byassistの観てきた!クチコミ一覧

521-540件 / 841件中
『川辺市子のために』『川辺月子のために』

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

チーズtheater

サンモールスタジオ(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/23 (木)

23日ソワレ『川辺月子のために』(1時間半)を拝見。

ネタバレBOX

川辺なつみは、情夫である小泉の娘ツキコが難病で外出することさえままならぬ身であり、さらに自分の末娘・月子と同じ1990年生まれであることを利用して、小泉に次のような提案を持ちかける。

男所帯で介護に苦労していた小泉から、なつみがツキコを引き取り、養育する

その代わり、同い歳の月子を小泉に引き取らせ、以後、「小泉ツキコ」として育ててもらう

「離婚後300日問題」が原因で無戸籍だった市子は、空席となった、妹の「川辺月子」の戸籍で生きていく

結果、難病持ちの「小泉ツキコ」だった少女は、戸籍上、存在しない人間となるが、今よりも行き届いた介護を施されることになるだろう

なつみと小泉の間では納得のいくアイデアだったのだろうが、見ての通り、無理に無理を重ねた戸籍交換は、なつみと二人の娘(市子・月子)、小泉とその娘・ツキコに、次々と不幸を呼び寄せることとなる…

時系列的に先行する『川辺市子のために』の台本を読んだ上で、キーパースンの3人の「姉妹」について整理してみた今でもまだ、頭の中がパニック状態ですw
ですので、ワタシのように、『川辺月子のために』から観た観客だと、最終的には充足感は得られるでしょうが、序盤での混乱は避けられないと思われます。
団体さんには、事前に『川辺市子のために』 を先に観て頂くようアナウンスするか、当日パンフに(理解の一助として)3人それぞれの人生の歩みを記した「年表」を添付すべきだったのでは?と強く感じました。

でっ、上演中は、人間関係の把握に注力したためか、感情的には割と平静でいられたんですが、劇場からの帰路、近隣で開かれていた盆踊りの灯りに集う家族連れの賑わいを耳にした途端、フィクションの世界の住人である月子たちへの思いがグッと押し寄せてきました。ごく普通の家庭を築きたいという、ささやかな夢も空しく、姉妹を襲った不幸の連鎖に、怒りと哀しみが抑えられませんでした。

役者陣に関しては、川辺姉妹役の佐藤睦さん(妹役)・大浦千佳さん(姉役)の熱演に加え、当初は全くの他人事だった「無戸籍」の問題を、次第に我が事のように取り組むようになった週刊誌の編集部員を丁寧に演じておられた綾乃彩さんのお三方が、強く印象に残りました。

最後に配役について記しておく。
川辺月子(妹。本作『川辺月子のために』のヒロイン)
無戸籍者支援の会・アカシでは「川辺市子」と名乗って暮らしていた。
…佐藤睦さん
川辺市子(姉。(『川辺市子のために』 のヒロイン)
小泉ツキコ、小泉正雄を密かに殺害後、失踪。
後に、自分のストーカだった北秀和と共に、アカシにいた「川辺市子(実は月子)」に連絡を取ってくる
…大浦千佳さん
川辺なつみ(市子・月子の母親)…田山由起さん

小泉正雄(なつみの情夫)…森本のぶさん
小泉ツキコ(小泉の娘。福山型筋ジストロフィーで寝たきりに)…佐藤睦さん(二役)

井出陽子(無戸籍者支援の会・証(アカシ)代表)…熊谷弥香(みか)さん
葛城正枝(アカシ・副代表)…松田文香さん
重松雪(アカシに住む無戸籍者)…小篠恵奈さん
松山有紗(アカシを退所した元・無戸籍者)…高橋明日香さん
熊田百子(アカシを退所した元・無戸籍者。月子の親友)…平井里奈さん

高木曜(あき。週刊誌の編集部員)…綾乃彩さん
後藤裕也(事件ライター、曜の恋人)…熊野晋也さん

北秀和(高校時代からの市子のストーカー)…アベラヒデノブさん

声の出演(映像)…菊池豪さん
二代目なっちゃんの愛人。

二代目なっちゃんの愛人。

なかないで、毒きのこちゃん

OFF OFFシアター(東京都)

2018/08/21 (火) ~ 2018/08/30 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/21 (火)

公演終了時まで内容には触れないでとのペーパーが配られていたので、マジかシャレかはさておき、一応、ペーパーの指示を尊重して、21日ソワレの☆だけつけておきます。

ナイゲン(2018年版)

ナイゲン(2018年版)

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/08/10 (金) ~ 2018/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

19日14時開演回でリピート観劇。
ちょうど1週間前に観たときより、演技陣、特に若い男優さん達の肩のリキミが抜け、良い塩梅に練れてきたと感じた。
でっ、座る位置を変えたので、前回、背中しか見れなかった、3148役・吉原桃香さんの表情の移り変わりを拝見できたことが一番の収穫かな。

