I元の観てきた!クチコミ一覧

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「追悼」「たとえば明日の世界から~『星の王子さま』より~」

「追悼」「たとえば明日の世界から~『星の王子さま』より~」

劇団ひとひらり

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2017/01/28 (土) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★

追悼(劇団ひとひらり)】過去にいわくありげな三姉妹の確執から、家族が繋がりを取り戻すまでを描くかに見えた前半… 割とありきたりな筋から一転、サイコホラーの色合いを強く帯びる後半に安堵。(私もかなり頭おかしいw)
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たとえば明日の世界から 〜『星の王子さま』より〜(豊橋南高校 with 劇団ひとひらり)】ホシノさんの存在感が印象的。冒頭でクラスメートがガヤガヤ騒ぐ中、後方で黙って佇んでいるだけなのに、目を離せなくなる不思議。
外見に何の変化もないが、小中高と年代を経るのを…後から記号的に理解していく仕組みも面白い。終始出てくる「美術の先生」のギャグにも繋がっているのね。

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ネタバレBOX

追悼(劇団ひとひらり)】(続き)面白いのはサイコパスが順に役にバトンパスされていくことで、何だ、この人たち皆おかしいじゃね~か…って思わせる構成。最初に一番サイコパスっぽかった岩田が一番マシに見えたのが印象的。
最終的に狂気を一身に担った次女の心持ちには、長女との因縁が影を落としているとは思うが、そうなった経緯がもうちょっと描かれると必然性が腑に落ちて後味すっきりすると思う。ただ、分からない方が狂気感が増す気もするね。
最後の演出は、幕のかぎ裂きや色合いに色々と想像を誘われて良かった。
なお、このネタ、現代なら全く違和感ないが、敢えて戦時中を舞台にした意図が興味あるところ。
あと、話の核心を握る謎の男性を、結局、舞台に登場させなかったのは面白い。お陰で色々、突拍子も無い方向にも想像を膨らませてました。(観てる最中、長女の男装説・性転換説まで可能性を考えてたw)
役者。綺麗どころ3姉妹、バランス良かったね。皆、歳そんなに変わらないんだろうに、関係性がしっかり滲み出てた。特に、全編で純朴感を醸してた杉浦さんが、最後に狂気を表出した瞬間が印象的。
岩井さん、存在感不思議。独特の雰囲気としゃべりは面白いね。掛け合う田中さんもピントずれてる感が可笑しい。

たとえば明日の世界から 〜『星の王子さま』より〜(豊橋南高校 with 劇団ひとひらり)】(続き)星の王子様はちゃんと読んだ事ないけど、原作における「大切なもの」と、学校での処世を重ね合わせているのだろうか。今回の「大切なものを忘れる」という事象は、新しく流れてくる環境に順応するためにオーバーフローする分を切り捨てる、いわば「適応性」の側面があって、周囲の存在や事象が、必ず個人の容量を超える以上は避け得ないことだよね。作中でフォーカスされること以外の事象も考慮すれば、何の選択をしても何かしらの後悔を含むので、せめて選択した方向に喜びを見出そう…。空虚感と物悲しさが漂う最後の「頑張ろう」に、そんな気持ちが込められていると信じたい。
劇本II~劇王アジア大会東海地区予選~

劇本II~劇王アジア大会東海地区予選~

日本劇作家協会東海支部

長久手町文化の家 光のホール(愛知県)

2017/01/21 (土) ~ 2017/01/22 (日)公演終了

満足度★★★★

台本見ながら、朗読聴きながらの公演は、私には新鮮でした。
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ネタバレBOX

In the beginning(ニノキノコスター)感想】小気味よい会話とラップが純粋に楽しい。そこから踏み込んで、笑いに潜む病んでる感覚が私にはツボ。序盤から登場人物の立ち位置に悩み、オトしたと見せかけた後に解釈の多様性の余白を残す2段オチが印象的(配付台本未記載!)

下校の時間(長谷川彩)感想】言葉遊びとコミュニケションの妙を楽しんだ。その口調に、まるで韻でも踏んでいるような趣を感じるのが不思議。チャラい言葉の言外に、終始漂う隠された感情の匂いが長谷川彩さんの真骨頂でした。意外に楽しい要素が多いのが印象的。

そい(舟橋“委員長”慶子)感想】徐々に明らかになる二人の過去、立場、思惑。有名童話を礎としながら現代感を織り込んだり、イントロへの先入観をひっくり返す終盤の仕込み等、お話としてとても楽しめる構成。演出と役者が加わり、二人の空気が伝わると、mみたいにグッと面白くなる予感。

彼の聖域、彼女の靴底(長谷川公次郎)感想】心の病と紙一重の心理。傍から見れば何でもないことに、内心で大きな盛り上がりをみせる「迫る聖域」が面白い。演出が加わって、臨場感とサスペンス感が備わると、病的に面白くなりそう。公次郎さんのプレゼン、聞きたかったな。

B-A-C-H(天野順一朗)感想】親子で交わす珍問答がイカス。思わせぶりな展開から、転げ落ちるようにトンデモネタに堕ちていくお話に「選べるモンなら選んでみろ」という挑戦の姿勢を感じた。凝ったタイトル、バッハ主題に潜む解釈に注目したが、あまり重要な仕込みは感じなかったな。

