ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜
劇団☆新感線
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2023/03/10 (金) ~ 2023/03/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
寺西くん。何者なんだこの子。初めましてなんだけど、歌えて踊れて芝居もうまい。初演のインテリヤクザとはまた少し違ったインテリヤクザで、振り切って芝居する若手大好きだから一瞬で好きになってしまった。
劇団女優陣無双。聖子さんは言わずもがな、カナコさとみエマの御三方もめちゃくちゃ良い役。オセロって純粋で愚かな男のどうしようもない物語だと思ってたけど、これは女達の物語だった。よしこ姐さんのボンテージもたまらん。似合いすぎる。
じゅんさんの初演版ではゲストが演じてた役を今回はほとんど劇団員が担ってる。たまらん。物語を進めていくのは劇団員、ゲストの3人がどんな芝居をしてもまわりの劇団員が全部おいしくまとめてくれる。聖子さんがシリアスも笑いも全部背負ってくれてる。
2階から見下ろしてると舞台上にシートが貼ってあるのが見えて「あ、なにかこぼすんだな」ってわかる。ワクワクしちゃう。牛乳と血。
河野さんが最初から最後まで頼れる兄貴でかっこいいんですけど?!モリを使った殺陣もかっこよかったよ!
蜘蛛巣城
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
マクベス。私にとってのマクベスといえば「メタルマクベス」なので、頭の中であの人はこの人で...と変換しながら観ていた。
百姓から腕一本でのし上がった鷲津武時。夫を愛しすぎるが故に「こんなものではない」と出世を望む妻。この夫婦が特別野心家だったわけじゃない、たまたま、選ばれてしまっただけ。鷲津は妻を心から愛し、優しく、そして弱かった。
マクベス夫妻の「相手がどんなに惨めになろうとも、たとえ壊れてしまっても、絶対に見捨てることは無い」という最期まで添い遂げようとする様が美しく悲しく大好き。
ネタバレBOX
春に予言を受け、夏をすぎ、秋に子を失い妻は壊れ、冬に命を止める。最期まで武時は妻を守ろうとする。死に様は壮絶なようであっけなく静か。
泥水を啜って這いつくばって生きていた百姓時代。その生活から抜け出すために必死の思いで侍になって、主を殺し友を殺してまで城主になったのに、名も無き百姓が生き生きとして侍が苦しみ命を散らす...なんて皮肉なんだろう。
「空が綺麗だ」と呟いた笑顔が、憑き物が落ちたような顔で、一の砦の主だった頃みたいな、あの頃に戻って静かにこと切れる。壊れてしまった奥方にはなにもわからない。ただ、雲雀を求めて空を見渡す。
美しく、悲しい最期。
銀粉蝶さんが、さすがすぎる。人では無いモノ。あの世界を「マクベス」にしてるのは間違いなく銀粉蝶さん。意味は分からないけどゾッとさせられるのは、その言の葉に確かに意味がのせられているから。ただ発しているのではなく、銀粉蝶さんの中に正解があるから。
殺陣のSE、小さく聞こえたような気もしたし、無かったような気もする...大きく音が出てはいなかったと思う。
太一さんの太刀筋は重たくて、人を斬ってる感じがして、良いなぁ。義妹と甥を斬った部下を鯰切りにする時の襟首からグリグリ突き刺していくヤツ、最高。太一さんが刀を振ると血の匂いがする。
代表作、て言われるような作品になればいいなぁ。
場転の時に舞台奥と上下の森が照らされているの「森が見ている」感じあって不気味だった。綺麗なのに、不気味。
武人の荒々しさを表現するためかガラガラした低めの発声で、すこし台詞が聴き取りにくい。太一さんだけじゃなく他のキャストも。もしかしたら集音マイクの設定?マクベスの筋は知ってるから台詞が聞き取れなくても展開はわかるけど、はっきり聞き取れた方がストレスは無い。
誰よりも舞が上手いのに舞えない設定の太一さん。雑炊が美味かった、初めて白い米を食べたと嬉しそうに語る武時に米好き太一さんがどうしても重なる(笑)
キングダム
東宝
帝国劇場(東京都)
2023/02/05 (日) ~ 2023/02/27 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
原作は未履修。実写映画を流し見した程度。
オープニングの王と王毅2人だけのシーンで完全に掴まれてしまった。なんだろう、漫画もアニメも未履修なのに「本物だ」て思ったんだよ。本当にそこに浮き出してきたような。お二方とも板の上での存在感がありすぎる。あんなに広い舞台なのに全く感じさせなかった。
子役の動きが凄い。え、子供…え?は?ガッツリ動ける子を起用してるのかな。体操とかやってそう。子役同士の打ち合いがあんなバチバチだなんて思わなかったので大変驚きました。
子役に限らず、出演者全員バチバチに動ける人ばっかりだ。ダンスが凄かったり、身体能力オバケだったり。
高野くんはダンスも殺陣も動きが綺麗だから、舞台上での躍動感がよかったなぁ。我武者羅に前だけ見ている。小関くんの落ち着いてるけどアツイ演技と高野くんの全力な感じが心地いい。
声優である梶さんのお芝居は初めて見た。舞台上からエレンの声がする。良い役を、良い芝居で魅せていたなぁ。これは有澤くんと全然違うんだろうな、というのが容易に想像出来る。タイプが違いすぎるもの。
河了貂、可愛い。声がまず可愛い。なんだあの可愛い生き物は。映画の環奈も可愛かったけど、舞台河了貂まったく負けてない。
