Dの観てきた!クチコミ一覧

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11月戦争とその後の6ヶ月

11月戦争とその後の6ヶ月

アロッタファジャイナ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

【王国】貶すべき。
高校生が書いたという事に飛び付いて観劇。正直、役者の芝居が酷い。特に大人組。覚えた台詞をしっかりとした発声で口に出しているだけで気持ちの根元が見えなかった。余計な事を考えず素直にやっていた年少組のほうがまだ観られた。が、この理由は後に分かった。それはネタバレBOXにて。
台詞内で話題が移行する際と場面転換の前後が妙に力技というか雑。人物の行動理念が曖昧で、段取りに見えた箇所が多々。作者が戯曲内の人物達を自分にとって都合の良い行動で動かしながら書いたからだろう。これは各人物の内面をしっかりさせれば演出の仕事でも辻褄が合わせられたはず。
大層な本ではある。が、穴も多い。経験値よりも知識で書かれた印象は拭えない。とはいえ作者のかなりの頭の良さと才覚は感じた。自分が高校生の頃にこれを書けた気はしない。もっと思いっきりやると良い。穴をなくすのを目指すよりも、穴を突っつくのがバカらしく思えるくらい濃いものを書いたほうが良い。今日は出来に不満があったから拍手をしませんでした。彼が活動を続けるのであれば、いつかさせてみせて欲しい。今は未熟。まだまだこれから。

ネタバレBOX

作者の彼は演出にも口出しをしたらしく、役者とのぶつかりもあったとか。そりゃあ実際に学生運動を知ってる年代の役者と想像で書いた作者とではぶつかるわ。彼がどちらにしたいかですよね。実際の質感を大事にしたいのか、自分の創作物として想像通りにしたいのか。次は演出もやったら良いと思う。
劇中での無対象演技が気になりました。ルデコで気軽に見せるにはアリなんだけど、戯曲としては生々しさを使ったほうが効果になったはず。ホントに食べてホントに殴ったほうが生々しさが増す。だって事実だから。
深情さびつく回転儀

深情さびつく回転儀

電動夏子安置システム

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了

電夏お得意の理系ゲーム式演劇。
日に3ステージの忙しいタイムスケジュールはいつもの通り。尚且つ今回は結末が6パターン。全く無茶する連中だ。それでいてしっかりこなしているのは確かな地力の現われ。個人的には既に数年越しで見ているので、初見の方が多いのは結構意外。
人数を絞ったほうが内容も濃厚になった様な気はする。人物背景とルール説明で浪費した時間がちょっと長かった様に思えて。その後に一気に面白くなるんだけど、ギアを入れるのがもうちょっと早かったらなぁという勝手な欲が沸きました。そんな大所帯の中、浮き立ったのが劇団員それぞれのグッジョブ。核を固めて、脇を固めて、そしてそれをぶっ壊す(笑)。あれだけの人数の中でもそれぞれがしっかり良い仕事をしています。劇団員だけでアレンジしてこの演目を再演しても相当面白いものが観られるはず。これは確信。
良い客演をしたなと思えたのが、柿食う客の七味さん。「演じる」というよりも「キャラクターになる」に近い柿のスタイルが途中から見事に合致します。
『難しい内容なのかな?』と、観ようか迷っている方へ。別に演劇として観る分にはゲームルールを理解していなくとも何ら問題なく楽しめます。でもね、「頭で全て理解するのはちょっと困難だけど、とりあえず目の前でなんか変な事になってる人物の姿がやけに面白おかしくて堪らない」というのが電夏マジック。頭を使おうとしている時ほど、ふいに変な所を突かれると急激にツボに入ったりする事ってあるじゃないですか。感性と脳みその両方を使って観劇する事をおススメします。

ネタバレBOX

波に乗るまでが長いと思えた要因はやっぱり人物背景とルール説明で浪費した時間のせいなんだけど、美雪の在り方も影響していた様な気が。初めにルーレットを適当にいじってしまうのが彼女。でも彼女に対して何の興味も沸かなかった。あの不思議な小部屋に入るまでの間に、美雪がもっと興味を沸かせてくれる存在であってくれたならなぁと個人的には思います。
『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

