MINoの観てきた!クチコミ一覧

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世界虚仮(セカイコケ)

世界虚仮(セカイコケ)

ゴツプロ!演劇部

小劇場 楽園(東京都)

2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/20 (月) 19:00

何をやりたいのかよくわからない。コメディとしては中途半端だし、コントならば笑いが足りない。事実役者がどれほど熱演しようが、客席からはわずかに笑い声が出るが、それも稀。
熱演と書いたが、実のところ段取り芝居に終始している。誰一人として身体の内から湧き上がる演技ではない。それは台詞を言っていない時の表情や目でわかる。小劇場演劇の恐ろしいところだ。

アンナ・カレーニナ

アンナ・カレーニナ

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2023/02/24 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/15 (水) 18:00

当初は2023年の公演として企画されていたものの、コロナ禍により中止され、3年ぶりの復活。宮沢りえの主演舞台なだけに期待も大きかったのだが、20分の休憩を含め3時間45分という長尺の舞台はどこか散漫な感じさえ与え、やや失望といったところ。

従来はアンナを中心とした三角関係をメインに描かれるものだったのを、今回英国から招かれた演出のフィリップ・ブリーンは新解釈として、不倫に走った末に虚飾に満ちた都会の貴族社会で死に追いやられるアンナと、農村で実直に生きて純愛の結果として幸せをつかむリョーヴィンとを対比的に描いたとのことだが、文学史上ではそれが定番の解釈でもあり、ただ長編小説の世界とは異なってそれを舞台上で表現するには無理があったのだろうか。むしろ二人のアンナ(ヒロインとその娘)と二人のアレクセイ(カレーニンとヴロンスキー)に焦点をあてた方が良くはなかったか。

最大の弱点は、なぜアンナが自殺にまで追い込まれていくのか、その心理の過程の描き方が丁寧さに欠けることだ。
終盤でのアンナが列車に飛び込んで自殺する場面も、そうと知っていない人には何を描いているのかよくわからなかったろう。
第一幕の最後での出産による全身血まみれのアンナの方の印象が強烈すぎて、第二幕がどことなく気が抜けた感が自殺の場面にまで続いてしまう。アンナの悲劇性が心に響いてこないのだ。

コウセイ

コウセイ

ラビット番長

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/26 (日) 13:00

千穐楽を観劇。全席自由席で受付開始は開演の45分前だというので、1時間前に劇場に行ったのだったが、既に6人ほどが並んでいた。さすが「今池袋で最も売れかけている劇団」(劇団説明文の一節)だけのことはある(笑)。

ラビット番長といえば将棋・介護・草野球が三本柱だが、昨年のグリーンフェスタではこれらとは異なる路線とは異なった作品を上演する予定だったのに、コロナで残念ながら公演中止に。昨秋の池袋演劇祭参加公演では将棋に戻ってしまったので、残念に思っていた。個人的には15年春の「白魔来る」のようなスプラッター気味のドロドロとした作品を観てみたいのだ。
ということもあって、今回の「コウセイ」は将棋・介護・草野球とは違ったものになりそうで期待していたのだった。

(以下、ネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

ストーリーは1949年(昭和24年)に発覚した岡田更生館事件をほぼなぞっている。
これは岡山県吉備郡岡田村(現:倉敷市真備町岡田)に存在した浮浪者収容施設・県立岡田更生館で起きた組織的な監禁・暴行傷害・殺人事件であり、施設収容者の一人(詩人を自称していた北川冬一郎)が脱走して毎日新聞大阪本社にリークしたことを契機に、同社社会部の記者であった大森実(懐かしい名前だ)と小西健吉が浮浪者に変装して施設に潜入取材した結果、社会的に知られることとなったものだ。
その後の調査で犠牲者は開設から2年余りで76名にものぼったが、館長や県職員らへの判決の罪状は業務上横領ないし私文書偽造であり、殺人・暴行は含まれていない(ここいらにも何かキナ臭い背景がありそうだが)。

