コナンの観てきた!クチコミ一覧

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酔いどれシューベルト

酔いどれシューベルト

劇団東京イボンヌ

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

前回公演も拝見させて頂いた同演目でしたが、目から鱗が落ちるくらいに良くなっていました!
ブラッシュアップにてレベルアップしたというよりも、REBORN(生まれ変わった)ではないかというのが正直な感想。

前回公演が悪かったという意味ではないにしろ、台詞・展開がめちゃ良い感じにフルチェンジ。
分かりやすく且つ面白くなったと言えば簡単なのだけれど、それは同時に全ての役者さん達に活き活きとした演技をもたらし、観る者にそれぞれの考え方の違いや想いが伝わったうえでシューベルトの狂おしいほどのもどかしさを俯瞰で(時には定点で)理解できてしまうのだから味わい深さは格別。

例えばシューベルトの恋敵。
彼の振る舞いは一見嫌な奴に見えても、一人の人間としてちゃんと観ることができるので、決して悪役という括りには収まらない。
笑いも豊富、有益に取り入れられ、登場人物の持ち合わせた人柄から思わず生まれ出る笑いであるのがイイ。
登場人物達の恋愛、自己愛、略奪愛、友愛…沢山の愛が入り乱れて、本来それら全てが刃を向けているわけでは無いのに、シューベルトをどんどん追い込んだり素通りしていく様が何とも切なく心揺さぶられます。

小演劇でもダブルコール。
その確信を持って私も強く拍手していました。
ドラマとしてこんなにも高く飛躍したのであれば、完成度は申し分ない!で全然良いのですが、前回の様に生演奏を取り入れた「音楽」も融合させる必殺技を持っている劇団さんなので際限なく高みを望める演目だとも思えました。

ネタバレBOX

悪魔と天使。
悪魔の囁きは怪しさに満ち、邪悪を隠し持った契約だと分かっていても切羽詰まった者なら絶対に飛びついてしまうであろう吸引力があり、
一方で天使は厳しくも慈愛に満ちた言葉を投げかける。
両者の間で揺れ動き、結局本来の想いが遂げられなかったシューベルトは最期まで渇望に囚われたまま逝ってしまったのだろうか。
否、最後に創り上げた名曲はそれでは生まれる事はなかったであろうと。
荘厳な彼の作曲をバックにしたラストシーンでは、その美しさに思わず鳥肌が立ちました。
最後の伝令 菊谷栄物語

最後の伝令 菊谷栄物語

劇団扉座

紀伊國屋ホール(東京都)

2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

命の尊さが凝縮され、生命が光り輝く切ない時間を存分に堪能できました。
場面は浅草から津軽、そして再度浅草へ…
力強くも心地よい流れに乗って愛すべきキャラクターの面々と出逢える幸せ
&惜しみなく披露されるレトロビューティーなレビューの数々。
暗転ですら大いに楽しめる!まさに隅から隅まで全てがエンターテインメント。

最初は笑いながら涙ぐみ、目頭を押さえながら笑っていましたが、遂には号泣。
「菊谷栄」というエンターテイナーの生き様。
そして彼を取り巻く愛すべき人達。
その存在を心に刻みつける事ができて本当に良かったです。

哀しい・・・でもレビューは美しい。
納得のダブルコールの回でした。

ネタバレBOX

菊谷栄と一緒に渡った人達。
彼等のその先はどうなったのだろうか。
戦争は本当に尊いものを沢山奪っていく。
小さなエイヨルフ=罪過

小さなエイヨルフ=罪過

クリム=カルム

新宿眼科画廊(東京都)

2019/11/22 (金) ~ 2019/11/27 (水)公演終了

満足度★★★★

マジックリアリズム、こんなにも独特の世界観を創り出すのですね。
演劇であると共にちょっとした美術作品を観てきたような感覚。
原作「小さなエイヨルフ」はこれまで未見。
開演前の解説が大変有難く、出来る事なら同時に原作のミニ解説や本作の構想着目点等々もっと聞いてみたかった。
例え何割かそこでネタバレしたとしても、これだけ意表をついた演出であれば充分楽しめると思うし。
というのも惜しむらくは、本来の原作の主軸がどこにあるのか探りながら拝見していたから。
ちなみに終演後どうしても気になって確認させて頂いた部分は見事に全てオリジナル、ガ~ン!
原作を知っていれば、大胆なリメイクとの対比もあって楽しめるにしろ、知らないのなら知らないで、もうそのまんま単純に真っ新な気持ちで挑んだ方が良かったのだなぁと、ちょっと後悔。

