とうやの観てきた!クチコミ一覧

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フローレンスの庭

フローレンスの庭

虚空旅団

AI・HALL(兵庫県)

2022/12/16 (金) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

心情や状況を抽象的に表現する身体パフォーマンスがシームレスに交わることで緩急もついていて、なおかつ関係性やその変化・時間経過が、丁寧かつ余白を残しながら紡がれてて、長時間なことを忘れていた。
交わり、ぶつかり、一息つける狭間となっている庭、を無い窓から眺めるようにして、逃げてしまいがちな生きることや死のこわさについて考えた。
やさしい時間だった。

「現在」から始まるものの、メイン時間軸が現在ではないことで、同じフィールドに居るはずなのにそれに使命的に向き合ってくれている「人」が、非常事態に限らず、常にいるんだ、と思えた。
従事し続けることも、自分はそれになれないと向き合ってから選択することも、私にはどちらも尊いと思う。

たくさんの役者さんだったがそれぞれが芝居がうまく、個性もしっかり出してきていて、すごく説得力のある群像だった。

みはるかす、くもへい線の

みはるかす、くもへい線の

コトリ会議

AI・HALL(兵庫県)

2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇場の使い方たのしい!
平面二列で一部後頭部で見えないシーンがあったのは残念やったけど、笑っていいのか泣いていいのかわからないシュールさと少しの邪悪で描いた少しだけ優しいミクロな宇宙の絵本に取り込まれるような不思議な時間を堪能した。
アイホールの高さと暗さが今回の仄暗さと怪しさを孕んだ景色に合ってた気がするなあ。
断絶、隔絶、わかり合う必要はあるか?棲み分けでいいのでは?それでも介入があったときは?可愛らしい声や言葉に潜むガラス片みたいな棘に時々ビクつきながら、小さな声や暗闇に神経を傾けるのが愉しい。

あの日あの時の、嘘

あの日あの時の、嘘

MousePiece-ree

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

両バージョン拝見!
同じ世界同じ話なれど、演出がこんなに違うのか!そしてそれによりキャラへの感じかたもこんなに違うのか!と驚く。
お三方の安定かつ熱量たっぷりの芝居が最高。
こんなの三人ぽっきりでやってしまえるのがすごい。
小さなコミュニティでの嘘と仕掛けあいシチュエーションコメディ。濃いキャラをまわしながらテンポよく笑かしながらお話を転がす3人の匠ぶり。どのキャラも愛嬌があり、仕事の出来具合もうかがえて、程よくゆる~く、気持ち良く笑った!楽しかった!

天の敵

天の敵

イキウメ

サンケイホールブリーゼ(大阪府)

2022/10/08 (土) ~ 2022/10/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

シームレスに交差する時間軸、信じられないような話と異常性、兼、納得感、それとともにある美しい画…初演も劇場で観た。けど、ずっとドキドキして、息を呑んでしまう。つめたくてあたたかい。それぞれの選択… 
あらすじとキャッチコピーが好きすぎる。
イキウメの、気づけば背中にそっと触れていそうで少し肝が冷えるSF、がとても好きで、それを表現できる芝居と演出のノーストレスなうまさがまた良い。

あつい胸さわぎ

あつい胸さわぎ

iaku

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2022/08/18 (木) ~ 2022/08/22 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

活き活きとした関西弁を中心としたやりとりのテンポ・間のうつくしさよ。
非常に上質な会話劇。
シンプルな舞台装置の中に彩やかな感情のやり取りと人間模様が咲く。
激しくバエるシーンが押し寄せてくるわけではない、ポツリと思わずこぼれた声が胸を打つ。
胸。胸って、感情と一緒に動くなあとしみじみ思う。ふとした時に思い出す作品。

CAT TOWER

CAT TOWER

MousePiece-ree

ABCホール (大阪府)

2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すれ違いの多重衝突にハラハラしながらたくさん笑った!
芝居が上手くて笑いにも全力な人が集ってるので、そんなうまいこといくか〜い、でもうまくいってもいいじゃな〜い!と思える。
誰よりも激しくひっくり返るマウスのお三方の魂を感じた。

贅沢と幸福

贅沢と幸福

オパンポン創造社

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2022/05/13 (金) ~ 2022/05/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人間の選択や感情はゼロイチでも白黒でもない。
スッキリ楽しい話ではない…どちらかというと止まれない下り坂のしんどさがあるけど、悲喜交々ヒリついた芝居と虚実のグラデーションの書き方、時空の演出方法がおもしろかった。