劇中で登場人物が語る施設の内情はほぼ事実のままである。だが、ここに将棋を絡めてくるのがいかにもラビット番長らしい。
将棋の部分でモデルとなっているのは将棋史上初の三冠王となった升田幸三名人だろう。升田(劇中では増山)がGHQから名指しで呼び出され、数名の将官と将棋について議論したエピソードもその内容が伝えられている通りに(チェスに比べて将棋ははるかに民主主義的なゲームであり、レディファーストの精神にも適っている)再現されている。もっとも、前述のように北川がリークしたのは毎日新聞、升田とGHQを取り持ったのは朝日新聞なのだが、劇中では同じ新聞社になっている。
増山がいつも月を見ているのは、升田が戦地で食糧不足に悩みながらもライバルの木村義雄のことを思い出し「月が通信してくれるなら木村と将棋が指したい」と涙に暮れたというエピソードを反映したものだろう。

この更生館と将棋の2つの道が終盤で交差する点は実に見事なのだが、そこまでのほとんどがネットでも調べられる事実を単に並べただけという感じであり、その点がいまひとつ掘り下げが物足りない。チョコレートケーキやJACROWといった社会派といわれる劇団との違いをはっきりと感じさせる。
ただ収容者の最期の言葉「にいさん」が実は「2三と」だったというのはラビット番長の面目躍如。

増山の妻を演じた江崎真澄がここ数作、本当に良くなってきた。
またいつものラビット番長では登場しない悪役での野崎保も印象的だった。
幽霊塔と私と乱歩の話

幽霊塔と私と乱歩の話

木村美月の企画

小劇場 楽園(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/02 (木) 19:30

木村美月が好きな土地で好きな人と、好き勝手に演劇をする企画の第二弾だという。それにしても、なんと魅惑的なタイトルであることか。乱歩と「幽霊塔」、そこに私という存在が加味されているのだ。が、多少期待外れに終わった感は否めない。10年前のちょっと奇妙な話という非日常感はあるものの、展開にメリハリが欠けていてハラハラドキドキしない。
まあ、木村美月がカワイ~から許しちゃうけど(笑)。
あと劇場だが、下北沢の楽園よりは池袋のGEKIBAの方が立教大学のすぐ近くなので、はるかに良かったのでは…。好きな土地が「下北沢」なのかもしれないが、そういうロケーションの選択も大切だと思う。殊に「ちょっと下北ふらふらして帰ろうかって道すがら、幽霊塔があるような気がしてくる、そんな帰り道をお渡ししたいです。」とまで書いているのだから。

桜姫東文章

桜姫東文章

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/02/05 (日) 13:00

途中休憩15分を含め上演時間3時間15分。
中央通路のすぐ後ろのほぼセンターという絶好の席での鑑賞。

鶴屋南北作で1817年に初演後は長らく再演されなかったものの、昭和2年(1927年)初代中村吉右衛門が川尻清譚の脚色により復活上演し、戦後も六代目中村歌右衛門、四代目中村雀右衛門、五代目坂東玉三郎らによってたびたび演じられる人気演目となっているが、殊に玉三郎と十五代目片岡仁左衛門(当時・片岡孝夫)による上演は「孝玉(たかたま)コンビ」と呼ばれて大人気になったことが記憶に残っている。

そもそも話の発端が修行僧・清玄と稚児・白菊丸との心中未遂であり、清玄が高僧となってからは出家しようとやってきた吉田家の息女・桜姫を白菊丸の生まれ変わりと信じて関係を迫り、一方桜姫は1年前に強姦された時の快感が忘れられず強姦した男と同じく二の腕に釣鐘の刺青を彫っている、などとかなりのドロドロの愛欲人間模様が繰り広げられる。