ネタバレBOX

ところで、12日に観た際に☆4つで、今回、☆5つに評価を上げた理由。

グルメ漫画『美味しんぼ』で、いくらパテに上等な牛肉を使っても、それを受け止めるバンズの質が弱ければ、ハンバーガーという商品として成り立たない、というエピソードがあった。
でっ、これを『ナイゲン』に置き換えると、私見だが、12日に拝見した舞台では、「どさまわり」役・小太刀賢さんの熱演に、一生懸命演じているとはいえ、若手の、特に男優陣の演技の質が追い付いて来ず、3年生vs下級生ではなく、熱血青春教師vs生徒ほどの差を感じてしまい、「生徒間の自治」にはそぐわなく思われた。

しかしながら、今回は、「バンズ」の受け止める力量が上がり、「パテ」が悪目立ちしなくなった。バランスの取れた『ナイゲン』、さらに一段上の舞台に昇華したと思う。
パイレーツ・オブ・トレビアン2

パイレーツ・オブ・トレビアン2

ノーコンタクツ

萬劇場(東京都)

2018/08/16 (木) ~ 2018/08/19 (日)公演終了

満足度★★★

以前、『Y.M.C.A~八巻モーターチアリーディングアクターズ』という作品で好演だった、茗原直人(みょうはら・なおと) さんが主演とのことで、16日ソワレ(1時間45分)、初日の舞台を拝見。

パロディなタイトルで内容は推して知るべしですが、出演者一同、舞台狭しと駆け回り、ベタなギャグ連発の、グイグイ押し出してくる1時間45分。肩の凝らない海洋冒険ロマン…ならぬ、コメディに、客席、大いに沸いてました。

でっ、私自身はといえば、自分の嗜好から、一部のギャグには正直クドいと感じたものの、トータルでは愉快な時間を過ごせました。
老若男女、全ての客層にお勧めできる舞台かなぁと思います。

ネタバレBOX

記録用に配役を記しておきます。

ギップス…茗原直人さん(あれだけ動いても、セリフが途切れないのが凄い!)
付き人ジェイ(でも、実は…)…麻見拓斗さん
ロージー(海運会社の令嬢)…尾鷲知恵さん
占い師ティナ…水出浩子さん
ギップスの部下・ピンケル(16日)…小堀裕之さん
ギップスの部下・ラッティ…サリトさん
ギップスの部下?アンナ…あべあゆみさん
ギップスの部下・カットン…柳瀬翼さん(劇団宇宙キャンパスさんの方)
海軍・ナリントン提督…中澤隆範さん(黙っていれば渋い二枚目)
海軍・ボーニー船長…まさみさん
海軍・ビューティー大将…松原由賀さん(高らかに「オーホッホッホw」と笑う方)
海軍・エマ大将…古山彩美さん(タッパがあるので殺陣が映える!)
かってのギップスの部下・マークス…鈴木俊哉さん
ベイビージョーンズ…牧野和馬さん
マナナン・マクリルの羅針盤 2018

マナナン・マクリルの羅針盤 2018

劇団ショウダウン

シアター風姿花伝(東京都)

2018/08/11 (土) ~ 2018/08/16 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/15 (水)

『マナナン・マクリルの羅針盤』…東京では2度目のリバイバル公演となる「2014年 池袋演劇祭 大賞受賞作」、シアターグリーン BASE THEATERでの凱旋公演で初めて観て以来、3年ぶりに拝見(15日ソワレ)。

ネタバレBOX

劇団の看板女優・林遊眠(りん・ゆうみん)さんが多様な登場人物を全て演じ切る2時間(途中休憩有)の一人芝居、今宵は1日3公演の最終回ゆえか、開演直後、喉の具合が明らかに悪く、かなりハラハラさせられた。が、最初の戦闘シーン、林さんの額や首筋に汗が浮かんだ辺りから、ガラガラ声ながらもエンジンがかかり出し、結局は最後まで無事完走。今回もまた、舞台上に無数の人物が実在するような錯覚にとらわれる、3D冒険活劇、堪能させてもらった。さすがは林遊眠!といったところか。

ただ、公演上…というか興行的にやむを得ない事情があるのだろうが、まるで一人のピッチャーに甲子園の第一試合から第三試合まで全試合とも完投させるような、今のままの起用法だと、林遊眠さんが潰れてしまいはせぬかと、劇場からの帰路、僭越ではあるが、危惧を抱いたことも付記しておく。

それにしても、ベストコンディションの林遊眠さんで聴きたかった・観たかったなぁ、『マナナン・マクリルの羅針盤 』!
ナイゲン(2018年版)

ナイゲン(2018年版)

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/08/10 (金) ~ 2018/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/12 (日)