猩獸 -shoju-

猩獸 -shoju-

壱劇屋

ザ・ポケット(東京都)

2022/06/01 (水) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

もう一つの4月の猩獣と比べるとドラマ性が濃くなっていて複雑になっているが、複雑なようでシンプルな話だと感じている。
大切なもののために力をふるうこと。力をふるうときに見えなくなってしまうもの。それを取り戻す為の光。
小さなことから引き起ってしまう動乱は大規模で、生き残れた者たちよせめて幸せたれと願う。

その壮大さをあの人数でやってのけるのがすごいなと思うし、美術として取り入れた黒カステラ(大小それぞれの斜面台)のまだまだあった可能性を存分に活用・披露してその壮大さに拍車をかけてるのがすごい。
墨絵と台しかない舞台が、家にも城にも城壁にも戦場にもなる。
観客の想像力を信頼してくれる作劇と演出がとても好きで、こちらもより信頼して表現に身をゆだねて存分に想像できる。

この作品で個人的なお気に入りは母を演じられている藤島さんのお芝居。
母性、簡単には言いたくない言葉だし軽率にくちにするのはあまり好きではないが、藤島さんの母の芝居にはすごく「母性」を感じる。
しかもそのベクトルはこの作品一つの中でもまちまちで、真っ直ぐだったり、歪んでいたり、優しく弱々しくもあり、でも総じて「「母」だ…」と思ってしまう芝居の力がある。
狂気…という単純には表現しきれない、悲しみに落ちてしまったシーンの芝居がいい意味で恐ろしい。
本当にくるってしまってもフィクションとしては成り立たないし、付け焼刃でやっては説得力がない。塩梅が素晴らしい芝居だった。

supermarket!!!

supermarket!!!

壱劇屋

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

9作品とも味の違う、しかもどれも癖強い作品揃いで、2時間半をバラエティ豊かに過ごせた。
普通なら1時間から2時間程度の本公演を見ないと作家さんの作品を味わうことはできないけれど、この1作品でその作家さんの味見ができるのがお得。関西小劇場の一角をつまみ食い!
いい意味で知ってる壱劇屋っぽくなくなってるところもあり、逆にどうしても壱劇屋になるんだなの要素に気づいたり、作家さんの「こんなのも書かれるんだ!」という発見もあり、ひと粒で2つも3つも楽しめるところがあった。

また、ストーリー的やキャラクター的にも、9名の作家が同じキャラや同じ風景を書いたことによる各作品間での微妙なズレがあり、そのズレは、このキャラからこのキャラ・風景を見るとこんなふうに見えてるのかもな…の認識の歪み、みたいな解釈もできるし、この人の思うこの人、めっちゃ怖いやん、優しいやん、かわいいやん、になるのも楽しめる。
接する人によってその人への感じ方は違う…現実みたいだなあ、とも思いつつ。

観てると客も店員も癖強いスーパーで非日常感溢れるけど、終わって普段の生活してると「あそこにいた人がここにもいるのでは?」とふと思っちゃうことがある。
日常に寄り添う非日常感、壱劇屋の作品での好きなところで、それが今回のような公演でも感じられたのも面白かった。

なかなか無い形態の公演だったが、とても楽しかった!

code:cure

code:cure

壱劇屋

ABCホール (大阪府)

2022/07/29 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

めちゃくちゃ好き。
これぞ大熊作品、の要素がてんこ盛りで、まさに壱劇屋のベストアルバム。
複雑さとわかりやすさのバランスが良く、量子論との絡みも劇中に語られる内容だけ知っていても楽しめるし、もっと深く知っていれば掘り下げて「じゃあこれは?」と思考が広がっていくし、要素の取り込み方と出し方の塩梅が良い。
そのストーリーのバランスの良さ × 多彩なパフォーマンス × 音と光の洪水、すべてがスクラム組んで壱劇屋の世にも奇妙なエンターテイメントに引き込んでくる。