ななめ君はななめ(後藤章大)感想】あゆみちゃんには、もっと狂気が潜んでいるのかと思ったが、そんな暗黒面には行きそうで行かなかったね。意外に純真さが強く響く後味。コンタさん、ななめ君の芝居が絶妙でココだけ朗読じゃなくガチ芝居でした。ト書き読まずに芝居で演出するのも大胆。

無伴奏組曲(鏡味富美子)感想】ノンバーバル志向はアジア大会向けとして頷ける。ただ、この話でそれが成立するかは興味のあるところ。妻の背景に共通認識がないと後味の悪い只のダークな話で終わるが支持は思ったより高いね。それが昔ながらの夫のイメージか。砂時計の使い方に趣があった。

"衝動的コミュニケーション(台越竜太郎)感想】さりげないドンデン返しの台詞でギョっとしたが、一人称でミスリード誘われてたんだよね?
男性とは思えぬ視線でお話を書くお方だが、今回もやってくれた。惜しむらくは、話を練り・拡げる時間が無かったと思われ、未完成の印象が一番強い。

日本代表(中内こもる)感想】安定して面白いコント。台本だけ聴くと、流れ的に日本代表は取って付けた感があるが、あのオチなら、序盤から男Aの挙動に色々潜ませるのがキモなんだろうな。やっぱコントは演出と役者が入ってからが本領発揮かな。

怪盗パン(渡山博崇)感想】聞き覚えある人名が沢山出て、某作品をかなりしっかり下敷きにしている模様。それでいて何やらアンチテーゼを突きつけるかの印象。終始出てくる「足の裏の感覚」が背負った原罪の様な重みを感じさせて奥深い。渡山さん、今度は名作劇場にダークの冠を被せるのか。
車窓から、世界の

車窓から、世界の

iaku

四天王寺スクエア(三重県)

2017/01/14 (土) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

舞台は地味なプラットホーム。日常の様でいて何か違和感含みのイントロ。恋人同士の関西特有の他愛の無いやりとりから、見え隠れし始める異常事態。固唾を呑むとはこのこと。原因定かでない悲惨な事件を核として、次々と剥がれて見えてくるショッキングな事実。サスペンス感だけで相当な重みだが、その実…やはりiakuの十八番、議論芝居の真骨頂。

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ネタバレBOX

「己れの影響で、大切な人達が取り返しのつかない…想像を絶する行為に及んだとしたら…」
各々の立場で心揺さぶられ、持論を、疑問を、心の葛藤をぶつけ合う人達。世の中に情報として溢れる「生き死に」と言うものに対する自分の距離感をも自問させる。周囲の出来事を自分の主義主張に無理に紐づけて、都合の良い持論を展開するいけ好かないPTA副会長が出てくるのだが、悲しいかな、この人の見方が世間一般であったり、立場が違えば自分自身に投影されるものなのだと窺わせる…シビアな客観視。
何かを介した、リモートや間接的な関係構築に慣れきった現代人に「傍から見ているだけでは人の心は何も解らぬ」とも囁く。

そして安易な結論など提示しない。救いも与えない。ただ翻弄され、抗い、足掻き、言葉を闘わせ、甘さを叱責され、打ちひしがれ、重きを背負い、歩いて行く… そんな姿を見せつけて話は終わる。

臓腑を抉られる感覚。せつない、いたたまれない、それでも彼らは…、私たちは生きていかねばならぬ。横山節をズッシリ堪能しました。エダニクよりも更に肌に合いました。

観る人によって、登場人物の誰の立場に自分を投影するのかで、感じ取ることが相当違いそうな気がします。
ラブハンドル

ラブハンドル

演劇ユニット日常

ナンジャーレ(愛知県)

2017/01/14 (土) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★★

舞台の出来に比して、その価格設定や高校生無料企画等、「惚れ込んだこの既成脚本で芝居を作りたい、そして少しでも多くの人に観て欲しい」という作品への愛と執念を感じる。
実際、その熱意は見事に役者に憑依し、生活感あふれる事実婚カップルを軸に、テンポ良いコミカルな遣り取りによる笑いと、印象的なセリフを散りばめた情感的で泣かせる芝居を両立させていて素晴らしかった。
起伏が激しく、中盤以降ガンガン事態を引っくり返していく展開は飽きさせないし、要所で心情を訴えかけるシーンも巧み、そこからの盛り上がりをラブシーン一辺倒でなく、必ず照れくさい笑いに引き込んでいくのも好み。

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ネタバレBOX

個人的に『貴方といると寂しい。貴方が愛しているのは自分自身だけだ。・・・』というくだりはかなり刺さって、倦怠感や心が離れつつある関係性に真っ向から刃を突き刺すものだったから、リカバリィに非常に期待が高まった。

ただ、(ここから既成脚本のみへの不満)この歳月を経たパートナー間に立ちはだかる「エゴ」との対峙を期待したのに、非常事態による極限状態に登場人物を放り込んで、この問題解決を有耶無耶にしてしう展開になったのが残念。たぶん、盛り上がりとしてはこれで良かったのでしょうが、失う危機に晒されて相手の優先度を上げるなんて刹那的な反応でしかないので、問題を先送りにしてしまった…と感じました。「結婚しておけば良かった理由」にもツメの甘さを感じて、ノリ重視のなんちゃって設定だとしても、弁護士なんだから最後だけは言葉をもっと大切にして欲しかった。そこまでの良いデキ故に、画竜点睛を欠く印象を残しました。(あくまで既成脚本にね。)
ルート67