DULL-COLORED POP

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了

【サイコシス】初日、二日目。
出て来るのが誰なのかは分からない。誰でもないし、誰でもあった。確実に言えるのは「人だった」という事。そしてそれが全て。タイトルを知っているとついその「覚める瞬間」を待ちますが、実際には初めから覚めっぱなし。劇中に波みたいなものはあるけれど、それは目覚めさせる為の流れではなく。むしろ、「閉じる」「途切れる」「壊れる」「失う」などに向けたカウントダウン。
観ていて非常に疲れました。人よってはすぐに何か重なるかもしれないし、しばらく時間差があるかもしれないし、最後まで何も得ないかもしれない。
中身は異なるけど、個人的には「Caesciumberry Jam」を観た時と似た何かを感じた。でも何が似ていたのかはよく分からない。抜け道のない閉塞感かな?うーん。

ネタバレBOX

何も得ないほうが精神的には健康かも。でもそれはもしかしたら鈍感なだけかもしれなくて、そういう人は日常でそうそう傷付いていないのかもしれない。せめて他人に対してまでも鈍感で誰かを無意識に傷付けていないで欲しいなと願います。
reset-N「閃光」もちょっと思い浮かびました。
『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

『プルーフ/証明』 『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』

DULL-COLORED POP

サンモールスタジオ(東京都)

2009/10/07 (水) ~ 2009/10/13 (火)公演終了

【プルーフ】初日、一日目。
反りの合わない姉妹。偉大な数学者であり大学で講義を持っていた父親。彼を慕ってその元で学んでいた青年。妹と父親は愛着のある家で長きを共に暮らし、やがてその生活に終わりが訪れる。変わっていくもの。変わらないもの。受け継がれるもの。途切れるもの。答えのあるもの。答えのないもの。示し様のないもの。これは、ある証明を巡る物語。
誰が何を考えているのか分かりやすい点でいくとある意味「小部屋の中のマリー」とは真逆な様で、そしてまた似てもいたり。そう、この話は非常にスマート。『数学の話は難しそうだなぁ』なんて印象は冒頭の内に捨てたほうが吉。別に数式に当てはめた伏線とかは出て来ないから大丈夫。これ自体は人の在り方についての話。
過去の上演との比較。おやつの時間堂では企画の形式もあって「新鮮味」が、コロブチカでは「深み」があった。そしていよいよ翻訳者自らの演出。個人的には「適切」な印象。上演時間も大分スリムになって脚本をあちこちいじっただろうに違和感はないし、無理に表現を変えた箇所もない。演技の違いは役者の違いが根源であって、演出技法で演技面に特異な見せ方を引き出した感じはない。役者に任せる部分は任せつつ、しっかりチームで作られたのだろうと思う。この座組で上演するに当たっての「適切」。
自分が座ったのは最前列の下手席。たまたまだったけど、個人的にはここがベストポジションだった気がする。役者の顔もちょうど観たい角度で観られたし。とりあえず、舞台上を観る事に集中して入り込みたい人は中央通路からちょっと離れたほうが良いかも。
最後に『今後の活動の為にアンケートを〜』というお馴染みのアナウンスに対して「じゃあ、いつかはその今後があってくれよ」と心の中でレス。劇場は22時退館の様です。夜の回ならアンケートは途中休憩の間に書いたほうが良いです。

ネタバレBOX

観ていて入り込むとふと日常感覚を失い掛けるけど、姉のクレアは何も間違っていなくて。妹があの状態なら姉の立場として取るべき行動を取っているだけ。ただ、キャサリンが家にいたがるのがピュアだからクレアが悪に見える。同じ様に気が違って極寒の屋外で数学にのめり込む父親もピュア。その時のキャサリンの対応も結果的にはクレアと大差ないはず。ピュアは汚されるものであり、儚い。
最初の場面のキャサリンが他の「Proof」よりもダルそうだった。日常で有り得るテンションだったからこそ、観る側も目線を定めやすかったはず。その分、初見の方にとっては父親が既に死んでいると分かった時の意外性は大きかったかと。
例のノートが「発見された」となった時にキャサリンが言い出すまでの顔。これまでのバージョンよりも早い段階で分かりやすく表情に否定の色が出ていた様な。このほうがすんなりしていて良かったかな。
あぁ、場転方法は好き嫌いあるかも。休止前作品だから演出家が好みの音楽を使いたかったのか?という気も。少なくとも思い入れがあっての形なのは確か。
悪趣味