目覚めを繰り返すミステリー…というアオリ文句がシンプルでその通りだと思う。
奇妙な錯綜とともに駆け抜けていく疾走感もあって、ただ繰り返すだけではない、趣向と意味を凝らしたループものSFエンタメ。
廃墟・治験など、要素要素は少し不気味な面もありつつ、ぶっ飛んだキャラクターはいるものの全員「愚か」ではない安心感があるし、全体的にクールで、それでいて高揚感も押し寄せてくる…
バランス感や劇の波への乗らせ方が本当に心地よくて、中毒性がある。
選出テーマや台詞が絶妙に生活に隣接…がっつり絡むほどではないが隣接していて、あんなに奇妙な空間時間だったのにふとした時にあの世界がふと隣に湧いてくるように感じるのも好きなところ。

まっすぐなゲームや冒険感をアングラ的劇薬オブラートで包んだような、初見はたまげるかもしれないが、非常にバランスが取れていてとても好きだし、エンタメ好きにはお勧めしたい。
またこういう作品も観たい!

荒人神 -Arabitokami-

荒人神 -Arabitokami-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/12/21 (水) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「人」の物語とはまさに。
「人」を「人」で描いていて、「人」のために作られている。
物語的にも演劇的にもそうで、本当に好きな作品。

今までの4作を思い起こさせる形や表現、人物の関係・状況を少しずつ出してきて、そのうえで主人公たちまで呼び寄せてオマケどころかストーリーの芯にしっかり絡ませる集大成としての壮大さはもちろん素晴らしいが、何より、「荒人神」としての、人の醜さややさしさ、その人が作り上げる世界に対する絶望や希望に関する物語が分厚く存在していて、しっかりと描かれている上で、その集大成・お祭り的要素が無駄ではなくそこに絡んでいることが本当に素晴らしいと思う。
憫笑姫・賊義賊・心踏音・戰御史を観てしまっているため、荒人神だけを観た人の本当の感想や感情はわからないが、4作を観ていなくても置いてけぼりになることはないのではないかと思う。
荒人神は、荒・元・白の、悩み、それでも前を向き歩いていく物語である、と言える。

キャスト的サプライズ面については個人的には「ここまでの4作、もしくはそのうちのどれか、作品を愛してくれている客」を信頼してくれていると感じられる。
あの主人公たちが本当に墨絵から飛び出してきたかのような姿で出てきたときは大興奮したし、それぞれのストーリーや殺陣をなぞりながら、荒の絶望や苦悩を一つずつ晴らしていくように剣を交えるところは、こういう時こそ「尊い」という言葉を使いたいなと思う光景で、
特に憫笑姫の主人公、ミラのシーンが一番好きで、再び相まみえることが出来たというようなほほえみが胸に刺さるし、白い衣装も相まって神々しさすら感じられ、それでも胸をドンドンとたたいて鼓舞するミラ姉さまはあの必死に駆けていたミラ姉さまで、いろんな感情が渦巻いていっぱいいっぱいになってしまう。

あと、個人的に元が目指す姿は賊義賊の主人公の姿に似ているなと思っているので、血しぶき演出が荒人神で再び出てきたことにぞくっとした。
荒人神も、「やむを得ず」命を絶つ、ことを改めて考える作品だと思うので、賊義賊の感想に書いた通り、効く。
更に今回は色変化もあり、工夫や趣向を凝らすこと(さらにそのクオリティを落さないこと)を止めない団体だな…ということも思う。
今回も美しい飛び・舞い・散り、を堪能。
迷いながら振るわれる剣の切っ先から飛ぶ血ごしに見るその表情、呆然とする元の頭上に降る血、闇が吹き飛ばされていくように散る黒、偶然か体に張り付いたそれが返り血や傷のように見える瞬間…どれも演劇でしか味わえない解釈のあるうつくしさで印象に残っている。

皮肉だが、圧倒的な強さはフィクションとしてはとても格好いいので、黒い”何か”の手を取り、闇に心を染めて世界を蹂躙する荒の姿はとても魅力的で、恐ろしさとともに快感を感じるシーンでもあった。
苦悩していた荒とは違い、表情もころころと変わり、ただただ好きなもの以外はどうでもよい様子は幼子のようにも見えて、少し悲しくもあり。
竹村さんの芝居は豊かだなと思う。4作連続で出ているが、どれも性格、年齢までも違うように感じられ、荒人神ひと作品の中でもこんなにも色とりどりに変化する。
その芝居が殺陣にも乗っていて、武器による変化だけではなく、心情や状況によって、切っ先から感じられるものが全く違う。迷い、殺意、決意、etc…
作・演出としての竹村さんももちろん好きだが、役者:竹村晋太朗、好きだな。と改めて思う。

