川にはとうぜんはしがある
ばぶれるりぐる
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
もどかしさとかやるせなさとか閉塞感を見つめながら、やさしい願いや祈りがあるようで、私はとても好きでした。シチュエーションコメディにも思えるような軽やかさがあるところも好きです。
幡多弁、端々まで意味はわからなくてもなぜか愛おしくなってしまう。
前説で(本公演が)5作目と聞いて「まだそれだけかあ!」と驚くくらい、毎度安心感と安定感がある。
内容を知らず見ていたわたしは「親と共に暮らす才能はちっとも無い趣味のおえかきマン」なので、謎にあらゆる角度からグサグサと刺された。それでいてやさしかった。好きだなあと、しみじみ思う。
田舎の(田舎から離れられた人間からしたら)やなところの上澄みの飛沫をくるぶしくらいまであびたことがあるので、わっ、やだよねー…と思うところもあったけれど、セリフやキャラクターの同士のめぐり合わせでそれが続かないのもやさしいなと思った。あのおとうさん、あそこではだいぶ異端者なのかなあ。もしかしたらなまちゃんよりも。
キャラクターのバランスが良いというか、誰しも…ゲームチェンジャーになり得るキャラクターもいくら自分と合わなくてもきらいになっちゃう(悪者になっちゃう)一歩手前くらいで印象をコントロールされてる気がして、最後まで気持ちよく物語を追いかけることができる。お話づくりも、役者さんの技術がよいのもあるだろうし、キャスティングもよいのだろうなあと勝手に想像する。
現実は意外とこんなにもうまくいかない…うまくいくタイミングを自分から逃してしまったりする(逆に破滅をすんでのところでのがれられてしまう)ので、いくら現実と地続き風の世界観でも、物語の時点で劇的だなと思う。竹田さんの見つめる・見つめてきた現実を丁寧に描きながらも、やさしい祈りが込められているなと思う。
きっと母が見たら別の感じ方をするだろうし、きっと見て私に(言われて当たり前の)イヤミを言うだろうし、でも見てみて、「母」をいっとき離れてみてほしいなと思ったりもした。
イザボー
ワタナベエンターテインメント
オリックス劇場(大阪府)
2024/02/08 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
美しさとつよさと圧倒的歌唱力によりエンターテイメントとして愛憎の中そのときの力いっぱいで生きたろう歴史の人の姿を届けられたなと思います。歴史上の人物・有名な人物はどうしてもアイコン的に捉えがちですが、そうではない、生きている人間一人なのだということも、観ながら感じました。
シンプルながら、メインキャストだけでなくスタッフ勢やアンサンブルの技術の粋が詰まった画作りを感じました。客席の使い方巻き込み方もパワフルかつ軽妙で、メリハリがあって長時間も集中してのめり込むことができました。
バラードからロック調、フリースタイルのラップのようなものまで、多種多様なナンバーを圧倒的歌唱力でたたきつけられる心地よい歌劇でした。
W/E
壱劇屋
扇町ミュージアムキューブ・CUBE01(大阪府)
2023/12/29 (金) ~ 2023/12/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団箱推し者として、こんなに楽しくてご褒美みたいな公演が合っていいのでしょうか、と思う公演でした。
事前の
『幾魂の鎧武者』は東京支部らしいかっこよさがあり、『DEATH WONDERLAND』はそれとはまた違ったかっこよさもあり、『熊田くんと竹田くん』はなんだかかわいいです。
の情報に偽りなし、されど想像をはるかに超えるかっこよさと、うつくしさと、カオスさと、面白さが詰まっていました。
ご褒美みたいな公演ではありますが、東西それぞれの壱劇屋がそれぞれの研鑽とこだわりと色を詰め込んだ作品はそれ単品としても力強く、満足度の高い公演でした。
