「テヘランでロリータを読む」
時間堂
シアター1010稽古場1(ミニシアター)(東京都)
2013/01/19 (土) ~ 2013/01/28 (月)公演終了
リアルか、ファンタジーか。
個人的には、この世に存在するものをめちゃくちゃ大雑把に分けたらこの二つになると思う。実体験する事で自身の感情を伴って肌で感じるリアルと、そこに達しないファンタジー。別に伝説の剣を手に魔王を倒しに行かなくても、魔法少女になるか選択を迫られなくても、自身の経験や価値観で腑に落とす事が出来なかったら例え史実であってもファンタジー。時代劇でも当時の風潮や知識が分からないまま観て自分の感覚に置き換えられなかったらあっち側の遠い世界の話にしか思えなくなる訳で、だから共感出来るポイントを世界観ではなく人間模様から受け取れる様に、現代人でも共感出来る分かりやすい勧善懲悪の悪巧みを絶ったり人助けをしたり儚い恋の物語を盛り込んだりする訳で。人間の遣り取りや感情の部分で通じるリアルが見出せる。
という前提の下、さてこのテヘロリはどちらだったのか。時間堂の過去演目では「三人姉妹」が今回に近い様に感じた。その土地で生活をする事によって守るべき風潮や国策や流れがあって、逸脱しない様にある種の閉塞感に見舞われながら生きていく人々。その心境を受け取る事が出来ればこれはリアルで、よく知らない国のよく知らない人達の話と思ってしまえばファンタジー。それこそ見えざる重圧を感じながら観たとすれば、ダークファンタジーの様相を呈する。ほぼ無宗教の観念で生きる日本人でも、この演目からは宗教的観念を感じるだろうと思う。それは衣装や台詞に紛れた語群からの影響だけではなく、「自分が知らない作法・戒厳の中で生きる人々」の姿があったから。これを、どう受け取るかが鍵。先述の通り、この環境を自分の知らない世界とだけ思ってしまえばファンタジー。でももっと気を楽に「校則からハミ出た学校生活を夢見た事ってあるよね」とか「田舎もしくは都会で自然と生まれたローカルルールや地域性で面倒な目を見る事ってあるよね」まで落とし込めれば、実は凄く身近な話として観る事が出来る。そうなると各人物の発言や意図がリアルに共感出来る。
とかコメントすると、じゃああなたはそのリアル目線で観てたんですねって思われるでしょうけど、自分にとってはかなり終盤になるまでファンタジーでした。それこそ序盤は何か壁の様なものさえ感じた。それはあの舞台構造の影響もあるし、ざっくり言えば自分自身の心身の状態もあったと思う。自分が疲れてる時はちょっと余裕がなくなって他人への思い遣りや配慮が欠けちゃう時があるじゃないですか。それと一緒で、観劇日の自分の状態ではこのテヘロリのイランという国に生きる人々の心境に近付くには余裕が足りてなかった気がする。近付こうとしたのだけど、物凄く疲れて何かを消耗した実感がある。誤解されない様に断言しておくと、詰まらなかったからではない。むしろ充分に詰まった色なんなものを受け取るにはこっちの余地が足りてなかったという事です。要は登場人物に対して「そういう人もいるよね」って受け入れが出来るだけの余裕。それこそ実生活で自分と何かが違う人に対して「そういう人もいるよね」って思えるかどうかと一緒。「演劇なんだからそういう人もいるって思い込ませる演技や表現をしろよ」って意見もあるのかもしれないけど、時間堂は凄く普通なのでその辺は決して押し付けて来ない。押し付けて来ないから、こちらの許容量次第で観たい様に観られる余白があえてあるし、虚構を必死に作り上げてる感もない。目の前で人間が存在していてそこで呼吸をしている事実をただただ感じさせてくれる。それもまたリアル。
Caesiumberry Jam
DULL-COLORED POP
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/08/20 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
時を経て場所が変わって人も変わっても。
初演のタイニイアリスは劇場そのものの閉塞感が村の在り方と合っていた気がしましたが、今回シアターグリーンになった事によって真逆の開放感もしくは空虚感があった。外に出ればいくらでも世界は広がっているけど、その場所でしか生きられない人々。