また、竹村さんと同じく、個人としては違うが5作品に共通して存在する「アクションモブ」の存在について改めて度肝を抜かれている。
「モブ」にふさわしく群衆として世界になじみつつ、時にキーとなる存在となり、瞬時にいわゆる「人間CG」を担い現象としての存在に推移する。
「モブ」とは名ばかりの、この人たちがいないと世界が成り立たない骨子としての存在と技術、劇団員も含まれているとはいえ、ひと月ごと、1回1回の座組であそこまでの完成度の仕事をしているのが本当にすごいと思う。
アクションモブが居なければ、あらゆる魅力的なシーンは成り立たない。
観ているその時その最中はそこに意識を割かれ過ぎないように目立ちすぎず、でも印象を残しつつ、の職人たち。
しっかり名前を憶えてしまった。素晴らしかった。


興行としても、独立連作の集大成としても、単独の一つの公演としても、素晴らしい作品だと思う。

戰御史 -Ikusaonshi-

戰御史 -Ikusaonshi-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/11/23 (水) ~ 2022/11/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

よくよく考えれば「こんなの台詞や言葉の説明なしにどうやってわかるんだ!?」というような内容と世界観を、見事に芝居・殺陣・演出で成り立たせていて唸る。
謎のしっぽをつかめるようでつかみきれない、そうしている間に目まぐるしく技巧たっぷりの殺陣に心と目が躍る。
台詞がないこと、は割と頭からすぐ抜けてのめりこませられるのは五彩の神楽ひと月目からそうだったが、それでも4作観てきていても「まだこんなに違う色が出せるのか!」と驚く。驚けることに驚く。

最初の主人公の行軍→戦闘シーンだけでも殺陣の充実感がすごいのに、そこからあらゆる武器・あらゆる戦い方が出てきて、殺陣の濃度も熱もどんどん上がっていくのがたまらない。
切りあい殺し合いだが、一線を越えて気持ちよさを感じる。
そうそうこういう殺陣も観たいんだよ、という満足感。
フェスというのも納得。
つかみきれないストーリーラインへの志向が常に脳内で稼働しているうえに、その殺陣への興奮がやってくるので、頭が全身が発火しているのか?というくらい熱くなるし、それが楽しい。
考えてみて!と、考えるな感じろ!の塩梅がとても好みだった。

演出・動きについて、思い返して考えれば「たぶんこうしているんだろうなあ」というのはわかるが、いざ目の前で観ると「今どうなった!?なんだ!?」とまるでマジックでも観ているかのような興奮でいっぱいいっぱい。
ひとつひとつは単純(簡単ではない)でも、それを複数人が交差する舞台上で、観てる間はそこに意識が割かれないよう「当たり前」のようにそれをやっていくのが、この劇団の作る座組の強みだなと思う。

魅力的なゲストが多く、それぞれ存在感や殺陣力・芝居力が大変良かったが、何より中心の主人公たちのスター性ある殺陣芝居がよかった。
華やか…ともまた違う、映える、目を引き付ける殺陣だった。
両側から迫る稼働台に助走なしで垂直乗りする主人公たち(それぞれシーンとしては別だが)など、すごすぎて思わず観ていて笑いが出てしまった。

熱量があり、フェスのような殺陣乱舞が印象的な作品ではあるが、個人的には冒頭・二人(ひとり)が向き合うところ・ラストシーンのしずけさが一番好きなところ。
演出も、芝居も。
緩急とはまた違う、この作品のクールさ…熱量のねっこにある低体温さをそこで改めて感じられるのが良かった。

不満点ではなく希望の話で、動きや稼働台の使い方が鮮やかでダイナミックだったので、もう少しだけ幅広の舞台でも観てみたいと思った。
アの幅ゆえの感覚だったのかもしれないが、「もっと!」を求めたくなるくらい、座組が放つエネルギーがすごくてみちみちだった。