悪趣味

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

来るべくして。
柿を初めて観たのは4年前。「こういう連中がいずれ何かやらかすんだろうな」と思いました。だってその時も既にやらかしていたから。
まさかトラムを狭く感じるとは思わなかったなー。柿を見慣れていればいつも通りに思えるものの、冷静に見れば役者泣かせの負担増な作りの舞台美術。辛くなくても美味いカレーはあるけれど、辛いからこそ美味さの増すカレーもある。
つまりはハッピーな家族の話。擦れ違いはあるけど、相手を窘める為ではなく思うが故の言葉と行動しかなかった。「お前、幸せになれ!」というワガママ。作品の中に「劇作家としての中屋敷法仁」の存在をここまでハッキリ感じたのも初めてだった。パンフレットの挨拶文に綴られた言葉が全て。

ネタバレBOX

カッパがドクターペッパーのTシャツを着てた。
観ていた時にはドサくさに紛れてすっかり忘れた事として、「震江が変になったのは結局なんだったのか?」という謎。これまでの柿にもそういうのはよくあって、しかしながら観ている最中は毎回その矛盾に気が付かない。こちらの負け。
全体的に優しかったと思う。それが易しかったと感じた人もいるのかもしれない。個人的にはこれこそが五年の経緯に見えた。かねてからのファンにも新たなファンにも向けられていて、勿論関係者にも愛がある。
遊ぶカネが欲しかった

遊ぶカネが欲しかった

バナナ学園純情乙女組

DRESS AKIBA HALL(東京都)

2009/04/07 (火) ~ 2009/04/07 (火)公演終了

遅ればせながら。
狭くてもバナナは良く熟れていました。

キル

キル

劇団デパス

柏市民文化会館(千葉県)

2008/09/07 (日) ~ 2008/09/07 (日)公演終了

遅ればせながら。
千葉県柏市にて活動している劇団。それこそ移り住んですぐの頃から名前は知っていまして、今回ようやくの拝見。
芝居としては絶対的にテンションが足りなかった。野田秀樹の脚本は呟くように口にしたら荒唐無稽な戯れ言になってしまう。説得力を与えるのは構文ではなく、押し付けて来るほどの勢いで発せられる役者の叫びに他ならない。ただのがなり声ではなく、伝えようとする意志のある大声の事。そういう点では最前列で観てたのに伝わって来なかったかなぁ。非常に疲れました。集中力で浪費した疲れじゃなく、席に長時間座っていた事でのもの。終わった時の不揃いで疎らな客の拍手は如実にそれを示していたかと。役者個人で見るとあまり難のない人もいたのだけど、難があるほうの人は一目でそれが分かるくらいの露見状況。演出者なり共演者がもうちょっと丁寧に指摘していたら改善出来た気もするのでちょっと惜しく思います。

ネタバレBOX

昔この劇団に片桐はづきさんがいたと知って驚きました。
お見合い5

お見合い5

新劇団松葉ステッキ

アミュゼ柏(千葉県)

2009/08/22 (土) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

マシになった。
ひとまず近所の人が暇だったら観に行ってもいいんじゃないかな、とは思える様になりました。

リュウノセナカ

リュウノセナカ

新劇団松葉ステッキ

アミュゼ柏(千葉県)

2009/03/28 (土) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

遅ればせながら。
役者の演技が下手で説得力のある遣り取りが出来ない上に、やりたい場面だけ抽出した様な脚本。そして全く仕事をした跡の見られない演出。演劇という概念をレイプするに等しかった。

Trick or Treat

Trick or Treat

日本橋学館大学演劇部

日本橋学館大学(千葉県)