そもそも本自体が変わった部分もあるんだろうけれども、「ああ、そうだった。そうだった。あれ? ここって前もこうだったっけ?」などと思い出したり確かめたりしながら。きっと震災と原発に対してもいずれそうなっていく。っていうか既にそうなって来てる。忘れてはいけないと声高にしながら忘れていく。生きてれば次の何かがすぐに来て1秒以上前はすぐ過去になる。人間は今しか生きられない。いつのまにか手遅れになっていつか死がやって来る。こえーなー。
業に向かって唾を吐く
elePHANTMoon
サンモールスタジオ(東京都)
2011/11/09 (水) ~ 2011/11/13 (日)公演終了
お勧めはしないけど。
舞台初見の人には勧めないけど、個人的には突き抜けて面白かった。
いくつかの強烈なポイントが上手く繋がってなくて作品としてのパッケージが弱い、というのがこれまでの作品へのイメージでした。それが今回は完璧だった。始まってしばらくして「あれ? 今回これ超面白いんじゃないの? 途中で失速しないよね?」なんて思っていたものの、ぶっちぎってくれました。再演だからなのか、成長なのか、シンパシーなのか。分からないけど。
夢列車
Key Station
船橋市宮本公民館(千葉県)
2011/11/12 (土) ~ 2011/11/13 (日)公演終了
甘く見てた。
知人に誘われて事前に調べたら、手作り感満載のHPがヒットしてCoRichには登録されてない。団員は舞台経験の少ない人々で中学生から様々な年代が在籍。「こりゃ微妙か」と観に行ったら、なんだよそこそこやってくれるじゃねーかよ。演出が窮屈にならない状態にで役者が演技してるし、信頼の上で放任されているであろう箇所で生き生きとした姿を見せたりも。何より年少者がちゃんと出来てる。地元の人よ、彼らをもっと観に行く良いよ。
白夜王アムンゼン【観客動員数1000人突破!】
劇団バッコスの祭
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2012/01/25 (水) ~ 2012/01/30 (月)公演終了
凜とした空気感。
氷雪の世界を感じさせたし、観劇後に劇場を出た時の寒さと余韻がちょうどマッチ。登場人物の背負ったカルマが滲むここ最近の作風とはまた違った爽やかさからの清涼感がありました。
果実の門
乞局
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/11/12 (金) ~ 2010/11/23 (火)公演終了
記念公演。
別公演で折り込まれたチラシが手に入る度に盛り立てられた気分になった記念公演。凝ったチラシだったし、過去作品からのスターシステムなんていうドキドキ要素で。
いつ何処で誰に言われたんだろう。レビューか何かで見たのか? 「乞局」の登場人物はとりあえずみんな何かに怒ってるっていうのが今回もまた。理不尽な状況で先が不透明であろうと怒りは行動力の根源になる。怨恨とはまたちょっと違って。怒ってるやつはこえーな。
芸劇eyes番外編『20年安泰。』(各回当日券発売有り)
東京芸術劇場
水天宮ピット・大スタジオ(東京都)
2011/06/24 (金) ~ 2011/06/27 (月)公演終了
本当に彼らが20年安泰。なのか。
むしろ盛り上がってる時に華々しく解散するか、やりたい事が変わったら潔く別団体を立ち上げそう。地道に20年ではなく、いつもその瞬間を切り取って活動していく人々なんじゃないかとな思えた。観た事を20年後に自慢は出来ると思う。きっともう観られないから。
今回観られて良かったのはマームとジプシー。悔しかったのは範宙遊泳。範宙は絶対もっと面白く観る事が出来たんです。そしてそれは彼らのせいではありません。理由はあえてネタバレでなく以下に記します。
自分が座ったエリアに当日券の人々がやけに案内されてくるなと思ったら、尋常じゃないほどの見切れ席で。せっかく範宙が面白い舞台の使い方をしたのに全然観えず。いくら自由席とはいえ、客席係りが何人か立ってたんだから見切れるって注意して欲しかった。どうやら見切れ席として本来が当日券2500のところを2000円で案内するエリアだったらしく、ちゃんと事前に予約してた自分がその席だったのは惜しくてならない。もう一度行こうとしたけど体調的にどうしても行けず、自分にとっての20年安泰。は不完全燃焼。この企画が継続されるのか、あっても運営員会が同じメンツなのか分からないからこの意見が反映されるとは思っていません。もし自分のこんなコメントでも目を通して頂いている制作スタッフの方がいれば、ご自身の現場で少しだけ意識して欲しく思います。自分はまだちょっとは慣れてるほうだからこういう事もあるかなと思うし文句も言うしまた観にも行くけど、そうでない人なら何も言わずもう観に来ないです。