こうした物語を展開する手法として演出に招かれた岡田利規が採ったのはこれまた驚きの方法だった。
基本的に額縁舞台であるが、舞台中央寄りのやや奥に調整卓(に思えたが、どうやら電子ピアノだったようだ)があり、全体として劇団の稽古場かセットが組みあがった劇場といった様相で、場当たりもしくは通し稽古が行なわれている風情。演技する役者の台詞廻しはほぼ棒読みで抑揚にも乏しい。演技していない時には舞台前方や横手に寝転がったり、座ったりしており、時折見せ場と思われる個所で「●●屋」などと掛声を発するも、どこか投げやりで形だけ、タイミングもいまひとつだ。歌舞伎の様式美を徹底して拡大し、現代演劇との違いを批判的に表現しようとしているかのようだ。

あらかじめその場面の展開が簡潔な文章で字幕表示されることもあって、物語の筋はわかりやすいし、前述したようにドロドロの愛欲劇だけに面白い。

前述のように台詞はほぼ棒読みであるため、演技力があるのかないのかよくわからない。が、終始感情を交えずに棒読みするのも困難ではあろうから、その意味からはよく演じていたのかも。因みに桜姫役の石橋静河はの石橋凌・原田美枝子夫妻の次女である。

かもめ

かもめ

サブテレニアン

サブテレニアン(東京都)

2023/01/14 (土) ~ 2023/01/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2023/01/14 (土) 19:00

前回サブテレニアンに来たのは昨年の1月7日だったから、ちょうど1年ぶりだ。前回は積もった雪が凍りついている道で滑らぬようそろそろと歩を進めた記憶がある。上演されていたのは演劇ユニット小雨観覧車後日譚の「ネモフィーラ」だった。団体名に後日譚となっているように、前年に上演予定だった作品が上演されないままにユニットが解散し、演劇から引退する主宰がなんとか上演だけはやっておきたいという執念での公演だったのを思い出す。

今回の「かもめ」は板橋ビューネというイベントの中の一作。こういうイベントが行なわれていることすら知らなかったのだが、今年で9回目という。唯一の参加条件が「作者が死亡していること」というのが面白い。

黒い床に9つの椅子代わりの黒い立方体の箱がM字型に並べられ、その上に台本らしきものが置かれている。
上演時間75分というから、かなり省略されている模様。

( ネタバレBOXに続く)

ネタバレBOX

意気揚々と臨んだ芝居の上演を途中で打ち切ってコースチャが怒りをぶつける場面を冒頭にもってきたのはなかなかだったが、その後がいけない。

正面奥の黒幕の上部に字幕が投影されるのだが、全台詞のごく一部(おそらく1/10以下だろう)だけだし、劇が続いているのに字幕ははるか前に投影したっきりのもの(それも役者が読み上げる場面転換の際のト書きがほとんど、だ)が投影され続けている。しかも誤変換が多い(例えば仁奈、とりごりん)。
私はチェーホフの「かもめ」は10回以上観ているので、どういう会話が交わされているのかはほぼわかっているのだが(それにしてもどの場面も登場人物が猛々しく叫ぶようなものが多いのは何故なのか)、ほとんど観たことがない人には人間関係やストーリーなどまるでわからないだろう。
かく言う私にも、コースチャが自殺せねばならなかった理由が一向に迫ってこない。新しい形式に挑もうとしたコースチャが、結局のところマンネリに陥り、ニーナへの愛も拒絶され、という葛藤が、ストーリーが大幅に省略されているために表面的なものにしか感じられないのだ。やはりこの過程は丹念に描く必要がある。この上演でやろうとしていたことが何ら伝わってこないのでは失敗と言わざるをえないだろう。
面と向かってそう言うのは辛いので、アフタートークには参加せずに退出した。

ほとんどの場面で軽快なアコーディオンの音色に乗って役者が両肩を上げ下げする動作とスキップで登場するのは演じている学生がミュージカル実用音楽学科だからか。最初は面白かったものの、同じ繰り返しではその意図もよくわからないし、飽きてしまう。