12日14時回(約2時間)を拝見。

ネタバレBOX

『時をかける稽古場』『紅白旗合戦』…と観てきて、その面白さ・内容の充実度は体験済みの冨坂友さんの作品ながら、あまりの評判の良さから(生来の天邪鬼ぶりを発揮してw)かえって敬遠しがちだった『ナイゲン』。今回のキャスティングの中に、過日、同じ会場で上演された『ホテル・ミラクル6』の出演者・上岡実来さんの名前を見つけたことで、背中を押されて?漸く観劇が叶いました。

でっ、いざ拝見させてもらうと…内容は、実は結構鋭い問題提起である題材を、笑いのオブラードで包み込んだ、ハイスクール版『12人の怒れる男』。
職員会議側の提案(命令)を逆手に取って、したたかな戦略を打ち出すまでの高校生たちの「臨機応変ぶり」と、最後に同意はしたものの、会議の結論を決して潔しとは思っていない、理想主義者「どさまわり」の「不器用なこだわり」…他にも様々な魅力を内含した『ナイゲン』ですが、この鮮やかな対比こそが、戯曲の要諦かなぁと思われました。
過去、細かな改変はあったかもしれませんが、本作品が幾度も再演を重ねて来れた理由、充分、合点がいきました。

役者陣。
登場人物とほぼ等身大の若いキャストたちが演じる会議の様子に、ワタシの目では、役柄と役者の境目があいまいになってしまう方が続出!
もちろん、百戦錬磨の役者たちで固めても、深みのある『ナイゲン』が上演できるのでしょうけど、この「役柄と共に役者も成長していく」戯曲には、やはり若い人たちが演じるのが似つかわしいかなぁ~っと。

最後に出演者個々に対する雑感をばっ!

【文化祭実行委員会(全員、2年生)】
議長…菊池泰生さん(意見対立のはざまで右往左往するさまを熱演。今回の座組イチバンの「がんばってましたで賞」)
文化副委員長…川口知夏さん(「海のYeah!!」との関係がバレてから、イキイキしてきたキャラを好演)
文化書記…上岡実来さん(『ホテル・ミラクル6』組。同じく、彼氏である「海のYeah!!」の浮気がバレてからの、醸し出される「姉御」感がいい)
監査…まりな。さん(『ホテル・ミラクル6』組。終始冷静さを保つも、時折みせる「素」を好演)

【1年生(☜自分の席から真ん前なので、背中を観ることが多かったチーム)】
Ⅰは地球を救う…山越大輔さん(突っ込まれるとすぐにテンションが上がる、いかにも1年生らしい、等身大の演技)
3148…吉原桃香さん(『ホテル・ミラクル6』組。当初メソメソしていた「3148」が、最後は来年の『ナイゲン』が愉しみだと「アイスクリースマス」に語れるほど、短時間で成長していく過程を、誠実な演技で好演)
おばか屋敷…高橋改さん(役柄の「こんなヤツ、いる・いる!」感をよく体現されていた)

【2年生】
海のYeah!!…安藤悠馬さん(同じく、役柄の「こんなヤツ、いる・いる!」感を強くて打ち出した、安藤さんの演技には好感を抱いた)
アイスクリースマス…野村亮太さん(『トイレの花子さんの帰宅』の「ぼく」から一転、アガリスクエンターテイメントの淺越岳人さんが憑依したような人格に! 若手中心の座組のけん引役の一人か?)
ハワイ庵…早舩聖さん(若干イラッとさせつつもw、場を和ませるお茶目なキャラの所作にどこかで見覚えが…あとで調べたら『デトックス述懐』でお見かけした方だった)

【3年生】
花鳥風月…秋元潤さん(『ホテル・ミラクル6』組。いろいろと複雑な想いを胸に込めたキャラを好演)
道祖神…あだちせりさん(役柄の性格もあるが、高校、というよりも、大学の文化系サークルで生息している「女史」のイメージかなぁw)
どさまわり…小太刀賢さん(たすいちさんで幾度もお見かけする役者さんは、間違いなく今回の座組の「座長」。陰に日向に若手の役者さんたちをグイグイ引っ張っているだろう意気込みが強く感じ取れた…ということで、3年生というよりも若手の熱血青春教師?!)

