青春の殺人者 令和版 公演情報 アクターズ・ヴィジョン「青春の殺人者 令和版」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/12/29 (木) 13:00

    観劇数がちょうど240本(他にコンサートは43回)となった2022年の観劇納め。

    梅ヶ丘BOXに来たのは何年ぶりになるだろう。梅ヶ丘BOXといえば今年盗作問題(無断引用、原著者の意向を無視した改変)で名前が挙がった坂手洋二が主宰する燐光群の本拠地だ。そういえば今年は谷賢一がセクハラ・パワハラで告発され、主宰するDULL-COLORED POPからはこれまで耐えていたという劇団員の退団が相次ぐなど、演劇界で高位にランクされる作家・演出家にまでモラハラ・セクハラ・パワハラの嵐が吹きまくった年だった。

    この「青春の殺人者 令和版」は76年に長谷川和彦の初監督作品として公開された映画を松枝佳紀が翻案・演出したものだが、以前アロッタファジャイナを主宰していた松枝がここ数年は俳優育成に注力していたため、松枝の演出作品を観るのは「かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~」以来だけにほぼ9年ぶり(松枝脚本だとその半年後の「安部公房の冒険」以来)。
    アロッタファジャイナでは意欲的な公演を続けていただけに、「青春の殺人者」の舞台化に挑んだというのも松枝らしく、理由なき両親殺害という内容から令和の青春像を描き出していた。

    トリプルキャストのAチームを鑑賞。上演時間90分。

    白いシートが敷かれた舞台の上手に3台、下手に1台のスチールラックが置かれ、それぞれに段ボール箱などが積まれている。正面奥には白布を被せた長机が2台。開演するとそれらのものの位置を変えて場面のセットと見做される。下手手前にやはり白布を被せた死体のようなものが2体置かれているが、開演時に外に運び出される。

    5人の役者と3人のト書き読みの内、ケイ子役の女優が赤い(台詞だと「血の色の」)ワンピースである以外は全員が白色の衣装。だが、終盤にはその白も血で赤く染まる(次第に本当の血痕のように茶色っぽく変色する)のだが、物語が続く中で不自然ではあっても役者はそれを着替えることなく、その血染めの服のままで演じる。また順が母親を殺した時の床の血だまりがラストまで照明に赤く映えていて、それらのものが衝動的で理由なき殺人を観客の目に強く意識づける。

    ただ、順の母親は映画での市原悦子の印象が強すぎるだけに、この舞台での女優は若すぎるだけでなく、激すればするほど台詞を叫んでいるという印象を拭いきれない。衝撃的な記憶が強い映画を舞台化するのに避けられないことだろうが…。あと3人の語り手の内の女性がどうにも棒読み調で、舞台への集中を途切れさせてしまう。
    さらに言えば、令和の現在にこの作品を上演する意味づけをもう少し明瞭に出すべきでもあったろう。

    だが、それらを含めても、今年の観劇納めにこの作品を選んで良かったと思いつつ劇場を後にしたのだった。

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    2022/12/31 14:44

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