
スペキュレイティブ・フィクション!
NICE STALKER
ザ・スズナリ(東京都)
2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『本当のSF』なる公演が具体的にはどんな内容となるのか、未知数だらけの観劇でしたが蓋を開ければ予想外にも「学園ラブコメ」!?
これで一気に敷居が低くなるも、当然普通のラブコメであるはずもなくSF研の部員が織りなすSFこじらせ系とでも言えばいいのか。
マメSF論が随所に織り込められて、こんな切り口のラブコメは今まで観たこと無い!
二人を取り巻く登場人物達もパンチが効いて、各々の立ち位置と台詞回しの妙味で着実に笑いをさらっていくのだからもうたまりません。
このまま難儀な恋のスクランブルを見守って、と思いきや何やらオカルトチックな雲行き・・・ちゃっかりSF作品にも仕上がっていたのには驚きました。
ラブコメ&SFのゴールデンコンビ。
SFマニアともなれば、改めてひとつひとつのプロットを検証したくなりそうですが、かなり綿密に練り上げられた構造になっていた事はマニアではない私にもしっかり感じ取れたのでした、お見事!

さいはての街の塵の王
尾米タケル之一座
ウッディシアター中目黒(東京都)
2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
もっと「声」を食わせろ。
男に憑りついたその「存在」が食べたがっている「声」はどうやら何でもいいわけではないらしく・・・
そんなふうに匂わせながら物語は流れ流れて全く予想外な場所へと。
何故にこの場所に!?一瞬迷子になった気がしましたが、やがてその理由は紐解かれていくので、戸惑わずにその流れに身を委ねて鑑賞するのが正しかった模様。
ストーリーだけをなぞらえると何とも切なく、孤独に満ちた内容になりそうなところ、個性ぶつかり合う笑いを織り交ぜての軽快な演出、主人公の関西弁(ボケとツッコミで言えばツッコミ!)も加わってライトな空気感。
閉鎖的な苦しみを独自な世界観で調理した珍味な美味しさが後味に広がりました。

嫉妬深子の嫉妬深い日々
U-33project
インディペンデントシアターOji(東京都)
2021/11/26 (金) ~ 2021/11/30 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
どこの教室にもいそうなタイプの女子が沢山登場する中、こっこのタイプは流石にいない!?‥燦然と輝く強力キャラ、嫉妬深子。
嫉妬深いというより友人の目が自分最優先に向いていないと我慢できない重度のかまってちゃん。
特に人を惹きつける武器を待たず(見た目の可愛さはスルーらしい)して、とにかく自分の方を見て、見て!って、アンタ・・・という半ば呆れ目で観ているうちに、ひょんなことから自分探しの旅in嫉妬深子さながらの回想シーン。
次々に”嫉妬深子”を巡っていると、やがてはこちらの心の奥をノックしてきて・・・遂には小学1年生まで遡った個人的ワンシーン、思い出が混沌のなか蘇ってきました。
あぁ自分の中にも嫉妬深子がいたんだ。
のほほ~んとした音楽にのせて女子達が集まってくる今日は同窓会。
目立たぬ女子、嫉妬深子の観察者でもあるメイコの立ち位置、独自目線が面白い。

餅に書いたラブレター
劇団武蔵野ハンバーグ
OFF OFFシアター(東京都)
2021/11/19 (金) ~ 2021/11/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「観終わった後に、何も残らない公演」等々事前にハードルを下げていましたが、いやいや実際には中々あざとく(笑いを)取りにいっておられました。などと言ったら営業妨害でしょうか。
初っ端から中学生の教室にケバブのオジサン仕様な生徒が混ざっていたりするのはほんの小手調べ、
しっかり作品色に染まった役者さん達の奮闘に紛れて、舞台回し的に盛り上げている生徒役の(多分)主催さんも中々にあざとく可笑しかったです。
観ているうちに、あれっ!これ何かを彷彿させるぞ、と思い当たったのがアニメ界の異端児『秘密結社 鷹の爪』
チープな立ち位置から無茶苦茶どでかい場所へと飛躍していく笑いの構造とか、すっとぼけている様で笑い毒を忍ばせた台詞の応酬とか、通じるところが結構あるのです、誰に向って言っているのか分からないけれど確かめてほしい。
実際、作品を小分けにしてテレビ東京とかの深夜番組に流れていたらコアなファンがつきそう。
それで20年後くらいに「子供のころなんか好きだったんだよね~ 深夜に妙な番組やってなかった?ほら武蔵野ハンバーグの・・・」なんて言葉が交わされていそう。