【追記】
満足度の★、5つでもよかったんですが、あえて4つにしました。
なぜなら、今の時点で★5つをつけると、回を重ねて、まずます伸びるであろう、若い座組の千穐楽、★6つが機能上つけられないんでぇw
『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2018/08/10 (金) ~ 2018/08/15 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/08/10 (金)

10日ソワレ、『首無し乙女は万事快調と笑う』(130分)を拝見。

ネタバレBOX

以前から注目している、直球ど真ん中!の美人演技派女優・廣瀬響乃さんがご出演

NPO法人さん(☜一応、断わっときますが、役者さんの名前デス)、野口オリジナルさん、といった他団体の舞台でよく見かける役者さんたちの、ホームでの姿を見てみたい

そして何より、「頭部だけで生きている、しかし、ごく普通に若い女性として感情を有する」エマをヒロインに据えるという着想のユニークさ

に惹かれて、観に行った本作でしたが、その奇抜で、ある意味、猟奇的な設定にも関わらず、冒頭からしばらくは「笑い」で客席を和ませ、だが、次第に、今日的な問題でもある、人種対立(本作では、アーリア人=ドイツ人vsユダヤ人)への鋭い視点を踏まえた人間ドラマへと重心が移っていきます。

とはいえ、あまりにも深刻なテーマで観客を過度に委縮させることもなく、ユーモアを交えながらの息もつかせぬ展開に、130分の上演時間中、客席の舞台への集中力は、最後まで途切れることがなかったように見受けられました。
本作、2012年初演の舞台に手を加えての再演ということですが、脚本の完成度の高さには、唯々唸るばかりです。

さらには、主要キャストから脇を固める客演さん達に至るまで、気合と、エンタメ精神のみなぎった熱演の役者陣も合わせて、脚本良し・演出良し・役者良しと来れば、まだ早いかもしれませんが、今季、一、二を争うほどの演劇体験、させてもらったかもしれません。心底、凄い舞台でした。感謝です。

最後に配役を記しておきます。

エマ(本作のヒロイン。頭部だけで生かされている境遇にもかかわらず、常に周囲を和ませる明朗な性格の持ち主)
…小岩崎小恵(こいわさき・こめぐみ)さん(基本、表情だけの演技という難役を大熱演!)

オスカー(心ならずもエマの夫カミルを射殺した前非を悔いて、不遇の死を遂げた自身の恋人にもイメージが重なる、エマのために最善を尽くそうとする、ナチスの科学者)
…加藤慎吾さん

カミル(エマの夫。ユダヤ人ゆえに、亡命先のポーランドで軍に参加するも、ドイツ軍の捕虜に。そして…)
…野口オリジナルさん

リリー(オスカーの恋人。ユダヤ人にレイプされて精神が崩壊し、最期は自死)
…平山空(ひらやま・そら)さん

ハインツ(リリーの兄。妹を死に追いやったユダヤ人への憎悪から、ナチスドイツに身を投じて将校に)
…谷口賢志さん(熱演!)

マルコ(元脱走兵。処刑を免れるために、オスカーの手で兵器と一体化したナチスの改造兵士にされる)、ポーランド軍の兵士
…NPO法人さん

ウェルナー(元脱走兵。以下、同上)、ポーランド軍の兵士…大野清志さん

セバスチャン(元脱走兵。以下、同上)…吉田翔吾さん

アドルフ・ヒトラー、及び、ヒトラー本人が犯した数々の罪悪故に、良心の呵責に苛まれるヒトラーのクローン人間
…青地洋さん

アンネ・フランク(「灯台下暗し」でヒトラーの背後に身を潜めて生き延びるユダヤ人の少女)
…高橋ゆきさん

ダニエル(ナチスの参謀。学生時代からのオスカーの友人)…吹原幸太さん

アイーダ正田(ヒトラー総裁官邸の古参のメイド。後に、人間万能兵器に改造される)
…今井孝祐さん(本作品における道化役。好演!)

カーラ(ヒトラー総裁官邸の新参のメイド。アイーダと仲が悪い)…廣瀬響乃さん

ポーランド軍の兵士ユンゲ(カミル等、ナチスの捕虜の中で唯一生き残り、最期には同僚兵士たちの仇を取るべく、ハインツを射殺する)
…井上ほたてひもさん

ナチスドイツ親衛隊の男…横尾下下(よこお・しもしも)さん

【以下、映像出演】
ヨーゼフ・ゲッペルス(ナチスドイツの宣伝大臣)…渡辺裕太さん

勇気ある記者(記者会見の席で、ナチスに不利な質問をし、その場で射殺される)
…安楽信顕さん
涼風至る

涼風至る

Minami Produce

ギャラリーしあん(東京都)

2018/08/04 (土) ~ 2018/08/12 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/08/09 (木)

9日ソワレで 『蝉時雨編』(70分)を拝見。

ネタバレBOX

79年経った今でもその瑞々しさを失わない、太宰治の原作に、今日的な、若い女性の心と身体の揺らぎを盛り込んだ作品。

この『女生徒』、昨年9月、あさくさ劇亭での、佐藤武さん(劇団CHAN'T)のホンによる舞台を拝見していたので、アノ「自分の行動・実況中継」な一連のセリフは承知してはいたものの、昨夜は、ポップな劇伴&振付の効果か、初めて耳にしたような新鮮さをもって受け止められた。
さらには、オトナと少女、現実と空想、のはざまで沈んでは浮かび上がる「彼女(達)」の気持ちと、一時的にでも、シンクロしたような「錯覚」にも陥らせてもらった。