それぞれの身体性の高い表現は、出し方は違えども、人間の身体の豊かさや美しさ・可能性を存分に感じさせ、30分に込めたストーリーはやさしさときびしさを内包しながらひと工夫された複雑さもあり、客席を劇世界に取り込み引き付ける演出が存在し、色合いは全く違うものの、観客の想像力への信頼感や、人間対人間の空間を楽しんでもらおうとする精神のようなものに同じ根っこを感じました。
本当に、本当にみられてよかったです。
正直東西で分かれている(思ったより行き来がない、それぞれの公演に出たりしない)のはちょっと寂しいなとも思うのですが、それぞれが精力的に活動している証拠でもありますし、またぜひこのような機会に恵まれるよう、楽しく応援できればいいなと改めて当公演を観て思いました。
煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
ABCホール (大阪府)
2023/08/18 (金) ~ 2023/08/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
楽しかった!楽しくて、ぽかぽかして、幸せ。
いろんなことやってみたぜ、こんなキャラもいるぜ、の欲張りセット。
確かに今までの殺陣!殺陣!殺陣!と違うことも沢山あるけど、もちろんバトルシーンは壱劇屋東京支部らしい迫力と多彩さがあり、時間の経過や情景の表現、やさしさと、きびしさ、そういう関係性〜!アツいぜ!の「いつもどおりさ」も味わえた。
清濁抱き合わせ、愚鈍さも、クレバーさも、全部ひっくるめて、頑張れと、キャラクターに対してだけでなく、そのキャラクターが生きる世界よ、頑張れと、思わず祈ってしまう。祈ると同時に、私たちも頑張りたいなと、勇気をもらえるような。
説教臭くない、いやらしさがない、誰かがまっすぐに頑張っている姿を見て、奮起させられる。
大好きなABCホールでまた竹村作品が観られるうれしさもあり、作品の心に染み入り具合もあり、思わぬ涙があふれてきた。
また大阪にも来てもらえるように、応援し続けたいです。
Pickaroon! -ピカルーン-
壱劇屋
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/06/24 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ドエンタメであり、しかしハッピーポップで終わらない、さりとて気持ちよく心に残る観了感。
キャストが変わったとて、ああピカルーン観てるな、楽しいな、じーんとしちゃうな……となれる。胸いっぱい。
特に初演が好きなので毎度ドキドキするのですが、今回も杞憂!とても面白かった!!
関係性や生活が垣間見えるアレコレも追加されてたりして、初演再演を知っててもワクワクしてしまいます。
AキャストBキャストそれぞれでキャラクターの見え方が変わったりしてそれぞれに魅力があり楽しく、しかしABあるがゆえに観られる回数はそれぞれ減ってしまうのが玉に瑕…!それぞれいいだけにそれぞれをもっと味わい尽くしたい…!悩ましくも贅沢な苦しみです。
というパラデュールとまったく同じ悩みがあります!!悔しさすらあります!!
しかし今回はメインキャラを全員劇団員でやる、という、昔からずっと願っていた「壱ver」が叶い、それを見届けることが出来たのが幸せでした!
いつかverではなく、すべての日程がそういう公演も見られたらいいなと、箱推しの身としては思います。
PARADURE -パラデュール-
壱劇屋
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/04/22 (土) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
想いがすれ違いぶつかり合い、迫力の中にそのやり取りされる想いの大きさや繊細さがたまらない!