.5俳優の帝劇0番だから観たい、というのと同じくらい、ゆっくんが帝劇に立つから観たい、ていうのがあった。ゆっくん、役的に仕方ないけど出番少ない。でも、出てくると戦うから誰よりも美しく剣を扱う姿は観客の印象に残ると思う。低い声で静かに話す左慈、台詞大丈夫なのかって心配してたけど(だいぶ失礼)ちゃんとしっかり聞き取れた。薔薇サム後半で若干崩れてたから、何言ってるか分からないってなってなくて良かった。「剣とは力、剣とは速さ」て言ってて、確かにこの台詞を言って説得力があるのはゆっくんかもしれないけど、それは速さに関してだけなのでは…私の目には剣がとても軽く見えた。激強だから獲物を軽々と扱うことで凄さを感じさせる、という演出もあるかもだけど、やっぱり剣の重さが見えないのは物足りない。他のキャラクターの剣に力がこもっているから、すごく左慈が異質に見える。…そういう演出なのか?ビジュアルは100点満点です。ひらみ最高。ひっつめお団子最高。
盆があるようには見えなかったけど、セットがぐるぐる回ってて大変良い。舞台に奥行があるので場面転換時に暗い舞台奥からぬーっと次のセットが出てくるの最高。山の王の間で高さのあるセットがわーっと出てきたのはゾクゾクしたなぁ。映画で見たやつだー!ってなった。
上から見ると舞台一面にバミリがあって、点だけでなく線のバミリもあった。セットに階段が多いからまるで星空みたいにちっちゃいバミリがたっくさん光ってて、暗転のある舞台はそれも楽しいよなぁ。
カテコで王毅が出てきた時、一瞬で「場を支配」していた。カテコまで圧倒された。
禺伝 矛盾源氏物語
舞台『刀剣乱舞』製作委員会
TOKYO DOME CITY HALL(東京都)
2023/02/04 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台上から舞台下まで垂れ下がった源氏物語が書かれているであろう巻物。いつもの前口上はない、この物語はあの本丸の物語では無いから。1人ずつの名乗りも、静かで、なにか違和感がある。ほんの少しのひっかかり。
.5俳優と同じくらい、宝塚の役者は“原作物”を再現するのが上手い。立ち姿がまったくもってそのもの。
最初は声を聞き分けるのが難しく誰が喋ってるかわからなくなったけど、そのうち慣れた。
光源氏が刀剣男士以上にイケメン。
姫鶴の気怠さとめちゃくちゃヤンキーなところと「かぁいいね」にやられまくり。南泉がとても可愛い。光源氏の一言一言にツッコミをいれるところ最高。
OPで扇を持ってくれてありがとう。ヅカOGが男士になると決まった時から期待していた。やっぱり日舞基礎のある人達が持つ扇は美しい。ふんわりやわらかく手におさまった扇がひらひらとしなやかにひらめく。作品のための稽古や練習だとここまでは使いこなせない。これが、観たかったんだ。そして、揃うことに慣れた人達だから個性も感じるのに角度やスピードに乱れがない。もっとキャラクター固有のものが見えてもいいけど、揃っているダンスは単純に美しいし圧巻。あの宝塚に血のにじむような努力をして入った人達だから、踊るという点において当たり前に段違い。歌舞伎同様、どんな役を演じても役者としての品の良さが見えなきゃいけない世界だと思うので、刀剣の付喪神を演じるというのはピッタリなんだと思う。
ネタバレBOX
一幕後半、歌仙の口から「元主、細川ガラシャの物語」、大倶利伽羅から「徳川家の物語」という台詞が飛び出て、驚いたというか衝撃だった。同時に、だから、七海ひろきさんなんだと納得出来た。綺伝でガラシャを演じた七海さんが、細川ガラシャの刀という物語を付与された歌仙兼定を演じる。スクリーンに映るガラシャと同じ顔をした歌仙兼定。綺伝の後だからいきてくる設定。政府によって本来持つはずのない逸話を付与されて顕現した試験本丸の刀たち。他の男士達とは違う物語を持つ彼ら。その違和感。末満、とんでもねぇ。そして「政府による試験本丸」という存在。その実験による目的の先には三日月宗近がいる(完璧にひろちかシルエット再現されてた)一文字の刀たちにも同じように逸話が付与されていて、聞きなれた「嗅ぎなれた匂い、血の匂い、戦場の匂い」をちょもさんが言い出した時は驚いた。
敵が二転三転するの、マジ末満。
紫式部の生きた世界で読者が暴走して源氏物語の世界が実体化した、だと思わせておいて、実はその紫式部の生きる世界すらも物語の一部、源氏供養だったという驚きの設定。
光源氏として死にたかった彼を殺せない物語の女性たち。若紫が無垢な心で殺そうとするの、ハラハラした。本当にこんな子供に殺させるのか、そこまで人の心がない本を書いたのか末満!と思っていたら歌仙くんが代わりに殺してくれました。ありがとう歌仙兼定。雅じゃないもんね。
死んだ彼の亡骸は持ち去られてしまったけれど…これも今後の展開に繋がっていくのだろうか。この試験本丸もそれなりに普通の本丸として稼働しているようで演練とかするんだね。その演練でステ本丸と1度手合わせして、その時にステ山姥切に出会っている(このシルエットも完璧に荒牧国広だった)己の物語とは別の強い物語を持っているという…それは、極めてるのとは違うのだろうか…あの本丸において例えば円環を巡る三日月宗近を斬った物語なのか、彌助と2度まみえた物語なのか、ステ本丸そのものの物語なのか。次回の山姥切単騎出陣に繋がる匂わせ。
全員女性キャスト、故に、殺陣の迫力はやはり普段の刀ステと比べれば劣る…が、かつて観たヅカの殺陣が重心高くて苦手だなーって感じた私でも「こんだけ戦えれば上上吉」という感想。特に、七海さん。綺伝の時はまだ重心が高かったのに、どうですか、歌仙を演じるにあたってぐっと低くなったと思う。他キャスト同様、振り回す感じはまだあるけど、隊長として物語の中心として練度の高さを感じた。
物語を破綻させるために主要人物を殺す、というものすごく単純で力技な作戦を実行させる所が歌仙だなぁという感じ。あ、でもこの歌仙は細川忠興からガラシャに贈られた刀…でも三十六歌仙のお手打ち設定はさすがに残ってるから、やっぱ変わらずゴリラなのか。
歌仙と大倶利伽羅の回想で「田舎刀」みたいな雅じゃない的なアレがあったからもっと険悪かと思ったけど、付与された物語が違うから伊達の物語を持たない大倶利伽羅は田舎の刀ではないんだな。だから歌仙も必要以上につっかからない。
