latticeの観てきた!クチコミ一覧

21-40件 / 544件中
桜の園

桜の園

桐朋学園芸術短期大学

俳優座劇場(東京都)

2024/02/14 (水) ~ 2024/02/15 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

[Cherry]
演劇ってやっぱり難しいのだなあとしみじみ考え込んでしまった。観る方でなく演じる方ね。これは指導教授が悪い。もっとストーリーに起伏があって分かりやすいものでないと大学二年生では無理だよ。

アンネの日

アンネの日

serial number(風琴工房改め)

ザ・スズナリ(東京都)

2024/01/12 (金) ~ 2024/01/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

男性糾弾のメッセージが飛び交うかと思いきやバランスの取れた学びの多い舞台だった。終活に励むような年齢になって女性の生理の勉強をしても学んだ知識を応用する機会がないのが残念ではある。

まあしかし「生理の負担(と出産の苦しみ)がない代償として神はいくつかの能力を男性から奪った。優しい心、他人への共感能力、協調能力、コミュニケーション能力…」と考えると少し男性にも同情の余地が出てくるような気がしませんか。…しないか、残念。

推しの瑞生桜子さんは透明感を保ちつつ大人になっていて、そのまま成長されることを願うばかりだ。他の7人の方々(ひとからげで御免)も役者さんってうまいものだと久しぶりの観劇に感心の連続だった。

おまけ:アンネ株式会社は、かつて存在していた、ナプキンやタンポンなどの生理用品を製造・販売する会社。1993年(平成5年)に東証1部上場のライオン&ユナイテッド製薬(日本)株式会社と合併した。
2002年(平成14年)ライオンが生理用品から撤退、エルディタンポンをユニ・チャームへ譲渡。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

赤と黒

赤と黒

梅田芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/12/08 (金) ~ 2023/12/27 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

スタンダールの名作「赤と黒」、貧しい家に生まれた主人公ジュリアン・ソレルが貴族社会を憎みつつそこにのし上がって行く物語。いつかは読むと誓っていたがもうそんなことはないと確信する今日この頃。昔の自分にはミュージカルで勘弁してもらおう。

原作を短縮かつ改変した分かりやすいストーリー、分かりやすい音楽、溢れるバックダンスとバックコーラス。とくにコーラスが最高!単純に嬉しい楽しい。フレンチロックミュージカルということだが、昭和の昔にはフレンチポップスがたくさん洋楽トップ10に入ってラジオから流れていたりしたせいか年寄りの耳には非常になじみが良い。深さとか微妙な機微とかとは無縁であるので無心に楽しもう。フライングする人もなく見事に3rdコールで納得のスタンディングオベーション。

残念だったのはルイーズとエルザの歌がユニゾンだったこととオープニングの歌の出だしが地味でバンドの派手なイントロに高揚した気持ちが宙ぶらりんになったことである。

最初の3日間4公演はカーテンコールに撮影タイムがある。

ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルク

キョードー東京/TBS/イープラス

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/11/28 (火) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

売り出し中の本格派若手女優、清原果耶の初舞台ということで出かけてみた。オープニングは暗い舞台の床が開いて白い煙と赤い光が漏れ出たところに彼女が舞台下から歩み出て来る。そしてわらわらと湧き出て来た兵士や農民でたちまち舞台が一杯になると、結構太くて低い芝居向けの声で彼女がセリフを発する。いやいや良い調子じゃないか。

脚本は中島かずき(劇団☆新感線)、演出は白井 晃で、100人にもなろうかという大勢の兵士が東京建物 Brillia HALLのさほど広くない舞台全体を躍動し、観客席の通路を走り回るのは本当に楽しい。

では彼女のまじめで繊細な持ち味と数頼みのド派手な演出の相性はどうだったのかというと……ごめんなさい、私の好みではなかったなあ。

ネタバレBOX

ジャンヌが実は国王シャルル7世の異父妹だったという設定はあんまりだ。そういうことなら沢尻エリカあたりを起用して異次元の作品にすれば良いのに。
君は即ち春を吸ひこんだのだ

君は即ち春を吸ひこんだのだ

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/11/07 (火) ~ 2023/11/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

一般に芸術作品の素晴らしさとその作者や演者の人間性とは無関係だというのが私の基本的なスタンスなので、「ごんぎつね」に感動してこの舞台を観に行ったわけではない。実際、この舞台で知ることができる限りは新美南吉の人生に特段興味深いところはない。結核を患った人々の悲しい暮らしそのものである。そしてまた検索してみると、南吉にはこれ以前に2人の恋人がいたり、中山ちゑとの間も冷めてはいたが死に際しては号泣したという記述があったりして舞台から受ける印象とはかなり異なる。そういうわけで、一般にこういう事実とフィクションの混ぜご飯はどうも好きになれない。

プロデューサーの狙いを勝手に想像すると、この時期に日本的な暗くて狭い演劇を一度押さえて置くということなのだと思う。そして2月の修了公演で明るく分かりやすい有名作品で締めくくるという作戦なのだろう。