ともすれば広がりすぎそうな世界観やキャラクターを、描くところと描かないところをきっちり切り分けて駆け抜け、2時間半をあっという間に感じさせる充実さでした。それだけでなく、その世界から外に向けての広がりも感じられる箇所もあり…でもそこを抜きにしてもパラデュール内で完結して面白い!という塩梅。
AキャストBキャストそれぞれでキャラクターの見え方が変わったりしてそれぞれに魅力があり楽しく、しかしABあるがゆえに観られる回数はそれぞれ減ってしまうのが玉に瑕…!それぞれいいだけにそれぞれをもっと味わい尽くしたい…!悩ましくも贅沢な苦しみです。
久しぶりの台詞あり東京支部作品、魅力的なキャラの関係性や、殺陣の量も様相の多彩さにもワクワクが止まりませんでした!メインはもちろんのこと、アクションモブたちの活躍が止まらない!劇中1秒たりとも隙が無い。群衆として存在するだけではない、メインの華やかさを担保し、殺陣の迫力を増強し、個人としても芝居をして見える社会の厚みを持たせる…東京支部作品になくてはならない存在というものを、台詞アリの新作芝居で改めて感じました。
6人の悩める観客
壱劇屋
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2023/03/03 (金) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
自分の今居る場所(劇場)・観ているもの(演劇)・自分自身の目や思考への懐疑を誘われる……あらゆるエンタメ作品でも「物語というもの」「メタ視点を考慮した構造」要素があふれるようになってきた中、演劇を知らない人にも・まだそういうメタい要素を知らない人にも・すでに知っている人にも、ゾクゾクとされる作品だと思います。
小難しさとばかばかしさのようなファニーさの入り混じり具合が絶妙で、面白がっているうちにドキッとさせられるし、奇妙な関係性に取り込まれているし、でも最終的に客感覚は大事に守られているような観了感もあってバランス感が素晴らしいなと思います。
小劇場とはいえ各所アングラみをそこまで出しているわけではなく、あらゆる配慮で気遣いいただくホスピタリティを感じることが多くなってきたところに、アングラとまでは言わないまでもスパイス強めの作品を(コントロールきかせつつも)よくぞその味をきかせたままやりきったなあ…!とも思います。
再(々)演なので、前回の大熊さんの立ち位置も非常に魅力的だったのですが、行澤さんをあそこに持ってきたのも、「シェイクスピア」にしたのも、説得力が増していたように思います。
パフォーマンスも整理されており、そのシーンとしての意味が各ムーブにおいて強まっていたようにも感じられました。
前演の守るべきところは守り、今の時代と今のキャストに合わせて変えるところはがっつり変え、印象を保ちながらも磨き上げる手腕とそれを実行できる座組素晴らしいなと思います。
空間スペース3D
壱劇屋
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2023/07/28 (金) ~ 2023/07/31 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
壱劇屋のオールスタンディング演劇、楽しい!!
運動を憎むほど嫌うものですが、楽しく体揺らして、ノッて、キャラの繫がりとか関係に物語脳が豊かになって、心身共に満ち足りた体験でした!
再演なのでOPでめちゃくちゃ懐かしくなってしまいましたが、新鮮に驚くこともたくさんで。また距離の影響か、席(場所)の縛りが無いからか、目の前で起きているLIVE感も強く、何回見ても新しい発見ができるのが本当に面白い。
日々の世界や生活をサンプリングしたような、でもそれらが集められたこの空間が、そしてそのひとつひとつがなんだかおかしくて、おかしくなっていて、現実との地続き感と劇空間の異常さが入り混じるカオスさ、でもそれがつながっていくことや計算されつくしていることをふと感じるときがあって興奮を覚えます。
空間の使い方の特異性だけではなく、キャラクターやそこにある物語を追いかけることについてのうまみもきちんと担保されていて、演劇的な空間…日々や日常空間に潜む劇的な可能性を集合し、美しく整えられた空間だなと思いました。
オールスタンディング、お客さんとの距離感ほぼゼロという特殊な空間ですが、ただただ無法地帯なわけでなく、お客さんへの信頼感と万全の体制を張るその塩梅をうまい具合にとっていただいており、そのなかで楽しく遊ぶことができました。
SQUARE AREA
壱劇屋
近鉄アート館(大阪府)
2023/11/04 (土) ~ 2023/11/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
あらゆる方向性で面白く、大好きな作品です。
ストーリーの面白さはもちろんありつつも、身体や構成のうつくしさを美術品を見るような気持ちで見てもいいし、謎解きのように登場人物と謎に挑む気持ちになってもいいし、スポーツやアスリートを見るように躍動を楽しんでもいい、音楽LIVEのように音と身体に心を揺らせてもいい、あらゆる人に開かれた楽しみがある作品だと改めて思います。
四面舞台というのを演出的面白さだけではなく、ストーリー上まで意味を持たせる空間の使い方、1回で見た時のインパクトと、複数観た時の面白さを両方担保されてもいて、洗練されているなと感じます。
前回までのSQUARE AREAが好きで、キャスト替えやアンサンブル追加でどうなってしまうんだろう…と、楽しみはもちろんのこと、ちょっとドキドキもしていたのですが、完全に杞憂でした。めちゃくちゃよかったです。
再演に伴う追加変更要素において、抽象的な部分を「説明する」ではなく、「整理」することで想像を膨らましやすくしよう、というように感じられて、とてもいいなと感じました。
その追加変更により各キャラクターの置かれている状況・人物像の厚みが観ている時から感じられ、キャストが一新されてもぐぐっと愛着を持てたように個人的に思います。2023年度版のキャラクターたちも、キャラクター〇〇の誰版、というより、2023年度版のそのキャラとしてとても好きになりました。
パフォーマンスシークエンスも、増えたりアンサンブル要素が追加されることで複雑性が以前とは変わっていたりしていましたが、ただ豪華になっているというよりも、ストーリーやキャラクターの色付けを豊かにする味付けになっており、知ってるはずなのに知らないスクエリを観ていて、でも欲しいところに欲しい画が観れる…!という、楽しみ方ができました。贅沢な再演体験でした。
今回の公演のことではありませんが、唯一悔やむべくは、劇団員の半田さんが今年末をもって役者業を引退されるため、先達のスクエリのような「同じキャストで再演」が叶わないところだなあと思います。役者固定で、各人のスキルアップと演出の変更、ホンの改訂に純粋に意識を割ける再演というのは本当に稀で、前は叶っていたことなので惜しいな…と。(半田さんの決定や今後は応援してます!)