そうは言っても脳裏に焼き付くビジュアルの数々。
視覚的な刺激効果(役者さん、舞台美術、調度品、光…盛り沢山!)も楽しく、独創性に溢れた作品として楽しめる公演でした。

ネタバレBOX

なんて無責任で、だらしのない妻だ!バスタブから出ようともしないで、口にするのは自分の事ばかり、興奮して動くほどにお湯がチャプチャプ・・・おっっ!やっと出てきた・・・あっ!!倒れた。
最初は何とも女性達が病んでいるなぁと思いつつ、根源はこの一見爽やかな「彼」か。

若い身体のまま生き続けるヴァンパイア。
「愛してるよ」の殺し文句。
途方もなく永く生き続けるということ、それはこんなカタチで女性を巻き込んでいくしかないのか。
「生きる術」が何とも悩ましい。
声

teamキーチェーン

d-倉庫(東京都)

2019/11/20 (水) ~ 2019/11/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

舞台には通路らしきスペースをセンターに、2つのマンションルームが。
開演前、ここにどんな人が住んでいるのか想像してみるのが楽しい。
事前に内容を知らされていないのもあり、様子の違ったこの2部屋で一体何が起こるというのか、自ずと期待が高まります。

そうしての開演。
目の前(舞台)で繰り広げられたのはストーリーというより生活の営み。
2つの生活者、両者の交流は無いものの同じ時間を歩んでいるのは明白であり、観進めるほど自然に読み取れてくるそれぞれの人柄や事情。

不安定なモノは風が吹きつければ揺れるがごとく、観ている者の心をざわつかせます。
このままだと、いずれ倒れてしまうか折れてしまうか、何か悪い事が起きる予感しかしないし、もどかしくも風を受ける弱者の声は誰にも届かない。
あぁせめて子供には・・・もう思わずこっちが声をかけたくなってくるほど

“声”というキーワードが出てくるとき。
一方ではカラカラに乾ききった喉に優しい水が沁みわたっていくように、
また一方では弱った身体に冷たい刃物がとどめを刺すように。
鼻がツーンとしてくる。
しっかりと気持ちが伝わってくる舞台。
なのでストレートに哀しく、辛かったりもするのですが、幸せな気持ちが滲み出てきます。
具体的に何がこの幸福感を生み出しているのか説明できないのだけれども・・・どうして、この幸福感、ホント不思議だ。

ねこそぎ

ねこそぎ

演劇研究会(慶應義塾大学公認学生団体)

山王FOREST 大森theater スタジオ&小劇場(東京都)

2019/11/22 (金) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

満足度★★★★

タイプの異なる2作品、どちらも中身がギュッと!力作。

『人魚の肉』
娘に不老不死の力を、一心不乱にお金を捻出し人魚の肉を食べさせようとする母親。
娘にはそんな意志などある筈もなく、逆に大切にしていたモノを母親に奪われてしまうという皮肉。
他にも大人の強い思惑によって人生を大きく左右されていく若者2名。
若者達が突き進んでいくほどに、歪み拡がっていく独特の世界。
個々に蔓延る愚かしい価値観の渦を漂流する若者たちの演技が力強く、醜と聖も鮮やかに見応えある作品でした。
欲を言えば、これだけの世界観ならば「大人の艶っぽさ」なのですが、これは致し方ないか。

『乱高下スッポンポ』
前作の強くまとわりつく余韻もそのままに休憩を挟まずスタート。
一転、コメディータッチな作品を演るにはかなり不利な空気になっているのを百も承知といった感じの3人組。
ホームの公演という部分を差し引いてもかなり勇敢な姿でした。
怪しげな旅館に団体客、しかも修学旅行。
言ってみれば「何とか女風呂を覗きたい男子」という単純な話であり、パンパンの会場もかなり受けていましたが、よくぞ色んな登場人物を瞬時に使い分け、ナンセンス要素も取り入れの大スペクタクル作品に仕立て上げたものだと感心。
前作との奇妙なブレンド感というのもあったかも。

シェアハウスカムカム

シェアハウスカムカム

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2019/11/20 (水) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

満足度★★★★

初見だった前回公演が30周年記念だったので、特別にサービス精神大盛りだったのかと思いきや、今回も負けず劣らずの超大盛。
これが「娯楽天国」のスタンダードか!と思うと頭が下がります。