自分の物語を思い出すところが少々唐突に感じたけど、でも、大倶利伽羅の口から伊達政宗の名前が出てきた時と、なにより歌仙兼定の「三斎様」にものすごく感動したのよ。ガラシャの物だと思っていた歌仙の足元には綺伝の時にも使われた桔梗の花の照明が当たっていて、細川忠興の物であった本来の物語を思い出すとその花のまわりに小さな丸い照明が集まって細川家の紋のようになる。にくい、にくすぎる演出。
所詮物語は嘘、だから誰の心にも響くことは無い、みたいな台詞が出てくるけど、物語に関してのマイナスな言葉を御前がことごとく否定して「たとえ嘘の物語でも、その死に心を寄せる者がいれば、その死は誠になる」みたいなことを言ってくれて、なんかこう、はっきりとした史実をもたない物語によって生み出された御前が、演劇や創作を否定するような台詞を全て「そんなことはないさ」と言ってくれるのが嬉しかった。というか、御前の前でそんなこと言わんでくれ、頼むから。
御前に「誉をあげろ!」て言われるとめちゃくちゃ滾るなぁ。
歴史上人物、というか、今回は物語上人物か、の皆様もひとりひとりとても輝いていた。本編と行間、物語中の役柄と史実での役柄、その演じ分けがわかりやすく、素敵だった。お声が皆さん素敵で、やわらかく品があって優しくて、耳が幸せ。でもしっかりした強い声も出せる。
歌仙が光源氏の設定をうけて物語に飲み込まれていくところ、床に広げられた布をぐるぐると巻き付ける演出上から観ててとても良かった。良い使い方。素敵。
物語世界の外側からなんとかしようとする南泉、え、壁のマイムうま…( ꒪⌓꒪)
光源氏の設定をうけて完全キャラ崩壊おこした大倶利伽羅、伊達双騎や三百年では大倶利伽羅のままだったけど設定に飲み込まれてる大倶利伽羅は完全に光源氏を演じさせられてるから絶対言わない台詞も言うし馴れ合う(笑)なんとも言えない気持ちで見てたけど、行間で貴族なのに刀抜いて斬りかかる「だいぶ大倶利伽羅の残った光る君」は笑ったわ。血の気の多い光る君。
桜姫東文章
木ノ下歌舞伎
あうるすぽっと(東京都)
2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
タイル張りで段差のあるセット、客席に対して斜め向き、くすんだ色のカーテン(定式幕的な使い方だったけど浅葱幕っぽかった)、開演5分前アナウンス後、演者たち自ら細々としたセッティングをしに出てくる。
近くの人が「昔のお風呂みたい」と言っていたけど、このセットはたぶんプールじゃないかな。大きな窓、青を基調にしたタイル、大きな浴槽のような部分から突き出た鉄の手摺...これはプールに入る時に使うあの梯子に違いない。室内プールだと思う。朽ちてボロボロになった。
衣装はクラブにいそうな、渋谷系やお兄系。高貴な身分の桜姫と僧侶たちはファーを身に纏う。お付の局はしっかりしたロングコート。庶民になるにつれスカジャンやダメージジーンズ、柄シャツなどになっていく。侍は革ジャン。
木ノ下歌舞伎は初めてなもので、毎回こういう感じなのか今回だけなのかわからないけど、あえてテンポ感を外した間をたっぷり使う演出。今何待ちですか?みたいな時間がちょいちょいあるけど、それが次第に気にならなくなっていくしその間が心地よくすらなっていく。台詞もあまり感情的にはならず一本調子、棒読みともとれるような「演じている感」がない。全員がほぼ出ずっぱり、袖に入っても裏を通ってすぐ出てくる、そして各自次の出番を待ちながら端っこや舞台ツラに寝転がって屋号を呼んだり時には笑ったりしながら演じる仲間を見ている。稽古場のようにも感じた。開演もシームレスなら演じている時とそうでない時の境もシームレス。
ネタバレBOX
舞台奥に「発端」「序幕」といった文字が浮かぶ。それだけじゃなく、その幕のあらすじ、なんなら結末まで説明しちゃう。簡潔な言葉で事実だけが書かれた文は内容知ってても不思議と驚きをもたらしてくれて時々クスリと笑えてしまう...特に清玄ね。無実の罪はきせられるは川に落ちるわ落ちぶれるわ殺されて生き返ったのに恋敵の掘った自分用の墓穴に落ちて死んで、死んでもなお桜姫にとりついて惨めな醜態を晒す、白菊を独り死なせた報いでとにかくボコボコにされてて可哀想なんだけど出てくる度に「桜姫に迫り川に落ちる」とか「桜姫に迫り穴に落ちて死ぬ」とか展開が突き抜けてて面白くなっちゃう。「穴に落ちて死ぬ」はかなり客席から笑い起きてた。そして死んだらあんなスクリーム顔の風船になるなんて思わないじゃん(笑)風の音がうるせえ(笑)2回目出てきた時は本当に清玄として命が(死んでるけど)宿ってるみたいに見えたの不思議。桜姫の言葉に反応してるように見えた。それ見てめちゃくちゃ楽しそうに肩震わせて笑ってる成河さん可愛い。
屋号も個性的でさぁ、桜姫の紅<べに>屋はまぁ綺麗で良いと思う、成河さんもなんかそれっぽい感じで、問題なのはダルメシアン、シルバニア、ポメラニアンだよ(笑)なんだそれ可愛いな!あと「御両人」じゃなく「ニコイチ」てかけるのもズルい(笑)なるほど!って思ったけど面白すぎるだろ!
中村橋吾さんが所作指導ではいってるから立ち回りはしっかり歌舞伎的な動きがついてた。キッパリしてた。
ただ、それ以外は無表情無感動、視線が明後日の方や舞台に立っていないまわりの演者に向いてる、変な動きで、これはたぶん、歌舞伎ならではのあれこれを誇張してるのかな?って思った。あまり大きく表情を動かさない、台詞に独特の調子がある、客席からそう見えればいいから役者同士は目が合ってない、驚きや怒りやキャラ付けまで大きく誇張した観せる動きをする。役によって特定の動きをしていたから、キャラ付け的な部分が大きいのかも。背伸びするとか中腰で腕をぶらんとするとかゆらゆらするとか。
歌舞伎版の言葉も使いつつ現代語訳も交えつつ、前半そこまで桜姫の言葉遣い古典こてんしてなかったと思ったけど後半権助と再開した時にはめちゃくちゃ姫言葉だったの、あれは後々言葉遣いがはすっぱになる部分をわかりやすくするためなのかな?前半「自らは」とか言ってなかったよね?