役者陣。
数年前の劇王東京で見かけた記憶のある岡本梨加さん以外は初見の、計5人の女優さん達が織りなす、賑やかでピュアな「日常世界」からは、一種の清涼感さえ伝わってきた。
そして、主演の双葉さんの清楚で、だが不安定な佇まいが、2018年・夏の『女生徒』に相応しいものとして、強く印象に残った。
枳殻の容

枳殻の容

TOKYOハンバーグ

小劇場 楽園(東京都)

2018/08/02 (木) ~ 2018/08/05 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/08/03 (金)

『枳殻の容(からたちのかたち)』、3日ソワレを拝見(80分)。

ネタバレBOX

『KUDAN』『纏わるひとびと』『しゃぼん玉の欠片を眺めて』『夜明け前、私たちは立ち上がる』とTOKYOハンバーグさんの舞台を観続けていくうちに、永田涼香さんという、演劇への真っ直ぐな想いが伝わってくる役者さんにすっかり魅入られてしまったようです。
でっ、そんな彼女の、初の「ひとり芝居」ということで、作品の背景等、全くの白紙のまま、80分の舞台に臨みました。

内容は、サガン鳥栖などで活躍されるも、平滑筋肉腫により早逝された、故・関本恒一氏の半生を、共に時を過ごされた女性の視点から描いたもの。
永田さん演じる、ごく普通の、だが、ひたむきな想いを寄せる女性と、(舞台上には存在しないはずの)関本氏との、出会いから入院後までの会話の積み重ね…心に響きました。

さらに、当パンによれば、関本氏は、TOKYOハンバーグ主宰の大西弘記さんのご友人だったとのこと。永田さんのセリフを通して伝わってくる関本氏の人となりに、単なる取材では得られないであろう「温もり」を感じたのも、まさにリアルな人間関係の存在があったからかと納得しました。

さて、本公演は「ひとり芝居」ということでしたが、実は有力な「共演者」が、あと2人います。
1人目は照明。登場人物の心理や状況の変化を視覚的に表現する手段、という以上に、細かな心配りで、永田さんの演技を後押ししていたように感じられました。
そして、もう一人…会場となった小劇場楽園で知るヒトぞ知る、観客の視線を遮ることで有名な、アノ大支柱が、私の経験では初めて、墓標(あるいは仏壇?)として、舞台美術の役割を果たした場面を目撃し、観劇ならぬ感激!しましたとさ♪
ねてもさめても

ねてもさめても

ゆるふ酒

スタジオ空洞(東京都)

2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/29 (日)

29日ソワレを拝見。

オムニバスのコント3本の後、LGBT(性的少数者)をテーマにした短編から成る計90分の構成。
当パン記載の文章「作家より」と、コントでクスクス笑わせつつも張られた伏線のおかげで、テーマの重さにもかかわらず、シリアス過ぎず・程々のスタンスで短編を観ることができた。予想以上に、観に行って良かったと感じた。

【追記】
出演者の一人、梁瀬えみさん。平成最後の夏に、昭和のギャグマンガで頻出の語尾「○○でヤンす」がこれほどハマるヒトに出逢えるとは!

草苅事件

草苅事件

しむじゃっく

高田馬場ラビネスト(東京都)

2018/07/21 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/28 (土)

21日ソワレの1週間後、28日ソワレを観劇。

ネタバレBOX

最初の観劇時に購入した台本を拝読後、さらに、元ネタであるソーカル事件(NY大・物理学教授のアラン・ソーカルが、単なる権威付けに数学・科学用語を出鱈目に用いていた当時の評論家を皮肉る目的で、一見尤もらしいが実は無価値な内容の論文『境界を侵犯すること…』を専門誌に投稿、掲載された事件)、芥川龍之介の『藪の中』を意識した上で、リピート観劇させてもらった。

そこで改めて感じた諸々の事柄。

まず第一に、清田洞爺文学賞の関係者が、『藪の中』的相互矛盾な、あるいは「我田引水」な発言を繰り出す中、正体不明の占い師、先輩に無理やり?連れてこられた後輩編集者、作家志望の文学青年、そして、ビルの清掃のおじさんと、欺瞞を暴き・真理を語ったのが、悉く同文学賞の部外者だった点。
これって、現状の演劇言論界に対する作者からの痛烈な(あるいは、痛快な)当てこすりにも思えて、観劇中、ニヤニヤが止まらなかった。

次に感じたのが、好評は勿論だが、(通常、殆ど目にすることもない)不評のツイートでさえ、TL上で少なからず見受けられた点。
観終わった者に無言スルーを許さない、何かを語らずにはいられない「魔力」の備わった作品に出逢えたことは幸甚に絶えないなぁと。