マーシャ役の女優(原作の黒い服ではなく、軍人用の外套を肩から掛け手に持った酒瓶に直接口をつけてらっぱ呑みしているアルコール依存症らしき女性として描かれている)とポリーナ役の女優が魅力的。どうもこうどこか荒んだり生活に疲れたような風情を漂わす女優に弱いんだよなあ(笑)。
高島嘉右衛門列伝4 アンコール

高島嘉右衛門列伝4 アンコール

THE REDFACE

横浜関内ホール(神奈川県)

2023/01/08 (日) ~ 2023/01/09 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/08 (日) 17:00

横浜の劇場はKAAT以外はほとんど来たことがなく、この関内ホールも初めて。外観が立派だが、小ホールに入ってみると、10列目までは床面がフラットで、前列に座高の高い人が居ると、舞台が観辛そう。と思っていたら、前列に見るからに怖そうなガタイのいい一団が並んで座り、結構声高に喋りまくっている。話の様子だと、あまり観劇の経験がなさそうな一団だが、どういう関係での観劇なのだろうか。「キャバクラ1時間分(のお金)で社会勉強だ」という会話には笑ってしまったが……。

定刻に開演。幕が上がると、流木をメインにした大きな生け花が舞台中央に置かれ、その周りに椅子がある。

事前に把握していなかったのだが、リーディング劇である。男優はスーツを主体にした現代の服装、2人の女優は着物姿である。上演時間は途中休憩20分を含んで2時間。

まず驚いたのは吉田松陰があまりに豪放磊落で、大胆な人物として描かれていること。学者然とした松陰の印象が大きく変わってしまった。坂本龍馬は榊原利彦が高島嘉右衛門と二役を演じている。

高島嘉右衛門列伝となっているが、高島嘉右衛門は冒頭とラストに顔を出すだけで、あとはひたすらに幕末の志士たちの話である(江戸の材木商の嫡子であった高島嘉右衛門は幕末の激動期をほとんど獄中で過ごした)。
3回分の公演の総集編という位置づけなのでやむをえないとは思うものの、高島易断の開祖としてしか認知していなかった高島嘉右衛門について知りたいと思っていた身には多少の物足りなさも。

男優陣はいずれも基礎のしっかりした演技(と朗読)である。鈴木杏樹が艶やかで美しく、AKB48だった飯野雅が可愛い。

豊島区管弦楽団 ニューイヤーコンサート2023

豊島区管弦楽団 ニューイヤーコンサート2023

としま未来文化財団

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2024/01/08 (月) ~ 2024/01/08 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/01/09 (月) 14:00

クラシック・コンサートの今年の聴き初めは豊島区管弦楽団。ここ数年というものコンサート初めはアウローラ管弦楽団だったが、アウローラは昨年Xmas期に公演を済ませているので。

ベートーヴェンの交響曲第7番と、武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」、そしてストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」というプログラムだったが、この中で私が一番聴きたかったのは、成人の日を翌日に控えての武満徹作品だった。邦人作曲家の作品を振ることの少ない和田一樹(そういえばこの演奏会の翌日は和田の誕生日でもあった)が、どのような指揮をみせるのか期待が大きかった。
この「系図」はアコーディオン・ソロの他に谷川俊太郎の6編の詩の朗読が加わる。その朗読は東京都立千早高等学校演劇部の6人の女子高生が担ったのだが、全員が舞台袖に控えており、1編毎に1人が舞台上に登場しては朗読してハケる、ということが繰り返された。私の周りでは朗読の最中に原詩が掲載された当日パンフをめくるペーパーノイズが気になったのだが、それよりも読み手が交代する度に拍手が起こる。音楽は途切れることなく続いているのに、だ。どうもクラシックのコンサートを聴き慣れていない客が多かったようだ。武満の曲は微妙で繊細な音の絡みあいが特色だ。それが拍手によって分断されてしまうのではどうしようもない。
朗読の6人は最初から全員舞台上に登場しており、各自の担当する詩のところで一人ずつ立ち上がって読む、また詩は(当日パンフで確認しなくてもいいように)オペラやミュージカルのように電光字幕で表示する、というような演出をすべきだったろう。