2009/04/16 (木) ~ 2009/04/16 (木)公演終了

遅ればせながら。
様々な大学で100くらいの学内公演を観ましたが、ぶっちゃけ観るに耐えないのが多い。酷いのになると「こいつらは演劇を辱めたいのか?」と憤る時さえある。けれど今回は良いほうだったと思う。
演技に関してはまだまだなレベル。とはいえ演出家の存在と役割がきちんと機能していた。『演技したいでーす』といきなり役者をやって表面上それなりに出来ちゃうケースはあるものの、『演出やりたいでーす』はまず不可能。何かしら経験がある人だったんじゃないかな。そういう人がいてちゃんと演劇が出来る環境というのは、恵まれている。

ネタバレBOX

作中で簡単に人が死ぬのは個人的に好きじゃない。
クロノ・ランナー

クロノ・ランナー

どっこめ

イワト劇場(東京都)

2009/04/16 (木) ~ 2009/04/19 (日)公演終了

遅ればせながら。
序盤はちょっと掴みが足りなかったか。人物の動機見せとSF設定の土台説明が丁寧過ぎたかも。初めからちょいちょいおちゃらけていても良かった。波に乗ってからは上手く乗り続けていたと思います。転けそうになっても勢いで何とかしてた。よくある作りではあるけど本に穴がなかったのもナイス。まぁ、中盤にデカい穴があるにはあったんだけどもセーフ。それも含めて、理性的に観ると先読み出来ちゃうから早めに入り込んで感性で観るが吉。 悪く言えばまだまだ。良く言えば客と一緒にテンションを上げていく芝居でした。

グローブ・ジャングル

グローブ・ジャングル

劇団5本指ソックス

シアターバビロンの流れのほとりにて(東京都)

2009/03/27 (金) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

再登録。
コメントしたつもりが、忘れてたのかな…?
今更長々と語りません。好感が持てて、最後までしっかり観られました。その辺の人がみんなこのくらいやれる環境になったら日本の演劇はもっと良くなると思う。多分300年くらいかかるけど。

ネタバレBOX

ラストシーンに微妙なカットがあったけど、余韻を前向きにする為には良い手だったかと。
proof

proof

コロブチカ

王子小劇場(東京都)

2008/12/25 (木) ~ 2008/12/29 (月)公演終了

ダルカラでまたやる前に。
PC不調で登録が遅れていました。今更だけどしっかり印象は残っています。以下、当時の日記より。
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去年、おやつの時間堂にて「小屋入りから一週間の制作過程を公開して最終日に本番」という企画で上演された演目。両方を観ると比較したくなるかもしれません。しかしこれらは完全に別物。
今回はじっくり稽古をしているのもあって質感が違った気がします。視覚的ではない意味で、色が濃かった。白いキャンバスを適切な色使いで染めていました。先述の企画の際にはタッチが荒い部分もあり、それが生命を感じさせもしたのですが。その時はどちらかと言えばパフォーマンスに近いライブ感でした。それからするとこちらは地に足が着いています。そしてその分、純粋に演劇として観ていられます。普段観ない方にもオススメ出来ると思います。観る側が大笑いや大泣きをしたくなる様な場面はないけれど、微笑んだり切なくなったりはするはず。勢いで感情を押し付けるのではなく、自然と引き寄せて移入させる形。『演劇って何が面白いの?』という問いに対して理想的な答えがこの演目かもしれません。

