
好きで嫌いな珈琲と煙草
ふれいやプロジェクト
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2021/09/15 (水) ~ 2021/09/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
小さなビストロで奮闘中の彼氏。
小劇団女優として奮闘中の彼女。
そんな頑張る二人の同棲生活に共存する“煙草”と“珈琲”
お互い苦手なアイテムであっても何ら障害にならない微笑ましい日常生活から物語は始まります。
実際に友人とか知り合いとかにいても全然おかしくないッていうくらい舞台上の人物達に近しさを感じるものだから、ごくごく自然に引き込まれ・・・やがて忍び寄るコロナ禍・・・徐々に変わりゆく彼等の状況、それぞれの思惑を考察しては心揺さぶられてしまうのでした。
感情移入してしまう生舞台は、こちらへの連動力が強い。
なので、辛い部分(特にコロナ関連)がモロに伝わり過ぎるとホント困ってしまうところだけれど・・・音楽と光なのかなぁ・・・電子ピアノの生演奏と照明が作品と一緒に呼吸しているが如く共演していて・・・プラス何気に笑いを取り入れた演出のさじ加減もあってか、痛みは痛みとして優しく彩ってくれており、しっかりと寄り添えました、ラストまで。
もちろん大いに楽しんで。
そして"縁"というものに想いを馳せて劇場を後にしたのでした。

さよなら王子小劇場
令和座
インディペンデントシアターOji(東京都)
2021/09/08 (水) ~ 2021/09/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
もしも王子小劇場がなくなったら・・・
今だからこそ沁みる~ッな着眼点がとても面白い企画作品だと思いました。
舞台には平台やスピーカー、整理されたコード類、こんなに下ろして大丈夫か!?というくらい並べられた照明機材。
まさに「あ~ぁ畳んじゃうのか~(涙)」といった様子の王子小劇場内。
小演劇好きにとっては面白の琴線に触れまくる台詞も小出しに飛び出して、もうこの世界観に特化してもらって全然満足!だったところ、このタイミングにして劇場を貸して欲しいと申し出る謎の劇団が現れて、作品として別の顔が見え始め・・・
是非観終わった後に話を聞きたいと思った。
その際にはゲストに王子小劇場の職員さんも参加して頂いて。
ポストトーク、プリーズ!と猛烈に思えた公演でした。
次回公演のタイトルは「座長、死す。」
何というか確信犯。

沙也可
(株)フリーハンド/(有)Yプロジェクト
渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)
2021/09/08 (水) ~ 2021/09/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
本作で描かれた「沙也可」にモデルとなる人物が実在して
韓国では(親日の意味を持って)教科書にも載っているという事、全く知らなかったし、知る事ができてとても良かった。
巡り合いの場面からしてもうドラマチック過ぎる。
豊臣秀吉の行き過ぎた野望で引き起こされた戦に、もっと悲惨な内容をイメージしていましたが、ちゃんと自身の意志を持った兵士達がクローズアップして描かれていたからか前向きでマイルドな仕上がり。
金美姫をはじめとする朝鮮の女性達も美しかったが、女性を守ろうとする男達がめちゃカッコいい。
当然ながらキャストに一人でも感染者が出れば中止覚悟で挑まれたという大所帯の舞台。
本当に久しぶりにこれだけ大人数の役者さんが入り乱れる舞台を拝見する事ができました。

チーチコフ
劇団俳小
萬劇場(東京都)
2021/08/27 (金) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
休憩を挟んでの前半、後半。
前半 チーチコフ、人生どん底からの妙案。
とある田舎町をターゲットに、死亡した農奴の戸籍を訪問買取りにまわるチーチコフ。
彼の胡散臭い話に、手持ちの名義を売ろうとする面々もそれぞれに欲深そうでニヤニヤ。
生ピアノ、キャバレーのママや狂言回しでもあるコーラスガール達の歌声。
もし観客がお酒など嗜みながら舞台を楽しめる“ミュージカルバー”なるものがあったならピッタリの雰囲気。
後半 チーチコフの思惑違い、徐々に、やがて大きく状況が狂い出し・・・これは観ている者が思わず前のめりってヤツですね!
“悪党達”をエンターテイメントで楽しむ『ベガーズ・オペラ』『三文オペラ』と非常に似た感覚のする舞台だと思いました。
ただ女性にモテモテ、イケイケな『三文オペラ』の主人公メッキ―・メッサ―と違ってチーチコフは女性とは縁薄く、人生 尻に火が付いてるって感じ。
泥臭くって危なっかしくて、目が離せないのでした。