それゆけ安全マン!?~レントゲン・チェルノブイリ・フクシマ~
一般社団法人 日本演出者協会
笹塚ファクトリー(東京都)
2011/06/03 (金) ~ 2011/06/03 (金)公演終了
面白かったなんて言えない。
言うのであれば、「興味深かった」。扱っている内容が内容だけに、今すべき復習と予習をさせてもらった感じ。この演目が100年後にどんな意味を持つかが非常に気掛かり。出来事を、時代を切り取った作品。
浴槽のさかな
害獣芝居
新宿眼科画廊(東京都)
2011/06/03 (金) ~ 2011/06/08 (水)公演終了
両方観た。
観劇というよりは「体感」というか、その場に「存在」する事に意識を向けさせられた感覚。作品と劇場と客席と出演者と客の境界線が溶けてる様な不思議な気分。水槽の水を弄ぶ音が妖艶に思えたり。
第3回公演「アメリカ」
札幌ハムプロジェクト
池袋GEKIBA(東京都)
2011/06/07 (火) ~ 2011/06/12 (日)公演終了
公開めちゃくちゃリハ。
個人的にこういう熱量のある演目は正確さよりも必死感を観たいので、幕が開いたばかりの危なっかしい状態を観るのが大好き。怪我だけには気を付けて欲しいけど。
狭い出捌け口に同時に役者が駆け込んで『ぎゅむ!』ってなって入れなかった瞬間が最高に面白かった。爆笑。稽古で作ってきた中身からは外れたトラブルだけど、一生懸命やってたからこそ笑って観られた。中途半端な姿を見せられてその現象が起きたらきっとイラっとしてたと思う。命懸けでしたね。
ハイヤーズ・ハイ
劇団ガバメンツ
劇場HOPE(東京都)
2011/10/13 (木) ~ 2011/10/17 (月)公演終了
お待ちしておりました。
おいでやす、東京へ。
正統派で強固なコメディを久々に観た気がする。自分達が面白いと思ったものを適当に詰め込んで呼び方がよく分からずにコメディと言う人々もいるが、彼らの場合には自分達の武器をしかと自覚した上で計算づくでコメディを確立している。強い。今回ツアーという事で念頭に置かれていただろうけど、何処へでも持っていける作りの演目。役者と演技がしっかりしているから舞台がどうあろうと、やれる。これも強い。
片山誠子の破壊力たるや。
リミックス2
国分寺大人倶楽部
王子小劇場(東京都)
2011/06/14 (火) ~ 2011/06/19 (日)公演終了
美味しすぎる。
前売りなら1本700円じゃん。一食抜いたら観られるお得感。国分寺の話題の時に「抜く」とかいう言葉を使うと何の事だか分かんなくなるけど。
彼らのおまけ演劇番外編を観ている時は、世界のどこかで戦争が起きてる事とかつい忘れてしまうのです。
ながぐつをはいたねこ
柿喰う客
三重県文化会館(三重県)
2011/02/19 (土) ~ 2011/02/20 (日)公演終了
わが星
ままごと
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/04/15 (金) ~ 2011/05/01 (日)公演終了
初演を観られず念願の。
戯曲には軽く目を通して「あ、これは観なきゃ」と思いました。そもそも戯曲は演目の設計図みたいなものだけど、これに関してはその印象が他より強くて。新しい飛行機の図面を見せられて「どんな飛び方するんだろう?どのくらい飛ぶんだろう?」みたいな感覚でした。
自分の都合で到着が遅れて立ち見になったのだけど、この演目は地球に立ちながら観るのもまた乙だったな。視野としても必ずしもある一点だけに着目せずあちこち見たくなるものだったし。主観的にも客観的にもなれる内容だったので、たまにふっと気が反れて場内を見回している時間も楽しかった。ブースのスタッフの姿を見るのさえ楽しかった。「あー、地球って星のこの場所に人が集まって演劇を観ている瞬間を過ごしているなー」と。
ちーちゃんとつきちゃんの遣り取りは可愛すぎる。それなりの年齢になって胸の内をほんわかさせられるのは、付き合い始めた人と初めて手を繋ぐ時くらいドキドキする。うっかり寿命縮む。
モリー・スウィーニー
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2011/06/10 (金) ~ 2011/06/19 (日)公演終了
役者の力量と魅力。