立派な当日パンフ、それなのに何故か役者さん達の名前と並んで役名が載っていないのを訝しく思いながらの開演・・・観終わってようやくナルホドそういう事だったのかと納得。
(納得と言いつつ後で良く見てみると別ページに書いてあった…実は見落としていただけでした…いやそれでもナルホドと思えるのですよ)
ともかく「娯楽」という乗り物に乗って、笑ったり悲しんだり、上がったり、急降下したり、様々に通り過ぎていく景色を自然に受けとめ楽しんだまま物語の終着駅に到着するのが正解の様です。

「ディスコ」を口にするおばちゃんの事を「今どき!」と嘲笑うギャルが、懐かしのガングロメイクなのにはツッコみたくなる(笑)
色んな人が棲みついて ここは一体!治外法権か(笑)
その一方で辛い時代を知っている年代の方にも刺さる描きがあったりで盛り沢山。

シェアハウスの名は「ラッキーカムカム」
和洋折衷。というより趣味のゴチャ混ぜ感満載、構造がこれまた不思議、それでいてレトロな佇まいが何とも良い感じで、今回のセットも素晴らしい!

スリル14/スリル7

スリル14/スリル7

ショーGEKI

ワーサルシアター(東京都)

2019/11/19 (火) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

満足度★★★★

スリル14を観劇。
密室に閉じ込められた14人。
なので14人全員が舞台上に出ずっぱり。
これだけの大人数なのでパンフに掲載された役柄だけでも把握しておいた方が良いかな。と思いましたが、始まってみれば全くの白紙状態であっても問題なさそう。
分かりやすい場所に設置された時限爆弾には、これまた見やすい大きな時計盤。
なるほどこうなるときっかり「1時間30分」には何処にも逃げ場無し。
つまりは同時に舞台成立のタイムリミットであり、そういう意味でもドキドキ、怒涛のテンポ“命”チャレンジャーな作品でした。

さすがのラスト「どうなる、どうなるっ」の畳み掛けに最高潮のハラハラ頂きましたが、要所要所にもハラハラポイントがあって楽しく振り回されました。
時限爆弾が偽物であっても大ごとに発展!?
登場人物の薄っすらとした疚しさが相まって、何やら怪しいのが隠し味(それほど隠してないか)

ネタバレBOX

タイムリミット数秒前! 思わず「ああっ!」と声が出そうに、フ~ッ危なかった。

上のデンジャーBOXが傾く仕掛けがあると、より一層ドキドキ感UPしただろうなと。
そう、別の意味でも(笑)

風を打つ

風を打つ

トム・プロジェクト

俳優座劇場(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

漁師を営む一家、頬を撫で潮風が吹き抜けていくのを感じる舞台。
ここで水揚げされるシラスはさぞかし美味しかろうと。
そして何と音無美紀子さんと太川陽介さんが夫婦役!
音無さんは日本の肝っ玉母さんそのもので、気性や所作が自分の母にもちょっと似ているものだから格別にリアル。
網元の家へと入るカタチとなった太川さんも自然体な父親の風格、全くもって長年連れ添った夫婦であり、それぞれの茶目っ気がとても可愛い。
(太川さんが蓄えた白色の多い髭はどこからどう見ても本物にみえるのですが)

ただし、ここはかつて水俣病の犠牲者第1号になってしまった家。
発症当時は原因がどこにあって当然ながら何の病気だという事も全く分からず。
確かにその影をしっかりと感じさせながらも、長男夫婦がこっちに越してくるのを次男と一緒になって浮足立ち迎え入れる魅力的な家族模様として引き込まれてしまいます。
過去の事件さえなければ間違いなくワチャワチャと温かな幸せを心ゆくまで謳歌できたであろう家族。
切なく噴き出してくる各々の心の内。
終盤に向けての演技・演出・メッセージには、もう言葉が出て来ません。
現実に基づいた骨太で素晴らしい公演でした。

ネタバレBOX

今も杉坂家をバッシングするなんて怒りエネルギーの方向が全くもって間違っている。
リテラシーの大切さを痛感しました。

ラストでの「自分が非難する側にならなくて良かった」という言葉に愕然。
客席から観ていると、あまりの周りの仕打ちに「なっ!なんて酷い事を」という思いだったのに、この家族ですらそう思ってしまうのなら自分だって間違いなくそちら側に行ってしまったのであろうと。