ME AND MY LITTLE ASSHOLE
藤原たまえプロデュース
シアター711(東京都)
2021/11/17 (水) ~ 2021/11/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
これはめちゃくちゃ面白い!
「何でこの人は挨拶出来ないんだろう?」
「あれ、今のは余計な一言で怒らせちゃった?」
「今日はこの人機嫌がいい気がするけど何かあった?」
日常の中で、何気なく相手の様子から感じ取っているあれやこれや。
そんな他人の心の内が全て詳らかになったら・・・
エスパー的な物語というわけではなく、観客だけに「心の内」を見せる演出となっている本作。
この演出が加わっただけで、どこにでもありそうな、ごくありふれた職場風景が、見事なエンターテインメントに大変身してしまうのだから目から鱗としか言いようがありません。
ちょっとした事からまるで地獄絵図(笑)
こんなの見せられちゃったら人の心が読める超能力なんて絶対欲しくなくなります。
もうこれだけで完結しても立派に面白い作品として成立しているのですが、更に一歩先に踏み込んだ本作は、やがて誤解や想いの届かないモヤモヤなど、人間関係の煩わしささえ愛しく思えてきてしまう大傑作に仕上っていたのでした。
例え会社員でなくても人は何某かのコミュニティーに参加しているもの。
そういう意味で本作は誰もが自身にも思い当たりがあったり、思いを巡らせたりの連続で楽しめる作品になっていると思えます。

優しい嘘
劇団BLUESTAXI
ザ・ポケット(東京都)
2021/11/16 (火) ~ 2021/11/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
年季の入ったスナック空間を観客も一緒に共有して味わえた、笑いと哀しみミックス盛り。
ヤニが染みついた壁、酔っ払い、幸薄き姉妹、男と女、母と娘。(㊟喫煙シーンはありません)
コロナ禍がやって来て以来、「良し」とされなくなった濃厚で猥雑な人間関係をここでは思う存分、豪快に堪能できるという幸せ。
SNSなど介さない人と人と人、泥臭い酒場コミュニティーからは、惚れた腫れたや胡散臭い話、これからの話や終わらすべき話などが溢れんばかりにテンコ盛り、懐かしい匂いもしてきてもうたまりません。
散々笑い、憂い、楽しんだ後に押し寄せてくる哀愁。
カラオケの余韻に浸りつつ、まだ大晦日でもないのに「今年も色々あったなぁ~」と、まるで劇中の一員になったが如くしみじみとした思いに包まれながら帰路につくのでした。

セイムタイム,ネクストイヤー
演劇企画イロトリドリノハナ
オメガ東京(東京都)
2021/11/11 (木) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チームP(森下知香&加藤大騎)を観劇
今回の公演の大きな特徴は2つのチームがキャストだけに留まらず、演出者も異なり、翻訳までもが別々であるという点。
原作という出発点が同じでもチームHとPはほぼ別公演に等しく、その仕上がりの違いをまじまじと見比べられるのがとても興味深かったです。
効率度外視でセットの仕様まで異なるのですから、別モノ感はとことん徹底
何より人物描写、全く異なるカップルから成る物語になっていたのでした。
平野綾子さんのドリスは二人が初めて出逢った当時こそ平凡な女性、ジョージへの愛を生活の張りに自我を広め成長していった印象だったのに対し、森下知香さんのドリスは元々マグマの様な熱い想いを胸の内に秘め、ジョージとの逢瀬を肥やしに、さらには社会情勢をも追い風に着々と野心を具現化していく強い女性の印象。
鯨井智充さんのジョージは同性から共感を得るタイプだった印象に対して、加藤大騎さんのジョージは優し気な喋り方といい独特なオーラを放つジェントルマン。
日常に欠落感を抱えた、なかなかにクセのある人物。
時おり溢れ出すドリスの凄味に普通の男ならドンびいてしまいそうな部分もことごとく「好き」に変換できるタフさは刺激的な女性にどうしようもなく惹かれてしまう性ではないかと。
人生は事件に満ち、散々振り回されながらも、とても幸せそうでした。