KPOPミュージカル「BACK TO THE STAGE」シーズン1
Smile Music Hour
シアターシャイン(東京都)
2021/08/24 (火) ~ 2021/09/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
あの小劇場、シアターシャインでKPOPミュージカルという異色の組み合わせ。
帝国劇場とまで言わなくても本来そこそこな収容人数&お洒落な劇場で公演してもおかしくないモノをシアターシャインで観た場合どうなるか・・・観客一人あたり、舞台から受け取る熱量がリアルにハンパなく、妙~に緊張しました。
こういう高揚感と隣り合わせの緊張感は大歓迎です。
実際にもっと大きな劇場の場合、ライバルグループの出現とか人間関係図にも肉付けが必要なのでしょうが、本作はすごくシンプル。
シンプルにて青春アイドルの王道。
もうちょいストーリーに細工があっても良かったかなと。
しかしシンプルであってもミュージカルな流れは何故か全然退屈しないですね、それに加えて緊張しちゃっているからもう。
KPOPアイドル物ゆえ、コンサートシーンも多数。
5人グループが激しく歌い踊るには窮屈じゃ?と思える舞台スペース
まさに所狭しと歌い踊っていました!
もし推しのキャストがいたり、見つかったりしたなら★は5つを遥か突き破ること間違いなしの濃厚な空間でした。

ローマの休日と東京の仕事
リブレセン 劇団離風霊船
日本聖書神学校礼拝堂(東京都)
2021/08/24 (火) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
会場である礼拝堂は学校の施設、時には式場としても活用されているそう。
(それもあってか照明に予想以上のバリエーション)
なにしろ物語の舞台が教会そのものなので、ある意味最強。
観劇する場としても新鮮でした。
ただし劇場以外の場所で演る場合、役者さんの演技がブレていると途端に余興っぽい空気感が生まれやすいと思うのだけれど、はたして
本作は大丈夫。
可憐なヒロインを軸に、全ての役者さんがそれぞれの独自キャラを演じきっておられました。
特に突出した強烈キャラ前半「シスター」から後半「ヤリ手女性記者」へとバトンタッチしていく感じも面白く
こうなると二人のバチバチな絡みも観たくなってくるのでした。

神様はつらい。 ご来場ありがとうございました。
演劇ユニットG.com
アトリエ第Q藝術(東京都)
2021/08/25 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
病室
永い無動無言症から目覚めて、私は神々の国から戻って来た!と証言する男。
まるで海外のSFドラマみたいな世界観に導入部からもう一気に引き込まれ
この男の言っている事が事実なのか、はたまたスケールのでっかい妄想なのか、どうにも疑わしい中、様相は明らかな方向へ・・・
地球滅亡とかいった不吉な提示がありながらもコミカル要素を6割くらい(もしくはすっごく威力ある3割)を含んでいるので非常に面白&奇怪な展開を楽しみながら追っていく事ができました。
一言で表現するなら大人のSF!
普段ならうっかり見過ごしてしまいそうな道を入ってすぐの会場「アトリエ第Q藝術」
成城学園前駅近くにこんな素敵空間があったなんて全く知りませんでした。
舞台はこの施設の特質を遊び心たっぷりに活用、背後のライブモニター映像や演出・演技・小道具等々の相乗効果も相まってまさに不思議空間。
拝見したのは昼の回でしたが、夜の回はきっと雰囲気が変わってこれもまたよさげそうだな~と。
舞台がとても近い。
どんなに近くても舞台と客席間を透明板がほぼ仕切っているので飛沫の心配を感じる事もなく
決して大きい劇場ではないはずなのに舞台も客席間も広~く感じ、ゆとりたっぷり安心感に包まれて本当に贅沢な空間旅行でした。