壁にたてかけられた姿見が舞台装置にもなり、早替え用の化粧前にもなり、端に置かれたベンチも控え場と見せかけて突然本舞台になる。セットの転換も小道具の準備も衣装替えも決して急いでる様子は無い(清玄権助の早替えだけ急いでる感じあった)出番の直前まで座ってて役名を呼ばれてから立って刀さして出ていくみたいな余裕があった。なんというか、とても不思議な空間だったな。あれを成立させられてるのがすごいよ、普通成立しないよ、なにこれってなっちゃうよ、でも成立してる。成河さんがメルマガで言ってたのはこういうことだったのかもな。
非人に寺の使いが百両持ってきた時の箱がAmazonだった。
発端の清玄と白菊を探すそれぞれの捜索隊が少し離れた場所からぽつりぽつりと声をかけあうシーン、なんだかすごく異様だった。普通に芝居したら1分かからないようなやり取りなのに一言ごとに奇妙な間があって、それが彼らの戸惑いを表してるようでもあったしなんだかぐにゃりと捻れた回想のようにも思えた。清玄と白菊の会話も一本調子で、それなのに不思議と惹き付けられる。ゆっくり、ゆっくりと崖へ向かっていく2人のじりじりとした足取りやしっかりと互いを掴んだ手から緊迫感が伝わる。そこから白菊だけ落ちた時の「あ、」という清玄の間の抜けた声や「南無阿弥陀仏」の白々しさにギャップがあっておもしろい。
権助と桜姫の出会いの場面で、桜姫の「捨てて」「来て」というお嬢様らしい上に立って人に命じることに慣れている言葉遣いが最高に痺れる。腕の刺青もっとよく見たい、歌舞伎のわかりやすい釣鐘と桜じゃないのよ、でも台詞では「釣鐘に桜の入れ黒子」って言ってるからなにか関係している図柄なのだろう思ってるんだけど...半月っぽい形の下にミミズののたくったような線が描かれてて、一体あれはなんなのか。歌舞伎の女性は積極的、というのを権助に大人しく組み敷かれるだけじゃなく自分から着物を脱いで乗っかっていくという演出で表現していた。かっこええ。
歌舞伎版桜姫を前半しか観ていないもので後半の物語は完全初見だったのだけど、あんな可哀想な男女が出てくるなんて聞いてない!小雛ちゃん可哀想すぎるよ!お父さんも途中で気付いたんだな、身代わりだって、だから娘の首を斬った。台詞にもあったけど歌舞伎ヤバいよね(笑)ヤバいとは言ってなかったけど、こういう身代わりで首斬るとかえげつないことよくやるよな歌舞伎って、みたいな台詞だった。三人吉三もだけど、ほんと身代わりの2人はいい迷惑だよね。なんなら三人吉三の2人は畜生道に堕ちたのを兄が救ったという見方もできるけど、桜姫の2人はなにもしてないのに難癖つけられて殺されて本当に可哀想。しかもこの身代わりは失敗するし。奴ここで死んでたのか...残念だ。
青トカゲの毒を飲ませる、ていうのはどっかで見たことある気がする。別の芝居にも出てくるのかな?
可哀想な人ではあるんだけど、清玄煩悩まみれであんまり同情できないんだよなぁ(笑)やらせてくれ、じゃなきゃ死んでくれってほんとどうかしてるのよ。
桜姫の子供が巡り巡って結局桜姫のところに帰ってきちゃうのも歌舞伎だなー!って感じした。お十さん、我が子を失った悲しみから引き取ったはいいけど、生活苦なのかなぁ、捨てるとか酷い。
寄り合いに行きたがらない権助「今日はなだ万の弁当が出るぞ」と言われてすっ飛んで行った🍱
最後の最後、きっとあのラストシーンは歌舞伎版とは違うんだと思う。歌舞伎っぽくなかったから。権助と我が子を家族の御家の敵として殺すところまでは原作通りなのかなって思ったけど...殺したあとに家宝の都鳥をぽいっと投げ捨てる(きれいにプールの中へ落ちてった)のは現代的だなと感じたから。歌舞伎なら間違いなく家宝は家に持ち帰るはずだし、身を隠してる弟と再会も有り得る。投げ捨てた瞬間の桜姫の吹っ切れた表情と舞台奥から投げられた「ハレルヤ!」で不思議とスッキリした気持ちになった。開放感。
ロミオ&ジュリエット
ロミオ&ジュリエット製作委員会
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2023/01/28 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
上手側がごそっと見えない見切れ席。A席だから仕方ない。舞台ツラセンターあたりから舞台奥袖幕あたりまで斜めに見切れ。
初日ソワレ。配信のためカメラ入ってる。
客入れの音楽は無し、自然音?に混ざって戦闘機っぽい音がしている気がする。 子供たちの声と教会の鐘。
ネタバレBOX
一幕。
舞台の3分の1しか観えていないのでほとんどの芝居を耳だけで。オープニングの映像を使った人物紹介良き。初めての人にも両家それぞれの関係がわかりやすそう。
大公とばあやが出てくると安心して観れる、台詞もかなりしっかり聞こえる。ほかのキャストは台詞が少し速いように思う。速いだけなら気にならないけど滑舌が...台詞の中でボリュームに波があるから何言ってるかわからないところ沢山。
一幕は決闘とその判決まで。
決闘シーンは緊迫感があるように感じた、ほとんど見えてないけど。凌雅くんの一番の見せ場はたぶんこの辺り。中尾くんも台詞聞きやすい。ハキハキしてるし声も大きい。声量が安定してる。
肝心のロミオは真っ直ぐな芝居が素敵なんだけど、芝居の経験値がまだまだなのか台詞のボリュームにムラがあってスピードも速くて聞き取りにくい。魅せ方はさすがで、どうすればカッコイイのか、どうすれば色っぽいのかってのは心得てる感じがする。
二幕。ジュリエットの両親がキャラクターとして嫌な奴すぎる。娘の気持ちを確かめないまま結婚を決めた父親に何か言いたげな顔をしてた母親も、家父長制なのか恋人がロミオだったからなのか酷いことを言うし、極めつけはばあや。何があってもジュリエットの味方でいてくれると思ってたのにあんな裏切り(本人はジュリエットの為を思ってる)そりゃジュリエットが思い詰めるのも無理ない。
結婚初夜、布でベッドのシーツを連想させてるんだろうなー綺麗だなーと思って見てた(なお人物は全く見えていない)