役者さんで気になったのは第一に父親役の樋口圭佑さん、頑固な職人そのものだった。実は40過ぎのおっさんではないかと疑っていたのだがカーテンコールで間近に見るとハニカミ屋の好青年だった。お母さん役の小林未来さんも若さがときどきにじみ出てしまうが秀逸。恋人役の根岸美利さんの小悪魔的だが純情なのよという内面の設定に、ボディラインを強調した衣装をプラスするというサービス精神にはひれ伏すしかない。

尺には尺を / 終わりよければすべてよし

尺には尺を / 終わりよければすべてよし

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2023/10/18 (水) ~ 2023/11/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「尺には尺を」を観劇 90分+20分休+60分

昔「歌わないソニンさんは魅力半減」と書いたことがある。あれから3年半、私も成長したのだろう「歌わないソニンも最高!」と180度転換した感想をもったのである。

うん?そうか?いや違う、彼女は歌っているのだ!ナチュラル・コーラスな声の音色、ナチュラル・リバーブな音量と音程の微妙な変化、そして緩急の変化、そうこれは言葉ではなく歌なのだ。他の出演者は現代口語的なセリフ回しであるのに対して彼女だけは芝居的な、芝居がかった、芝居じみた演出となっている(かなり興奮して盛ってますw)。体幹のしっかりした美しい身のこなしも相まって彼女の演劇の今を存分に楽しむことができる。最後の「え?なにこれ!おかしくない?」という表情がたまらない。

後方に空席があるのが残念だが、納得のスタンディングオベーション。

岡本健一さんとソニンさんが大活躍するのに対して浦井健治さんと中嶋朋子さんは出番も少なくオーラを消しているのがずっと不思議だったのだが、そうか同一俳優陣2作品交互公演とはそういうことか、明日はまったく逆になるのだと今悟った。両作で主演はさすがに無理だろう。これだけ観て「浦井健治オワタ」とかいわれるリスクもあるなあ。そうだ最初の出演者の怪我のため急遽登板となった宮津侑生さん、今日は思いっきり目立たねばならない番であったのだが普通に良い演技だった。明日は少しは楽ができるのだろう。良かった良かった。

燕のいる駅

燕のいる駅

ニッポン放送

紀伊國屋ホール(東京都)

2023/09/23 (土) ~ 2023/10/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

世界の終わりが近づいている。原因は分からない。人々の日常はいつもと同じようだが淡々と破局に向けて進んで行く。+いくつかの愛の形。

そんな風な雰囲気だけのお話である。何が起きているのかも分からない、思わせぶりな「日本村4番駅」の意味は何なのといったことは最後まで回収されない。一部は小出しにされるのだが自分で考えろということらしい。作者の勝手な考えを観客に想像しろとはなんと傲慢な。作者って土田英生さんだけどMONOのものは良いんだけどね。それを期待したら外れたってこと。

イケメン俳優さんを起用して若い女の子を呼ぼうという舞台のように感じた。…などと書くと何を今更と言われそう。いやまあその通り。

追記:しかしいくら何でも観客に知らされる情報が少なすぎる。これは観客にも「何が起きているのか分からない不安」を体験してもらおうということなのだ(分からない範囲は異なるが)。そこから先はお話を想像して感動するのも自由、作者の手抜きだと文句を言うのも自由ということだろう。私の場合は自分の中に無いものを求めて演劇に通っているのでこの舞台は完全な外れということになる。

三人姉妹

三人姉妹

アイオーン

自由劇場(東京都)

2023/09/23 (土) ~ 2023/09/30 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ようやくチェーホフの4大戯曲をコンプリート。
この「三人姉妹」が一番ストーリーが豊かで現代のTV・映画のドラマに近く肩肘張らずに自然に観ていられる。

将軍であった父が亡くなり来訪者も減ったとはいえ、自前のお屋敷に住み、父の年金のお陰で働かずに暮らすことができ、使用人を雇ってパーティーを開く余裕さえある。チェーホフの登場人物はこんな人が多く自分の身をどこに置いて捉えれば良いのかとまどってしまう。まあ100年以上前の外国の話なので「へえ、そうなんだ」と傍観していればサーっと流れて行く。それにしても「モスクワに行きたい」という姉妹の気持ちは「東京に行きたい」と思っていた若き日の私とオーバーラップして懐かしい。念願かなって東京(埼玉だけど)に出て来ることができた私としては姉妹にもモスクワに行って貰いたいと祈るばかりだ。

1・2幕は姉妹のダイニングルームで展開される。その家具が気品があってきらびやかに輝いている。規模こそ小さいが「レオポルト・シュタット」を思い出してテンションが上がった。

「自由劇場」は1・2階合計500席のコンパクトな作りで舞台との距離が近く、今回5列目だったせいもあって実演の面白味を満喫することができた。観客には念のいった着物姿のご婦人もいらしたりして、ちょっと幅が広く作りの良い椅子と相まって非日常に入り込むことができた。

ヨーコさん

ヨーコさん

演劇集団円

吉祥寺シアター(東京都)

2023/08/26 (土) ~ 2023/09/03 (日)公演終了

実演鑑賞

佐野洋子さんのことは名前を聞いたことがあるくらいで、この劇を観に行ったのは演劇集団「円」の作品だからである。皆さんが書かれているように完成度は高い。主演の谷川清美さん(現在の演劇集団円の代表取締役)はさすがの圧倒的演技で会場を制圧していた。休憩なしの1時間50分