ルート67

劇団あおきりみかん

昭和文化小劇場(愛知県)

2017/01/13 (金) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★

懐かしき少年ジ○ンプの匂いが漂うハチャメチャ感。大道具とも一体となった疾走表現、進化した3D表現。珍しく客演も取り込み、活かしたコメディ…で終わらないところが鹿目さんですね。エデンの東側をちょっと思い出す作風。近藤絵里さんのヒミコ役がツボった。

キネマとコント

キネマとコント

順風男女

G/Pit(愛知県)

2016/12/21 (水) ~ 2016/12/23 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/12/23 (金)

春の順風女子に続いて、実質2度目の観劇。
公演的にパワーアップしてる感あり。
今回は4DXでかなり+αの楽しみを与えていただきました。

(以下、ネタバレBOXに作品別の感想)

ネタバレBOX

[0]オープニング:感想】キャスト顔見せとコンセプト紹介を笑いに包んで軽くジャブ。
キャプテンハーロックの様に全編に出てくる摩美犬がツボ!
井口さんの洋画女優ぶりが非常にノリノリで面白かったが、これはただの序章に過ぎなかった(=゚ω゚)ノ

[1]発明王:感想】メドレー的に名作をどっかんどっかん突っ込んでくるバラエティ的な展開。
オープニングに繋がる流れで見応えある。この1本でかなり4DXを満喫したな~。7年目の浮気とE.T.は楽しかったよ~。

[2]助監男女:感想】人を喰ったようなオールスター助監軍団の、わらわら出てくるザコ感と真夜中の小人さん達の様なナイス連携が肝やった。

[3]プリティーウーマン:感想】KIMYO山本さんが弄ばれる順風女子コント。アドリブを彷彿とさせる女優陣の演技とリアクションが愉快。退場していくときの女優陣の捨てゼリフ達がイカしていた。選ばれるのはネタ毎のランダムなんやろか。他のも観たかった。

[4]不器用ですから:感想】伊達男の風貌と内実のギャップがツボ。意外性のある組み合わせを多用するところが面白いし、飽きさせない。

[5]そしてロになる:感想】元ネタは知らんかったけど、言わずともそれと分かるトリチガエの予感から、想像もつかないチリチガエに展開した後、一挙手一投足にギャップが生まれて終始笑いが込み上げる。話の筋としては本公演で一番面白かったかな。

[6]コロス:感想】不条理感ある言葉あそび。KIMYO山本さんのうろたえる姿が、笑いを引き立たせる。

コレは参考映画が示されてないんだけど、ターミネーターあたりかな・・・

[7]ホラー映画4DX:感想】これは本当にまったく予想し得ない展開。うわぁ、ウザイ。こんな4DX要らん(笑)
な~んか、カップルの役者がアドリブ対応の様にも見えたんだけど、毎回キャスト変わったりしたのだろうか。

[8]五月のユリ:感想】井口さんの怪演(その2)
こういう役、似合うなぁ~。形態模写的な芝居、ホント上手いですね~。
そして、マックロクロスケの仕込み、恐ろしや。これを知った上でもう一度観てみたかったわ。細いトトロも小さな子にはトラウマになりそうなキモさで良かった。

[9]ゴジラ対ゴジラ:感想】井口さんの形態模写的な芝居、究極の第4形態か?
トンデモ英語が私のツボすぎます(=゚ω゚)ノ
TPPをPPPAにしてやる意気込みの大統領パパも最高でした。映像の使い方も絶妙ですね。小美人イクヨ&クルヨが素敵。

[10]東京キネマクラブ:感想】何?コレもアドリブ?
チャレンジングだなぁ。全然説明できていないところが凄い。他の映画が引かれてたら、また別の展開になっていたのだろうか。ライブの面白さですね。

[11]ムービースター:感想】今井さんの壊れたストーカー風キャラが秀逸。
突然、無機質的に表情が変わる・・・不意を突かれる感じが、むっちゃ怖い、マジ怖い(笑)

[12]シャイニングさん:感想】基本は一発芸のハズなのに、何たる中毒性。本公演で一番印象に残った。足立さんのあまりガッつかない淡々とした所作とさりげない笑顔、音響の完璧なタイミング、井口さんのツッコミに秘密がありそう。
)))]゚Д゚)[((((
シャイニーーーング!