ジュリエットの気持ちを確認しないままの婚約に一瞬戸惑った表情を見せたパリス、本当にジュリエットを愛しく思ってたんだろうな。でも娘は父親の決めた人と結婚するものだからそのまま飲み込んだ。葬儀の後で霊廟に忍んでいくほど恋をしていた、せめて一晩夫婦として一緒に過ごしたかったんだろうなぁ...息絶える刹那、ジュリエットの傍に寝かせてくれとロミオに頼む声の切ないこと。パリスは完全に巻き込まれ事故。まぁ、ロミオの話を聞かずに最初から喧嘩腰だったのも悪いと思うけど。
とにかく全員人の話を気かなすぎるし突っ走りすぎで誰にも共感できない、いらいらするー(笑)
ロミオに急ぎの手紙を送って、その確認を電話でする演出の矛盾。その電話でロミオのとこにはかけれないの?住所知ってるなら電話番号もわかんだろーよ。
ロミオが毒を飲むところも、ジュリエットが銃で自殺するところも、ずっと下手で静かに眠るパリスを見てた。パリスしか見えなかったもので。
舞台演劇に求めるものが「圧倒的な芝居の熱で思い切りぶん殴ってぐちゃぐちゃにしてほしい」なので、その点を満たしてくれたのが松村さんだけだった。出番がすくねぇのよ...3回?でも存在感がすごい。
あとはそうだなぁ、乳母の野口さんとモンタギューの鈴木さんが好きなお芝居してた。
若手チームも健闘してたけど、どうしても怒鳴り合うシーンが多くて台詞が潰れがちなのと、シェイクスピアの言葉が馴染んでないのか「台詞を言ってる感」が拭いきれない。中尾さんが声量十分台詞明瞭で良かった。テクニカルな部分以外ではそれぞれが役割をしっかりと演じていて良かったと思う。マキューシオってあんな危うい感じの子なんだ。夢を語るシーンといい決闘のシーンといい、彼の中の闇は一体なんなんだろう。ベンヴォーリオは友達思いの普通の子って印象。普通の良い子すぎてモブにまぎれちゃわないか心配になるくらい。
長谷川くんファンの感想は「たくさんの台詞を覚えられてすごい」とか「ロミオだった」とかばっかりなので、主役としてそれは当たり前だしぶっちゃけ台詞を覚えることは基本で特別なことではないので褒めるところじゃないのよ、という気持ち。でも、そんな感想が多くなるくらい芝居経験が少ないってことなんだろうな。ほぼゼロスタートでロミオを演じてるとしたら、とても素敵なロミオだったと思う。舞台上にすっと立ってるだけで、視線を引き寄せる引力がある。真っ直ぐで等身大のロミオ。
ミュージカル「進撃の巨人」
「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会
⽇本⻘年館ホール(東京都)
2023/01/14 (土) ~ 2023/01/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初めての青年館ホール。
1階後方列だったけど前の人の頭が邪魔になることなく観やすい、近い、良い。
開演前に巨人の足音が聞こえてるのドキドキする。何分前って決まってるんだろうなぁ。開演直前のひときわデカイ地響き、興奮した。隣のお姉さんは本気でビクゥッてなってた。
ネタバレBOX
幕開けの奇行種の群れ、どんな気持ちで観てたらいいんだって最初思ったけどすぐ慣れた。だってレベルが高い。1人リアル奇行種な動きしてる人いた。
アニメは履修してるけど、ほぼリアタイで見てたからかなり前。それでも「ここは外せない」ってシーンの詰め合わせだったから懐かしさと舞台ならではの観せ方で涙腺緩みっぱなしほっぺたガビガビ惹き付けられたぁ。
役柄的にしかたないんだけど、唐橋さんの出番が少ない。お父さんと神父様やってた。足りない、もっとくれ。
アンサンブルが魅せるシーンも多いし歌での掛け合いもあってダンスで表現された“通過儀礼”のシーンとても良かった。ウォールマリア陥落の場面で人々が潰され喰われていくのをあえて静かな曲と美しい旋律、美しい歌で表現するのがもう…なんか…しんどかった。
っていうかアンサンブルのレベルが高すぎる。し、アンサンブルの活躍がすごい。もちろんメインキャストの皆さんもすごいんだけど、歌って踊って走り回って合間で着替えてって…アンサンブルすごい。
メインキャストの皆様の再現度と解像度がえげつない。松田凌はやっぱすげぇや。語尾のちょっとした癖みたいなところがものすごくアニメのリヴァイだった。立体機動使わない方が松田リヴァイは人間離れした動きができるけど、ぐるんぐるん動く映像に合わせて飛ぶ姿、かっこよかった。ミカサもそう。一声発した瞬間からミカサ以外の何者でもなかったし、ガス切れで落ちて満を持して歌うのズルい。それまではエレンとアルミンや仲間が歌ってるのを見守ったり外から眺めてるけど、エレンが死んだと聞かされて冷静さを欠いたミカサの心が初めて激しく揺れているのを歌うことで表現してるのかなーって思った。
ダンスがすごいことだけ知っていた福澤くん。全員レベル高いのに、その中にあってもレベチな動きしてた。訓練兵卒業の宴会は完全にLIVE。その中にまじるサシャがキレッキレなのよ。かっこいいなぁ、サシャ。じゃがいものくだり、変に笑いを狙わずめちゃくちゃ真剣にやり取りしてるのが可笑しい。とてもメリハリのあるお芝居をされてたなー。お名前だけは見かけたことある気がする。星波さん。
舞台はマンパワーなのが好きだから、超大型巨人も鋼鉄の巨人もエレンの巨人もアンサンブルが操ってたの最高に興奮した。
スクリーンの映像とタイミングを合わせて戦うのも絶対大変だよ。映像のタイミングをある程度調節できるのか、完全に映像合わせで動いてるのか気になる。打撃エフェクトが別なんだとしてもめちゃくちゃ稽古したことは想像に難くない。
ラストの全員ダンス、リヴァイ兵長がリヴァイ兵長として踊ってて、そういうの大好きだから滾った。役のまま踊れる役者、最高。
新春浅草歌舞伎
松竹
浅草公会堂(東京都)
2023/01/02 (月) ~ 2023/01/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「吃又」
吉右衛門さんの芸を引き継いで、歌昇種之助兄弟の又平夫婦。歌昇さんの台詞や表情に吉右衛門さんを感じる。芸は生きている。
種之助くんの女房が絵を見つけた所、歌舞伎座で観た勘九郎猿之助夫婦の時よりあっさりめに感じた。お家の違い?
