INDEPENDENT:16 公演情報 INDEPENDENT「INDEPENDENT:16」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2016/11/26 (土)

    普通の本戦を初めて観ましたが、セレクションの陰には、それに引けを取らない名作が相当数隠されているのを実感できるバリエーションの多彩さと充実さでした。幸福な時間でした。

    (以降、ネタバレBOXに作品別の感想)

    ネタバレBOX

    (以降、観た順)

    [t1]大阪湾の魚である青木道弘が人間に恋をしてしまった結果がこれだよ!(デジタルリマスター版)[青木道弘×けーあーるえりー]:感想】長げーよ、タイトルw 
    不気味な装いと軽妙な語り口で観客を引き込む、コミカルで物悲しいお話。突拍子もない変化(へんげ)をファンタジーではなく、特訓と執念で成し遂げる様を丁寧に作り込んでいて面白い。釣針とか酸素スプレーとかの小道具の使い方、上手いな~。それだけでの笑みがこぼれます。そして、こんな風体なのに最後の最後で「月の光」に美しさを感じてしまって、やられたと思いました。
    そして唯一、ラストのダイジェスト映像でタイトルが端折られてて笑った。

    [b]熊埜御堂 [柴田知佳×小佐部明広]:感想】意外性大。踏み外すとリカバリーが難しい昨今の社会システムを背景に、若い頃に勘違いしてしまったプライド高いエリートの転落人生を綴る… 整理すると確かに正しくその通りなんだけど、まさか、このキャラクターで山月記のオマージュに展開していくとは予想できなかった。小気味良く笑いを誘う端々のネタと小さな幸せに満足しようとする様なんかに、うまくカモフラージュされた感があるなぁ。最後、吠えながら芝居を見せようとする、その壮絶な演技が、照明により大きく映し出される背後の影の迫力も相まって、目に強く焼き付きました。見事なエンディングでした。

    [f]交響曲第九番~天国と地獄~ [野村有志]:感想】先の読めない導入部の展開に惹き込まれた。じわじわ顕わになる番号の謎が面白かったな。そして、その業から逃れようと足掻く息子の「突拍子もない行動」と「システムの穴」が上手く噛み合ってドタバタコントな流れになったのも、それだけで単純に面白いし、更に息子の哀れさを引き立てる効果にもなっていると感じました。
    そしておそらく、それまで噛み合う事のなかった親子の想いが、初めて噛み合ってお互いを思いやりながらも、結局は徳の順に叶えられる。
    天網恢恢疎にして漏らさず、で済ますには酷だなぁ。
    最後のセリフの「地獄だ・・・」の余韻がすごく印象的で、切なく沁みました。

    [a]Märchen [いのり×坂本見花×たみお]:感想】こういう所では異色に感じた童話芝居。可愛さ振りまくけど、その実、無邪気でダークな所業が確信犯的なところに、ギャップと怖さがあって良かったな。純粋に役者の魅力で魅せるところと、多分に"含み"がありそうな(安易な教訓とは違う)童話の本質が見え隠れするストーリーが上手くマッチして、全体として纏まりが良かった印象です。
    終盤の語りは、そのまま額面通り受け取ってよいのか迷うなぁ。

    [d]その日、恋は落ちてきた [丹下真寿美×戒田竜治]:感想】全く想像の及ばない「超異色の一目惚れ」を丁寧に描き切り、まさか感動の後味を残すところまで昇華させるとは驚きの一語に尽きる。卯月の解釈と行動が一々常識の裏を行くのが楽しく、しかも、ただ突っ走るのでもなく、意外に自省的であるというバランスの良さが面白さに繋がっている。(一人ボケ・ツッコミ?)
    舞台美術を積み換える「本来は作業」の行為をテンポ良く芝居に取り込んだり、拡げたシーツの裏側から影を投影してフォルムを強調したり、人の変化のギャップを感じさせるなど、演出面で感心するポイントが多かった。
    ラストの位置関係も、俯きがちなシーンで表情がよく見えて良かったな。