最後に役者陣。これまでになかった役柄を熱演の杏奈さんを初めとして、丸本陽子さん、長友美聡さん、渡邉守さんといった、以前に出演舞台を拝見したことのある役者さんもだが、今回、一番印象に残ったのが、平田役・ふくしまけんたさん。21日ソワレでは噛み噛みで、ミスキャストではないか?とも思われたが、1週間後の今宵、抜群の説得力&観客大ウケの演技を見せてもらい、心底、驚かされた…と同時に、我が不明に恥じ入るばかり、だなぁ(大汗)!
かざぐるま

かざぐるま

ワイルドバンチ演劇団

中野スタジオあくとれ(東京都)

2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★

まついゆかさん出演の舞台、27日ソワレで拝見させてもらった。

ネタバレBOX

そのまついさんを含めた出演者全員が、共通のテーマで貫かれた短編3本を、こぶしをギュッと握り締め、両の腕をビュンビュン振り回しながら駆け抜けていった印象の120分。昔の、つかこうへい芝居を観ているような感覚に囚われた。
また、第2話の問題提起も含め、色々と考えさせられもした作品だった。
D3

D3

劇団ORIGINAL COLOR

新宿眼科画廊(東京都)

2018/07/21 (土) ~ 2018/07/30 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/24 (火)

24日16時半からのC trackを拝見。
海に近い街のカフェを舞台にした「静謐劇」といった趣きの1時間の会話劇。
あくまでも私だけの受け止め方かもしれないが、ただ、その場に漂っているだけの人間関係の希薄さ・空虚さが感じ取れた。
あと、にも関わらず…なのだが、ラスト近くの、店の人たちと常連客とのやりとりが、いきなり個人的なツボにハマってしまい、笑いを堪えるのに苦労した。

草苅事件

草苅事件

しむじゃっく

高田馬場ラビネスト(東京都)

2018/07/21 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/21 (土)

21日ソワレ(130分)を拝見。

【22日・追記】
杏奈さん演じる「渡会理紗」、当パンは誤りで、正解は台本記載の「渡会理砂」とのことです。

ネタバレBOX

まだ公演が始まったばかりなので、詳細は伏せるが、時折、役者さん達が演じる人物の中に、舞台上のご本人を差し置いて「フジタタイセイ」が顔を覗かせているように、自分の目には映った。
とりわけ、渡会理砂(演・杏奈さん)が五味川龍太郎(木内コギトさん)を詰問する場面、横山征矢(加糖熱量さん)が憤慨して叫び続ける場面で、「フジタタイセイ」を強く意識させられた。

なお、こんなことをド素人が口にするのも厚かましくてはばかられるが、この『草苅事件』という舞台 、私の好物のラーメンにたとえていうならば、21日はまだ打ったばかりの生麺、これから日数をかけて寝かせて(演じて)いくうちに、どんどん練れていくんじゃないかなぁと。幸い、29日(日)までの公演なので、日にちを置いて、もう一度、観に行くことにした。

最後に配役について記しておく。
渡会治子(毛総文芸振興会会長。清田洞爺の孫)…角田佳代(つのだ・かよ)さん
渡会理砂(清田洞爺文学賞選考委員の天才肌の作家。治子の娘)…杏奈さん
古淵健(選考委員長。元パンクロッカーで今は常識人の作家)…渡邉守さん
南方三郎(選考委員。反権力を標榜する作家・文芸評論家)…岩井正宣さん
吾妻大介(選考委員。屁理屈?を駆使する評論家・コラムニスト)…淺越岳人さん
黒澤(文学賞運営委員の毛総新聞社社員)…フジタタイセイさん
松本清子(黒澤の部下。五味川龍太郎の連載担当。実は田瓶日報・津島記者が彼氏)
…長友美聡さん
毛総新聞社ビル清掃員…杉山純じさん
瓦山鈴女(かわらやま・すずめ。草苅亜嵐の代理人を称する占い師。シニカルな性格)
…丸本陽子さん
横山征矢(文学賞候補、調査・取材重視の緻密な作風の作家)…加糖熱量さん
川上真理子(文学賞候補、「女性らしさ」の押し付けへの反発が原動力の作家)
…トヨザワトモコさん
五味川龍太郎(文学賞候補、破滅型の無頼派作家。渡会理砂と何か因縁が…)
…木内コギトさん
津島修平(田瓶日報記者。実は松本清子運営委員の彼氏)…福元孝盛さん
小田島哲夫(総合通信記者。実は樋口一代の元・夫)…天野きょうじさん
樋口一代(地元の出版社の編集者。仕事上、女性であることで色々と苦労してきた)
…榊アユコさん
原田美嘉(樋口の後輩編集者。天衣無縫な性格故に「王様は裸だ!」的真実を喝破する)
…依田玲奈さん
平田(津島記者の大学?の後輩にあたる、作家志望の青年)…ふくしまけんたさん
#21「コミュニティ」