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

吉本興業

紀伊國屋ホール(東京都)

2019/10/31 (木) ~ 2019/11/14 (木)公演終了

満足度★★★★

アニメスタジオで奮闘する人々、目指すはトップOFアニメ、志高き姿が描かれた業界モノ。
脚本・演出G2さん作品らしい脂がのった役者陣(この時点で面白さは保証)に加えて若い役者さんが2名。
このお二方が全くの未知数だったのですが、重要な役どころをシッカリこなしておられたので安心して楽しむ事が。

業界モノといえば個人的に真っ先に浮かぶのが松澤くれはさん。
この松澤くれはさんの痺れるほどシビアで赤裸々な(偏見じゃないですよね?)観察眼・世界観とは異なり、例えばテレビドラマでも放映されそうな大衆性ある作品だったなぁと。
大人の事情が絡んだり、こだわりのぶつかり合いがあったりで大変そうだけれど、アニメ業界を志す方々の味方にもなってくれる作品、くれはさんならどう描いていたのだろうかと思ったり。
どんだけ好きなんだ!ごめんなさいテンポ良くラストまで2時間強一気に楽しめました。

人生の扉

人生の扉

サンハロンシアター

Geki地下Liberty(東京都)

2019/11/13 (水) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

還暦を迎え、かつて竹内まりやの熱狂的ファンだった男達の人生。
ほろ苦く、優しさだったり、哀しみだったり、歓びだったり、何とも言えない複雑な後味がいっぱいに広がって、もう感無量です!

人に歴史あり。
当然ながら、どこにでも居るようなおじさん達にも歴史あり。
かつて竹内まりやの事ばっかり考えていたであろう若き日々から現在に至るまで、舞台には直接描かれていない人生の道のりまでもが想像にて肉付けできるような奥行を感じる作品でした。

彼等以外にも、訳ありの女性、道半ばの男女等々群像劇と言っても良いくらいに個々の人生が絡んだり離れたり・・・
性格があまりよろしいとは言い難い人達もググッと作品に深みを与えてくれ、観終わった今も後味を咀嚼するほどに旨味が滲み出してきます。
そして自分にも自分なりの歴史あり。
浸りたくて「不思議なピーチパイ」「二人のバカンス」「人生の扉」を聴きながら感想の書込み・・・う~ん沁みてきます。

ネタバレBOX

竹内まりやさんをあんなアイドル然とした応援のしかたをしていた人っていたんだなぁと思ったら3人熱狂組だったのですね、ほんのりトンチンカン(笑)
山下達郎さんとの結婚、それから特にスキャンダルも無く、今はごく稀に公の場に姿を現す竹内まりやさん。
今も艶やかな彼女のもとに、彼等はもう集まることはないのかなぁー。
もうみんな甘やかな事に縁遠くなってしまって(片方に気持ちはあっても成就しないのももどかしく、でも さもありなんで)なんだか寂しい・・・
そしてもうひとりのタケウチマリヤさんに安住の地は見つかるのか。

そう、寂しいのだけれど
ご都合主義なエンディングでは決してないのに、生きている証の体温にも似て、不思議にほんのり暖かかったりする作品なのでした。
クジラが捨てた島

クジラが捨てた島

元素G

調布市せんがわ劇場(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/10 (日)公演終了

満足度★★★★

物語の世界からあぶれた者達が共存し合う孤島。
その島に漂流した自分自身の記憶が全く無い少女。
無用の登場人物として三下り半を突き付けられた物語だと言えば何だか湿っぽいイメージすら浮かんでこようものの、イヤイヤ若いパワーが舞台いっぱいに拡がって演技・歌・ダンスどれをとってもなかなかのシッカリ者。

個々の自己紹介が丁寧に演出され、ストーリーの輪郭もクッキリ。
冒頭はキャラクターで惹きつけ、中盤で少女が一体何者であるか皆でイメージの一連のダンスシーン(ここが一番好き)そして終盤に向けての大団円(?)
最初から最後まで起伏ある展開にて演劇初心者も全くの心配無用!と思える公演でした。

もちろん明るく楽しい一辺倒ではなくダークな部分も描かれているのですが、欲を言えば劇中にも登場の『ヘンゼルとグレーテル』や『ハーメルンの笛吹き男』等々、案外こういった物語には底知れぬ心の闇も同時に描かれているので、本作にも同等な闇が存在していても良かったのかなぁと。