丘の上、ねむのき産婦人科
DULL-COLORED POP
ザ・スズナリ(東京都)
2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
Aキャストを観劇
ねむのき産婦人科に集う人々。
ねむのき産婦人科を舞台に複数の夫婦やカップルのやり取りが同時進行で行われるのかと思っていたら、エピソードごとに場面(各自宅が舞台である事が多い)が分かれていたので非常に観やすかったです。
描かれるのは7組、ボリューム満点。
単純に短編が7つ。というのとは違って、こちらのカップルの直面している問題が別の夫婦ではそれとは対極と言える悩みに苦しんでいたりする皮肉さなど相まって微妙に絡み合っていたように思えるし、総括的なラストパートも印象的でした。
男性は妊娠できないのだから、どうしても女性の気持ち(生理的な事も含めて)が理解できない。というもどかしさに時には笑えたりするもヒリヒリする痛みを感じる方が圧倒的に多くて
それでもお互い歩み寄ろうとする気持ちが延長線上に・・・
コロナ禍をひと時忘れて、妊娠をテーマに舞台上で生きる人々の人生に想いを馳せる、そんな時間を頂きました。

ハリモトホタルと賢太の石
ノーコンタクツ
萬劇場(東京都)
2021/08/05 (木) ~ 2021/08/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「ハリポタ」のエッセンスを何気にちゃっかり取り入れつつ繰り広げられるのは小劇場オリジナル版エンターテインメント。
丸眼鏡をかけたハリモトホタルの顔つきが映画版の主人公と本当にどことなく似ているのがご愛嬌。
しょっぱなからハリモトホタルと健太の掛け合いが絶妙でもって、魔法界に突入してからもこのコンビネーションの良さはしっかりキープ!さすがです。
健太がことごとくみそっかすな立ち位置なのも笑いを誘い(健太の設定は本作品のオリジナル)
この二人に対抗すべく強力キャラが魔法学校、魔族etcそこかしこに配役されているのも楽しかったです。
ノーコンタクツ公演は今回初めてでしたが、事前にYouTubeにて活動休止等の背景を視聴していたものだから笑いにも更なる味わい深さが。
人によっては舞台裏って見聞きしたくない方もいらっしゃるかもしれませんが私には感慨深かった。
エンターテインメント作品であり、同時に劇団・役者という生き様のドキュメンタリーだったと思え、ずっと心に残る作品になると思います。

明日ー1945年8月8日・長崎(2020年@シアターX)
演劇企画イロトリドリノハナ
シアターX(東京都)
2020/09/03 (木) ~ 2020/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
ウイズコロナならぬウイズ戦争の中を生きる人々。
オヤジ♪さん、ハンダラさんの感想にもあるように初演と比べて演出が、より丁寧に、より深く描かれていたと私も思いました。
それでもって役者さんが大幅に変わったことで、
初演でのシリアス感強めな雰囲気が、これまた一変。
親しみやすい空気感多めになっていたと思います。
Aチームを拝見し、間をあけてのBチームを観劇。
自分的にはこれが大正解!
1回目の観劇では全体像を把握。
2回目ではダブルキャストの醸し出す違いを楽しむのは勿論。
何より、決して難しいストーリーではないにしろ、人間関係の機微や政治的不安要素など、演出においては様々なニュアンスが随所に散りばめられているので、見落としのあったこれらを発見、なるほど!と噛みしめながら鑑賞できるっていうのはこの公演ならではの至福。
う~ん、観察力、洞察力がもっと達者であれば1度の観劇で済むのでしょうが(笑)
ラストに向けての追い込みが圧巻!

時を超えた愛の歌
劇団 FISH STORY’S
「劇」小劇場(東京都)
2020/04/01 (水) ~ 2020/04/05 (日)公演終了
ちょっとシュールな笑いをまとったタイムトラベル歌謡史。
自分の“歌”を課題に、過去の日本を彷徨う若い主人公兄妹の初々しさ。
これ以上無いくらいの安全対策もさることながら、
顔で笑って(笑わせて)、心で泣いて・・・自分にはとても真似できそうにない、FISH STORY’Sさんの生き様そのものがグレート。
辛い時こそ笑顔を。しっかり心に刻みました。