    [c]正義と微笑 [竹田淳哉×西尾武]:感想】本作を観るのは今回で3バージョン目。幸運にも磨き上げられていく過程を観れている。1度目は正直「意識と目利きが高い割に決断力と行動力が伴わない残念な男」感だけがやたら印象強かったのが、3度目にして遂にキタ。身の程の理解とそれに応じた着実な努力。主人公の成長がしっかり印象に残った、伝わってきた。
    成長を描き出す妄キネコンビの成長をも、しっかと観た感じ。元々、テンポは良かったのが2度目からメリハリも上がってるし、ハレの舞台で最終形態を楽しめました。

    [e]15ドル50セントの恋 [中西由伽子×Sarah]:感想】メルヘンチックなノンバーバル芝居。歌こそないけど、ミュージカル的な印象を覚える身体表現が素晴らしかった。
    ラストシーンも絵になってて、綺麗でしたね。一部にしか使われなかったけど、機械が軋む様な…妙な弾性のあるレトロな駆動感のモーションと効果音が、とても素敵だったので、そこをもっと活用してくれたら、私の好み的にはもっと良かったのにと思う。

    [i]もしもし [福田恵×中野守]:感想】笑わされるという点においてはバツグンの出来。件の事件が起きる毎に、環境と精神状態が変わっていくのが分かる福田さんの芝居も見事でした。(最初は別人の事件を演じているのかと思ったほど。)
    脚本としては、単発のコメディが有機的に繋がってミステリーとなり、実は周りの反応や登場人物に全てに意味と必然性があった緻密さに見応えを感じました。
    解決法がちょっと拍子抜けだったのだけ、やや不満です。
    名言、多かったけど、一番お気に入りのセリフは
    『(📞)トイレのカナコです(°_°)』
    でした。

    [g]そのころ [葉山太司×大迫旭洋]:感想】最初は「えっ?、これ本当に芝居始まってんの?」と思わせる語り口。
    飄々と語られ、『そのころ…』と言っては切り替わっていく、お互いに何の関係も無さそうな人々の出来事。黙々と、何の芝居っけもなく、徐々に…徐々に紡がれる営みと、いつしか薄っすら見えてくる人々の繋がり。
    シーンを切り替えるピッチはどんどん上がっていき、終盤、急速に拡がりをみせる世界。一人の人からどんどんズームアウトして、遂には地球全体を映されたような錯覚に陥りました。
    こんな表現を一人芝居で出来るんだ・・・と、芝居に無限の可能性を感じた。
    今回、手法として一番驚いた作品でした

    [h]117 [原田充子×ミヤザキカヅヒサ×上田龍成]:感想】まるでジグソーパズルをランダムに埋めていく様に進む、母娘3世代の"人生の残像"達。まさに秒刻みの律儀さでテンポよく、関連なく切り替わっていく。これを一人で演り切る凄さ。大河ドラマの様に順に追うのではなく、細切れ・バラバラに重ねられることで、3代の生き様の因果と込められた愛憎、類似性がより浮き彫りになっていたように思いました。キレイに30歳差であることを終盤で気付かせる構成も世代の蓄積をより感じさせました。
    先の「そのころ」には空間的な拡がりを感じましたが、「117」には「時間的」な拡がりを感じて、INDEPENDENTのラインナップの上手さだなぁと思うことしきり。

    [j]突貫!拙者の一夜城 [吉田青弘×片岡百萬両]:感想】コミカルで熱い、パッションほとばしる変則時代劇。凡人が憧れの人に貢献するまでの胸のうちの葛藤と高揚感が上手く伝わってきて、ほっこりする。語り口が敢えて「なんちゃって時代劇」で、その割りに自省や主張が現代的なのが面白い。
    終盤、一瞬、音楽が大河ドラマ的な盛り上がりになったのが、とても印象に残った。
    こういう芝居が、またINDEPENDENTに拡がりを与えていて、感心するなぁ。

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    2016/12/30 17:47

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