#21「コミュニティ」

ソラリネ。

明石スタジオ(東京都)

2018/07/19 (木) ~ 2018/07/22 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/19 (木)

19日ソワレ、鈴チームを拝見(90分)。

ネタバレBOX

ある侵入者を触媒に、シェアハウスの住人とその関係者、さらには侵入者自身でさえ、内面の「汚さと醜さ」を浮き彫りにされていく展開は、上演中、神経を逆なでさせられる思いがして、正直、観ているのが辛かった。
あと、投げっ放しジャーマンなラストには賛否が分かれるかも。

登場人物。個人的には既視感漂う(ないしは作り過ぎ?な)造形の人々の中で、「柳川貴子」(演・都倉有加さん~鈴チーム)の性格設定がとてもユニークに感じられた。もし出来得るならば、この「柳川貴子」の視点から再構築した『コミュニティ2』も観てみたいと思った。
『コントロール・アン・ア・アン・アン・コントロール』『ギャル』『猫の呪い』『朝子さんと夕子さん』

『コントロール・アン・ア・アン・アン・コントロール』『ギャル』『猫の呪い』『朝子さんと夕子さん』

遠吠え

SCOOL(東京都)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★

16日13時の回を拝見(65分)。
4つの演目を冒頭の15分だけ上演し、どの作品を観たいかを観客に投票させる(各人3票、複数投票可)趣向。

ネタバレBOX

『コントロール・アン・ア・アン・アン・コントロール』
田村(町工場の工員。大人しい)…竹内蓮さん
大堤(町工場の工員。横柄)…二宮清隆さん
瑠璃(工場経営者の娘。大場に何か弱みを握られている?)…鈴木茉唯さん
上演中、隣りに座っていた某女優氏が指の関節を鳴らす程? 観客の神経を苛立たせるストーリー。
後の展開がわからぬまま、投票で選ぶには、あまりに不利なテイスト故、演じ手の皆さんが気の毒に思われた。

『ギャル』
鈴本(ノーメイクの地味な高校三年生)…苺田みるく先生さん
にいちゃん(ヤマンバギャルメイクの高校三年生)…さんなぎさん
姫子(ヤマンバギャルメイクの高校三年生。にいちゃんLOVE♡)…田中渚さん
ジェイ(パンク少女メイクの高校三年生)…永田佑衣さん
ギャル達のワイワイガヤガヤが笑いを誘う作品。
恐らく、この作品がイチバン票を集めるだろうと思われた。

『猫の呪い』
彼女…梢栄さん
友人(職業・トリマー)…佑木つぐみさん
彼氏…二宮清隆さん(日替わりキャスト)
行動が猫になってしまった彼氏をどうにかするため、友人のトリマーを家に呼んではみたものの…というストーリー。
梢栄さんと佑木さん、お二人のやり取りがとても見応え・聴き応えがあって、個人的には4演目中、最も好みな作品。

『朝子さんと夕子さん』
朝子さん(活発な妹)…佐藤すみ花さん
夕子さん(大人しい姉。朝子と母親が違う?)…二ツ森恵美さん
中途半端に歳の離れた姉妹が会話の最中、急に屋敷(レベルの家?)を抜け出すまでのストーリー。
4演目中、個人的には最も「その先」が知りたくなった作品。
プロポーズ難民

プロポーズ難民

ピヨピヨレボリューション

吉祥寺シアター(東京都)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/22 (日)公演終了

満足度★★★★

単独では、SPACE 雑遊での『土砂降りぶりっこ』以来
他団体との共同公演では、絵空箱での『あるハロウィンの物語』以来となる
ピヨピヨレボリューションさんの公演、15日マチネの舞台(2時間)を観て来ました。

ネタバレBOX

冒頭での「かぐや姫の誕生」的エピソードが、まさか「未来からの花嫁探し」にまでつながるとは予想だにしていませんでした。作者の発想の豊かさに素直に脱帽です。
婚活パーティーを通しての参加者たちの群像劇としても充分に見応えはありましたが、さらに唄とダンスが加わるのですから、観客が愉しめない訳はありません。
素敵な2時間を過ごせました。

役者陣。
キュートな表情が魅力的な、主演の東理紗さん
吉祥寺シアター演劇部さん『ハルマチスミレ』以来、ほぼ1年ぶりに拝見した中野亜美さん
新宿コントレックスVol.19ぶり?の福冨宝さん
そして、ピヨピヨのメンバーだったっけ?と錯覚に陥った程、舞台に馴染んでいた、演劇集団キャラメルボックスの渡邊安理さん
が個人的には印象に残りました。
城

劇団普通

新宿眼科画廊(東京都)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/17 (火)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/14 (土)