夜だけがともだち
倉山の試み
小劇場 楽園(東京都)
2020/03/25 (水) ~ 2020/03/31 (火)公演終了
満足度★★★★★
夏の夜、一人暮らしの若い男の部屋に女が転がり込んできたのなら、即日艶っぽい空気が生まれそうなものの、う~んこれじゃ~ね(笑)
その後の展開で艶っぽい空気になるのかどうかは・・・
ストーリーというよりも、これはもう“日々”ではないかと
「女」の登場を起点に「彼」が過ごし「彼」の人間関係も微妙に動き出した“日々”
その日々はどこか面倒で哀しくて、そしてめちゃ可笑しくて、時には「マジでっ!」の驚きもあり、それらのひとつひとつを一緒に共有できた気が。
太陽が降り注ぐような若さばかりがアオハルとは限らなく、月光のような優しい輝きも充分に眩しい。
“孤独”というエネルギーが惹きつけるのか、日を重ねるごとに引き寄せられ、感情が前のめりになってしまう人間模様が素晴らしい。
生活香る超リアル部屋のセットもさることながら、料理シーンがいくつかあり、実際に調理しているので、ほんのり良い匂いが客席まで。
一緒に食べられる訳ではないけれど、紛れもなく彼等と同じ空間にいる実感がくすぐったくて、何というか、とても嬉しいと思えました。

コオロギからの手紙
映像劇団テンアンツ
「劇」小劇場(東京都)
2020/03/25 (水) ~ 2020/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
フライヤーの雰囲気そのままに、古き良き任侠映画を生舞台で体感してきたかの様。
さながら任侠映画から役者さんがそのまま抜け出してきたかの如く、かと思えば漫画から抜け出したようなタバコ屋の婆さんや艶やかなパンパンガールにオモシロ刑事!
とても書ききれないけど中には金子昇さんも加わってやたら贅沢な面白さ。
実質的には人情喜劇の要素が散らばって、もうひたすら笑ってしまうのだけれど、やっぱり描かれるはヤクザの世界。
安定の可笑しさにしっかりと紛れ込んだ不安定な幸せの行方。
「あ~っこのままじゃ泣かされる」と一応堪えようとしたものの、言葉を積み重ねられると「もう無理っ」
しっかり泣かされてしまったのでした。
笑かすのも泣かすのも全力。
自分の座った下手側の席、黒幕で見えない舞台奥の換気扇音が聞こえますが一定音なのでほぼ気にならず。
その代わり常に新鮮な空気の流れが。
その他にも、安心且つ快適に観劇できるようにも全力を尽くす劇団さんの気概がしっかり伝わってくる舞台でした。

世界で一番頼りにならないスーパースター
劇団ボンボヤージュ!
APOCシアター(東京都)
2020/03/20 (金) ~ 2020/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
全編に亘ってミュージカルナンバーに溢れているのだけれど劇団サイドの主張は、あくまでミュージカルではないと。
どこかで聴いた事がありそうなメロディー(笑)にはストーリーに沿ったオリジナルの歌詞が(上方モニターでは、ちゃんと流れに合わせて字幕を映し出す徹底ぶり)
帝国劇場ばりの…とは言わないけれど、妙に小賢しい迫力と完成度が余計に笑いを誘うシステム。
ここに怪しい企業や宗教、政治家なんかが絡んできて何とも香ばしく素敵なハーモニー(笑)
悪に切り込む某踊る系刑事の面々がめちゃ可笑しい!
それでもっての本流はラブストーリー(?)
高級料理ではないけれどジャンクフードの超最上級品といった感じ。

十二夜【一部公演中止(3/6-3/9、3/11-19、3/31)】
ワタナベエンターテインメント
本多劇場(東京都)
2020/03/06 (金) ~ 2020/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
日ごとに公演中止日の延長を泣く泣く決断されてきた という様子でしたが、やっと(本当にやっと!)お披露目できる日を迎えられ、役者さん達の演じる事の喜びがビシバシ伝わってくる舞台でした。
有名なシェイクスピアの作品でありながら個人的には今まで観た事の無かった演目。
初めての「十二夜」との出会いが、この公演で本当に良かった。
綺麗どころ、道化者、熱血漢・・・とにかく芸達者な登場人物のバラエティー豊かさたるや・・・もうめちゃ贅沢。
女性役を男性の役者さんが演じられているのも、この勢いなら全然OK、何でもアリ(というか実際近距離で見ても違和感なしにマジキレイなのにはビックリ)
原作に笑いのテイストを散りばめて、
盛り沢山な内容なので、個人的にはシェイクスピに馴染みのない方はある程度あらすじを知ったうえ観にいくのがお薦めかと思いました。