ネタバレBOX

「観たい」のコメントで書こうとしていた内容が、本作のエンディングと一部丸被りだったのでホント危機一髪、危ないところだった(汗)
とは言っても作品を観終えた後に残った感慨は全くの別物なのですから面白く
それは、もし「これってハッピーエンドだったの?」と訊かれるとかなり複雑なところ。
一見“めでたしめでたし”の先にある厳しさをイメージしてしまうのは考えすぎなのでしょうか。
案外ダークだなぁと思えたりもしてくるのです。

ところで
少女が波に打ち上げられた、その佇まいが息を呑むほど綺麗でした。
ダンスの中にバレエの要素も入っていたのがこれまた良かった!
SAKURA

SAKURA

劇団Turbo

駅前劇場(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

事前情報は「SAKURA」というタイトルとフライヤーに写る桜の花びらが積もったキーボードのみ。
たったそれだけの情報で、どうしてこんなにも素晴らしき有象無象と“愛”に巡り合える公演だと想像できるでしょうか!
ストーリーは確かにサクラ尽くし、
物語で主要な少女の名も「さくら」だし。
彼女のお祖父ちゃん二人の対比がめちゃ面白い。
メインの優しいお祖父ちゃん(もう一方のお祖父ちゃんもホント優しいけど…笑)から滲み出る凄味は特筆もの。

そしてもうひとつの重要な「サクラ」・・・アバンギャルドでカオスな面々、人物が色とりどりにて壮観、これはヤバい 面白過ぎでしょう。
現実もそうだったら と考えると逆にちょっとしたホラー、いや現実でも案外これに近い光景かもです。

ふんだんに且つテンポ良く活用される昭和メロディーの数々は中高年にはたまらない笑いの飛び道具でしたが、曲を全く知らない若い方々でも歌詞に耳をすませばきっと楽しめるはず。
何より、細かいリアリティーなんてものは凌駕してしまうほどのユーモアセンスと引き込みテクニックには劇団さんの貫禄を感じました。
愉快に、そして懸命に生きている人達を観ていると気持ちが段々温まってきて、何やらジッと観ているだけなのが勿体無い気持ちになってくるから困ったものです。
一緒に踊るのはスペース的に難しいとしても、え~い皆で立ち上がってノリノリ手拍子できるシーンがあったら良いな~ なんて思えた(登場人物達とより濃厚に時間と空間を共有したいと思えた)楽しくも哀しい公演でした。

街の下で

街の下で

今泉力哉と玉田企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/10/24 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了

満足度★★★★

作・演出家が2名。
異なる2つの感性から成る演劇的化学反応系作品。
前半の男女間をはじめとする人間関係の機微の描き方は結構好きな作風。
それが一旦リセットされて別の作品に変身してしまったかの様。
変身とはいってもやっぱりひとつの作品、その駆け引きめいたせめぎ合いがとても新鮮でした。
前半でせっかく積み上げてきた繊細な空気感が崩れていく感じは快感にも似て、コインの裏表みたいな面白さだったけれども、ヤンチャが過ぎていたかカタルシスまでには至らなかった部分にはちょっと惜しかった感あり。

何よりこの斬新な演出に上手く乗っかれる役者さん達の演技力あってこその完成度。
その役者さんも何名か出演にて来年映画化、公開されるそう。
主演は演技の振り幅も大きい若葉竜也さん、う~ん何だか面白くなりそう。

死に顔ピース

死に顔ピース

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2019/10/24 (木) ~ 2019/11/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ワンツーワークスさんの事を知る以前の過去公演の中で、最も観たかった作品。
観る事ができて本当に良かったと!心から思える公演でした。

「将来癌になるのでは」という思いは自分にもあって、保険もしっかり癌になる前提な入り方をしているくらい。
自分自身だけでなく家族も含めれば「癌」と全く無縁のまま生涯を終える。なんていうのは、現代の死亡原因の割合から考えてもかなり難しく、それだけに非常に関心の高いテーマでした。

最期の場所は自宅を望む「在宅治療」講演やセミナーとは全く違ったアプローチでもっての説得力と迫力。
演劇テクニックの宝石箱か!というくらい上質な魅せる工夫が駆使されているのがビシバシ伝わってきますが、難しい事抜きに引き込まれてしまうのは、その全てが登場人物の心情表現に繋がっていたから。
「家族に負担をかけるのでは」という理由もあって、自分の中で在宅治療という考え方は無かったし、観た後もそれ自体には変わりないのだけれども、いろいろ問いかけられたり参考になったり、何より実在の医師と家族で紡がれた物語として心揺さぶられ、とても実の多い観劇になりました。
演出・演技力をはじめとした公演に関わる全てのクオリティーの高さはもう言わずもがな です。