[13]贋作・天国と地獄:感想】これも原作知らなかったので、今、あらすじ見たら、「なんでこうなるねん」っていう突拍子もなさがある。
いやぁ、この人、誘拐は絶対向いてなかったよね(笑)

[14]座口市:感想】辛口コメントで人を斬るコンセプトは最高。ただ、辛辣に成りきるには原田さんがちょっとカワイ過ぎたかなって惜しさがある。
・・・いや、だからこそ許されるのかもしれぬが。

[15]導線に入る:感想】う~ん、動線じゃないのか、コレ。いや、デロリアンの走行後は火が走るから、導火線と掛けてるのかな。鑑識2人組のボケ・ツッコミが肝で、笑いもしない表情が良かったです。
後、物量で攻めてくるマーティとドク軍団。こういうの集団コントの醍醐味だよね。

[16]キネマとコント:感想】コンセプトで〆るエピローグ。似てないと思ったら自分で「松尾伴内」ってツッコんじゃうとこ好きだなぁ、ココ。
偶然の旅行者

偶然の旅行者

エス・エー企画

G/Pit(愛知県)

2016/12/15 (木) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/12/18 (日)

歌謡曲のフレーズを繋ぎ合わせたと思しき台詞の数々は、原曲を知っているものは懐かしさで楽しいし、知らなくても不思議な言葉の繋がりを感じさせる興味深さがある。一言一言が言ってみれば決め台詞であり、畳み掛けるようにそれが続くから、常に叙情の山場みたいになっちゃって、訳も分からず自分が流されていってしまう感覚がありました。すごーく意味ありげな言葉の数々なんだけど、話の中での位置づけに自分の実感が伴わないまま、煙に巻かれた気がするなぁ。理解はおっつかなくても、その雰囲気に漂うだけでも濃密な時間でした。
舞台美術がとても素晴らしくて、崩れて境界が曖昧なつくりが、逆に広がりを感じさせたり、風化して消えゆく過程を感じさせたり。照明と相まって、印象が変わっていくのも素敵でした。

ドアの向こうに広がる

ドアの向こうに広がる

大名

ナビロフト(愛知県)

2016/12/16 (金) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/12/18 (日)

毎度、外部の脚本家を引き込む大名さん。人選でバリエーションを変えられる強みを今回も感じました。見かけ以上の毒を潜ませ、色々考えさせられた前作・お家族から一転、オシャレな大名テイストはそのままに、とても優しいお話に仕上がっていました。

(以降、続きはネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

仮想現実の世界に引き篭る設定は、SNS等での人間関係が軽んじられない今の社会にマッチして、勝手に自分を映し出す鏡になっちゃって面白い。
早々に明らかになっていく2人のカオルの関係と、2人のシンクロする演技とか、描写がいい感じやったな。
独りよがりな質の追求の末に大切なモノを失ったカオルが「相手の顔を見れていなかった」と後悔するくだりが、色んな現実に投影できて良いわ。
悪意を持った者が一人も居らず、他人のせいにできないシチュエーションは、絶望に陥るに足る説得力があった。
魂が幾度となく象徴的に語られるけど、従来パターンの『魂が電脳世界に固着して現実に帰れない』から一歩踏み出て、アバターからも遊離して行方不明になる状況はちょっと斬新。何のかんの、現実と電脳はもはや等価に扱われている雰囲気が印象深い。
隠し玉の主軸、ノード(アンドロイド?)の扱いが利いている。カオルの「命令、初期化、再起動」という台詞が拒絶の象徴として印象的だったし、魂の有無の話もまた然り。山場の「命令拒絶」は、魂の有無の見解ぞれぞれに寄り添える背景が用意されて上手い。
引き篭りが、自分でなく、自分の大切な人にこそ深刻な危機をもたらす状況を描いたのに好感。分かっちゃいるけど応えられない「自分のため」という正論に応じるのでなく、自暴自棄も許されぬ、本当に大事な他者への想いに突き動かされる結末には説得力あり。彷徨った魂が戻る仕組みは今ひとつモヤっとしたままだけど、収まるべきところへ収まっていき、尚且つ今の(仮想現実の)関係も大切にしていくエピローグはとても心地よかった。
僕たちは、世界を変えることはできない

僕たちは、世界を変えることはできない

夕暮れ社 弱男ユニット

三重県文化会館(三重県)

2016/12/18 (日) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/12/17 (土)

「芸術で戦争を変える」と言って飛び出すモヨコの掴みのインパクトは絶大。
文字通り反戦芝居が始まるのか、はたまた破天荒アーティストが暴れまわるのか…と身構えたものの、そこにあるのは、"双方"をあざ笑うかのようなシニカルさ、非現実感、そして、… 拡がる無力感の演出が非常に印象的でした。

戦場でのモヨコの最後のセリフにも、色々な含みを感じました。
そこから最後に放り込まれる… 一転、現実味を醸すラストシーンが良い味。最後に、蜂の一刺しでした。落差が良い。

あと、本人がそこに居るのに、敢えて変わり身を使う演出とか好き。

シェイクスピアなんて知らない

シェイクスピアなんて知らない

劇団クレスト

津あけぼの座(三重県)

2016/12/16 (金) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/12/17 (土)

メイドが集まらぬ瀕死のメイドカフェで、なぜか演劇カフェとして起死回生を図るトンデモ話。古典の戯曲は硬すぎると、トンデモ演出を加える辺りはクスリと笑ってしまうポイント。そして、三橋の人型最終決戦兵器的なメ○ド姿の爆発力に、思わず劇場を逃げ出したくなりました(笑)

そんなドタバタから一転、後半で徐々にシリアス風味を帯び始めるところは良くって、特に「果たして自分は周りの情報に左右されずに、純粋に作品(歌)だけを見ているか?評価しているか?」と考えさせるくだりは好きです。
ただ、そのまま辛辣な展開になっていく所までは良かったんだけど、そこからの「救い」がややありきたりに感じられたのが、ちょっと惜しかったかな。

