Plant M №11『君ヲ泣ク』/匿名劇壇第八回本公演『戸惑えよ』
PLANT M
アートグラウンドcocoromi(大阪府)
2016/09/22 (木) ~ 2016/10/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/09/24 (土)
ジワジワ染み出てくる異常な設定は掴みとしてとても面白く、その展開を楽しんでいたら… それがあるシチュエーションを作るための口実に過ぎない(と思うんだけど)っていうのが更に大胆。そこから生まれる問答は役者に対しても観客に対しても極めて挑戦的に思える。感情と理性の境はどこにあるのか…、理性にコントロールされた感情表現の是非とは…、感情を失っても行動原理は必ずしも理性に沿っているわけでも無さそうで…、そんな悶々と思考を巡らせる時間が楽しい。
そしてラストシーンは見事と言う他はなかった。役者怖ええ。
+DOCTOR〜ヤブ医者大爆発〜
ホチキス
大垣市スイトピアセンター 文化会館(岐阜県)
2016/09/17 (土) ~ 2016/09/18 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2016/09/17 (土)
徹底してエンタメ。ちょっと古風な感じもしましたが、様々なキャラクターとネタが雨あられと降ってくるので、終始楽しめました。
お一人、声を出さない役者さんがいましたが、どうもご病気の様で、でもそういう状況を逆手に取ったウマイ演出をしていたのが印象的でした。
みちゆき
公益財団法人愛知県文化振興事業団
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2016/09/09 (金) ~ 2016/09/12 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/09/10 (土)
予備知識なしで臨んでしまったのは、やっぱり失敗だったかな。昨年も思ったけど、AAF戯曲賞で大賞まで取るとなると、普通の芝居とは一線を画すのは自然の理。戯曲が公開されているのだから予め読んでおくべきだった。来年まで覚えていられるか、この気持ちw
お前は誰だ。一体誰に語りかけているのだ? 色々想像させ、様々なものを揶揄するかの様な、思わせ振りで何か言いたげな、パッチワークな会話の雨。全てが遠まわしの様でいて … 終盤、遂には傍観していた観客にあからさまに語りかけ対峙してくる。そればかりか、喉の奥に手を突っ込まれて「日頃、口から出さない何か」を引き摺りだそうとしてくるかの様な圧力。言葉の占めるボリュームが大きいにも係らず、理解するのではなく、体感する感触の強いお芝居でした。
霊長類 南へ
perky pat presents
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2016/09/01 (木) ~ 2016/09/05 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/09/04 (日)
(俗説らしいけど)レミングの集団自殺さながらの終盤のシーンは一番印象に残りました。それも含めて、「危機における人々の行動」の表現に時代の流れを感じます。
これを引き合いに出すと笑われるかもしれないけど、シン・ゴジラでのソレとひどく対照的なものを感じました。確かに冷戦のあの時代は、ひとたびコトが起こればこうなるであろうという漠然とした怖れがあって、これも一つのリアル。
それは実態としては今もあまり変わらないのかもしれないけど、一方で震災と原発事故を同時にくぐり抜け、そこで身を危うくしてでも自分の務めを全うした人達が数多くいたことを思えば、シン・ゴジラでの人々の振る舞いも、また厳然としたリアルだ。
どっちが良い悪いでも、正しい・間違いの話でもなく、純粋に両極の筋書きで双方に理があると思う。ただ、その2作の間に、現実の「未曾有のパニック」が実際にあったことを思えば、時代の差かなとも思えるのです。
ことばのあや
.,5(てんご)
G/Pit(愛知県)
2016/09/02 (金) ~ 2016/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★
静かに交わされる会話で進む3作。派手な動きが一切ない中、固唾を呑んで役者の仕草を間近で見守る贅沢な時間。
舞監兼アフタートーク司会兼ゲストの堀江さん、初見の観客にはなかなか気付けないことを話してくださって、良かったわ~。
(以下、ネタバレBOXに作品個別の感想)
小説家の檻
廃墟文藝部
千種文化小劇場(愛知県)
2016/09/03 (土) ~ 2016/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/09/04 (日)
SF短編的な切り口の設定が私の趣味にドンピシャ。そこにコンタさんおハコの「人の内なる欲望との対峙」系のお話と最近の短編で定番の口当たりの良い女の子系のお話がバランスよくミックスされた印象で、いわばコンタさんの表裏明暗を注ぎ込んだ集大成にも見えた。
作中の創作技法は私にはとても興味深く、動機はさておき裏地の発想とプロモーションはまさしくコンタさんの分身を思わせてワクワクしたし、内山さんの個性が遺憾なく発揮されて胡散臭さ満点。行く末は破滅しかありえず残念だけど、お話としてはキレイにおち、裏切るべきはしっかり裏切って安易に救うことはせず、池場さんが最後に笑顔で作家の業をみせたとこが非常に印象的でした。
そして廃墟文藝部は芝居の周りを彩る異才が充実。私はBGMを1度で記憶に残せない体質で、今回サントラパンフの解説がむっちゃ嬉しい。聴き返すといちろーさんの音楽が確実に芝居の空気を支配していたのが私にも伝わる。
つらくもさんの"みえてちゃんグッズ"の数々も公演前後のロビーを楽しく彩り、廃墟文藝部は総合エンタメとしてホント充実ね。受付開始からロビーに居る価値の高い稀有な劇団。
第5回名古屋学生演劇祭
第五回 名古屋学生演劇祭
うりんこ劇場(愛知県)
2016/09/03 (土) ~ 2016/09/05 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/09/03 (土)
全般ですが、ドコも頭抜けするトコまでいかず、良い意味で"拮抗した"というとこですかね。