心踏音 -Shintouon-

心踏音 -Shintouon-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

小説や映画のような味わいとともに哀しくもうつくしい景色が見られる作品

ふつうならよくある「二回観るとあるシーンの見え方が変わってくる」とするところを、一回の観劇でそれを可能にしていて、なおかつ間延びしないどころかアハ体験のような刺激を浴びながら避けられない悲劇をたどることができる仕組みに脱帽する。
そのうえで二回観るとさらにその深みが増すというところが、初見での満足もリピートのうまみも知っている人が作っているんだなという信頼感がある
主人公の、思わずかけよりたくなるかわいさと、早いだけではない浮遊感と重力を同時に感じる不思議で強烈な殺陣を繰り広げるギャップがとてもよい
ヒロインのフミとのやり取りも大変ほほえましく、それだけに後半の悲劇の辛さがささる…
主人公の視界を表すかのような大胆な照明はもちろんだが、個人的にはやはり音が心に残っている。
ワードレス殺陣芝居…台詞が無い(全員言葉をしゃべらない)芝居の中での「声が出せない」の表現と、「目が見えない」ことへの対応方法が芸術的で美しい
音階はないはずのタップ音が、歌うように泣くように、怒りすらも、色とりどりの感情を表現していて、人間の伝えることや読み取るちからや可能性をぐんと広げてもらえたようにも思う。
あんなに軽快に言葉のように跳ねていたタップ音が、くやしく悲しい乱暴な地団駄になるところ、また、槍の尻で床をどんどんとやけっぱちのように覚悟をきめたかのようにたたきつける音、音とともに景色が印象に残っていて、好きなシーン。

賊義賊 -Zokugizoku-

賊義賊 -Zokugizoku-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ショーのようにポップで華やかで、それに反比例するような時代劇以上の因縁と因果応報、その渦に巻き込まれてとにかく楽しく胸打たれる

殺意を向けられたから、命を守るために、それが仕事だからのあらゆる「やむを得ず」ではない、「人を傷つけ、殺すこと」に比重がかかる作品だからこそ映える血しぶきの演出
演出としても、その技術もすばらしく、悲惨なのに美しくするどく放物線を描く紙吹雪に見とれた
これをあのスピードで出ハケして交差する中でやるのか…というのは観終わってから思うことで、見ている間はただただ夢中だった

ヒールとしての頭領と黒幕、主人公と相対するクロの、闇と影の存在が、暗くもありつつ色鮮やかで魅力的なのと、同心さんや鼠などの頼れる人・頼れるおとながそばにいてくれることの安心感も含めてバランスが良く、
なにより、パワフルな体裁きと花咲くような笑顔で意思を貫き通す姿を見せてくれた主人公コウは、なにかくじけそうなときにふと思い出されるまさにヒーローのように心にきざまれている

憫笑姫 -Binshouki-

憫笑姫 -Binshouki-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

老若男女のあらゆる「つよさ」が詰め込まれていて、とても好きな作品。

男も女も関係なく、生きるため殺すために泥臭く剣を振るう姿がいとおしく、かっこいい。
旗の演出もお話に合っているし、あの狭い劇場でたくさんの旗が振られることにびっくりしたし、でも迫力だけじゃなくて音や風を客席でも感じることが出来て、これぞ演劇のだいご味!を浴びることが出来て嬉しかった。

はじめはアニメ映画のようなOPから理不尽さに放り込まれて主人公と同じように戸惑ったり辛くなったりするが、そこから主人公とお付き女官、少しすれ違っていた妹と、戦うことについて素人から手練れへ変化していくシーンがかっこよく、またその中で心の距離も近づいていく様子が描かれていてお気に入りのシーン。
ストーリーとしては王道的でわかりやすいが、動乱や陰謀に巻き込まれて目まぐるしく・それでいて置いてけぼりにならない疾走感もあって、その中でドキドキハラハラできる緩急があって良い。
また、個性的で魅力的なキャラクターばかりで、それが各役者さんに合っているのか「そこにいる」感が強くて思わずお話にのめりこんでしまう。

この作品の主人公はそのとおり映画や漫画のように稀有な体験をして稀有な結末を迎えているけど、不思議と遠い存在には感じない。
困難を乗り越えていく姿を主人公の視点を軸に見せてくれているから、どうしても応援したくなってしまうし、隣に並び立ちたいと思ってしまうし、そのふんじばって乗り越えていく姿が心に残っていて、劇を離れても勇気をくれる存在になっている。
独立作品5連続上演、の一作目としてふさわしいお話だと思うし、主人公だと思う。