セイムタイム,ネクストイヤー
演劇企画イロトリドリノハナ
オメガ東京(東京都)
2021/11/11 (木) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チームH(平野綾子&鯨井智充)を観劇
不倫は悪・・・いやいや、そんな単純に断言出来ないかも。
そんな一例とも言える人間模様の妙。
相手のパートナーの事を知りたい、あっちょっと待った!やっぱり知りたくない。
そんなせめぎ合いの中、ひねり出した妙案。
ならばパートナーの良いところと悪いところを1個づつ打ち明けよう。
結果、かなりお互いの生活を吐露し合っているというけったいな不倫関係は、不器用丸出しに滑稽ながらも年を重ねるごとに成熟していくのだから面白い。
これが肉欲とセットになって、すったもんだの25年。
長く波乱に富んだ繋がりは、それまで浮気とは全く縁のなかった二人だったからこそ築き上げられたのかもしれない。
鯨井智充さんのジョージは至って実直そう、反面ちょっとズルい所もあり性欲旺盛。
そう!多くの同性から共感を得るタイプ(笑)
平野綾子さんのドリスは素朴な女性・・・最初ごく平凡で素朴だった女性が年を重ねるごとに魅力的になっていく様子は、年相応に揺らめき老いていくジョージとの対比もあってなかなかに面白い。
あと性欲旺盛。
みっともない姿も散々晒してきた2人だが「悪くない人生だったな」とそれぞれ死ぬ間際に思うであろう事は間違いない。

オール・アバウト・Z
ティーファクトリー
ザ・スズナリ(東京都)
2021/11/06 (土) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
205X年、現在のコロナ禍の延長線上をイメージさせるが、こんな未来は有難くない。
多くの記憶が欠落した5名からなる政策論議。
謎だらけのスタートなので、状況の解明と共にもう頭の中はフル回転。
奇妙な空気感でありながら、こうした論争を目の当たりにすると、ひとつの法案が決定するのは奇跡なのではないかと思えてきます。
同時に、一部の記憶だけで形成された人格からくる不安定さのせいか、不気味な緊張感が。
キャストの大半がワークショップオーディションで選抜されたそうですが、ティーファクトリー独特の世界観は揺るぎなくキープ。
終盤でゾクッと身震いしたくなる構成も見事でした。
見応えあり!

ちーちゃな世界
青春事情
駅前劇場(東京都)
2021/10/27 (水) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
手堅く面白い。
青春事情といえば都会における悲喜こもごもを描くのが巧い!というイメージがあり、今回、田舎町というのが意外だったけれど、拝見してみれば東京からやって来た登場人物がめちゃ多い(笑)
都会の喧騒から逃れてとはいうけれど、結局人は人から逃れられるわけもなく、
ましてや小さなペンション(まさにちーちゃな世界)では一人一人の人となりが自然と浮彫りとなって、舞台としてもピッタリな状況を作り出していたのでした。
リモートワークやネット通販等々、都会と田舎の意味が曖昧になってきている妙味、
そんな現在を生きる情報バランスや世知辛ささえもことごとく面白味や可笑し味へと昇華させていく魅力たっぷりな時間。
喫煙所問題さえ何とも面白い。
気楽に旅行できないご時世ではありますが、劇場一体でちょっとしたペンション気分、田舎町での悲喜こもごもを存分に楽しめる公演でした。
ゴジゲンで独特強烈キャラな本折最強さとしさんが、また違った濃ゆさでもってペンションオーナー役を好演されていたのも新鮮。

紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/28 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
兄夫婦と暮らす、ごく普通にどこにでもいそうな娘さん紙屋悦子に突然舞い込んだ縁談話。
縁談話を持ってきたのは兄夫婦ではなく、悦子が秘かに想いを寄せている男性。
好いた人が仲人って、こんな切ない状況ってあるでしょうか。
案の定
想いを寄せる少尉はキリッとした男前、実に誠実そう。
少尉がお見合い相手に連れてきたのは図体でっかい非モテ系。あぁぁ
下世話な言い方はここまでにして、それぞれの人となりが交差するぎこちなさに自然と笑いが生まれつつ、どうにも歯がゆくて、何ともやり切れなくて、観ているこちらの感情も慌ただしい。
紙屋悦子の(地味な)青春。
そんな地味さの奥に流れる熱き想いと聡明さ。
流れゆくシーンの数々に思わず頬を緩め、時には涙腺を緩ませ、やがてはため息が漏れるラストシーンへと
戦時中を生きた家族の何気ない悦びや避けられない哀しみに寄り添いながら、ジンワリこみ上げてくる幸福感・・・この武骨な幸福感は日本人だからこそ共有できる感情なのかもしれない。