はきだめ

はきだめ

カドワキ企画

津あけぼの座(三重県)

2016/12/10 (土) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/12/10 (土)

友人知人の他愛もない会話と漫才の様なオーバアクションで引っ張る前半。かなり時間を掛けてそんな芝居だと慣らされたところで、一転突きつけられる その時空の異常性。そこに気付かせてくれる一瞬の落差の演出が好きです。その為にあの前半があったと思えば、あの長さも納得。そして、その引き金としてキャリアの違う小菅さんを持ってこれたのは素晴らしいという他はない。空気をガラッと変える恐ろしい威力でした。

転じての後半。異常事態の事象・背景を一つに留めず、時空の捩れ、霊、成仏、転生等々の複数の可能性を想起させるピースをガンガンぶち込むことで、色んな含みや繋がりを想像させてもらって楽しかった。もっとスッキリ観せる余地もあるんだろうけど、観た後も想像の中を漂う感覚も観劇の醍醐味ですね。未練に纏わるアレコレはシリアス・コメディ両面で面白かったし、図らずもシモネタ扱いされるキーワード等、小ネタも楽しい。

今回、作りこまれた駅ホームの舞台美術が、私は大のお気に入りで、「これでも抽象美術のつもりで作りました。」、「2日で作りました。」と後で伺って目を丸くするばかりです。実物で見れて良かった。

虚仮威

虚仮威

柿喰う客

三重県文化会館(三重県)

2016/12/02 (金) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/12/03 (土)

私の柿に対する"今まで"の印象はエンタメ・ビジュアル重視だったんだけど、今回はそれプラス、どんでん返し的なシナリオと、そうと感じさせずに張られた伏線、その連鎖・回収により溢れ出る物語の奥行きが見事で、柿に対する認識を改めました。

終盤にバチバチバチッと繋がっていく過去の出来事の裏と心理。
今の今まで観ていたモノ・理解していたものが表裏反転する瞬間!
そこまでの予定調和を覆される驚き!
物語の醍醐味だねぇ、堪えられない面白さでした。

他、象徴的な舞台装置は縦の展開に有効に機能し、どの席からも観易い観客フレンドリー。
話に支配されない衣装もビジュアルとして見映えしながらも、どんな世界の転換も取り込む素舞台的性質を感る。

役者の演技も見応えありました!

天使も嘘をつく

天使も嘘をつく

燐光群

名古屋市熱田文化小劇場(愛知県)

2016/12/01 (木) ~ 2016/12/02 (金)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/12/01 (木)

言葉の物量で圧倒する主張と分析の奔流に呑まれる。その内容自体は大変興味深い。ただ、その強烈さ故か、ドラマは相対的に薄まって感じた。役者さん達の演技は見事だったんですが、言葉に圧倒されて、私がちょっと引いて見てしまったからかも。

(以降はネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

こういう対立は、どう綺麗事で飾ろうとも、所詮は双方の思惑のぶつかり合いでしかないと思っているから、抗争を楽しむかの様な高揚感で集団を描くのは、ある意味潔い。ただ、一方からのみ描いても信憑性を損なうし、観る人に疑心を生ませると思うんだけどなぁ。

最後の本音の主張は「そこまで言っちゃうんだ」と感心するレベルで最も印象的でした。そこまでいけば清々しい。そりゃあ相入れん筈だわと納得。

マナに纏わるミステリー的な要素が好みだったけど、そっちは過程があまり丁寧に描かれなかった気がして、少し残念。
「罪と罰」/「地下室の手記」

「罪と罰」/「地下室の手記」

第七劇場

三重県文化会館(三重県)

2016/11/26 (土) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/11/27 (日)

日台2言語混合の挑戦的な取り組みのお芝居2作。

ネタバレBOX

①罪と罰(第七劇場 w/ Shakespeare's Wild Sisters Group)感想】まっこと恥ずかしながら、私の知識と準備の不足で芝居にのめり込めなかった。日台2言語混合の挑戦的な取り組みで、役者の母言語によるセリフ発声と翻訳字幕が同時並行で進むのですが、最前列では役者と字幕が角度的に離れすぎることが少なくなく、役者の芝居とテキストを同時に追えない。自ずと斜め読みになるが、文体がやや分かり難いので、頭にしっかり残らない。自分の中で理解の悪循環を起こしてしまった。
私にバックボーンが足りなかったし、席も後ろに下がるべきだったか。(ド近眼だから、下がるのちょっと辛いけど。)
言語の壁さえ無ければ、雰囲気だけでも芝居自体は素晴らしく感じたし、字幕単体ではアクセントに工夫が凝らされて目を惹くものだったので、芝居の中身とは別次元の要因で私が落ちこぼれてしまった結果で終わったのが残念無念、後悔しきり。
そんな中でも、コロス的な豚さんの存在感が秀でていたのは感じました。

②地下室の手記(Shakespeare's Wild Sisters Group w/ 第七劇場)感想】「罪と罰」より字幕に頼る部分が大きいので、より困った状態に陥った私。シチュエーションからして呑み込めなかった(実感出来なかった)、恥ずかしい。
後々、webで粗筋を漁って、面白いなぁと思ったが、時既に遅し。
ネタバレを怖れて事前に情報を入れないことと、より深い理解を現場で得るために予習することのバランスの難しさを感じました。
INDEPENDENT:16