しかしながら佐野さんのことをほとんど知らない私は最後までとうとう入り込めなかった。何も書けないので佐野さんのことを調べていて気が付いた不思議なループを書いておく。

佐野洋子はジュリー(=沢田研二)のファン(とこの劇の冒頭で言っていた)
ジュリーのファンと言えば悠木千帆(後の樹木希林)
悠木千帆の夫は岸田森(その後離婚、岸田森さん懐かしい!)
岸田森の父の兄は岸田國士
岸田國士の娘は岸田衿子(と岸田今日子)
岸田衿子の夫は谷川俊太郎(その後離婚)
谷川俊太郎の妻は佐野洋子(その後離婚)

SHINE SHOW!

SHINE SHOW!

東宝

シアタークリエ(東京都)

2023/08/18 (金) ~ 2023/09/04 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お馴染みのaga-riskの面々がシアタークリエで有名スターの方々と共演しているのを見るのは不思議な感覚だ。安定のaga-riskクオリティが更にパワーアップしていて大いに楽しませてもらった。

これを観ていて確信したのは、私がTVとか劇場でのプロのお笑いを必要としておらず圧倒的に音楽を求めているということだ。そういうわけで感動するのはお芝居そのものではなく歌となってしまう。その中でも高音炸裂2連発の
栗原沙也加さん「ロマンスの神様」(広瀬香美)
木内健人さん「粉雪」(レミオロメン)
とそれに続くバラード
中川晃教さん「楓」(スピッツ)
には心が震えた。

この舞台は歌が主役ではないので曲の途中にドタバタが入るのだがそれがかなり鬱陶しい。歌を聞かせてよと叫びたい気分だ。それを一番感じたのは朝夏まなとさんのあの歌である。コメディとしては拍手喝采をする場面なのだろうが私は逆にすっかり落ち込んでしまった。もちろんこれは私が観方を誤っているのである。それは分かっている。最後の1コーラスくらい演出を無視して爆発してくれないかと期待したが当然それはなかった。

MC役の鹿島ゆきこさんにシアタークリエ級の華を感じた。

*実在の大会の決勝が行われました。
「新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会」、4年ぶり開催の第46回はPayPay銀行が優勝(2023/8/25)

十人のエスパーたち の殺人

十人のエスパーたち の殺人

カスタムプロジェクト

調布市せんがわ劇場(東京都)

2023/08/11 (金) ~ 2023/08/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

毎年8月お盆休みには仙川劇場での観客参加型の推理ドラマが行われていたが2020年からコロナのために中止になっていた。昨年は会場を変えて行ったのだが私は知らなかった。

この推理劇の肝は正確で精密な理屈ではなく、屁理屈、糞理屈、謎理屈、言い張る本人しか分からない理屈、「いやいやそれだけは無い」理屈、などの理屈にならない理屈の数々である。これらの地雷を大量にまき散らし観客の正しい判断力を麻痺させ、後半の種明かしで炸裂させ無条件降伏に追い込むのだ。そういう目くらましをかいくぐって全問正解する人が9%もいるという。もう尊敬しかない。

2018,19年に参加したときは来年こそは全問正解するぞと細かく作者の癖を研究したのだったが間が空いたせいかすっかり忘れて真面目に考えてしまった。当然ながら何一つ分かるはずもない。いやあそれにしても全く手も足も出ないのは老化もあるなあ(泣)。

千秋楽が終わってネタバレの拡散が推奨された。この後、来年のために今年の分析を少しずつ書いて行く。配布資料を持っていない方にはチンプンカンプンであろうがそれでも解けるんじゃないかな。

問題1:劇中で殺された二人を、殺害した犯人は誰?下記から選択せよ
志保、写田、複井、由解、未来、姫野、陶磁、大念、速水、振原

問題2:エスパー複井の超能力は何?下記から選択せよ
瞬間移動、変身、磁力発生、透視、念写、頭脳明晰、精神感応、潜水、念力、透明化、
ダウジング、時間跳躍、加速装置、爆弾、暗号解読、動物操作、未来予知、複製、治癒、発火

問題3:陶磁殺害の方法(密室トリック)は?選択肢から選び、空欄□を埋めよ
※選択肢は複数回使用可能です。
犯人が出たのは□から。□を□の隙間に使い、□を低くして□ことで密室を作った。
壁、棚、換気口、天井、抜け穴、ナイフ、お茶の葉、本、エアコン、指、
死体、ベッド、室温、歯、音量、身長、ステッキ、ドア、燃やす、磁力、
瞬間移動、重くする、軽くする、凍らせる、滑らせる、火、ボンド、窓、姿勢、遅らせる、
走らせる、頭、目線、水、未来予知、念力、加速装置、油、眠らせる

解答はネタバレBOXへ。舞台も捜査資料も見ずに解けるか?