なまえ(仮)

なまえ(仮)

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2023/01/06 (金) ~ 2023/01/09 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/07 (土) 19:00

今年の観劇初め。

この劇団はこのところチェーホフ作の一人芝居「タバコの害について」の上演が多かったが、今回の新春公演は名前にまつわる7編のアンソロジー短編集。それぞれのタイトルには全て末尾に(仮)と付いており、観客がそれぞれのタイトル案を書き込むスタイルとなっている。

冒頭は手術の名手といわれる医師の名前が「藪」だということではじまるボヤキ。医師を演じる益田喜晴とナース役の田中陽の息のあった掛け合いが見事で面白い。ただ細かなことを言えば「執刀医を担当する藪です」という自己紹介はちょっと変だ。「執刀を担当する藪です」だろう。

ともあれ、この芸達者な益田と小悪魔的な魅力を湛えた田中は出演するエピソード全てで私を魅了した。
一方で池田志乃は硬さがとれていない。

ラストは益田が「あんたのお名前、何てえの?」と拍子木を叩きながら、出演者が自己紹介。そう、チラシにもトニー谷とそろばんが描かれており、トニー谷といえばそろばんと思い込んでいる人も多いだろうが、トニー谷が「アベック歌合戦」で「あんたのお名前、何てえの?」と軽快に司会していた時は拍子木を使っていたのダ。

7編それぞれに面白く、下ネタも散りばめられているが、「私のおじさん(仮)」では「ワーニャ伯父さん」と「桜の園」を思わせる一節があり、「市民土木課の一日」のラストの銃声は「かもめ」と、チェーホフの四大喜劇への拘りを感じさせた。ん、「三人姉妹」は? ああ、そういえば出演していた女優が三人だったなあ。

第388回IMA寄席

第388回IMA寄席

光が丘IMAホール

光が丘IMAホール(東京都)

2024/01/07 (日) ~ 2024/01/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/07 (土) 14:00

今年の舞台鑑賞初めはまず落語から。光が丘IMAホールの第388回IMA寄席 にて春風亭いっ休、一蔵、正朝を聴く。
このIMA寄席、毎月1回平日の夜に開催されているが、年始だけは休日に、大抽選会をオマケに行なわれる。毎回木戸銭は「100円以上のお気持ち」というのもスゴイが、その木戸銭は全額社会福祉協議会に寄付されるのだという。

前座のいっ休は春風亭一之輔の三番弟子だというが、頭をユル・ブリンナーのように剃り上げている。なんと京都大学卒とか。流れるような口調の「子ほめ」。
一蔵は2ツ目として選ばれたのだろうが、昨年9月に真打に昇進したという。老けてみえるが、まだ41歳とか。八代将軍をめぐる尾張藩主の思惑と鍛冶屋をからめた「紀州」。最後まで羽織を脱がなかったのは何か理由があってのことか。
主任(トリ)の正朝は昨年末にコロナになりかかったという枕に続いて、準古典の「宗論」を。「宗論」の中で触れられたのだが、正朝は明治大学仏文科卒で、キリスト教徒なのだとか。来週70歳になるという。

3席で1時間10分。その後15分の休憩をおいて、寄席グッズ等が当たる大抽選会。当選数は46本なので確率は8分の1ほどだったろうが、当たらず。

ピアフ【4月9日公演中止】

ピアフ【4月9日公演中止】

東宝

シアタークリエ(東京都)

2022/02/24 (木) ~ 2022/03/18 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/03/13 (日) 13:00

前回この作品を観た時(2018年11月)は、最後列のそのまた後ろの壁際に1列並べられたパイプ椅子であったので、舞台を充分に味わうといった感じとはほど遠く、ただ大竹しのぶの歌声を堪能したといった感じだったのだが、今回は7列目下手側とまずまずの位置。

上演時間は途中休憩25分を含んで2時間55分。

圧倒された-端的に言えばその一言につきる。

畳屋のあけび

畳屋のあけび

CROWNS

シアター代官山(東京都)