灰になる
演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
小劇場B1(東京都)
2020/03/18 (水) ~ 2020/03/26 (木)公演終了
満足度★★★★★
シリアスと可笑し味が入り混じった冒頭で掴みはOK。
シリアスの成分は「貧困」と「アイデンティティ」
生活保護を受け続け、己の人生を嘆く男の物語。
姜暢雄さん出演の公演はいくつか観ているはずでも、ここまでガッツリな演技を拝見したのは初めてかも。
しっかりした役者さんに囲まれてダメ男を熱演。
ルックスは良いし立派な体格をしているのに、トホホな在り様が何とも難儀やなぁと。
他の生活保護受給者を見渡せば、いずれもそれぞれに難儀やなぁ ではあるのだけれど。
客観的に見ているつもりが、いつの間にか光の見えない出口探しを一緒にしている感覚にもなってきて、いろいろと考えさせられました。
ご時世とはいえジュニアファイブさんの公演としては有り得ないほどゆったりした客席の間隔。
おかげでゆったり贅沢に観られたのは皮肉な事で、内容の出来を鑑みると非常に勿体ない。

ゆうめいの座標軸
ゆうめい
こまばアゴラ劇場(東京都)
2020/03/04 (水) ~ 2020/03/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
『弟兄』を観劇。
学生時代に受けたいじめの一連はほぼ実話なのでしょうが、ちょっとすっとぼけた感じの作者(主人公)の主観性と他者への客観性のバランス配分のおかげで、とても観やすい自分史エンターテインメントに。
いじめの筆頭は何だか学生時代より現在の方が忌々しく映ったのだけれど、対峙する作者が(なかなか癒えない傷を負いながらも)大人になって精神的な武器もいろいろ身につけているので、そこが何とも小気味良い。
「親友」ではなく「弟兄」か・・・
転んでもタダでは起きない感じが好きかも。

「帽子と預言者」 「鳥が鳴き止む時-占領下のラマッラ-」
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2020/02/20 (木) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
「帽子と預言者」
個人的には奇怪なSF作品的な楽しみ方ができたなと。
本来なら「う~ん」と唸り、途中で挫折してしまいそうな戯曲だったと思うのだけれど、様々な視覚的効果と音響、そして観る者を惹きつける演技三昧で彩られると、こんなにも楽しめる舞台になるのだなぁと別の意味で唸ってしまいます。
独特にアクの強い素材。
それを奇妙だけれど妙に美味しい、インパクトある料理に仕上げた様な舞台だったと思えました。
「鳥が鳴き止む時-占領下のラマッラ-」
私事として「帽子と預言者」で燃え尽きてしまったのが少々残念なところでしたが、全く違ったテイストの作品。
両作品を通して、なるほど演劇通の固定客がしっかりついてきてくれる劇団さんなのだと大いに納得できました。
ハンパなく見応えあり。

ほつれる、闇
演劇企画集団LondonPANDA
小劇場 楽園(東京都)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
猛スピードで交差点に突っ込んだ男。
それは事故だったのか、それとも故意だったのか。
あらすじ紹介での最後の一文「判決の瞬間、被疑者が小さく嗤った。」
これってもう観せる前から堂々とネタバレしているのでは…と思ったのですが、全く予想外のアプローチが襲ってきて戦慄が走りました。
むしろ堂々としていたのは演技。
モノクローム(特に白)にこだわった美術、あえて僅かしか耳に届かない効果音、どれもが観客の意識という意識を全て役者さんの演技に集中させる為の演出だったのではないかと思え、ましてやすごい至近距離、声、表情、所作 全てがダイレクトに届き響いてきます。
被疑者が殺人犯なのか否かを突き詰めたい。という引き込まれから、やがて皮を一枚ずつ剥がしていくような人間の内面描写に魅了。
独特な構造をした劇場「楽園」の使い方が、この場所でしかできない遊び心、画期的だったところも面白いと思いました。

どさくさ
劇団あはひ
本多劇場(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
なるほど、落語が下地となった作風。と感じると共に、スマホや現代ファッション&若者特有の透明感ある作品。
青春ミステリーならぬ青春怪談といった趣があり、だんだん生と死の境目が曖昧になってきて不思議に物哀しい。
日本の古典様式の香り、全体的にゆったりな台詞回しはとても咀嚼しやすいものの、睡眠不足の状態で観に行かれる方は要注意。
その日のアフタートークで「半分夢見心地で観ても面白いのでは」的なお話しがあり、うん確かに!と思ったものの加減が難しそう(笑)
1時間15分。ちょっと食い足りない気がしたけれど、時折の静寂を破る三味線の生演奏がマッチした独特の世界。
どこか浮世離れした空間に身を置き、集中して楽しめました。