INDEPENDENT:16

INDEPENDENT

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2016/11/24 (木) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/11/26 (土)

普通の本戦を初めて観ましたが、セレクションの陰には、それに引けを取らない名作が相当数隠されているのを実感できるバリエーションの多彩さと充実さでした。幸福な時間でした。

(以降、ネタバレBOXに作品別の感想)

ネタバレBOX

(以降、観た順)

[t1]大阪湾の魚である青木道弘が人間に恋をしてしまった結果がこれだよ!(デジタルリマスター版)[青木道弘×けーあーるえりー]:感想】長げーよ、タイトルw 
不気味な装いと軽妙な語り口で観客を引き込む、コミカルで物悲しいお話。突拍子もない変化(へんげ)をファンタジーではなく、特訓と執念で成し遂げる様を丁寧に作り込んでいて面白い。釣針とか酸素スプレーとかの小道具の使い方、上手いな~。それだけでの笑みがこぼれます。そして、こんな風体なのに最後の最後で「月の光」に美しさを感じてしまって、やられたと思いました。
そして唯一、ラストのダイジェスト映像でタイトルが端折られてて笑った。

[b]熊埜御堂 [柴田知佳×小佐部明広]:感想】意外性大。踏み外すとリカバリーが難しい昨今の社会システムを背景に、若い頃に勘違いしてしまったプライド高いエリートの転落人生を綴る… 整理すると確かに正しくその通りなんだけど、まさか、このキャラクターで山月記のオマージュに展開していくとは予想できなかった。小気味良く笑いを誘う端々のネタと小さな幸せに満足しようとする様なんかに、うまくカモフラージュされた感があるなぁ。最後、吠えながら芝居を見せようとする、その壮絶な演技が、照明により大きく映し出される背後の影の迫力も相まって、目に強く焼き付きました。見事なエンディングでした。

[f]交響曲第九番~天国と地獄~ [野村有志]:感想】先の読めない導入部の展開に惹き込まれた。じわじわ顕わになる番号の謎が面白かったな。そして、その業から逃れようと足掻く息子の「突拍子もない行動」と「システムの穴」が上手く噛み合ってドタバタコントな流れになったのも、それだけで単純に面白いし、更に息子の哀れさを引き立てる効果にもなっていると感じました。
そしておそらく、それまで噛み合う事のなかった親子の想いが、初めて噛み合ってお互いを思いやりながらも、結局は徳の順に叶えられる。
天網恢恢疎にして漏らさず、で済ますには酷だなぁ。
最後のセリフの「地獄だ・・・」の余韻がすごく印象的で、切なく沁みました。

[a]Märchen [いのり×坂本見花×たみお]:感想】こういう所では異色に感じた童話芝居。可愛さ振りまくけど、その実、無邪気でダークな所業が確信犯的なところに、ギャップと怖さがあって良かったな。純粋に役者の魅力で魅せるところと、多分に"含み"がありそうな(安易な教訓とは違う)童話の本質が見え隠れするストーリーが上手くマッチして、全体として纏まりが良かった印象です。
終盤の語りは、そのまま額面通り受け取ってよいのか迷うなぁ。

[d]その日、恋は落ちてきた [丹下真寿美×戒田竜治]:感想】全く想像の及ばない「超異色の一目惚れ」を丁寧に描き切り、まさか感動の後味を残すところまで昇華させるとは驚きの一語に尽きる。卯月の解釈と行動が一々常識の裏を行くのが楽しく、しかも、ただ突っ走るのでもなく、意外に自省的であるというバランスの良さが面白さに繋がっている。(一人ボケ・ツッコミ?)
舞台美術を積み換える「本来は作業」の行為をテンポ良く芝居に取り込んだり、拡げたシーツの裏側から影を投影してフォルムを強調したり、人の変化のギャップを感じさせるなど、演出面で感心するポイントが多かった。
ラストの位置関係も、俯きがちなシーンで表情がよく見えて良かったな。

[c]正義と微笑 [竹田淳哉×西尾武]:感想】本作を観るのは今回で3バージョン目。幸運にも磨き上げられていく過程を観れている。1度目は正直「意識と目利きが高い割に決断力と行動力が伴わない残念な男」感だけがやたら印象強かったのが、3度目にして遂にキタ。身の程の理解とそれに応じた着実な努力。主人公の成長がしっかり印象に残った、伝わってきた。
成長を描き出す妄キネコンビの成長をも、しっかと観た感じ。元々、テンポは良かったのが2度目からメリハリも上がってるし、ハレの舞台で最終形態を楽しめました。

[e]15ドル50セントの恋 [中西由伽子×Sarah]:感想】メルヘンチックなノンバーバル芝居。歌こそないけど、ミュージカル的な印象を覚える身体表現が素晴らしかった。
ラストシーンも絵になってて、綺麗でしたね。一部にしか使われなかったけど、機械が軋む様な…妙な弾性のあるレトロな駆動感のモーションと効果音が、とても素敵だったので、そこをもっと活用してくれたら、私の好み的にはもっと良かったのにと思う。

