実演鑑賞
満足度★★★★★
小説や映画のような味わいとともに哀しくもうつくしい景色が見られる作品
ふつうならよくある「二回観るとあるシーンの見え方が変わってくる」とするところを、一回の観劇でそれを可能にしていて、なおかつ間延びしないどころかアハ体験のような刺激を浴びながら避けられない悲劇をたどることができる仕組みに脱帽する。
そのうえで二回観るとさらにその深みが増すというところが、初見での満足もリピートのうまみも知っている人が作っているんだなという信頼感がある
主人公の、思わずかけよりたくなるかわいさと、早いだけではない浮遊感と重力を同時に感じる不思議で強烈な殺陣を繰り広げるギャップがとてもよい
ヒロインのフミとのやり取りも大変ほほえましく、それだけに後半の悲劇の辛さがささる…
主人公の視界を表すかのような大胆な照明はもちろんだが、個人的にはやはり音が心に残っている。
ワードレス殺陣芝居…台詞が無い(全員言葉をしゃべらない)芝居の中での「声が出せない」の表現と、「目が見えない」ことへの対応方法が芸術的で美しい
音階はないはずのタップ音が、歌うように泣くように、怒りすらも、色とりどりの感情を表現していて、人間の伝えることや読み取るちからや可能性をぐんと広げてもらえたようにも思う。
あんなに軽快に言葉のように跳ねていたタップ音が、くやしく悲しい乱暴な地団駄になるところ、また、槍の尻で床をどんどんとやけっぱちのように覚悟をきめたかのようにたたきつける音、音とともに景色が印象に残っていて、好きなシーン。