死ぬと決めて絵を描ききった又平の魂が抜けてしまった感じ、ゾクゾクするし、そんな亭主を支えて「よう描けました。御苦労でござんした」と声をかけ続ける女房の様子や、キツく筆を握りしめた指を1本ずつ外してあげて、その手をさすりながら泣く様子は胸が締め付けられる。種之助くんの控えめなすすり泣き、良い。
苗字が許されてからのハッピーな空気が前半と打って変わって晴れやかな気持ちにさせてくれる。
松也さんおいしいお役でさすがの存在感。下半身の安定感。莟玉くんも良かったなぁ。前髪の美少年、しっかりとした芯があって又平に対しても同門の兄弟弟子としての思いを感じる。
「連獅子」
微笑みを浮かべながらの子獅子なんて初めて見た!動きのひとつひとつが綺麗なのと、親子で動きのシンクロ率が高くて、お互いがお互いに合わせてるのが見てて気持ちいい。音のとり方も似てるのかも。
毛の回しかたは2人ともイマイチかなぁ…なんか物足りなくて、いまいち気持ちが入らなくて拍手は出来なかった。ガンガン回せばいいってもんでもないし、回数やスピードより大きく美しく回してほしい。
新春浅草歌舞伎
松竹
浅草公会堂(東京都)
2023/01/02 (月) ~ 2023/01/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「双蝶々曲輪日記 引窓」
橋之助くんの濡髪は大きさはまだまだ感じないけれど、一生懸命に全力なのは伝わる。そのまま真っ直ぐつとめてほしい。はーちゃんがめちゃくちゃ良かったんだけど、なんだ、どうしたんだ、これが成長ってやつなのか?仕事用のキリッとした所と、本来の性分であろうほんわかした優しい感じ、その演じ分けがとても良かった。客席からの拍手も「お決まりだから」じゃなく自然とおこっていように感じた。
「男女道成寺」
この演目は引きで見るのが正解だなって思う。白拍子姿のみっくん、独特の美しさ。雰囲気がある。もっとあの姿で踊ってるのが見たかったなあ。
新悟ちゃんのスッとした清廉な白拍子姿。見た目より激しく息もきれるだろうに、それを感じさせない涼やかな表情。すらりと伸びた細く長い指がひらひらと柔らかくひるがえる様が美しすぎる。
常盤津や長唄お囃子の皆様と役者の作り出す空気感、1番盛り上がったところで幕が閉まる所が憎いよなぁ。
荒人神 -Arabitokami-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/12/21 (水) ~ 2022/12/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
完全初見で5ヶ月一緒に完走しました。四神楽がどう回収されるのか、予想では白ちゃんの不思議な力で四神楽の主人公の力を荒に宿らせて戦うのかなー?とか思ってたんだけど…ぜんっぜん違った。そっかー、そっちかー、だから竹村さんは全作に参加して、全ての主人公と関わりを持ち続けてきたのかー…やられたぁ…こんなの予想できないよー。荒の少しぶっきらぼうな、それでいて元に向ける優しさや笑顔、指導する様子、時々のぞく軽薄な感じ、戦ってる時の好戦的な笑み、いろんなところに四神楽の面影を感じて、胸がいっぱいになりました。5ヶ月一緒に駆け抜けられて良かった。映像に残らないから毎月行けるだけ行って、五彩にまみれた5ヶ月だった。8月に戻りたい。履修した状態で改めて最初から見直したい。
ネタバレBOX
白い主人公ズが登場したのを初日に観た瞬間、出るって聞いてない人もいて、思わず口を手で覆いました(隣のお姉さんとシンクロした(笑))それぞれの作品で竹村さんが使用した武器を元が持って、その隣に四神楽の主人公が立つ。あの時のように、もしくは、あの時できなかったことを。荒に四神楽の竹村さんを感じるように、元にも四神楽の面影を感じた。主人公ズが荒に向ける表情や目、拳からもそれぞれの背負う物語を強く感じて、息が出来なくなるくらい胸がいっぱいになった。感動で殺されるかと思った。盲人が刺される直前、心踏音と同じ構図で笑いかけるのと、ミラの頭ぽんぽんはヤバい。コウが泣きそうな顔で荒をぶん殴った時に「弟子を泣かしてんじゃねーよバカ師匠!」って頭の中に聞こえてきて、ワードレス最高だなって思った。墨絵に描かれるのは荒だとばっかり思ってたから元の絵がバサァ!ってなった時、ビックリした。ビックリしたけど、納得もした。この物語の主人公は間違いなく元だったし、四神楽同様に荒はそういう魂の持ち主なんだなって。悪感情を否定しない、呑み込んで受け入れて、それもひっくるめて人間だから共に歩いていくっていう選択がとても不器用で、でも人間らしくて、良いなって思いました。一緒に歩いてくれる仲間がいるから大丈夫だ、俺はひとりじゃないって思えたんだなーってニコニコした。
戰御史 -Ikusaonshi-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/11/23 (水) ~ 2022/11/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
竹村作品史上もっとも難解なのではないだろうか。台本にも詳細な関係とか書かれてないので、真実は竹村さんの頭の中にしかないのだな。最初から最後まで頭フル回転。その間にもバチボコにカッコイイ戦闘が繰り広げられ、そのなかで物語のパーツを拾い集めて、なんとか自分の中で繋げていって、気づくと終わってる。殺陣の迫力と、その殺陣にこめられた強い感情に殴られ続ける90分。観終わっても2、3日は表助とろうそく男のことを考えちゃう。あと、これだけ難解なのにどんどん気分がハイになって最後ブチ上がって終わるっていう不思議体験も出来る。結論、超楽しい。
心踏音 -Shintouon-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/10/19 (水) ~ 2022/10/25 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