笑いの「喜劇のヒロイン」、纏まりとキレイさで「星めぐり」、演技で「spoon」と「ひとひらり」、カオスさで「ハイエナ」、真面目さと演出で「野坊主」ってのが私の好み。
以降、ネタバレBOXに個別の感想。
INDEPENDENT:3rdSeasonSelection / JAPAN TOUR
INDEPENDENT
四天王寺スクエア(三重県)
2016/08/27 (土) ~ 2016/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/08/28 (日)
大阪でセレクション10作品は観ていますが、トライアル2作も観たくて、津に来ました。
(個別の感想はネタバレBOXへ)
蛋白質とエニグマ
右脳中島オーボラの本妻
G/Pit(愛知県)
2016/08/19 (金) ~ 2016/08/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/08/21 (日)
劇場に入ると異空間に放り込まれた感覚になるのは昨年の行進曲ゲルニカと同様・・・いや、更にインパクトを増している。相変わらず何一つ「理解できた!」と実感できるところは無いんだけどw、分からないことに楽しみを感じられる稀有な作品。
繋がりの読み取りにくい言葉の連鎖に呑み込まれて、ちょっとトランス状態に入っちゃうよね。早口言葉戦とか俗な趣向もそこかしこに散りばめられ、多彩な楽しみ。ラストシーンの止め絵で客出しまで微動だにしない役者陣がカッコ良かった。
もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら
青森中央高校演劇部
三重県文化会館(三重県)
2016/08/20 (土) ~ 2016/08/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/08/20 (土)
舞台美術なしのところを、モブだけではなく背景から効果音から動物から…ありとあらゆる芝居の構成要素を全て役者群の肉体でこなす。ビックリするほどの群集が目を惹くお芝居で、高校生演劇らしさを感じる一方、その群集を構成する個々が群衆に呑み込まれずに個性を放っているのが印象的。一瞬の出番でウケを狙うかの様な見せ場を創出しているのに好感。
演技も本家・青森中央高の練度はもちろん見事で、ウォームアップのミニ演目からして感心することしきりでしたが、3日間であの完成度まで仕上げた三重選抜のポテンシャルにもビックリでした。
新栄トワイライトvol.8
新栄トワイライト
Club Rock'n'Roll(愛知県)
2016/08/18 (木) ~ 2016/08/18 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/08/18 (木)
5本が非常にバラエティに富んでいて、とても楽しいひと時でした。個人的には、通常ぼっち観劇となる"観る専の人"の縁が結実してw、会場でこんなに会話したのは初めて。そんな時間がとれるのもライブハウスでやる新栄トワイライトならではね。
(以降、ネタバレBOXに作品個別の感想)
アングリーアングラー
試験管ベビー
G/Pit(愛知県)
2016/08/12 (金) ~ 2016/08/14 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/08/13 (土)
アングリーアングラー:感想】手堅い笑いと人情漂う良作。話をかき回す三芳さんと佐川さんが面白く、またいつになく(?)加藤さんが可愛かったw 試験管ベビー特有の観客とのコミュニケーションも楽しい。三芳さんをしっかり受け止め、最前列ながら餌撒きもしっかりハイキャッチw
もしもアイツがココにいるなら(男ver.):感想】らしくないカッコつけが可愛く映る長屋さんがなかなか面白い。開き直りを促す結果になる角さんのいやらしい芝居も良い味で、更にそこを突き抜けたラストの長屋さんの振る舞いが良いオチでした。
もしもアイツがココにいるなら(女ver.):感想】存命中はかなりすっとぼけた人物であったろう故人を巡る女性三人の物語がえらく生々しい。友情が芽生えたかにみえてあっさり裏切る展開がテンポ良くてよかった。ラスト後の修羅場…ないし人間関係の更なる機微がもちょっと見たかった。
猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方
劇団ジャブジャブサーキット
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2016/07/28 (木) ~ 2016/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/07/30 (土)
何とも多様な団体・個人・過去・現在が入り乱れ、思わせ振りなセリフのオンパレード。発散気味の展開が繋がるケースの爽快感よりは各種モヤモヤの募りの方が多いけど、どうもそれは意図したものの様です。
モヤモヤ・ボンヤリとした感覚のまま、好き勝手に脳内ドラマで補完して、素直に役者達の「死亡フラグ的名ゼリフ・名演技」の数々を楽しむべき…ってトコかな。
「いきなり最終回」的な味わいで楽しかった。
INDEPENDENT:3rdSeasonSelection / JAPAN TOUR
INDEPENDENT
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2016/07/14 (木) ~ 2016/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
遂に東海から飛び出して一人芝居の祭典を目の当たりにしてきました。5年分のセレクションだから面白くないわけがなく、感動ひとしおです。
(以下、ネタバレBOXに個別の感想)
ファッツァー
地点
アンダースロー(京都府)
2016/07/15 (金) ~ 2016/07/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/07/17 (日)
愛知芸文でDVDで見せてもらった作品を遂に生で。
レパートリーのアトリエ公演があるって素晴らしい。
独特の発語!器楽の生音!シンクロして明滅する光!方向を錯覚する吸引力ある所作!客席含めたアトリエの雰囲気!