2022/07/06 (水) ~ 2022/07/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

おぼんろの末原拓馬が出演しているので観たのだが、予想外に素晴らしい作品だった。

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/09 (日) 18:00

中国によるチベットやウイグルでの弾圧や香港や台湾に対する姿勢が舞台上の物語に重なってくる。
国語の重要性を再認識させる内容だった。

欲望という名の電車

欲望という名の電車

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2022/10/29 (土) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/11/01 (火) 18:30

いうまでもなくテネシー・ウィリアムズの代表作のひとつだが、この作品を日本で最初に上演したのが文学座でありヒロインのブランチ役は同座の杉村春子の当たり役ともなった。
後年高齢となった杉村自身を始め、文学座の多くの関係者が「ブランチ役を杉村から太地喜和子にバトンタッチしたい」と熱望していたというが、その矢先太地が事故死したというエピソードも残っている。
映画版のスタンリー役は舞台で演じていたマーロン・ブランドが起用されたが、これが彼の映画デビュー作になり、妹・ステラ役も映画では同じく舞台初演時のキム・ハンターが演じたのだが、彼女は後年オリジナル版の「猿の惑星」シリーズのチンパンジー・ジーラ役の方が有名になってしまった。

閑話休題。今回は2019年に「ガラスの動物園」を新訳した小田島恒志と演出を担当した高橋正徳が新キャスト・スタッフとともに創造した新たな「欲望という名の電車」だ。

ブランチ役の山本郁子も良かったが、何と言ってもステラ役の渋谷はるかが素晴らしかった。

サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

遊戯空間

銕仙会能楽研修所(東京都)

2022/11/05 (土) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/11/05 (土) 13:00

三島由紀夫の「サド侯爵夫人」を本格的な能舞台で上演しようという意欲的な公演。しかもタイトルロールのサド侯爵夫人・ルネを演じる男優は能面(小面)をつけての演技だ。

上演時間は途中10分の休憩を2回含んで3時間半という長尺。

正面の白洲梯子前に着席。この階(きざはし)には緋毛氈が掛けられ、赤い花をつけた薔薇が枝を張ったように置かれている。この薔薇は柱や橋懸の欄干にも巻き付けられており、また切戸口の手前(上手奥)に二十五弦筝が置かれ、脇正面側の上部バルコニーにスポットライトが設置されているのが本格的な能との違いか。

各幕の冒頭と最後に黒い着物の多田彩子が切戸口から登場し、二十五弦筝を奏でるのだが、その調べが舞台に一層の緊張感を与え、見事である。それに際立って美人だ。当日パンフによれば多田は某都立高校の非常勤講師も勤めているというが、さぞかし人気があるだろうな(笑)。

登場人物は6人だが、全員が白一色の衣装。家政婦のシャルロット以外は幕口の揚幕があがり橋懸を通って舞台に進み出る。能舞台であるから全員がドレスの下に白足袋を履いており、足の運びは能の様式に沿ったすり足である。
台詞も能舞台では鏡板や床が反響板として働くために、通常の小劇場以上にビンビンと伝わってくる。

ルネ役の篠本賢一を含め全員が故観世榮夫の門下もしくは関わりがある俳優だということだが、それぞれがしっかりした演技力を持つだけに、長時間の舞台でも緊張感が途切れることがない。

観応えのある舞台だった。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/09/04 (日) 14:00

『ガマ』
8月17日から2週間以上の期間、東京芸術劇場のシアターイーストとシアターウエストの両方を使って続けられてきた「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」の最終作品であり、かつ唯一の新作。
この公演は[日本の戦争]に焦点を当て、過去にチョコレートケーキが発表してきた5作品に新作1篇を加えての6作品を一挙上演しようというもので、当然ながら全て観たかったのだが、いろいろと多忙のために、他の5作品は観たことがあるからと涙をのんで、結局は「ガマ」の、しかも千穐楽しか観れないということに。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