こんなに辛い物語がありますか?もうやめてあげて、はやく楽にしてあげてくれと唇を噛み締め爪の後が残るほど両手を握りしめて観ていました。
前半と後半に別れた「盲人視点」と「フミ視点」の物語。前半部分の衝撃のラストと、その衝撃を上回る後半への視点移動方法(あんな長尺でやれるもんなの?!と目を疑った)、からの後半フミ視点でまた衝撃をうけ…私の情緒はボロボロでした。救いの物語ではあるんだけど、悲しい。全員辛い。でもこの物語はずっと私の胸の中にあり続けるだろうなと思える物語。大切な人のために、人間はここまでできる。
ネタバレBOX
全部鈴人が悪い。あー、でも、フミの視界に自分が全く入っていないことを突きつけられた時の鈴人の表情がめちゃくちゃしんどかった。鈴人に従ってたコシとギンが、フミを斬った鈴人に「てめぇ何やってんだよ!」って掴みかかる所好き。鈴人ヤバいって薄々気づいていながら好きにさせてたパパも悪い。
賊義賊 -Zokugizoku-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
今人さんの「只者じゃない感」がすごかった。これが噂に名高い梅棒の人か...と慄いた。作品の雰囲気はものすごくPOPで可愛い。コウと鼠の関係、コウとクロの過去、師匠の存在、過去にも関わってくる同心。全てにワクワクしたしドキドキしたし最後はスカッとしつつ胸に少し寂しさが残る、絶妙!斬ってるか殴ってるかの視覚的な変化を赤い紙吹雪で表現しているのも面白かった。綺麗に舞うから殺しの場面が映える。綺麗なんだけど怖い。血吹雪で舞台上真っ赤。傷口から血が流れるように血吹雪をはらはらと零したり、工夫が細かい。
憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
お互いのことを強く思い合う姉妹の絆に毎回泣かされました。お姉ちゃんだから、怖いも辛いも苦しいも痛いもずっと我慢して平気だよって笑うミラと、そんな姉の頑張りすぎる所が心配なエラ。特別じゃない2人が死に物狂いで戦って、ボロボロになりながら仲間と平和を手にする物語。SSコンビ好き。子供の頃からエラにちょっかいかけてミラに怒られてた2人が戦場でエラに助けられり助けたりするの、控えめに言ってエモい。
独鬼
壱劇屋
萬劇場(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
壱劇屋さんと出会った、私にとって特別な作品。
再演時に東京で観劇して、一瞬で沼落ち、以降大ファンで大阪遠征もしています。最近は円盤化されないことが多いので、とにかく劇場に足を運んで観ないと二度と観られない可能性が高い。
ネタバレBOX
前回から続投の方も、新キャストの方も、みんなみんな素晴らしかった。全てがパワーアップしてグレードアップしていて、3回観たけど全然足りない。
1番キャラが変わったな、と感じたのは男春。袴姿だった前回は泥棒してても「それなりに裕福な坊ちゃん」て感じで品すら感じられたけど、今回はチョンマゲもあるしまるで農民みたいな格好で、性格もヤンチャになった気がする。鬼や女春といるときの年相応な表情と、仲間であっても邪魔なら殺す冷たい表情のギャップが良い。
藤島さんの刺客、ヤバかったですね(褒めてます)ぐにゃぐにゃした動きと、無造作なようでいて的確に仕留めにくる訓練された太刀筋、鬼に叩き伏せられて悔しさか怒りか叫んだ声が大好きです。
女春と女夏に関して、「目の前で襲われてる人を助けたい、でも敵であっても人を殺すのは良くない、そして鬼にも傷ついてほしくない」ってスタンスがどうしても「自分勝手だ」と思ってしまうのだけど、春はまだ子供だから許せても夏はもう20代で春の時に経験してるのになんでまた同じことする?って思ってしまう。ただ、今回観た回のなかで、自分を守るため腕を犠牲にした鬼にかける言葉を見つけられず「なにやってるんだ私は!」って悔しそうに唇をかみ締めて固く握りしめた拳で脚を何度も叩いてる女夏の姿にモヤモヤがすっと消えていきました。大切なもののために考えるより体が動いてしまうのは、きっと両親譲りですね。
深く斬られてぶらんってなってるだろう腕を女夏に見せないようにくるくるって回転して避ける鬼が優しくて好き。なんでもない、て言ってるみたいで、可愛い。
モブでブラスミの時に初めて拝見した真丸くんの男夏がかっこよすぎてどうにかなりそうでした。鬼と戦う時に2回、刀を背中側で持ち替えてそのまま斬りつける動きがあるけど、あれが最高にかっこいい。親の仇である鬼を、なんなら恋のライバルでもある鬼を、いつか殺すために鍛えた剣の腕で、この技もこの時のために何度も練習してよそで実践してきたんだろうと思うとほんと健気で真っ直ぐ。女のもとに通う合間に自分で賊をまとめあげるだけの力をつけて手下を増やして盗賊稼業もぬかりなく財をたくわえ強い奴を雇えて邪魔になったら躊躇なく皆殺しに出来るくらい頑張ってきたんだなぁ。男夏の拗らせ方は可愛い。
秋になると男を知らずいまだ少女のような女秋と、女には困らないが愛しているのは1人だけな男秋が久しぶりに再開するアダルトエモ展開。女を手酷く使い捨ててきたであろう男秋は立派にDV男に育ってしまって、愛し方も愛され方もわからない可哀想な人...まじバブちゃんで愛しい。怒りで男を殺そうとする鬼を女が必死で止めるのは、鬼にこれ以上殺させないためなのか、それでも男を大切に想っているからか、どちらにしても男にとっては残酷よな。このままいっそ死なせてくれと男は思っていたかもしれないし。
冬の最終戦に男が手下を連れてこなかったのは、秋の戦いの後ひとりになったからなのじゃないかと思う。他の何より、鬼を倒すことだけを思ってひとり鍛錬をつんで冬のあの日に最後の戦いを挑みに来た。女が死んだとは知らずに。
女冬が死んで、思い出のなかで春夏秋冬の女と過ごす鬼の「こうしたかった」思いは強く強く観てる人間の心に届く。女と過ごす時間の中で少しずつ感情を取り戻していった鬼は、春と夏の時間でもっと女と笑ったり楽しんだりしたかったのだなぁ。人の生も死も、本当には理解出来ていなかった鬼が、初めて触れる「死」。死を強く感じることで「生」も感じたからこそ、女のいない世界でも人の生を守り戦い続ける道を選んだのかもしれない、と思った。