反重力エンピツ

反重力エンピツ

国道五十八号戦線

サンモールスタジオ(東京都)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

This is 58
第二回公演以外は旗揚げから観ていて、彼らの得意な戦法は分かっているつもり。それでも絶対ラストまでにこちらの読みを裏切ってくる。だから安心して裏切られてしまう。絶叫系アトラクションにも似ています。死なないって分かってるんだけどて、つい行ってスッキリする。観た後の爽快感もそれにかなり似ています。今回も彼らの得意な戦法で仕掛けているので、未見の方には是非ともオススメします。これが国道五十八号戦線。丸出し国道五十八号戦線。
ナイスキャラ、多数。これも彼らの特徴ですが、客演役者を輝かせるのが上手い。それは劇団員が物語をしっかり進める役をこなせるからです。今回は学生運動の話ですが、知識がなくともちゃんと楽しめます。特定の説明役がいるというよりはそれぞれがしらっといつの間にか自然に語ってくれるので、観ていてするっと入って来ます。簡単な話じゃないんだけど、簡単に感じさせるので肩を張らずに観られます。勉強の教え方が上手い家庭教師みたいな。この例え、通じるかな。
彼らは今回から四回連続でシアターサンモールでの公演。戦場はしばらくこの場所になります。その意味でまずは足場作りの今回はミッションクリア。まさかこれから防戦するはずはない。五公演目で更に大きな劇場に打って出る事を期待。期待、です。
ちなみに挟み舞台なのでどちら側の席が良いか気になるでしょうが、どちらでも大丈夫です。見えない楽しさもあります。

ネタバレBOX

靴下が左右で違うのに気付いてツボりました。
マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

DULL-COLORED POP

新宿シアターモリエール(東京都)

2009/08/14 (金) ~ 2009/08/17 (月)公演終了

もう一度観たい。
最近あまり投稿していなかったので「初心者にオススメ」のマーク使用権が失われています。とはいえ、失っておらずとも使用していなかったですね。もう一度観たいのは再び楽しみたい気持ちからではなくて、今回だけではよく見えなかったからです。
もっと臓物を抉られる様などうしようもない不快感に煽られるのを期待していました。これまでのダルカラで耐性が出来ていた訳でもないだろうに、あまり引っ掛からずにスルっと観てしまった自分がいます。衣装や台詞の綺麗さから、放っておいても目と耳は「なんか綺麗なイメージ」で受け取る作品になっている。例え的外れな観点で表面上しか捉えていなくともそうそう誤った印象が持たれなそうな作品。深く深く裏を探ればいくらでもあれこれが見えてくるけど、見ようとしなければろくすっぽ見えない。隠されてなくても奥まってると探すのが下手な奴には見えない。その場合は「なんか綺麗なイメージ」という当たり障わりのない受け取られ方をしてしまうのはあまりにもリスキー。
役者はあちこちで名前を目にする方々ばかりで流石に粒揃い。各々は確かにこなすべくいい仕事をこなしつつ、遣り取りで生まれて相乗される「何か」の発熱がどうも個人的には足りなかった様な気も。『あの役者が!この役者が!』とウハウハ出来る方はあまり深く考えずにウハウハしたら良いと思います。
前から三列目でさえよく見えなかったので、本気で見たいなら是非とも開場と同時に飛び込んで最前列をゲットしてください。

ネタバレBOX

あ、見ますか?隠されているから見えないのにわざわざ見ますか。ここはネタバレBOXですけれど、特にネタには触れません。個人的な表立って記す事でもない事を記します。
「ピンと来なかった」。これが結局のところの今回の感想。団体初見だった「ベツレヘム精神病院」の時は「あぁ。こんなすげーのやる人がいるなら自分がやってもしょうがないや。演劇から足を洗おうかな」と以降の数日間を悩みました。それだけズシンと来た。でも今回はそういう波及効果は一切得られず。個人的に小劇場はテレビの深夜番組みたいなジャンルであって、金も人材も限られる中でどれだけ勝負出来るかを期待しています。そこからゴールデン進出を狙う訳だけど、いざその時に万人受けしようとしたり手の掛け方をミスしたら詰まらなくなる。どうも、今回はそれに近い印象。
役者は粒揃い。しかし各自で孤軍奮闘していて連携プレイがあまり決まらなかった感じ。かといって和が乱れていたかと言えば、上手い人ばかりだからなんだかんだでバランスは取れていた。しかしながらずっと一定の水準。溶け合う程にシンクロ率が上がりもしないし、急激な変化によるスリルもない。危なげが欲しかった。荒削りじゃなく洗練されたロックを聴いた感じ。というか、ライブじゃなくCDやダウンロードなんかの録音媒体で聴いた感じ。ヘッドホンなし。客観的。尚且つ舞台美術がアレで、音質も満足いかない録音レベルだった。音質というかミックス具合か。
あの台詞の扱い方は今回の役者達にとっても難しかったのだろうか。体に染みていなかった人が。歌う動機がなく歌うミュージカルの様に、語る動機がなく語っていた姿が見えた。これ、一番残念。
花とアスファルト