ただ、壱劇屋(大熊作品)は、キャラクター性もあるものの、どちらかというと「物語上の/進行上の役割」に重点が置かれていると個人的には感じているので、キャスト変更があったときも比較的ひっかかりなく、どちらかというと楽しみに受けとめている気がしています。
なので、ぜひともまた「やりたいな」「今やれるかな」となったら再演をして、「あたらしいかたち」を見せてもらえたらなと思います。
今回のSQUARE AREA2023で再演に対する期待と希望が持て、その気持ちが強まりました。
「小さいエヨルフ」&「少年はニワトリと夢を見る」
突劇金魚
扇町ミュージアムキューブ・CUBE05(大阪府)
2023/10/03 (火) ~ 2023/10/31 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『小さいエヨルフ』
洞窟のような場所で、洞窟らしくない場所に住んでそうな人たちのやり取りを聞いているような感じがしていたけれど、視野というか、そういうところにとらわれてるんだろうかと、最後に少しひらけた感じがして、振り返って思う。鼠の目になる気分。
洞窟の中で小さな劇団がお芝居をしている、というていでもあるのかな。冒頭や場面転換の時の役者さんたちの姿勢や目配せ、動きが奇妙でかわいらしく、それも世界観に取り込まれるようで面白かった。
『少年はニワトリと夢を見る』観了。サリngさんの本はシチュエーションは結構劇的な感じがするけど、その中のふとした台詞や演者さんの出し方で「ああ人間には、私にも、こういうところがある」と刺さりつつも、寄り添い染み入るように「人間」を感じられるのが好き。自分の他人への拘りや思い出の重さは相手にはそうじゃなくて、逆もまた然りで。だからひとりでいるより、たまに誰かに自分の鏡になってもらって、傷ついたり励まされたりするのがいいのかもしれないな。
OBACHAN
NICO×frogs produce #関西の役者が踊ってみた
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2023/10/06 (金) ~ 2023/10/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
生活や感情をダンス表現でいきいきと、お芝居とともに届けてくれる作品。前編を知らなくても全然大丈夫。土曜昼の某新喜劇の味もする。
人生を重ねたぶんだけつよいオバチャンたちのパワフルさとやさしさで元気が出る。
シリーズを見ていると、梅ちゃん、ええとこ越してきたね!と思わず思ってしまう。
華やかなOPでぐっと引き込み、多くの個性的なキャラクターを一人一人見せていく見せ方やスピード感、そうしてキャラクターに愛着を持った状態で起きる事件…!ドキドキハラハラしながら、各キャラクターを応援しながら観ることが出来る。お話の構成も、見せ方も、それを表現する役者さんたちの表現力も、素晴らしいなあと思いました。ダンスをつないでいくだけでもない、お芝居の中でダンスするだけでもない、お芝居×ダンスのエンタメ力を感じました。
トレマ
立ツ鳥会議
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2023/11/10 (金) ~ 2023/11/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
複数の場面を行ったり来たり、これはどういうことだろう、つながってるのかな、あっ、こういうことかな、と掴めたように思えたところでまた少し離される。フラストレーションを貯められない塩梅で適度にくすぐってきてくれて、みんなたちを追いかけることが出来ました。最後の哀愁と言えばいいのか、悲しみだけでもない、なつかしさ、後悔とか、昏い中で語られるシーンが印象に残っています。
お局ちゃん御用心!!!