「ワードレス殺陣芝居」、観客の想像力が信頼されていることが舞台上での表現でわかって嬉しい。
台詞が無いものの、しっかり伝えてくれる芝居をしてくれていて、かつスムーズに受け取れる演出になっているので、台詞がある芝居と同じ程度の「これは今どういう心情なんだろう」「今何が起こってるんだ!?」のライブ感で味わうことができる。
「台詞が無い」ことは特徴的ではあるが、割と些細なことであると思う。
体験すればわかるが、体験しないとわからない…のが難点…けど、ミュージカルも「台詞ではなく歌で表現」だし、昨今人気のサイレントアニメやサイレント漫画もあるので、言われてみれば実は言葉じゃないところですでに表現を受け取っていたりすると思うので、「ワードレス殺陣芝居」がもっとエンタメとして体験されてほしいなあ…と思う。

音楽劇『堀川、波のつづみ』

音楽劇『堀川、波のつづみ』

エイチエムピー・シアターカンパニー(一般社団法人HMP)

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2022/03/12 (土) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

文学(古典)とアート(音や実演体表現)のかけ合わせがとてもうまく、心地よく、生音・生唄も相まって大変上質な空間だった。
あれだけシンプルで抽象的にも思える美術の中で、家や街並み、波や空を見つめる景色をこちら側に見せてくれる芝居と演出も巧み。
この作品は高安さんの演出だったと思うが、エイチエムピーの、立体でありながら二次元的にも見える美術や演出が美しくて好きなので、それもよく堪能できたと思う。

三大劇作家、逮捕される!

三大劇作家、逮捕される!

工藤俊作プロデュース プロジェクトKUTO-10

ウイングフィールド(大阪府)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

笑った!
短編の気軽さと、気軽さの割に三作品三様の笑わせ方と工夫が盛り込まれてて面白い。
冒頭と幕間の三作家たちのゆるくてどっかかわいいトークパート(これも芝居の一部ではあるが)も面白い。
ベースがしっかり練られているだろうので、観ててあきないゆるさと熱量。大変贅沢。
お話的には一本目が好きかなあと思うのだけれど、羽曳野の伊藤を持ってこられたらそれはもう、アレですよ!(笑)

透き間

透き間

サファリ・P

京都府立文化芸術会館(京都府)

2022/03/04 (金) ~ 2022/03/05 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

うつくしくて不気味。逃げても逃がそうとしても、ずっと足元をとらわれている、乾いているけど粘着質な不気味さ。
物語というよりも、物語を軸として、呪いよりももっと身近で、身近であるがゆえに気づきがたいもの…そういう概念のようなものを表現していたように思う。
ホラーのような怖さではなく、言われなきゃ気づかなかった臓器のしみの気配に気が付いてしまって、それでも目では見えないのでじわじわとこわい…そういうこわさがあった。
美術の素っぽさと、統一感のある色味の衣装をまとった人体のうごめきが、非常にマッチしていて美しく絵画のようで、おそろしいけれども目が離せない景色だった。

サヨウナラバ

サヨウナラバ

玉造小劇店

山本能楽堂(大阪府)

2022/02/22 (火) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

芝居バージョン:とにかく芝居が丁寧でうまい。あっという間の2時間。時間経過、人物の関係性や背景の描き方がスムーズで、現代の話ではないのにすっと頭に入ってくる。偶然や縁の面白さに笑ったり、したたかさや図太さ、粋さにグッとくる。能楽堂のつくりを生かした演出もよかった。お話の内容も、その表現も「豊か」で、エネルギーをもらった。
狂言バージョン:狂言、と言えば伝統芸能で、こんな事前知識ないままに観に行っても分かるかな、という思いは杞憂に終わった。もちろん演目ややり方によって違うんだろうけども、こんなのアリなんだ!?という演出に大いに笑い楽しんだ。定型ならではの美しさで目も楽しめた。
芝居・狂言バージョン両方を観たが故の面白さもあり、両方を観ることが出来て良かったと思う。

わが星

わが星

ジャグリング・ユニット・フラトレス

フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)(大阪府)

2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

言葉と音の遊びにジャグリングの動きがハマっていた。
円、球、レンズ、惑星、衛星、軌道、団らん、時間…の形状と、舞台や演出が表現しているかたちが統一感あったのも良かった。
うつくしいほろびを見つめた。
うつくしくあれるように、「おなかいた」はなくなるといいなと思う。
童話のような、さみしくてうつくしいもので心臓をやさしく撫でられる。
ミクロでマクロで果てしなくてすぐそこにあるものを交錯させるホンの強さと、それを視覚的に動的に見せてくれるジャグリングの組み合わせが良い。

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