ネタバレBOX

真面目に考えない解答法:おそらく主催者が想定したのはこれ。
1:志保:一番意味不明な名前の志保(シホ)を逆から読むとホシ。
2:複製:志保と姫野以外は名前は自分が持っている超能力に関係しているので「複」か「井」に関係するものを探す。
3:意味の通じる文章はそう多くはできない。ひたすら試すとそれらしいものができる。
犯人が出たのは(ドア)から。(水)を(ドア)の隙間に使い、(室温)を低くして(凍らせる)ことで密室を作った。

解答編で示された解き方はあとで書く(かもしれない)。このロジックの荒唐無稽さがこのお芝居の楽しみどころなのだが文章では伝わらないだろう。
桜の園

桜の園

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/08/07 (月) ~ 2023/08/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最初は♪チェーリー、チェリベイビー♪と「シェリー」の替え歌で始まり昭和のおっさんはニヤッとしてしまうが、こういう軽めのコミカルな演出がこの舞台の売りである。最初は「面倒くさいなあ普通に演ってよ」とイラっとしたが、チェーホフが題名に続けた「喜劇」の意味はこういうことなのかと最後には説得されてしまった。嘲笑とか冷笑とかではなく普通の軽めの笑いである。まあそれに本当に何の工夫も施さないと退屈な舞台になりそうだし。他の「桜の園」よりかなり長めの 90分+20分休憩+70分。

演出のショーン・ホームズさんは昨年「セールスマンの死」を手掛けた方。いろいろ変わった演出が出て来るが半分も意図は分からない。特に最後のあの機械の轟音はいったい何の意味があるのだろう?(追記:意味が分かったのでネタバレへ)そういう個々の不満もあるのだが全体としてはかなり心地良い。そういうわけで3rd callでやや迷いつつも立ってしまった。立ち上がり率は40%くらい。まあ今日はまだプレビューだし、こんなものか。

ラネーフスカヤ達はどんどん落ちて行き、そのことも分かっているのに何も変えられない、というと最近ずっと日本について言われていることと同じだ。…とボヤキを書こうとしたが救いがないので中止。

ネタバレBOX

・豪邸なのに本棚と椅子がひどい安物だったのは意味が分からない。
・舞台の主要部に覆いかぶさるコンクリート製(風)の大きな箱は皆を閉じ込めている古い枠組みを表しているのだろう。全員がそこから抜け出し、最後に残るのは老執事だけ。
・最後の爆音チェーンソーの登場は全員(除く老執事)と桜の園(=これまでの人生)とのつながりを断ち切るためなのだと1日経ってようやく分かった。なんと鈍い(汗)ここは原作の「はるか遠くで、まるで天から響いたような物音がする。それは弦(つる)の切れた音で、しだいに悲しげに消えてゆく。」に対応している。

以下追加の考察:
手持ちの神西清訳では表題が以下のようになっています。
・かもめ ーー喜劇 四幕ーー
・ワーニャ伯父さんーー田園生活の情景 四幕ーー
・三人姉妹 ーー戯曲 四幕ーー
・桜の園 ーー喜劇 四幕ーー
「かもめ」と「桜の園」が喜劇となっています。「かもめ」は主人公が自死してしまうのでカッコつきの喜劇です。それに対して「桜の園」では誰にも悲劇的な出来事は起こりません。ラネーフスカヤは財産は失いましたがパリにいるおばさんのところで大して違わない生活を送るようです。他の皆さんも新しい生活に期待しています。残された老執事だけは今までの生活を続けることが幸せなので最後の場面は恍惚の中で息を引き取っているようにも見えます。まとめると「いろいろ心配しなくても人生何とかなるものさ」的な喜劇なのです。この戯曲は1904年の作品でロシア革命まではまだ13年の時があります。我々はロシア革命を知っているので、ここですでにラネーフスカヤがとんでもない悲劇にあったように錯覚してしまうのです。
Proof

Proof

ハルナツ

シアター風姿花伝(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/29 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

【日本語版】を観劇、【英語版】もあり(60分+10分+55分)
亡くなった天才数学者ロバートの遺稿から画期的な証明(proof)が発見される。状況から故人の手になるものと思われたが娘のキャサリンは自分が書いたと主張する。さて真実は…。

というミステリー風な看板を掲げているが、実は数学でもミステリーでもないラブストーリーなのだ。キャサリンのことを恋人のハルは信じたいのだが彼の数学者としての理性はそれを拒否する。証明を精査している内にハルはあることに気づく…。

そういう葛藤と昇華の物語。と続ければかなり正確な紹介になるだろう。前にダルカラード・ポップ版を観たときは数学でなくても小説でも何でも良いだろうにと反発したのだがこの舞台も観て数学であることの必然性に少し理解が深まった気がする。

この公演は小林春世さんと佐藤千夏さんによるユニット「ハルナツ」の旗揚げ公演。お二人は持ち味全開というかやりたい放題(笑)。私はロバート役の高川裕也さんの落ち着いた良き父親振り(と静かな狂気)に好感を持ったが、会場で一緒になった知り合いの女性はハル役の祁答院雄貴(けどういん ゆうき)さんがいたくお気に入りの御様子。確かにイケメンでオーラが出ていた。ああしかしロバート役はダラカラード・ポップ版の中田顕史郎さんの派手な演技も良かったなあ。原作の設定は静だと思われるがそれを外した中田節は誰にも真似はできない。