花とアスファルト

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2009/08/01 (土) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

間違ってなかった。
かつて青☆組の長編を観た際に「もっとディフォルメやファンタジーに偏るのもありかも」という趣旨の微妙なコメントした事がありますが、外れていなかったかなと。未見の方は『じゃあ今回はファンタジー色が強かったのか』と思うでしょうが、むしろハッキリとしたヒューマンドラマでした。大事なのは人と接する「クマ」の存在をよく見る事。このクマは誰の身の回りにも必ずいるはず。
老若男女の誰が観ても何かしら通じると思います。子供に観てもらいたいですね。とはいえ子供向けという意味ではありません。むしろ大人がその身に置き換えて実感する物が多くあるはず。自分自身がもう大人になってしまって後戻り出来ないので、まだ間に合う子供には今の内に観ておいて欲しく思うのです。
『普段仕事で疲れてるから休日に演劇なんか観て余計に疲れるのは嫌だ』と思ってる方にオススメします。これは疲れません。

ネタバレBOX

人と人のコミュニケーションに希望と絶望の両方を抱いている自分にとっては、とてつもないバッドエンドでした。出会うから別れがあり、お互いに育んだものだけ残して相手がいなくなるから喪失感がある。心を閉ざした人々は出会っている様で出会っていないし、相手と何も育んでいないから別れても喪失感がない。クマはあの後きっと言葉を忘れて、いずれは喋れなくなる気がしました。森で幸せに暮らせば街で人と暮らした事も過去として薄れていく。経験談ですが、久々に実家に戻ったら飼っていた犬が老齢で自分を忘れたらしく吠えられた事があります。しばらく撫でていたら尻尾を振ったけど思い出してくれたのかどうかは分かりませんでした。初めて会ったけど優しくしてくれる人、と思われていたのかもしれないし。クマはいつまで鈴木さんの温もりを覚えていられるのかな。
それとは別に、都会での生活に夢やぶれた人のIターンを重ねてみたりも。こちらの場合は下手に覚えているからこそ捨てきれずに新たな生活へ移行出来ないもので。クマが森でちゃんとやっていけるのかが心配になります。
主婦が三人になるところ。初めはダルカラの「15分しかないの」みたいに見えたけど、意図はきっと別物。「あの妻は夫の三倍の勢いがあるのか」って感じたので、それで良かったはず。
少年少女

少年少女

範宙遊泳

神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)

2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

はじめまして。
ちょくちょくと団体名は目にしていました。前回公演の「透明ジュビ子黙殺事件」のコメントを見る限りではまだちょっと力不足な団体なのかな?と思っていたけど、いやいやそんな事はなく。やりたい形をしっかり具現化している潔い作品を見せてくれました。演出や脚本が全く目新しい手法という訳ではないものの、選んだ挑み方で着実に波に乗せる方法を知っている様でした。いずれは亜流に発展するやも。今後の伸びしろに期待。
欲を言えばもっと広くて照明と音響の設備が更に良い劇場で観たかった。目でも耳でも感覚でも楽しめる作風なので。全く同じ演出でも王子とかアゴラでやったらちょっとお洒落さが上がった気がします。

ネタバレBOX

良い役者が多かった。成長途中だったり開花前の人もいますが、そういう人は早めに見ておきたい。気になった役者は大橋一輝さん、色川奈津子さん、横山明日音さん。
主人公が薄味に感じる人もいるかもしれません。他の濃い登場人物達からするとまだ普通に見えるキャラクターなので印象が薄く、中盤辺りで挿話な部分が面白くなって来ると余計に存在が消えていきました。自分も主人公がしばらく場を空けて戻って来た時に「そういえばコイツいたな」と思えてしまったので。役者ではなく脚本の上で気になった部分です。
花のゆりかご、星の雨