舞台美術の美麗ささえも視覚を持つ者への皮肉に思える様な、小さく小さくしかし確実に心を削り取っていく棘が感じられる作品でした。
生で聴く南さんの声は可愛くて堪らなかった。改めて「あ、これが女優か」と思った。声に限った事じゃなく、客にとって何かしら心を掴まれるものを持ってるというか。彼女のモノローグが始まってすぐ「あ、このモノローグだけが3時間続いても観られるな」と。内包されたものと背景が感じられました。小林さんは当初は好きになれないかもと思ったら、いつの間にか安心して楽しんでた。可愛いモンスターだった。リロ&スティッチみたいな。青いやつはスティッチ? よくよく見たら可愛くないはずなんだけど可愛く見えちゃう。相島さんは黙ってても観ていられる貫禄。それでいてミーハー心をくすぐるギリギリ一歩手前の適切な距離を持った存在感。口を開けば勿論その言葉の説得力たるや。
静の中の動の前半と、動の中の静の後半。母体内で眠りについた出生前の状態と、新たな世界で刺激に憔悴して迎えた死。物語が始まった時点でモリーは40代だけど、人生の終始全てが劇中にあった。何を大事に観ればいいかは始まってすぐ分かるはず。
おまんじゅう
多少婦人
OFF OFFシアター(東京都)
2011/06/02 (木) ~ 2011/06/06 (月)公演終了
それはつまり饅頭星があるという事か。
今更になって「饅頭星人ってなんだよ!」と遅れて突っ込んでしまう。観ていた時にはむしろ「なになに?饅頭星人だと?」くらいの食い付き振りを発揮してしまった。おまんじゅうに関するオムニバスという事で次はどんな手で来るかに興味があった分、割とすんなり受け容れていました。
この上演形式がお家芸となっている分、4本のバランスは上手かった。ちょっと食べ足りないかなと思ったものもあるけど、幕間の繋ぎでおかわりした気分。あの部分が一番好きだった人もいる様な気もしますが、本編あってこそですからね。いや、自分もあの部分はかなり好きでしたが。
紅き深爪【沢山のご来場誠にありがとうございました】
風琴工房
ギャラリーLE DECO(東京都)
2011/05/24 (火) ~ 2011/05/29 (日)公演終了
家族とは?
血の繋がり・戸籍・同居。別々に存在する人間を括る概念。別々に存在するからこそ相容れない部分があって、その歪みは心を徐々に殺していく。
児童虐待のみを焦点が当たっているのかと思ったら家族の話だった。冒頭は情報量が多くて消化不良になるんじゃないかと危惧したんですが、得てして結局その通りに。でもその消化不良は劇中の出来事への煮え切らなさにもリンクされて、理由と意味のある不快感だった気もするのです。
IN HER TWENTIES
TOKYO PLAYERS COLLECTION
王子小劇場(東京都)
2011/05/31 (火) ~ 2011/06/05 (日)公演終了
年相応。
『若いほうがいい』とか『三十代からだ』とか言っても、いや女の子はいつだって可愛いだろ、と。
自分でも意外と初の本公演観劇。今回上手く機能していたのは、「いい意味で全力で演技してない」って部分かと。さらっとしてた。役者が演技力を発揮するというよりも「女の子が何かしてる」。それがこの演目の支柱である一人の女性の歴史を語るモノローグに重なっていた気がします。暑苦しいものや重苦しいものを押し付けて来ず、ちょうどいい距離感。
座ったのは下手端の席だったので、自分から観ると年代を追うごとにこちらに近付いて来る感覚がありました。上手に座ったら遠ざかって行く感覚だったのかな? それも試してみたかった。
◎の魔法
荒川チョモランマ
ギャラリーSite(東京都)
2011/09/23 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了
心地よい迷走。
「この話は何処に向かうのか?」。演劇に限らず、始まった瞬間からそれは気になるもので。本線を追い掛けたり先読みしたりしながら、観る側としてはちょっとしたレースの様な心境に。荒チョモに関してはそれが結構序盤の時点で迷走する。それが、悪くない。何も追い掛けられなくなったらそれは破綻しているに過ぎないけど、ここの場合は追い掛ける可能性が相当数あってどれを追うか楽しく迷える。伏線が多いのか、伏線だと思わせる線が多いのか。
ゼガヒデモ
Guesspell Project
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2013/03/27 (水) ~ 2013/03/31 (日)公演終了