13、14両日のソワレ(90分)を拝見。

ネタバレBOX

初見の13日ソワレ。事前知識ゼロで臨んだのだが、観ているうちに、(複数の役柄を担当する)役者さんが、今、誰を演じているのか、把握できなくなり、頭の中が大混乱に陥ったまま…終演。
私の理解が手が合う・合わない以前のレベルだったので、帰宅後、『城』の登場人物達の相関を確認し、個々の役者さんの配役を頭に入れたうえで、翌14日のソワレでリターンマッチ。すると、今度は実にスムーズに、最後までストーリーの展開についていくことができた。
そこで、2夜連続で観たうえでの意見なのだが、思うに、例えば、松本みゆきさん演じる「宿屋の女将ガルディーナ」が、測量士Kのあるセリフをきっかけに、いきなり「Kの恋人フリーダ」に替わったり等々、(私だけがそう感じたかもしれないが)唐突な役柄のスイッチングが、登場人物の把握を難しくした原因ではないかと考える。
個々の役柄の人間関係を知ったうえで改めて、当日配布された『城』人物イラスト相関図に目を通すと、実によく練られたものだとわかる。が、やはり事前知識なしで90分の舞台に臨むには、この相関図、複雑過ぎる航海図なのかもしれない。

最後に、今回、把握に苦労した?配役について記しておく。
測量士K…横手慎太郎さん
Kの恋人フリーダ、橋屋の女将ガルディーナ、バルナバスの姉アマーリア
…松本みゆきさん(昔の女優さんだが、演じる雰囲気が宇津宮雅代さんに似ていた)
旅館・橋屋の主人…澤原剛生さん
バルナバスの姉オルガ、貴紳荘の女中ぺーピー
…古田希美恵さん(『ツヤマジケン』の「松永タエ」さんだと気づくのに時間がかかった)
クラムの使者バルナバス、城の執事の息子シュワルツァー…中田麦平さん
Kの助手イェレミーアス…家田三成さん
Kの助手アルトゥール、男性教師…梅田優作さん
女教師ギーザ…石黒麻衣さん
第十七夜『銀河鉄道の夜 -露-』

第十七夜『銀河鉄道の夜 -露-』

有末剛 緊縛夜話

ザムザ阿佐谷(東京都)

2018/07/07 (土) ~ 2018/07/09 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/08 (日)

8日ソワレを拝見(110分)。

ネタバレBOX

絵画・版画にペインティングのライブ、ナマ演奏にナマの唄声、(今回はやや控え目?な)緊縛シーン、そして何よりも「芝居」していた(とりわけ、賢治役・大島朋恵さんが印象深い!)、総合舞台芸術としての演劇を堪能してきました。

ただ、今回は芝居により重心を置いた?構成だったせいか、他の方も書かれている通り、「ココで緊縛シーンって必要なの?」的違和感を覚えたことも付記しておきます。

さらに、もう一点。(もちろん意図とか狙いはあるのだろうけど)どうして配役をシャッフルするのかな?と。
配役は固定させた方が、上演を重ねるにつれて、個々の役柄の演技がもっと・もっと深化していっただろうになぁ、と素人アタマで考えてしまうほど、今回の緊縛夜話は「演劇」していたからなんでしょうね。
トイレの花子さんの帰宅

トイレの花子さんの帰宅

やまだのむら

イズモギャラリー(東京都)

2018/07/07 (土) ~ 2018/07/11 (水)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/10 (火)

10日ソワレ(65分)を拝見。

ネタバレBOX

「凄まじい老け顔の大学生」「謎の巨大生物」「人間化したサバンナモンキー」…といった、(作・演の)國吉ワールドにおけるユニークな先人?達と比べると、かなり地味目な、今回の「地縛霊」&「ストーカー女(後に幽霊化)」ペア。そして、小劇場演劇の役者の3人で過ごす、半ば強制的なルームシェア生活を描いた65分。

饒舌なストーカー女「マルヤマ」(演・三澤さきさん)を通して、主人公の「ぼく」(野村亮太さん)の実態を浮かび上がらせていく手法、思わず唸ってしまう程の巧さです。
さらに、観ている側の神経を逆撫でする理不尽極まりない「マルヤマ」と、あまりにナイーブ過ぎて、観客からすれば、同じくイライラさせられる「ぼく」へのフラストレーションを緩和してくれる、キモ可愛い地縛霊「花子さん」(山田健太郎さん)の配置も見事です。

さて、三人三様、不器用で一方通行な恋のベクトルのまま、先行きどうなることかと、途中から案じていましたが、ラストは、恐らく観ている者の誰もがホッコリするような、見事な着地。小説の神様といわれる志賀直哉ばりの、短編戯曲の女神様の至芸を目の当たりにした思いです。いや~、ホンマに凄いホンやなぁ!

このページのQRコードです。

拡大