かもめ 公演情報 サブテレニアン「かもめ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★

    鑑賞日2023/01/14 (土) 19:00

    前回サブテレニアンに来たのは昨年の1月7日だったから、ちょうど1年ぶりだ。前回は積もった雪が凍りついている道で滑らぬようそろそろと歩を進めた記憶がある。上演されていたのは演劇ユニット小雨観覧車後日譚の「ネモフィーラ」だった。団体名に後日譚となっているように、前年に上演予定だった作品が上演されないままにユニットが解散し、演劇から引退する主宰がなんとか上演だけはやっておきたいという執念での公演だったのを思い出す。

    今回の「かもめ」は板橋ビューネというイベントの中の一作。こういうイベントが行なわれていることすら知らなかったのだが、今年で9回目という。唯一の参加条件が「作者が死亡していること」というのが面白い。

    黒い床に9つの椅子代わりの黒い立方体の箱がM字型に並べられ、その上に台本らしきものが置かれている。
    上演時間75分というから、かなり省略されている模様。

    ( ネタバレBOXに続く)

    ネタバレBOX

    意気揚々と臨んだ芝居の上演を途中で打ち切ってコースチャが怒りをぶつける場面を冒頭にもってきたのはなかなかだったが、その後がいけない。

    正面奥の黒幕の上部に字幕が投影されるのだが、全台詞のごく一部(おそらく1/10以下だろう)だけだし、劇が続いているのに字幕ははるか前に投影したっきりのもの(それも役者が読み上げる場面転換の際のト書きがほとんど、だ)が投影され続けている。しかも誤変換が多い(例えば仁奈、とりごりん)。
    私はチェーホフの「かもめ」は10回以上観ているので、どういう会話が交わされているのかはほぼわかっているのだが(それにしてもどの場面も登場人物が猛々しく叫ぶようなものが多いのは何故なのか)、ほとんど観たことがない人には人間関係やストーリーなどまるでわからないだろう。
    かく言う私にも、コースチャが自殺せねばならなかった理由が一向に迫ってこない。新しい形式に挑もうとしたコースチャが、結局のところマンネリに陥り、ニーナへの愛も拒絶され、という葛藤が、ストーリーが大幅に省略されているために表面的なものにしか感じられないのだ。やはりこの過程は丹念に描く必要がある。この上演でやろうとしていたことが何ら伝わってこないのでは失敗と言わざるをえないだろう。
    面と向かってそう言うのは辛いので、アフタートークには参加せずに退出した。

    ほとんどの場面で軽快なアコーディオンの音色に乗って役者が両肩を上げ下げする動作とスキップで登場するのは演じている学生がミュージカル実用音楽学科だからか。最初は面白かったものの、同じ繰り返しではその意図もよくわからないし、飽きてしまう。

    マーシャ役の女優(原作の黒い服ではなく、軍人用の外套を肩から掛け手に持った酒瓶に直接口をつけてらっぱ呑みしているアルコール依存症らしき女性として描かれている)とポリーナ役の女優が魅力的。どうもこうどこか荒んだり生活に疲れたような風情を漂わす女優に弱いんだよなあ(笑)。

    0

    2023/01/16 12:33

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大