浅草福の屋大衆劇場と奇妙な住人達1982 改訂版

浅草福の屋大衆劇場と奇妙な住人達1982 改訂版

東京アンテナコンテナ

六行会ホール(東京都)

2019/10/23 (水) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

始まると同時に顔がほころんでしまう即効性と安定感抜群のジャパニーズ喜劇!
この土着的ともいえる面白さって、日本人に生まれてホント良かった。
劇中劇のアクション付き大衆演劇もしっかり楽しめました。

とにかく役者さん全員が息ピッタリなのには感心しましたが、全方位から放たれるボケに絶妙なツッコミで返しまくる下平ヒロシさんの職人技。
流行の霜降り明星さんのツッコミも面白いですが、熟成スパイシーな下平さんのツッコミがもう逐一面白く、とりわけイジリー&下平さんのコンビネーションは鉄板にて最強。
スペシャルゲスト神谷明さんのサービスもラッキーな感じで、プラスワンのお得感頂きました。

タイトルにある「奇妙な住民達」とはそういう事だったのですね。
そのヒントがホラーコメディーってわけか・・・ナルホド、全然怖くなかったけど超可笑しかったです。

ノート

ノート

ティーファクトリー

吉祥寺シアター(東京都)

2019/10/24 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了

満足度★★★★

弁護士一家殺人事件や地下鉄サリン事件等、あの歴史的にも最悪の大事件。
主人公は、このどちらにも直接関わった犯罪者であり死刑囚。
この主人公を如何にも悪人顔の方ではなく、むしろ優し気で繊細な印象を受ける役者さんが演じており(おそらく実在の人物を特定していないのでしょう)これは既存の先入観や作品全体のイメージに独特の影響を与えていたと思います。

その当時の記憶を辿る精神的なところがメインに描かれ、何故に彼等はこんなにも凶暴で大それた行動をとってしまったのか、決して一般人とかけ離れた境遇でも性格でもないのに。
心の中にぽっかり空いた穴をとんでもない「教え」で占領されてしまった人のコトバが折り重なり、当時読んだ記事やテレビの映像をだぶらせながら見入っていました。
どこかアノ教団とはまた違った世界のような雰囲気も感じます。
照明もセットのひとつであるかのよう、舞台の表情を様々に変化させていました。

おしゃれ紳士×神保町花月 presents「オシャレ紳士のオクトーバーフェスト」

おしゃれ紳士×神保町花月 presents「オシャレ紳士のオクトーバーフェスト」

神保町花月

神保町花月(東京都)

2019/10/16 (水) ~ 2019/10/25 (金)公演終了

満足度★★★★

何だろう、パフォーマンスショーとはいえ、この敷居が低く楽しめる感じは。
会社内の合同大忘年会で有志の集まりが、この日の為に練りに練った出し物を楽しむ感じに似ているのか。
とはいえ当然ながら90分強の時間、暗転無しノンストップのオムニバスパフォーマンスは、とても素人にマネできるクオリティーには納まっておりませんでした。

上半身裸にネクタイの正装は前説時にはヘンテコに見えるのだけれど、開演したとたん妙にカッコよく見えるし、何ならちょっとお洒落(アッ!おしゃれ紳士)
観進めていくうちに・・・激しく躍動する身体に飛び散る汗・・・何だか女性専用のキャバレーに潜伏している様な妙な気分。
男性客も普通に楽しめるけど、やっぱりコレ、女性客が大興奮。
本来女性しか立ち入れない様な空間に立ち入れているような背徳感がくすぐったく、なんだかんだ女性客の方々の興奮した空気に便乗して楽しんでいました(笑)
特に良かったのは元格闘家・須藤元気さん率いる「WORLD ORDER」を彷彿させるパフォーマンスと激しめのダンスナンバー(この激しめの割合が非常に高い!)
物凄い運動量で皆さんやり切った感。
お酒を飲みに行けないけど、非日常空間に身を置いて刺激を…と思っている女性の方にお薦め。
だぶん想像以上。

Photograph2019

Photograph2019

劇団カンタービレ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2019/10/17 (木) ~ 2019/10/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