二回目は一回目とは真逆に下手後方から観劇。
場所のせいか熟成が進んだのか私に余裕ができたのか前回とはかなり印象が異なる。特にロバートが感情を激しく表すようになったと感じたが観る場所の違いかもしれない。主宰のお二人はやりたい放題と書いたが小林さんはNYKのセレブ風から田舎のマイルドヤンキー風まで声色も変えなが表現力の幅を試す一方で佐藤さんはひたすら自分の道を追求していて対照的であった。

会場は2回とも満席で新団体まずはめでたし。

灰色の街

灰色の街

Project JUVENILE

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

殺人請負会社のお陰で成り立っている街というブッ飛んでツッコミどころしかない設定は良い。そして主要な役者さんは自分のキャラを確立し演技もしっかりしている。

だが、そこで展開されるのは時代劇やヤクザ映画や刑事ドラマなんかで見たようなシーンばかりだ。こういうお話はいくつかキーワードを与えるとChatGPTなんかのAIが作ってくれるようになるだろう。人間はもっとワクワクするものを作らないと。

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

意外性の全くない筋書きだった。
追記:
…と書いてから考えた。何か別の意味があるのではないかと。次の二つがすぐに思い浮かんだ。

1.これはEpisode1ですべての差別がなくなった未来を描くEpisode2がある。
2.実はこの戯曲はあらすじを ChatGPT で作った実験戯曲なのである。

この二つを検討して行くうちにEpisode2をChatGPTで作るとどうなるかが俄然気になって来た。長くなるので結果はネタバレBOXへ。

ネタバレBOX

以下は無料版 ChatGPT との質疑応答です。

まずはテスト

質問1
CoRich舞台芸術って何ですか

ChatGPT
CoRich舞台芸術(コーリッチぶたいげいじゅつ)は、日本の演劇情報プラットフォームであり、演劇関連の情報を提供しているウェブサイトです。CoRichは、「コミュニケーション(Communication)」と「リッチ(Rich)」を組み合わせた造語であり、演劇に関わる人々が情報を共有し、舞台芸術の豊かな体験を実現することを目指しています。

CoRich舞台芸術では、演劇公演やイベントの情報を掲載しており、舞台作品の上演情報や劇団・俳優のプロフィール、チケットの購入などを提供しています。利用者はウェブサイト上で公演を検索し、気になる作品や劇団を見つけることができます。

また、CoRich舞台芸術では、演劇制作に関わる人々が自ら公演情報を登録・掲載することもできます。これにより、新人劇団や個人の演劇作品も多く紹介され、幅広い舞台芸術の情報が集まっています。

CoRich舞台芸術は、演劇を愛する人々にとって便利な情報源となっており、演劇文化の発展と舞台芸術の普及に貢献しています。

質問2
「ベニスの商人」でのシャイロックへの差別をどう思いますか。

ChatGPT
「ヴェニスの商人」におけるシャイロックへの差別的な扱いは、多くの人々にとって懸念の対象となっています。劇中では、シャイロックがユダヤ人であることに基づいて、彼に対する偏見や差別が描かれています。

シャイロックは劇中で商取引を行う金貸しとして描かれ、キリスト教徒のキャラクターたちからは嫌悪や侮蔑の目で見られ、冷たい扱いを受けます。また、彼が復讐を企てる場面も描かれ、その行動によって彼が悪役として描かれることもあります。

このような描写は、当時のユダヤ人に対するステレオタイプや偏見を反映していると指摘されています。ユダヤ人は中世から近代にかけて迫害や差別にさらされてきた歴史があり、その背景を考えると、シャイロックのキャラクターがユダヤ人コミュニティに対する差別を助長する要素を含んでいると感じる人々もいます。

ただし、文学作品は時代や文化の産物であり、当時の社会の偏見や価値観を反映することがあります。シェイクスピアの「ヴェニスの商人」もその例です。これにより、作品を批判的に読み解くことや、その中の差別的な要素に対して議論を起こすことが重要です。

重要なのは、作品を通じて差別や偏見を助長することではなく、むしろそれらを問いかける、議論を呼び起こす、または反省を促すきっかけとなることです。また、ユダヤ人差別や他の形態の差別を根絶し、共感と理解を促進するための努力を続けることが重要です。

質問3
すべての差別が無くなった世界の良いところと悪いところは何ですか

ChatGPT
仮にすべての差別が無くなった世界が実現した場合、以下に良いと考えられる点と悪いと考えられる点を挙げることができます。ただし、これらは一般的な観点からの考察であり、個々の意見や文化によって異なる可能性があります。

良いところ:

平等な社会: 人々は性別、人種、宗教、性的指向などに基づく差別を経験せず、平等な機会と扱いを受けることができます。
多様性の尊重: 個々の個性や文化的背景が尊重され、多様性が受け入れられる社会が形成されます。これにより、異なる視点や経験からの豊かな意見やアイデアが生まれる可能性があります。
社会的結束力: 差別がなくなることで、人々はより一体感を持ち、協力や共同の目標に向かって働くことができます。
平和と調和: 差別による対立や紛争が減少し、平和的な社会が実現する可能性があります。

悪いところ:

失われる多様性: 差別がなくなることで、文化的な多様性や個々のアイデンティティが薄れる可能性があります。
競争の欠如: 社会的な差別がなくなることで、競争の要素が減少し、モチベーションや成果の向上に影響を与えるかもしれません。
問題の不可視化: 差別がなくなることで、過去や現在の社会の不平等や問題が見えにくくなる可能性があります。これにより、改善や対策が遅れる可能性があります。
以上は一般的な観点からの考察ですが、実際の社会や個人の経験や価値観によって評価が異なることを念頭に置いてください。

質問4
すべての差別が無くなった未来を悲観的に描く小説のあらすじを書いてください

ChatGPT
タイトル: "The Price of Uniformity"

あらすじ:
「The Price of Uniformity(均一性の代償)」は、すべての差別が無くなった未来社会を舞台にした悲観的な小説です。

物語は、近未来の地球で展開します。科学技術の進歩により、人類は差別を根絶し、均一な社会を実現しました。人々は性別、人種、宗教、性的指向などによる差別を経験せず、平等な機会を享受しています。しかし、この均一性の代償として、社会には深刻な問題が生じています。

主人公であるエミリーは、この均一な社会で生きる若い女性です。彼女は感情や個性を抑制することを求められ、異質なものを排除する文化に疑問を抱いています。彼女は自由や個別性を求め、均一性に疲れ果てていきます。

物語は、エミリーが均一性を打破しようとする決意を抱き、抵抗運動に参加することから進展していきます。彼女は秘密のグループに加わり、人々に異なる意見や感情を持つことの重要性を啓蒙しようとします。

しかし、エミリーの抵抗運動は社会の安定と均一性を脅かすと見なされ、徐々に反対派の弾圧が始まります。言論の自由は制限され、個々のアイデンティティや文化的多様性を表現することは危険となります。

最終的に、エミリーは絶望感に苛まれながらも、自由と個性を求める戦いを続けます。物語の結末では、エミリーが均一性に立ち向かう決意を持ちながらも、社会の力によって押し潰される悲劇的な結末が待ち受けています。

「The Price of Uniformity」は、均一性がもたらす問題や自由の喪失を通じて、現代社会における多様性と個性の重要性を考えさせる小説です。

*少し時間が経ってから再開

質問5
差別の無くなった未来を悲観的に描く小説を書いてください

ChatGPT
タイトル: 意味のない平等

第一章: 幻影の平和

それは、差別のない未来、人々が永遠の平和を享受する世界であるとされた。しかし、その幻想的な平等は何かが欠落していることに気づく人々によって徐々に明らかにされていく。

主人公、アリアはその世界で生まれ育った若い女性である。彼女は自由に選ぶことができる職業を持ち、教育を受け、政治に参加する機会も与えられていた。人々は外見や出自に基づく差別をなくし、法律は公平に適用されていた。しかし、アリアはなぜか内心に違和感を覚えていた。

第二章: 虚構の均一性

アリアが探求するにつれて、彼女は差別がないとされる社会においても、隠れた差別が存在していることに気づく。個々の人々の違いや特異性は否定され、均一性が求められる社会で、多様性や個性が失われていることに彼女は驚愕する。

人々は全員が同じような考え方や興味を持ち、感情を表現する自由も制約されていた。文化や芸術の多様性は抑圧され、単一の基準に基づいたものが奨励されるようになっていた。アリアは、自分自身が本当に自由であるのか疑問を抱く。

第三章: 偽りの平等

アリアは徐々に、差別のない社会がどのようにして支配と統制に変わっていったのかに気づく。政府は平等という名の下に、人々の行動や思考を監視し、コントロールするシステムを築き上げていたのだ。

個人のプライバシーは侵害され、思想や表現の自由は制限されていた。政府は個々の幸福や満足度を定義し、人々の人生に介入する権限を持っていた。アリアは、この偽りの平等が本当の自由とは程遠いものであることを悟る。

第四章: 絶望の目覚め

アリアは抑圧された現実に対して闘争心を燃やし、秘密の抵抗運動に参加する。彼女は他の人々とともに、本当の自由を取り戻すために闘い始める。しかし、政府は彼らの存在に気づき、容赦なく追い詰めてくる。

過酷な戦いの中で、アリアは友人や仲間を失い、苦難に立ち向かう。彼女は自らの存在意義と、本当の平等とは何かを再考する。差別のない社会がもたらした偽りの平和と自由の喪失を痛感しながら、アリアは最後の戦いに臨む。

結末: 灼熱の闘争

アリアと抵抗運動は、政府に立ち向かう最終決戦へと突入する。彼らは勇敢に戦い続けるが、政府の圧倒的な力に対して苦しむ。

しかし、アリアは最後の瞬間に、差別や不平等のない社会が本当の平等ではないことを理解する。真の平等とは、個々の人々が異なる存在であり、それぞれが独自の才能や欲望を追求できることであると悟る。

アリアはその認識を抱えながら、自らの信念を貫き、政府との壮絶な戦いに挑む。彼女の犠牲と闘争の意義は、未来の世代に受け継がれることとなる。差別のない社会は終わりを迎え、人々は再び多様性と自由を求める道を歩むのだった。