そこにある全てに身を浸して、まさしく"体験"のひととき。
言葉を寸断する音、重力に翻弄されるアクション、織り成す影、全て戦時という時代に擬えたかの様な圧迫・不自由・束縛感が息苦しく舞台を包み、臨場感たっぷり。
特にアクションは河野早紀さんが圧巻。実は話の筋は簡単には頭の中に入ってこず、生半可な私には外部からの補強が必要なのが実態だけど、様々に組み合わせられた芝居と演出効果で、過酷な環境が生む「人間関係の破綻と絶望感」が直接皮膚から伝わってくる感覚がある。圧倒的体験。
『今日(こんにち)の判定』、『ソコナイ図』
dracom
アトリエ劇研(京都府)
2016/07/15 (金) ~ 2016/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/07/17 (日)
ソコナイ図:感想】餓死の過程を描く異色作。元々が貧困層でもない姉妹をそこに至らしめた理不尽かつ無関心・無責任な社会構造… なんてのも背景として表現はされるが、・・・(以降、ネタバレBOXへ)
今日の判定:感想】とある架空のスポーツが舞台。プレーヤーの意気込みと緊張感を漂わせ進行する熱戦 … だが観客には"ルールが明かされていない"のが肝。
・・・(以降、ネタバレBOXへ)
蛇はどのようにして冬を越すのか
弱肉強食ホエールズ
G/Pit(愛知県)
2016/07/16 (土) ~ 2016/07/17 (日)公演終了
満足度★★★
なかなか他で観れない作風。エロネタはあくまで理解しやすい表向きのネタ。妹以外の登場人物もそれなりに偏った思考に取り憑かれ、健常者の体を装いながらも何かがおかしい。そして、それが実際には一般的な事なのだろう。意図せずそれが障害・異常にカテゴライズされることの恐ろしさを感じる。それをギャバさんの役が体現してた。伝えたいことは無いとギャバさんはパンフで書いているけど、色々とモヤモヤを湧き立たせる良い余白のある作品でした。vol.2希望(^O^)/
個別には、平林ももこさんのパニック障害の芝居が壮絶で見応えありました。セリフ言っている人を差し置いて思わず視線奪われる。
タイヨヲさんはなんかダメ男演技に益々磨きが掛かっていて役者としての練度高し。こういう芝居できる人好きだ。
鵜飼さん、整形・豊胸を"治療"と断じた時の"悲愴感を感じさせない堂々っぷり"が素敵。ラストダンス、あおきり勢に置いていかれる展開も面白かったな〜( ´ ▽ ` )ノ
荒川、神キラーチューン
ロ字ック
穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)
2016/07/09 (土) ~ 2016/07/10 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/07/09 (土)
時間と人物を行き来して目まぐるしく展開する脚本、多数の役者が怒涛の様に舞台を駆け巡るダイナミックさと心情を託したカラオケ選曲で空気を作る演出に目を見張った。
(以降、ネタバレBOXへ)
欲しいと言ったり、嫌だと言ったり
よこしまブロッコリー
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2016/07/01 (金) ~ 2016/07/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/07/02 (土)
物静かな佇まいを演出する音響と照明。とくに木漏れ日を想起させる照明が観客を舞台の空気に浸らせてくれました。(以下、ネタバレBOXへ)
エダニク
iaku
パティオ池鯉鮒(知立市文化会館) 花しょうぶホール(愛知県)
2016/07/02 (土) ~ 2016/07/02 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2016/07/02 (土)
開演前、物販のお姉さんが過去作の紹介で「どれも口論する芝居ですよ(^-^)ニッコリ」と身も蓋もないこと仰ってましたがw、日常会話から見え隠れし、徐々に明らかになる「当人のコダワリとシガラミ」をベースに展開する口論には双方とも一蹴できない重みがある。
当初は「何言ってんだ、この人」みたいな発言にも、ジワジワ意味付けされていく構成は手堅く心地良い。そこに真実味を添える役者の芝居も巧みでした。この手の題材での口論では、現場に居ない方の理論は「甘い」だの「現実を知らない」だの「机上の空論」だ言われて一方的に片付けられて終わりそうなもんだが、それを譲らずに終わらせられるバランスを備えていたのが面白い。その意味で福谷さんの演技は重要で上出来でした。分かり合うでなく各々の主張を貫く3人が、口論と騒動の果てに形作ったものが…社会ってヤツだよねぇ。