確実にカンタービレさんがひとつ高いステージに到達したという手応えを感じる公演でした。

実は今回、カンタービレさんが得意とする「コメディー」の看板を降ろしている様子だったので不安な部分がありました。
それは、劇団さんによっては、あえて自分の得意な部分を封印して純粋なストレート芝居にした結果、何の個性も無くなり記憶にも残らない寂しい観劇になってしまう可能性があると思ったから。

そうしての観劇・・・役者さんの身体を借りた登場人物達がステージ上で活き活きと泣き笑う姿に、もう釘付けの舞台だったので本当に良かった!
お馴染み、舞台セット早変わりの術もドラマの進行をしっかりサポート。
役者さんの演技力が突然上がったというより、各々の役柄に心からなり切った演技が自然と観る者の心に沁み込んでくる感じ。

辛い物語でありながら、根っこの明るさに救われる事しばしばで、嬉しい事があっては涙腺が緩み、悪い事が起こってはまた涙腺が緩む。
もうやたらポロポロ涙が出てくるのは生舞台のみが伝達可能な「生きた記録」だったからだと思います。

小刻みに 戸惑う 神様

小刻みに 戸惑う 神様

劇団ジャブジャブサーキット

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

お葬式モノだというのに何でしょうこの清々しさ!
本来ストレートプレイのお葬式作品は故人をイメージしながらになるのでしょうが、本作では仲間をお供に本人が幽霊として出て来ちゃうのですね(笑)
早々にそれが解るようになっていて混乱もなく良かったです。

お葬式の準備には色んな事が起こり得るものだなぁと何かと勉強になったのも良かった。
大きな事件が起こらなくとも、上の階での大きなお葬式や、フリーの葬式ディレクター登場、お家の事情なども加わって感慨深い思いがどんどん積み重なっていき、やがては冒頭の感想へと繋がっていくのでした。

ネタバレBOX

参列者の数で葬式の良し悪しが決まるものではないけれど、上の階はおそらくお付き合い参加がほとんど。
自ら希望して集まった参列者からなる楡原家のお葬式は「人数」以上に勝った!っていう感じ(笑)
直接葬儀のシーンがあったわけではないけれど、家族を含めて多くの人がしみじみ故人を偲ぶことが出来た良いお葬式であった事を確信させてくれました。
『パンパンじゃもの、花じゃもの』

『パンパンじゃもの、花じゃもの』

劇団天然ポリエステル

小劇場B1(東京都)

2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

肌編を観劇。
由緒ある家系の重荷に耐えかねた猛太郎、死をも覚悟の果てに辿り着いたのは闇市パンパンワールド。
現代ならニューハーフの売春グループと言えばいいのでしょうか、彼女?達がズラリと揃うと凄味があります。
猛太郎の目線と一緒に拡がっていくパンパンワールド。
同じ闇市の住人からは馬鹿にされつつも呼称には拘りもあり、なかなか高いプライドをお持ちのようですが、夜の暗闇に乗じてわざと顔を隠しちゃって、女性と勘違いさせる客引方法は如何なものか(笑)

とはいえ保守とセクシャリティーの重圧から逃げてきた猛太郎にとって、規格外で気のいい彼女達に居心地の良さを感じていく様子はとても自然のように思え。
心無い迫害を毒づいてやり返す逞しさは面白可笑しくも、やがてそれぞれが迎える悲喜こもごも。
主人公・猛太郎の成長と共に様々な人生(キャラクターが実に豊富)が交錯して、とても見応えある作品でした。

人間そのものが持つ妬み・嫉みの他、女装娼婦ゆえの苦悩が加味された肌編。
もうひとつのバージョン、王道?女性パンパンワールドの髪編はどんな作品になっているのか非常に気になるところですが予定が立たない(泣)
今後の「観てきた」も楽しみにDVD化を期待する事にします。

ネタバレBOX

パンパンの方々の綺麗な人とそうでない人の差が極端ではあるまいか(笑)
いかにもブサイクに寄せた髪型・化粧にするよりも、がんばって化粧しているのだけれどどうしてもブサイク風にしてもらった方が笑いは損なわれずに哀愁もアップするのではないかと。

ラストシーンで雑踏をさまよう、感じの良い女性は猛太郎の結婚相手となる人か。
そうだと良いなと思いつつ・・・終演後、確認してくればよかったのだけれど・・・まあいっか、そうであって欲しい。

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