花のゆりかご、星の雨

時間堂

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/06/02 (火) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

おかえりなさい。いってらっしゃい。
久々の本公演。「お帰りなさい」だけでは同じ場所に戻っていますので、「行ってらっしゃい」も。
食べ物で例えるとお粥ですね。看病する時に作ってあげる、食べる相手を思いやって作ったお粥。お腹と心に優しい。あえて言えば、濃い味付けや辛味が好きな人にはアッサリ過ぎに感じるかもしれない。余裕を持ってよく味わって欲しいです。
前回公演「三人姉妹」と通ずる部分が多分にあったと思います。演技や音響のギミックなど。ルデコですから他の階の音を気にする方が出るかと。だからこそ、自分が聴くべき音響の発生源をしっかり感じてみてください。時間堂は台詞で説明するのではなく遣り取りで見せてくれますから、目と耳と心を楽にして構えず観れば劇中に入り込めるはず。

ネタバレBOX

タイトルは劇団員の名前に因んだ文字を組み合わせている様です。気付いて良かった。
芝居を見慣れていてもいなくても、『怪我をしていないのに痛い振りをしている』とか『悲しくないのに悲しい振りをしている』と思ってしまうと冷めるのです。つまり言いたいのは、リアル妊婦は半端じゃないという事。だって本物だもん。事実は存在感として最強。生まれる前に初舞台に乗った子は、生まれてからあの歌を聴いたら覚えていたりするのかな。
通過

通過

サンプル

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/05/15 (金) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

過程と家庭。
始まりと終わりが曖昧な物語。劇構成が曖昧なのではなく、人々の行いの始点と終点が混沌に満ちていて理由や結果が明確ではない。過程だけが描かれた物語。確かに日常の中で、初めは曖昧だった理由や結果が後から付いて来る時がある。その状況下での行動の是非は自分でも判断のしようがない。あの煮え切らない気持ちをずっと抱かせられる作品でした。
自分が観た回では隣の席に外国の方がいて、笑うツボが同じだったのが印象的でした。勿論サンプルですから爆笑ではなく苦笑に近いもの。爆笑するにはセンスが関わるでしょうが、苦笑は「人として」の部分が関わるかと。国が違ってもそこは一緒だったみたいですね。

ネタバレBOX

状況が以降していく事、誰かに覗き見られているという事。それらが「通過」を指していたのかな。常に役者の誰かが出入り口付近で舞台を俯瞰していたのが後者をより強く思わせました。
久夫が雄一に尻を叩かせるのを見て、「SMにKYが参加するとこんなに滑稽なるのか」とか。でも久夫はKYと言うよりは傲慢だったか。空気は読める上で無視してた感じがしたし。
ハッとした台詞は『あと戻り出来ないって時』と『好きにすればいいよ』。前者は洋子が返した通り、まだ戻れるつもりなんだなと。後者は信頼して自由を与える様でいて、実は束縛する所有欲がなく無関心という事でもあるのかと。別の場面で洋子が往年の常套句である『私は物じゃない』とも言ってるけど、少しくらいは所有されたいよね。
改・FAKE!

改・FAKE!

演劇カンパニー”東京の人”

タイニイアリス(東京都)

2009/05/03 (日) ~ 2009/05/06 (水)公演終了

北海道から東京へ。
過去を捨てて今を生きる人々の物語。物語というよりは生活や日常のほうが正しいかもしれない。その日々は勝ち得た誰にも縛られない自由ではなく、負け得た誰にも相手にされない孤独。のはずが、そこにもそこなりのコミュニティは存在する。新参者が現れた事で遣り取りは豊かになっていくが、関係が築かれていけば過去も暴かれていく…。
公開リハの時点では稽古が足りなかったのか、まだ役者に伸びしろがありそうにも見えたり。楽日にも行けたら良かったなぁ。
SKグループは一度しか観ていませんが、これもSK演目からの再演だったみたいですね。傷や痛みを伴うプロセスを経て最後は「どの人物もそれぞれに良い人だったんだな」と思える作風は共通。熱さより暖かさが好きな方にはオススメ。

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