなに気にしなくなって久しいので(寧ろ、その手帳のお陰で、得することのほうが多いのもあって)、愛の手帳を使うことで、ジロジロ赤の他人に見られる、差別される、侮蔑されるかも知れないと極端に怖がり、不安になる王曉天(ワン·シャオティエン)の繊細な心情は、人によって違う気はした。
劇中に登場する転生オークションや生まれ変われるのは人のみというような転生条件が一般的な輪廻転生の価値観と似ているようで違っていて、その違いやどこかキリスト教を思わせるような転生を待つ待機場所では、天使のような格好で1回人生が終わった人たちが転生を待っていたりと色々混合していたりしていて、観ていてユニークで飽きなかった。
自分は今まで、モービウス症候群(PC検索では、メビウス症候群)という顔面神経麻痺の障害のある治らない病気について、全く知らなかったので、これを機会に知れて良かった。
自分も癲癇の持病を持っていたので、モービウス症候群について、普通の人よりも、より身近な感覚として、その症状を持った人の心情や思い悩んでいることについて理解することができたと思う。
アフタートークも有意義で、本多劇場グループ運営の本田さんを間近に見れて、出演者とのトークも観れて、貴重だった。