1945年の5月、首里から少し離れたガマ(自然洞窟)に女子学徒隊の少女と、生徒を鉄血勤皇隊に送り出した中学教師、米軍から逃れる際に崖から落ちて左足を骨折した少尉がやってくる。そこに2名の兵士(上等兵と二等兵だと言っていたが、実は中野学校出身の上官から護郷隊の少年たちへのゲリラ戦の指導のために北に向かう軍曹と伍長)とその案内人の老人が加わる。

男たちの会話には端々に日本が沖縄を見捨てたという事実が滲み出る(事実、現地の第32軍司令部は当時想定されていた本土決戦に向けた時間稼ぎの「捨石作戦」だった)。それに対して、沖縄は日本であり、天皇陛下のために立派な日本人として立派に死にたいと悲愴な決意の少女が、その思いが熱烈なだけに哀れだ。それぞれの思惑を持った5人の男たちは、やがてこの少女だけは生き延びさせねばならないと思い始める…この戦争の意味そして沖縄戦の意味を自ら考えその答を見つけさせるために。

ガマの中という設定だけに2時間超の舞台が暗い中で展開し、濃密な空気が支配する。

ラストは、年齢は異なるものの、あの白旗の少女(およびベトナム戦争で爆撃を受けて裸で逃げる9歳の少女の写真「戦争の恐怖」)を思わせる。

沖縄に上陸した米軍が、こうしたガマを片端から火炎放射器で焼き払ったというのは有名な話だが、考えてみるとなんと残虐な方法なのだろう。
老いた蛙は海を目指す

老いた蛙は海を目指す

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/12/15 (木) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/20 (火) 14:00

初日に続いて2度目の観劇。

圧倒されっ放しの2時間。
「(スラムという)地獄を出ると不幸になる」アイロニーが悲痛なまでに描かれる。

ところで、青山勝が演じた箕輪惣兵衛はメイクといい、役柄といい、原田大二郎へのアテ書きだったんじゃないんだろうか。

老いた蛙は海を目指す

老いた蛙は海を目指す

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/12/15 (木) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/15 (木) 19:00

初日を観劇。

桟敷童子の公演は決して期待外れにはならない安定感があるが、【桟敷童子版「どん底」】と銘打たれた今回は、原口健太郎と大手忍がこまつ座「イヌの仇討」九州巡演のために不在(大手は本公演を休むのは入団以来初めてとか)にも関わらず、従来にも増して深みのあるどっしりとした人間ドラマを観せてくれた。

舞台となるのは昭和大不況下のスラム長屋。貧乏のどん底の住人たちと強欲な家主夫婦、流れてきた医者と時として哲学的な言葉を発する珍妙な婆さん、そして追われて逃げこんだ3人の労働運動家がもつれた人間関係を繰り広げる。

この劇団の代表作である炭鉱三部作(初演の順でいえば「泥花」「オバケの太陽」「泳ぐ機関車」)に匹敵する、というか、それらを凌駕したやもしれぬと思える密度のドラマが展開された。

獄中蛮歌

獄中蛮歌

生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した

四谷OUTBREAK!(東京都)

2022/12/28 (水) ~ 2022/12/29 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/28 (水) 19:00

このライブハウスに来るのは初めて、というかそもそもライブハウスに行くこと自体がほとんどない。
“生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した”(生き逃げ)という長い名の団体、「生き逃げ」と略すようだが、もはや正式劇団名は思い出せない「熱ら。」(主宰は夢麻呂といったっけか)みたいだ。第5回公演とのことだったが、中に入ると客のほとんどは若い女性。私も含めてちらほらと浮いて見える高齢者の男はCoRichのチケプレで来場したものか。場違いさを覚えながらも、下手側前方に座って開演を待つ。

演劇とハード・ロックライブの中間ともいえる内容だったが、この種のステージでこれほど大きな満足感と感動を覚えたのは初めて。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