片岡自動車工業
ABCホール (大阪府)
2023/11/17 (金) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
衣装も目に鮮やか、キャラクターの個性豊かさで豪華絢爛、楽しくもちょっとほろりな元気の出る作品!キャストが変わることでキャラの印象も結構変わるものの、やはり林檎さんのお局ちゃんの安心感たるや。おシャッフルも見てみたかったですが、もちろんベーシックな回だけでも満足です。子供たちが初演からずっとお気に入り!健やかに育て~~!
そして羽音、ひとつ
トリコ・A
扇町ミュージアムキューブ・CUBE01(大阪府)
2023/11/18 (土) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
自分は普通・一般から少し外れてはいるもののマジョリティのほうの人間だと思っているので、「マジョリティはどうすれば自分のマジョリティ特権に気が付けるか」というテーマ、の説明を見た時ちょっとものおじしたのですが、interestingな面白さでした。
言葉は悪いかもですが「説教くささ」がなく、説得力があり、「お話」としてのおもしろさ(funnyも含む)もしっかり感じられ、だからこそ各登場人物に、その人物たちが重なる風景にすっと思いを馳せられました。
役者さんの力量か、登場人物皆の説得力がすごく、なんだか自分のこと・自分の未来のこと・自分が持ってる一部分を見透かされているようで「うわ…」と思うところもあったのですが、厭な感じはなく、フィクションと自分の今いる現実のほど良い境界をあるきながら目の前の時間を見つめることが出来たように思います。
物理や幻想に寄りかかっても障害から逃げてもいいし、それを他人とどうにか運良くすり合わせられたら幸せだなと個人的に思い、観る前に思っていたより染み入ったし、それでいて観了後心や足取りが軽いなと感じます。現実の老いへのおそれや他人や自分の心との衝突は確かにあるけど。
また、この公演では観劇サポートが実施されており、まず10分前からある舞台美術や登場人物、物語の背景の解説がとてもよかったです。手話通訳付き、音を出したり位置関係や容姿の説明を言葉で簡潔に伝えており、完璧ではないのかもしれないけれど、こう説明するのかという気付きも得られましたし、どういう劇空間にしたいかというのに触れられたのが良かったです。自分が目が見えにくくなったり耳が聞こえにくくなっても楽しめる手段がこうしてできていくのかもしれないなと思うと安心もできるので、このようなサポートは応援したいなと思います。
手話通訳者さんのお名前を知っておきたかったなあと思いました。
gagap
ENG
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/11/22 (水) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても楽しかったです!
入りから最高にアガって、ヒヤッと刺されて、じわっと沁みる。力あるものには勿論、力ないものたちのつよさにぶん殴られてやられる。強さにはいろいろあるんだと、勇気をももらえます。けっして楽しいだけではない、締め付けられるような苦しさややるせなさもある、けれど観終わった時に前を向いていられる……きれいごとを信じてる人にも、憎んでる人にも、両方に観て欲しいと思えた作品です。
お話や役者さんの多彩・多才さはもちろんなのですが、その多くのキャラクターや潤沢な世界構成・設定を、スムーズにかつ迫力満点に伝える演出がとても好きでした。観客の想像力を信頼しつつもその誘導は怠らない塩梅。機械でやってはなかなか生まれない人力での演出の緩急が上手く使われていたように思います。
客席も使いつつ、劇場空間をまるごとぐっと劇世界にする、引きずり込んでもらえたおかげで、没入してとても楽しむことが出来ました。
doubt -ダウト-
いいむろなおきマイムカンパニー
扇町ミュージアムキューブ・CUBE01(大阪府)
2023/12/01 (金) ~ 2023/12/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人間の身体の自在さを改めて実感します。
前に見たときよりティックトックやショート動画を目が知っているので、早送りを生の体でやってるのにしっくりくる(コマ落ちの特徴掴み)具合すごいな、になります。どこが同とは説明ができないのですが、各駅で下りて、不思議な光景を見る・巻き込まれる、ような、いいむろさんの銀河鉄道みたいだなあとか勝手に思っています。