注: この小説は、差別がない社会が持つ可能性とリスクを探求するためのフィクションです。差別のない社会を望むこと自体は素晴らしい目標ですが、その達成には慎重なバランスと個人の多様性の尊重が必要です。

質問6
戯曲にしてください

ChatGPT
タイトル: 「均質化の闇」

登場人物:

アリア: 若き反抗者
エリック: 政府の高官
サラ: アリアの友人
レオン: 抵抗運動のリーダー
ガード: 政府の手先
場面: 均質化された未来の都市。政府の本部や市民の居住エリアが描かれる。

第一幕: 憂鬱な均質化

(舞台は都市の中央広場。アリアとサラが話しながら歩いてくる。市民たちは皆、同じような服装をしている。)

アリア: (不満そうに) サラ、この都市はなんだか憂鬱で均一な気がするわ。どこを見ても同じ景色、同じ顔、同じ考え方…何かが違う気がするわ。

サラ: そうね、アリア。政府は差別を無くし、平等を実現するために頑張っているんだけど、でも私も何か物足りないって感じがするわ。

(エリックが現れる。彼は堅苦しい服装をしている。)

エリック: 二人とも、都市の均一性を疑問視しているのですか?

アリア: あなたは誰?

エリック: 私はエリックと申します。政府の一員です。均一な社会は誰にとっても公平で安定したものです。個人の違いは問題のもとですから、我々はそれを排除したのです。

サラ: でも、私たちは自由に選ぶことも、個性を表現することもできないじゃないですか!均一な社会だからこそ、私たちは自分らしさを失っているんです。

第二幕: 反抗の火花

(アリアはレオンと出会う。彼は抵抗運動のリーダーである。)

レオン: アリア、君の考え方に共感する。政府は自由を奪い、均一性の名の下に我々を縛り付けている。私たちは抵抗しなければならない。

アリア: でも、どうやって?

レオン: 私たちの存在を政府に示す必要がある。行動し、声を上げることで、均一な社会の闇を明るみに出そう。

(アリアとレオンは抵抗運動を組織し、政府の監視カメラや制限を回避しながら行動する。)

第三幕: 抑圧と真実の闘い

(政府の手先であるガードがアリアたちに気づく。追跡と逮捕のシーンが展開される。)

ガード: 逃げられると思うなよ!均一な社会の秩序を乱す者たちよ、お前たちは罰せられるべきだ!

(アリアとレオンは奮闘しながらも、政府の追跡をかわす。最終的にアリアはエリックと再び対面する。)

アリア: エリック、もう十分だわ!均一な社会は偽りの平和であり、私たちの個性と自由を奪っているのです。

エリック: それが君の意見か…では、私たちは終わらせるしかない。

(アリアとエリックの対決が始まる。アリアは自分の信念を貫き、エリックに立ち向かう。)

最終幕: 希望の息吹

(アリアはエリックを打ち破り、抵抗運動は勝利を収める。市民たちは政府の支配から解放され、個性や自由を取り戻す。)

レオン: アリア、君の勇気に感銘を受けた。この勝利は私たち全員のものだ。

アリア: ありがとう、レオン。この闘いはまだ終わりではないけれど、私たちは希望を持って前に進まなければならないの。

(舞台は変化し、市民たちは自由な表現や多様性を大切にする社会を築いていく。希望の未来が描かれる。)

注: この戯曲は、均一な社会が個性や自由を抑圧する可能性を描いたフィクションです。個々の違いや多様性が尊重される社会が望ましいとされる一方で、均一性の追求は慎重に行われるべきであり、個人の自由と幸福を重視する必要があります。
或る女

或る女

演劇企画集団THE・ガジラ

シアター風姿花伝(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

会場に入ると赤ん坊の悲しげな泣き声が流れている。それが開場から開演まで休むことなく続く。あまりに気持ちが悪いのでトイレに行ったりしてできるだけ聞かないようにしていたが、ほとんどの皆さんは何事もなく着席している。この時点で来てはいけないところに来てしまったと悟るべきだった。

お芝居が始まると今度は怒鳴り声が飛び交い、ところどころ何を言っているのか分からない。そして突然の大きな音、特に大きな鉄の蓋をバタンと閉める音は心臓に悪い。金と時間の無駄は良いけれど健康まで蝕まれては困るので中休みで退散した。

まあ蒙古タンメン中本に行って辛いと文句を言っても仕方がない。迷い込んでしまった私が悪いのだ。この団体には二度と近寄らないだけだ。

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。

という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。

実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。

登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…

ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。

SUNNY

SUNNY

梅田芸術劇場

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/06/26 (月) ~ 2023/07/05 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

あらすじ:夫や娘との生活もまあまあ順調な奈美(花總まり)は母親の入院先で偶然30年前の高校時代の遊び仲間「サニー」のリーダー千夏(瀬名じゅん)に会う。千夏はガンで余命1か月だという。彼女の願いで昔の仲間を探すことになる。彼らはある事情で連絡を取り合うことが無くなっていたのだった……