シャンデリヤvol.2
U-33project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
仕事帰りに「ちょっと美味しいものでも食べて帰ろう!」感覚で
「ちょっと面白いものでも観て帰ろう!」そんなノリで楽しむ公演として捉えるなら★5つ。
本当にいろんなジャンルが詰め込まれた四作品。
基本可笑しくライトに楽しめながら、どの作品にも含みがたっぷり。
役者さん総動員で描かれるラストパート『夜迷い荘殺人事件』は、こういう発想って(演劇の)作り手じゃなきゃ浮かばないよなぁと、斜めに笑わせる賑やかパート。
それでも個人的には前3パートが保有する、ちょっと歪んだコミュニケーション性に惹かれてしまうのでした。
それぞれ設定が違って、歪みのニュアンスも三者三様なのだけれど、そこから滲み出る人間関係の旨味が何とも美味しい。
コミュニケーションの在り様、きっとその見せ方が巧いのだろうなぁ~と。
長編の作品も、じっくり観てみたいと思いました。

ドント・コールミー・バッドマン
24/7lavo
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/10/14 (木) ~ 2021/10/19 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観終わって、振り返ってみれば、全ての登場人物がそれぞれに絶妙な個性を持ち寄って作品世界を彩っていたのだなぁとしみじみ。
独特のプロット、構成力がもたらす妙、直球の演技にすっかり酔いしれました。
既に観に行く事が決まっている方は、予備知識なしで、ただただ目の前で繰り広げられる世界に身を委ねるのが良いかと。
同時進行で描かれる3つのストーリー。
その3つ中で一歩前に立っているのは、
場面1「劇場」 作・演出オシムによる旗揚げ公演。
立ち稽古での前途多難っぷりに思わず笑えて、やがて湧いてくる劇団への親近感。
小演劇バックヤードものとしても中々興味深く、うん!これは面白いなぁと。
そして
場面2「中学校」 担任教師の無配慮っぷりが気になる転校生のエピソード
と、
場面3「喫茶店」 どうやらカップル成立には無理がありそうなマッチングアプリ男女のエピソード。
これらのエピソードが後にどう繋がってくるのか分からないけれど、とりあえずそれぞれに惹きつける吸引力があるし、アプローチが異なってその先が気になる。
舞台立ち位置のバリエーションが目に楽しく、人物個々の輪郭もハッキリとしてきて、・・・それはもう興味深く楽しんでいたわけです、それぞれの場面が突然繋がるまでは、ずっと自分のペースで
3つの関係性が繋がった途端に、隠れていた意味も一気に立ち上がり、別の表情に変わって押し寄せてくる物語の力強さ、痛み、演技の迫力といったらもう。
まさに胸を打つ「夢の途中」の物語。
観に行かれる方はここに書いた事を一旦忘れて、ただただ目の前で繰り広げられる世界に身を委ねてみてほしいです。

未来からの手紙
アンティークス
インディペンデントシアターOji(東京都)
2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
アンティークスさんの作品を拝見するのは2回目なので、そんなに語れるほどの者ではないのですが『内容をジックリ染み入らせて、やがてウルウル』そんな作風をイメージとして持っていたので、今回はちょっとビックリ。
※『やがてウルウル』の方は健在でした
「ある日見た坂道で」
BGMも含めて鉄拳さんのYouTubeを彷彿させる冒頭。
途中「あっ、これって!」と思わせる伏線を発見するも、突如夫婦間での男女入れ替わり騒動が勃発。
そんな夫婦宅に訪ねてくる人、人、
彼女等の会話から芽生えてくる違和感の真意を探るのに夢中、あれよあれよ、あっという間だったなぁという印象。
もうひとつの作品もそうですが、当たり前に思っていた事が、心許なく消え去ってしまう様なあやふやさに惑わされます。
「未来からの手紙」
結構攻めた作品、ガッツリな見応え感。
さらに中々に入り組んだ世界観の作品でもあったのですが、登場人物達、それぞれに置かれた立場から発せられる台詞の数々が構造を解き明かしている感じが特徴的。
決して説明的に走らない所にこだわりを感じます。
イメージが変わっていてビックリ。と最初に書きましたが、劇団としての幹の部分はそのままあり続けながらも、出演される役者さん達のキャラクター・持ち味を活かして枝葉のカタチを臨機応変に変えていき、だから自然と作風も・・・っていう事なのかも。
だとすると、次は、そのまた次は、どんな役者さんで、どんなカタチで仕上がってくるのか毎回楽しみな劇団さんではないかと思いました。