ラスト付近手前のグルグルと繰り返しながら時間圧縮されるみたいなシーンの始まり、いいむろさんのひとりでの動き、あとからそこに他のプレイヤーがはまって「ああその動きだったんだ!」になる気持ちよさと、「そのうごきを一人でなんで出来ていた!?」になる奇妙さが好きでした。
ラスト付近のあるツールが別の使い方をされだすところに今特にギュッとなります。平和がいいです。
無駄な抵抗
世田谷パブリックシアター
兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)
2023/12/09 (土) ~ 2023/12/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
役者さん皆さんの技が素晴らしく、淡々ともしているように見える、かつチラチラと匂わせる距離感を保った会話を、飽きることなくぐっと引き込まれてみることが出来ました。圧迫感の感じられる劇場のような形の広場のセット、シームレスに「観客」になるそこに集う人々、道化の入りからとても面白かったです。
イキウメ作品ではないものの、こんなに元のお話を関係性や形を保ったまま現代にもってきて「イキウメ」らしくしつつ、現実のあらゆることに思いを馳せられるようになるの、すごいな…と毎度思います。「電車」は果たして何だったんだろう、各々の脚をとめるもの、大きな力でどうしようもない障害、なのかな?と想像を巡らせます。
スーパーふぃクション ふぉーエヴァー
悪い芝居
扇町ミュージアムキューブ・CUBE01(大阪府)
2023/12/16 (土) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ちょっと特殊な席で観たのもあるかもしれませんが、客席ごと世界に巻き込んでいくのが上手いなあと思いました。痛々しくもなりえる、創作者や芸術の「場」のよく聞く空気感の表現を、ポップでちょっとメロウに見せてくれて、フィクションと現実の境界を楽しく綱渡りさせてくれるように思えました。とてもLIVEでした。
「スーパーふぃクション」を前に確かHEP HALLで観ていて、似ているのにその時とはまた全然違った形、のように思えましたが、見ているうちにきゅっとそこに収束する瞬間があってドキッとしました。しばらくお休みとのことで、そうなるとさみしいなと思いますが、また劇場で遊ぶ姿を見られればと思います。
墓場のオサムと機嫌のいい幽霊2
GoldFishTheatre
扇町ミュージアムキューブ・CUBE01(大阪府)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
がしゃどくろ組を拝見しました。前演も拝見していたのですが、キャラクターについて背景や関係性が付与されることにより、よりたのしさとエグみが増した気がします。幽霊たち・墓場の「機嫌のいい」ぶりも際立ち、その「機嫌のいい」さのかわいらしさとうらっ返して肝の冷えるような感触もまた良かったです。それだけ付加があったにもかかわらず、自分が筋だと好きだったと感じる部分については前回見たときと印象が大きくぶれず、改稿の良さを感じました。ろうそくの火のような小さな希望が、めぐりあわせの妙と理不尽の嵐に巻き込まれてあっさりと消えてしまう…というより燃やし尽くす大きな炎になるような感じを受けました。じっとりとした現実に反して、葬列のシーンはかわいらしく少し幻想的で静謐さすら感じ、苦しいお話の中でも、そこに加わる・包まれることで救いのようなものも感じ、後味が不思議と苦しいだけで終わらない、美しいなと思います。容赦のない絵本。面白かったです。
『船を待つ』大阪公演
ミクニヤナイハラプロジェクト
扇町ミュージアムキューブ・CUBE03(大阪府)
2023/12/21 (木) ~ 2023/12/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ずっと遠く、ずっと昔、を思い遣るような、すぐ隣のことやものを思うような、さみしさやなつかしさを感じながら観ました。身体含め空間丸ごと美しくて沁みいりました。想像をしていたより身体だけでなく台詞の応酬がエネルギッシュで、目の前でその緩急を浴びるのが心地よかったです。自分がぼーっと見てただけかもしれませんが、色が薄墨のように見えたものが、光源が変わって実はとてもカラフルだったのがとても驚きました。