舞台は二段に分かれ、主に下の段で現在を上の段で高校時代を展開する。同じ人の現在と過去の姿が全然似ていなかったりするのはあまり気にしないことにしよう。

よくあるお話で普段なら絶対に行かないのだが「SUNNY」という題名に引き込まれてしまった。「SUNNY」は1966年のBobby Hebbの大ヒット曲。もっとも1976年のBoney M.のディスコバージョンの方が私の耳には馴染んでいる。それでこの曲を中心に60-70年代のアメリカンポップスが歌われるのかと思いきや、他は80年代の日本のポップスであった。オープニングは花總+スクールメイツもどきの「センチメンタル・ジャーニー」である。たしかにこの時期のJ-POPは大豊作なのでこれも良しと頭を切り替えた。何にも考えずに歌とお話を楽しんでいる分には結構快適である。

母娘混合のダンスは体操のレベルだったが、若者だけになって「ダンシング・ヒーロー」の2017年登美丘高校ダンス部版「バブリー・ダンス」で一気にスピード&パワーアップして盛り上がる。ミュージカルとしての不満はここから始まる音楽の怒涛の大波であらかた吹き飛ばされてしまう。
…としても満足度は3つ星半だなあ。

ネタバレBOX

前にも書いたがBrillia Hallは音響が良くない。今回も歌がマイクに乗らず、伴奏や環境ノイズに埋もれてしまう。花總+瀬名の「待つわ」も歌声が浮き上がらないので自分の耳で二つの声を取り出しバランスをとってデュエットにしなければならない。
…と書いてからYouTubeで検索してみると、ゲネプロの歌唱があった。観客ゼロ(でマイク直結?)なので歌声は鮮明だが溶け合っていない。元々お二人の声が合わないのか合わせる気が無いのか、練習回数が不足しているのか、はたまたマイクの音質が硬すぎるのか要因はいろいろあるのだろう。
さらには会場でもこのYouTubeでも感じるのは、プロの歌手でもこういう聴きなれた曲を歌うのは苦手なことがあるということだ。
『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

Pカンパニー

西池袋・スタジオP(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

いやあこれは私には難しい方の別役だ。何かそれらしいことを書いてみたいのだが「説明」にあること以上にはつかみ取ることができなかった。もちろん実際に観たのだから短い文章とは全く違う膨大な情報を浴びているはずだ。しかしそれを沈殿させ言語化することがまるでできない。
まあでも「わが町」も「ガラスの動物園」も観たことがあったのは演劇ファンとしての基礎ができているようで単純に嬉しい。

ダ・ポンテ

ダ・ポンテ

東宝

THEATRE1010(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

素晴らしくて大絶賛ということはないが、地味に良い舞台だった。音響が良くて歌もセリフも明瞭に聞こえる。小編成オーケストラの生演奏も素敵だった。ダ・ポンテ役の海宝直人さんの歌声は朗々と響き、後半の一曲でこの舞台全体の満足度を一段上げてくれる。モーツアルト役の平間壮一さんはセリフは良いが歌声は力が入りすぎて潤いに欠けていたかも。

演出では歌の終わりの拍手の求め方が下手だ。これは音楽劇の基本だと思うのだが他の舞台でも設定をしっかり考えていないなと思うことが多い。この舞台では拍手を求めない曲では間髪を入れずセリフが発せられるのはうまくできていたが、この曲で拍手はないでしょうというのもあった。あの沈黙が辛い。俳優さんには地獄だろう。

ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749-1838)は、イタリアの詩人で台本作家。モーツァルト(1756-1791)の3つのオペラの台本を書いたことで知られている。『フィガロの結婚』1786、『ドン・ジョヴァンニ』1787、『コジ・ファン・トゥッテ』1790。(ウィキペディアから抜粋)

このダ・ポンテ氏、なぜか日本で人気で昨年には
音楽劇『逃げろ!』〜モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ〜
が上演されている。ダ・ポンテは天才ではなかったという設定で音楽もロックだったが本日の舞台では彼は天才であり音楽もクラシックである。

この公演はこの後は名古屋に移り再び東京に戻ってから大阪でフィナーレとなる。
カーテンコールの写真撮影がOKだった。「追記」これはプレビュー公演だけの特典で続く本公演では撮影禁止となった。

池袋Brilliaホールの本公演も行ったが完成度がずっと上がっていた。上で苦言を呈した平間壮一さんも全く問題のない仕上がりだった。また何度かBrilliaホールは音響が悪いと書いたが今回はコーラスの一人一人が聞き分けられるのにしっかり融合していて文句のつけようがない。オーケストラの音が明瞭なのも素晴らしい。どうやらホールのせいではなく音響技術者の問題のようだ。この池袋公演の満足度は星5つ。納得のスタンディングオベーション。

カーテンコールでの観客の動きが面白かった。2ndで立つ人が中段席でチラホラ、しかし前方席は微動だにせず(まあここは私も早いと思った)そして3rdで全員起立。リピーターなんでしょうね。NYの本屋の場面で奥さんが歌った後で食い気味に拍手を入れていたのも彼女らなのだろう。普通は短すぎる歌なので戸惑ってしまう。全体に拍手をするかどうかに困るのは相変わらず。16日の東京千秋楽は2ndで全員起立となると予想。

このページのQRコードです。

拡大