白塗りの上にメイクをした顔に横縞の囚人服姿の30代と思しき7人の男たち(他にバンド3人)によって繰り広げられるのだが、ステージに賭ける真剣さと意気込み、熱量の強さが並大抵のものではない。
「脱獄するためにはしっかりと手を握り合い、前を向いて進んでいこう」ということが何度も繰り返されるのだが、やがてこの脱獄というのが物理的ないわゆる監獄からの脱走ではなく、自分自身で作り上げ自身を閉じ込めている(心理的な)監獄だということもわかってくる。テーマ性もしっかりと打ち出しているのだ。

佐世保出身の私には駆逐艦・時雨(「呉の雪風、佐世保の時雨」と賞された駆逐艦だったが、現在は2つに分断された状態でマレー半島沖に沈んだまま)のモノローグと続く戦闘シーンでは、(声を大にして「戦争反対!」と叫ぶよりもはるかに強く)戦争の悲しさ・虚しさが胸に響いた。
青春の殺人者 令和版

青春の殺人者 令和版

アクターズ・ヴィジョン

梅ヶ丘BOX(東京都)

2022/12/22 (木) ~ 2022/12/30 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/12/29 (木) 13:00

観劇数がちょうど240本(他にコンサートは43回)となった2022年の観劇納め。

梅ヶ丘BOXに来たのは何年ぶりになるだろう。梅ヶ丘BOXといえば今年盗作問題(無断引用、原著者の意向を無視した改変)で名前が挙がった坂手洋二が主宰する燐光群の本拠地だ。そういえば今年は谷賢一がセクハラ・パワハラで告発され、主宰するDULL-COLORED POPからはこれまで耐えていたという劇団員の退団が相次ぐなど、演劇界で高位にランクされる作家・演出家にまでモラハラ・セクハラ・パワハラの嵐が吹きまくった年だった。

この「青春の殺人者 令和版」は76年に長谷川和彦の初監督作品として公開された映画を松枝佳紀が翻案・演出したものだが、以前アロッタファジャイナを主宰していた松枝がここ数年は俳優育成に注力していたため、松枝の演出作品を観るのは「かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~」以来だけにほぼ9年ぶり(松枝脚本だとその半年後の「安部公房の冒険」以来)。
アロッタファジャイナでは意欲的な公演を続けていただけに、「青春の殺人者」の舞台化に挑んだというのも松枝らしく、理由なき両親殺害という内容から令和の青春像を描き出していた。

トリプルキャストのAチームを鑑賞。上演時間90分。

白いシートが敷かれた舞台の上手に3台、下手に1台のスチールラックが置かれ、それぞれに段ボール箱などが積まれている。正面奥には白布を被せた長机が2台。開演するとそれらのものの位置を変えて場面のセットと見做される。下手手前にやはり白布を被せた死体のようなものが2体置かれているが、開演時に外に運び出される。

5人の役者と3人のト書き読みの内、ケイ子役の女優が赤い(台詞だと「血の色の」)ワンピースである以外は全員が白色の衣装。だが、終盤にはその白も血で赤く染まる(次第に本当の血痕のように茶色っぽく変色する)のだが、物語が続く中で不自然ではあっても役者はそれを着替えることなく、その血染めの服のままで演じる。また順が母親を殺した時の床の血だまりがラストまで照明に赤く映えていて、それらのものが衝動的で理由なき殺人を観客の目に強く意識づける。

ただ、順の母親は映画での市原悦子の印象が強すぎるだけに、この舞台での女優は若すぎるだけでなく、激すればするほど台詞を叫んでいるという印象を拭いきれない。衝撃的な記憶が強い映画を舞台化するのに避けられないことだろうが…。あと3人の語り手の内の女性がどうにも棒読み調で、舞台への集中を途切れさせてしまう。
さらに言えば、令和の現在にこの作品を上演する意味づけをもう少し明瞭に出すべきでもあったろう。

だが、それらを含めても、今年の観劇納めにこの作品を選んで良かったと思いつつ劇場を後にしたのだった。

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