クロノス
LOGOTyPE
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2021/10/06 (水) ~ 2021/10/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
途方もなく壮大なラブストーリー。
観劇後の複雑な感慨、後引く余韻を引きずりつつ「これ、めちゃ女子が泣ける奴~」と頷いてみた。
キャラメルボックスの作品は「誰もが観やすい」の代表格みたいなところがありますが、その水面下では、スピーディーな台詞を流れるように、メリハリきかせて、且つ表情・表現を自然な感じに乗っけて、更にコンビネーションはコンマ何秒レベルで緻密に等々・・・出演者全員に相当ハイレベルな技術を要求する作りになっているんだよなぁと再確認。
大人数の練習がリスキーな中、今回の公演においては皆さん大健闘でした。
更に余裕が増し演じられる域に達すれば、ちょっとした笑い、繊細なところまで、より敏感に反応できたのではないかと思ったのですが、これは欲張りな感想として。
「過去に戻って好意を寄せる女性を事故から助け出す」
実にシンプルな主題でありながら、なかなか一筋縄でいかないジレンマ、周囲を巻き込み変わっていく状況、主人公と共に焦る心。
感覚としては走り出したら止まらない絶妙なスピードのコースターに乗っているかの様。
禁断のスタートは時間を遡るマシーン「クロノス」の発動
原子力にも似た、人間には制御しきれない領域から来る不気味さ。
この不気味さも一緒に同乗しての出発進行!ノンストップのゴングが響きます。
感心するほどの感染対策。
すでに開幕前から公演に対する真摯な姿勢は伝わっていたのでした。

7 Nana
JOE Company
ザ・ポケット(東京都)
2021/09/30 (木) ~ 2021/10/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
誰もが知るところの名作には『ヤクザ&クリスチャン』や『ヤクザ&女子高生』など、およそヤクザとは縁遠い組み合わせ作品が、
そして本作「7-NANA―」の場合は『ヤクザ&保育園』
保育園・・・これ、縁遠いにも程があるでしょ(笑)
何故、よりによってヤクザが保育士に?というツッコミも含めて非常にバカバカしいが、この「バカバカしい」って最高の誉め言葉じゃん!ってくらいに馬鹿面白い。
女性客にとってはプラス“ギャップ萌え”といったところか。
時節柄、笑うにも飛沫を気にしてひと苦労。ですが、もう可笑しすぎて腹が痛い。
厳めしい大のオトナ、そして技量や哀愁も備えた大のオトナ達が、これだけの熱量をもって笑わせにかかってくる醍醐味たるや。
あれ、もしやこの感じは演劇ユニット「円盤ライダー」にも通じるかもと思い起こし、ここに提唱
本作「7-NANA―」が好きな人は円盤ライダーも好き。
円盤ライダーが好きな人は本作「7-NANA―」も好き。という説
ちょっと自信あり。
オリジナルの魅力で映画化も果たしたという本作。
カット割りを駆使した映像も良いけれど、生舞台でしか受け取れないのが熱くて切ない直のエネルギー。
沢山受け取ってHOTにココロのぼせた状態で、外の夜風が気持ちいい事といったら。

ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~
theater 045 syndicate
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2021/09/30 (木) ~ 2021/10/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
横浜を舞台に、まさかこんなにも退廃的でギラギラした世界が広がっていようとは、全くの予想越え。
殺した相手の人生(のやり残し)を逐一背負っていく主人公のヤタロウ。
復讐を誓いながら何という厄介な生き様。
前作から引き継がれていると思われる部分など嗅ぎ取りながら観進めるも、最初は「予想越え」な世界観に押されっぱなし。
このまま押されっぱなしではヤバいと思い始めた頃、衝撃?のアキラ100%状態が出現(つまり全裸)
あんれまぁ何ともお下品。と言いつつ、しっかり取り込まれていくのでした(笑)
上級なパワフル演技でハードボイルド。
禍々しく退廃的。
滑稽にて残酷。
色んな要素が幾重にもコーディネートされ、これはもう実際に観てみなければ何とも表現し難い世界観。
このヤタロウワールドが横浜の古びた雑居ビルで生まれたとなれば「なんかとんでもねぇのが出てきた!」と話題になったのは至極当然だと思うし、下北沢から今回のKAAT大スタジオへの加速の勢いも大きく頷けます。

ホシノヒト
演劇企画アクタージュ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2021/09/23 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
今回も会場案内人は主催・作・演出の大関氏。
もはや演劇企画アクタージュ名物といっても良い“ほのぼの光景”なのですが、本当にこの方は「感じが良い人」。
わざわざアンケートを取ったりしなくても、この方が与える良い人な印象はもはや鉄板!
そして作品がこの大関氏から作られているという事を意識して観るとプラスαで面白く感じるのは私だけだろうか(一定数いると思う)
星降るペンションを舞台に冒頭はほんのりコミカルテイスト
からのSFファンタジー。
しかし話がさらに進んでいくと過去の殺人事件話が浮き上がってきて、何やらきな臭く・・・
そう、私はこの温厚な大関氏が意外とブラック(クリエイター)な一面を持っていると睨んでおります。
ファンタジーに光と影、このブラックが差し色になっての面白味。
2021年現在と因縁の1994年
アイデアが膨らむに連れ、役者さんの人数をもう少し多く、なんて思いもきっとあったのではないかと想像したりするのですが、7人の役者さんがフルに奮闘されてのパラレルワールド。
頑張っていたなぁと・・・エンディングも切なくエールを送りたい。

夏の砂の上
ハツビロコウ
「劇」小劇場(東京都)
2021/09/21 (火) ~ 2021/09/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしい公演でした。
何が素晴らしかったか、のひとつとして普通こんなに淡々とした序盤であれば退屈を危惧してしまうところ、それがもう全くの逆。
赤子が見るもの見るものを猛烈に吸収していくかのように、彼等の置かれた状況、人柄や心のひだまでもが確実に深く染み入ってくるのですからもうたまりません。
程なく劇中と交流したくなるくらい彼等は身近な存在になっていき
流れてゆく日々、自然と生まれてくる興奮感がとても心地良かったです。
渇ききった夏の長崎、全編を通して水不足の状態。
不幸な出来事も多いし、全くもって冴えない生活風景ではあるけれど、それでも人は決して枯れはしない。
痛いけれど、生きていく事をとても愛おしく感じずにはいられなかった。
事前に記載されていた旗森さんのレビューを拝読し観る前の参考にさせて頂きました、
ありがとうございます。
確かに台詞が通ってこなければキツイですし伝わるものも伝わりませんね。
私が観た回にはしっかり届いていたので意識的に良くなっていたとも思えますし、もしかするとですが一部通りにくい座席のラインがあるのかもしれません。
本当に良く出来た脚本ゆえ今後、他所で公演される事もきっとあるでしょう
それであっても私にとって本公演が唯一無二の原型版として刻み込まれて大満足です。

哲学者の午睡
空間旅団
Route Theater/ルートシアター(東京都)
2021/09/17 (金) ~ 2021/09/20 (月)公演終了
実演鑑賞
描かれるは現代プロレス界&古代ギリシャの二つの世界。
双方の状況というかニュアンスが酷似しているのに加えて、流れも同方向に向かっていくので、それプラスやっぱりテクニックなのでしょう、何度転換が入っても全く混乱が無い。
さらに全ての役者さんが双方に役を担っているわけで、ここにも何ら混乱を感じなかったのは そう、やっぱり独自のテクニックがあるに違いない。
90分の間にグウォ~ッと駆け抜けていった二つの世界。
色んな意味で演劇ならではの世界観でした。