[i]もしもし [福田恵×中野守]:感想】笑わされるという点においてはバツグンの出来。件の事件が起きる毎に、環境と精神状態が変わっていくのが分かる福田さんの芝居も見事でした。(最初は別人の事件を演じているのかと思ったほど。)
脚本としては、単発のコメディが有機的に繋がってミステリーとなり、実は周りの反応や登場人物に全てに意味と必然性があった緻密さに見応えを感じました。
解決法がちょっと拍子抜けだったのだけ、やや不満です。
名言、多かったけど、一番お気に入りのセリフは
『(📞)トイレのカナコです(°_°)』
でした。

[g]そのころ [葉山太司×大迫旭洋]:感想】最初は「えっ?、これ本当に芝居始まってんの?」と思わせる語り口。
飄々と語られ、『そのころ…』と言っては切り替わっていく、お互いに何の関係も無さそうな人々の出来事。黙々と、何の芝居っけもなく、徐々に…徐々に紡がれる営みと、いつしか薄っすら見えてくる人々の繋がり。
シーンを切り替えるピッチはどんどん上がっていき、終盤、急速に拡がりをみせる世界。一人の人からどんどんズームアウトして、遂には地球全体を映されたような錯覚に陥りました。
こんな表現を一人芝居で出来るんだ・・・と、芝居に無限の可能性を感じた。
今回、手法として一番驚いた作品でした

[h]117 [原田充子×ミヤザキカヅヒサ×上田龍成]:感想】まるでジグソーパズルをランダムに埋めていく様に進む、母娘3世代の"人生の残像"達。まさに秒刻みの律儀さでテンポよく、関連なく切り替わっていく。これを一人で演り切る凄さ。大河ドラマの様に順に追うのではなく、細切れ・バラバラに重ねられることで、3代の生き様の因果と込められた愛憎、類似性がより浮き彫りになっていたように思いました。キレイに30歳差であることを終盤で気付かせる構成も世代の蓄積をより感じさせました。
先の「そのころ」には空間的な拡がりを感じましたが、「117」には「時間的」な拡がりを感じて、INDEPENDENTのラインナップの上手さだなぁと思うことしきり。

[j]突貫!拙者の一夜城 [吉田青弘×片岡百萬両]:感想】コミカルで熱い、パッションほとばしる変則時代劇。凡人が憧れの人に貢献するまでの胸のうちの葛藤と高揚感が上手く伝わってきて、ほっこりする。語り口が敢えて「なんちゃって時代劇」で、その割りに自省や主張が現代的なのが面白い。
終盤、一瞬、音楽が大河ドラマ的な盛り上がりになったのが、とても印象に残った。
こういう芝居が、またINDEPENDENTに拡がりを与えていて、感心するなぁ。
よこみち〜4回まわって”にゃー”と言え〜

よこみち〜4回まわって”にゃー”と言え〜

よこしまブロッコリー

K・Dハポン(愛知県)

2016/11/19 (土) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/11/20 (日)

にへいさんの短編脚本を、新進の演出家に渡して好き勝手してもらうという好企画。
こういう「新しい血を注ぎ込むような試み」は、相乗効果高くて大好きです。

以下、ネタバレBOXに作品別の感想。

ネタバレBOX

①あうん:感想】出産を控えた夫婦。お互いに知り尽くしていることが背景の会話が楽しい。主語を端折っても分かって当然の態度、ある時はぞんざいな、ある時は駆け引きのある、穏やかながら軽妙なコミュニケーション。夫婦がシンクロして台本から顔を上げるシーンが印象的でした。

②紙切れについての話:感想】謎が深かった・・・が、買った脚本を読み返すと、実は上演時に「舞台設定を示す重要なキーワード」をスコーンと聞き飛ばしていることが分かった。いい加減だな私(笑)
そんな条件下で、しかも不条理的に繰り返される会話など聞いていると、混乱のズンドコに堕ちていく。これはこれで面白い体験だった。また、狭いハポンで、しかもド正面にいたので、主役の森本涼平さんが「私の眼を見て語りかけてくる錯覚」に陥る。これもなかなか得がたい体験だった。ハポンならではの醍醐味。

③Slow Jam ~まるで僕らな幾つかの景色~:感想】ガッツリ青春群像劇で、思っていることの真逆を口走しって自滅一直線する様を、ある時は老婆心を抱きながら、ある時は羨望の眼差しで眺めました。鳥の名前で統一された役名が良い雰囲気。こういう芝居って、登場人物たち各々に、あまねく魅力があってこそ成り立つけど、みんな味のある個性を放ってて、魅力ある集団を形づくってました。
・・・あぁ、大学のサークルとか思い出すなぁ。
冥王 ver1.02

冥王 ver1.02

パズル星団

G/Pit(愛知県)

2016/11/18 (金) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/11/20 (日)

平行宇宙、原発、謎の世界システム…異色のピースを掛け合わせたSF劇。元の短編が震災直後で、本公演後に今回の地震…と因縁めくものを感じる。
とてつもなくスケールの大きなピースを扱いながらも、行為のモチベーションをごく身近に求めたことで小劇場演劇として収まりが良かった。SFとして疑問の残るところもあるけど、細かい辻褄合わせを捨てて説明しないことで、核心の人間ドラマに集中できた。
主役の武井嶺朗さんは謎の人物の雰囲気たっぷりでしたね。名無し達の掛け合いも結構好み。

轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は

轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は

空宙空地

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2016/11/11 (金) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/11/13 (日)

大掛かりな舞台装置を活かした重層的な演出。役者が行き来することで空間と時間の奥行きを感じさせる。光陰矢の如しを地でいく展開のテンポはコミカルでもあり、翻弄される姿は切なくもある。コントラストが非常に効果的でした。

以降、同時上演の短篇も含めて、ネタバレBOXにフルver.の感想を書きました。

ネタバレBOX

① 轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は:感想】大掛かりな舞台装置を活かした重層的な演出。役者が行き来することで空間と時間の奥行きを感じさせる。光陰矢の如しを地でいく展開のテンポはコミカルでもあり、翻弄される姿は切なくもある。コントラストが非常に効果的でした。
親子二代で畳み掛けるように繰り返された変わり映えせぬ人生は、様々な鬱屈と焦燥を諦観を強調する。「頭に纏わりつく職場の人間関係」の表現は特に秀逸。そして、若い頃に自ら否定した生き様に自分が呑み込まれていく娘の姿は、多くの人々が現実に打ち砕かれる様を象徴的に描いていて強烈だけど、命辛々救われたはずの痴呆の母のセリフが娘を救います。じわぁ~と沁みたなぁ。幸せは遠くにあるのではなく、懸命に生きる、今、この日常にあるのですね・・・
そんな重い展開を微笑ましく呑み込めるのは、各所の笑いの演出あったればこそ。進撃の巨大赤子・山形が今回のツボでした。感動を活かすのは笑いなんじゃないかな・・・と、空宙空地を観てるといつも思うのでした。

②ふたり、目玉焼き、その他のささいな日常:感想】三重公演でWキャストでも観てるので三度目。最後の夫の壮絶な駄々の中、ラストの奥さんから感じられる胸中が読めない、観る度に思考が揺れる。読めないように含みを持たせて演じてるのかな。観る者の胸中を投影するのかもしれぬ。そこにあるのは哀れみか、心配か、無念か、諦観か…
幸せはあったのだろうか…と救いを探すのは男の身勝手かな。
覆水盆に帰らず。こぼれなければ分からず。こぼれても生きていかねばならぬ。結末がいつもと別の味わいで沁みる。

③雨を待つ二人:感想】関戸さん&おぐりさんverを観てますが、役者が変わると印象が違ってみえるのが面白いですよね。関戸さんと比べると、棚瀬さんの芝居は、我の強さよりも未練と悲しみを強く感じたのが印象的でした。
ド曇天

ド曇天

fuzzy m. Arts

G/Pit(愛知県)

2016/11/12 (土) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/11/12 (土)

割と濃い変キャラひしめくコメディ展開。特に失踪長女の経緯なんて奇想天外で面白かった。そ~んな笑いの中で、じわじわ積み重ねて心に沁みてくる家族愛の空気を作り上げるのだから不思議。マイノリティの生き辛さや優しさを感じさせるところも良かった。手持ちの布を使ったスクリーンの演出も良い味。

お父さん役石田さんの、な~んか愛嬌のあるナチュラルに酔っぱらっている様な物言いと佇まいが独特。味わいある。周囲を取り巻く変態?達と渡り合って毒を吐く次女役イーダミサキさんも印象深かったなぁ。あと、出自不明・謎のベンガル部長も少ない出番の中でも印象深く、もっと観たかったな。他の役者の皆さんも良い味が出てて、座組としてよいバランスでした。今回、初めて拝見した劇団でしたが、また別の芝居も観てみたいですね。

女子にしか言えない~プールの底で見た、私の幻燈~

女子にしか言えない~プールの底で見た、私の幻燈~

穂の国とよはし芸術劇場PLAT【指定管理者:(公財)豊橋文化振興財団】

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2016/11/05 (土) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/11/06 (日)

作家の創作…と言うより、高校生の等身大の経験や悩みや想いが取り込まれてる感じにとても好感。高校生の役者達にすごく合ってるし気持ちが乗ってる気がする。全く他人なのにカーテンコールの彼ら彼女らの涙目に貰い泣きしそうになった。
こういうクリエイションの定番として、各人にしっかり重きがある群像劇的な構成だけど、やっぱそれでこそ、このキャストが活きるよなぁ。王道で良し。そして、女子中心なタイトルになっているけど、中身はそうでもなかった。父や祖父、そして同世代の男子たちの想いもしっかり練り込まれてて、それゆえ女子の群集が活きた感もあり。結局、運命共同体だしなぁ。感想文の題材となる宮沢賢治の「やまなし」が象徴的にこの群像を映す鏡になっていて、とりとめが無くなりがちな群像劇に一本筋を通している気がしました。
役者で特筆すると、キョどる彼氏役ハルチカ君のインパクトは絶大。怪獣と呼ばれるのもさもありなんだけど、怪獣と対等に渡り合った彼女役の子も大したもんだった。相乗効果だなぁ。あと、神様娘も印象強いな。あんどぅ君も面白かった。女子が群像になるが故、個人は男子が記憶に残る。

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