女が鬼に願った「人を守って」は、祈りであると同時に鬼にかけられた呪いだなと、女冬の手を取らずに笑顔を貼り付け戦いへ向かう鬼を見て思う。女のいない世界でも生きていくしかない鬼にとって、それが救いであったならいいな。
二ツ巴 -FUTATSUDOMOE-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ふたりのともえが素晴らしかった。心優しく、美しく、強い。台詞がないぶん、仕草や表情が大切になるけど、一瞬の表情にグッと胸をつかまれた。壱劇屋さんはいつも素晴らしい役者さんをゲストで呼んできてくれて素敵な出会いをさせてくれる。
ネタバレBOX
ゲストといえば栗田さん、まさか舞台の上にいる姿が観られるとは思わなかったので感無量。ほぼ舞台上にいて人間を見ているそのお姿が神々しすぎる。水神VS宰相は脳と目がバグったんじゃないかってくらいのスピードで、でも速いだけじゃないちゃんと重さものっかっててさすがでした。
幕開けがもう人柱のシーンだから初っ端から苦しくて、選ばれてしまった恋人(と私には見えた)の背中にすがる長谷川さんの表情、肩を掴んだ手がエモかった。
生きながら枯れた川底に埋められる恐怖、なんの罪もない人を儀式とはいえ殺さなければいけない罪悪感、痛いほど伝わってきて辛かった。みんな苦しそうなのに宰相さんだけは「苦しそうなフリ」で「民に寄り添うフリ」で「優しいフリ」なのが出てて胡散臭いうえに不気味で、さすがの日南田さんでした。国にとっての必要悪な存在かと観る前は思ってたけど、王様にも内緒で裏でやってんな。
竹村さん演じるお父さんが娘の身代わりに人柱になってしまったのは衝撃だった。今回は農民設定だから竹村無双はないのか?っと少し残念にも思っていたら、最後の最後に親子戦が用意されていて、無双ではないけど親の愛と娘の思いを感じる辛いシーンで最高でした。
親子戦に行く前の川底の演出、すごかったです。これは水だよって印象づけられた水布(ビニール)を頭より上に上げるっていう仕組みとしては単純なのに、舞台上だけじゃなくて客席まで、劇場全体が水底に沈んだような錯覚を起こしました。勝手に脳内でエフェクト補完されて、衣装や髪ががゆらゆら揺れて見えた。
作中のバカデカ武器や水神の剣、厨二心がウズウズする武器をいつもありがとうございます!水神の剣は剣自体が水なのかなって思いながら見てました。烈火の炎に出てくる閻水みたいな。剣自体に神の力があるから剣から無限に水を発生させることも出来るっぽいし(水流での攻撃とガード)、空気中の水分をあつめることも出来るのかな(水弾を飛ばす)と思いました。使用する人間の精神力はかなり削りそうなので、どこまで神の加護が適応されるのか気になるところ。
何度も観たかった。クリスマス繁忙期で奇跡的に初日だけ観れたけど、千穐楽に向けて変わっていく舞台を見届けたかったです。私が石油王なら全通したのに...!
Pickaroon!【クチコミ待ってます!次回東京公演は10月!】
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2019/07/26 (金) ~ 2019/07/29 (月)公演終了
満足度★★★★★
待ちに待った東京公演。大好きな竹村さんの作品。
前半は少女と七賊たちのほっこりな日常なんだけど、後半は色んな謎が明らかになって涙無しでは観ていられない。しんどい。つらい。そしてエモい。個性豊かなキャラクター(とアクションモブ)が所狭しと暴れ回る大迫力の舞台でした!
壱劇屋、1度は観るべき。1度観れば絶対ハマるから。
猩獣-shoju-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2019/03/21 (木) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
東京で独鬼を観てファンになった壱劇屋さんの大阪公演を縁あって観に行くことが出来ました!
新作と再演の交互上演、1日3ステ、毎回汗だく、物凄いことをやってました。
台詞のないワードレス、でも、だからこそ伝わってくるんです、ひとりひとりの感情がダイレクトに響いて、芝居を観てるんだけど「感じる」ってのが感覚的には近い。
今回も、たくさん泣いてしまいました。
壱劇屋最高です。
【東京公演】劇団壱劇屋「独鬼〜hitorioni〜」
壱劇屋
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2018/07/12 (木) ~ 2018/07/17 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/14 (土) 19:30
座席C列9番
価格4,000円
壱劇屋さん初観劇でした。
おとぎ話とか絵本とか、昔話を見ているような、「むかしむかし...」で始まりそうな優しくて残酷で、観終わったあと胸がいっぱいになる舞台でした。
台詞は無くても、役の想いがひしひしと伝わってきます。台詞がないからこそ、心のより深いところに直接届きます。
殺陣が好きな人、和風ファンタジーが好きな人、新感線の村木よし子さんファンの人、是非観てほしい!
もう再演するかわからない舞台です、生で見られるのは最後かもしれません、愛知公演残ってます、東京より安いよ!迷ったら観に行くべき。
ほんと、今回行ってよかったです。壱劇屋さんに、独鬼に出会えてよかった。
ネタバレBOX
鬼の笑顔に泣かされます。夢の中ではほんとに楽しそうで、でも現実では無表情。それが、最後、やっと歯を見せて笑えるところまできたのに...もう彼女はいない。
時の流れを春夏秋冬で表現してて、季節が巡るたび鬼と女との関係も少しずつ変わって、女と男の関係も変わって、なんでこうなってしまったんだ!ってもどかしくもなる。男の行動はたしかに愛ゆえなのに、想いが強すぎるんだなぁ。