I元の観てきた!クチコミ一覧

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OMOIDE IN MY DEAD

OMOIDE IN MY DEAD

タツノオトシドコロ

円頓寺Les Piliers(えんどうじ・レピリエ)(愛知県)

2018/01/24 (水) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/01/28 (日)

ひたすら映画のレンタルDVDを見続ける男。そして、その行為にダメ出しをし続けるもう一人の男… 彼は…何故か「鎖」に繋がれていた…。

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ネタバレBOX

(続き)

湧き立つ「異常」感を押し殺すかの様に…ひたすら繰り広げられる「日常」的な映画オタクの営み。​鎖のみならず、会話の端々に「異常」のキーワードが出てくるのに、愉快な「B級映画オタクトーク」で空間が埋め尽くされ、観る側の感覚が麻痺していく。

映画トークには…リアリティの構築と異常の感覚を麻痺させるカモフラージュの役割があったのではないかと思う。
…ゾンビが…フィクションの世界から…徐々に現実の世に忍び寄り… 遂には登場人物の全てにその魔の手が及んだかに見えた刹那… 本作における「ゾンビ」に対する…私の認識が覆った…見え方が変わった。

​当初は社会からドロップアウトした若者…という「特定」のケースをモチーフにしているのかと思っていた。

しかしいつの間にか、それは「一般化」してしまった。舞台には…そういうヤツしかいなくなった。

…その瞬間、本作は社会一般の…今、この社会にある普遍的な暗部を描き出していると思えてしまった。

色んなものを社会に吸い取られて…先の見えない人生を前に…死屍累々と積み重なる若者の姿がみえる。冗談交じりに「ゾンビは労働者の鑑」と評する台詞が、とても効いていた。
けしてきえないひ

けしてきえないひ

F's Company

四天王寺スクエア(三重県)

2018/01/27 (土) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/01/27 (土)

人の心情や合理的な発想では…一切太刀打ちが出来ない…歴史と村社会の…人の心の暗部。心地よい長崎弁に彩られながら、徐々に活性化する会話・心の叫びに引き込まれる。終盤、長女が叔父を諭す一言がとても沁みた。最後は結局、海の神の差配なのかも…。

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ネタバレBOX

人の心は…集団になると何故ああも歪んでしまうのか… 時の積み重ねの前に…何故ああも柔軟さを失うのか。

漁業を生業とする島で…800年の歴史を持つ「火照(ほてり)」という職業…いわば「神事の担い手の後継者問題」を核に…変えたいもの、変えられないものを巡って会話が紡がれる。

殻を破るように徐々に活性化される会話…飛び出る本音たち… 長崎弁による会話劇は私には新鮮であるとともに、なんとなく無条件で「土地に根ざした現実味」を感じさせてくれました。

思い出話としてしか現れない「父(先代火照)」の存在感は見事でした。
その人となりは、町と歴史と…責任と自負と…娘たち・隣人たちへの想いとの… 板挟みの苦悩を感じさせつつ… 何となく慈愛に溢れていた。

特に次女ミサキとの関係性は印象深く、情愛と厳しさと彼なりの現代的な合理性が窺えた。

今、問題になっていることの全てを「父は一人で背負っていたんだ…」と思うと切ないし、娘たちへの愛がいや増して感じられる。

一方で、主に現代っ子的な振る舞いだった次女・三女の身体の中に否が応にも幼少から擦り込まれた「伝統」を感じさせるシーンもあったのが印象的。

そのシーンに至る前まで…正直、神事的にはグダグダ感を醸していたのに…2人が伝承を語り出したところで…突如浮かび上がった「神秘性・伝統感」には息を呑んだ。​色んな物が…絶妙なバランスを成して、本作の空気を作っている。

そして終盤の核心。

方向性にズレはあれど、最も継承に前向きだった三女ナミに…伝承に纏わる「理不尽な制約」が降りかかる。…思わす唖然となった…この町の「暗部」の最たるもの。とかくままならない自然との対峙。その現象への合理的な判断の拠り所となる技術が無かった古の時代… 集団の合意形成を…神という曖昧なものに頼るしかなかった時代の悲しい遺物。

本質を掴めていないから、ただ畏怖するが故に何も変えられない…それどころか…そもそも、変える議論からしてタブーだ。この社会の未成熟性が重く圧し掛かって感じられる空気だった。

…手に負えない事の原因を…責任を…何でも良いから何かに覆いかぶせて当座を凌ごうとする…いわば「生贄」文化を見た思い。その象徴として描かれた叔父を… 長女が振り絞る様に諭した一言…「少しずつ変えていこう」がとても沁みました。

最後の結末は…結局、「海の神」の思し召しだったのかも…とも思わせる空気があって、ある意味で皮肉感もありましたね。結局、人だけでは何も変えられなかったのか… それとも三姉妹を後押ししてくれたと思えば良いのか。色んな後味を感じさせる作品でした。

昨年・今年と拝見できましたが、また来年も三重に来てくれると嬉しいです。

余談。

叔父の役者さんのキャラクター性は、小劇場としてはかなり稀有に思えました… 大変得難い。良い芝居が観れました。

音響が絶妙で、遠くで微かに聞こえる「船の音」が…とても良い空気を作ってました。(…許すまじは選挙カー笑。)
[終演しました!]【名古屋公演】「ミソゲキ2017」参加作品『誰も知らない。』

[終演しました!]【名古屋公演】「ミソゲキ2017」参加作品『誰も知らない。』

冗談だからね。

ナンジャーレ(愛知県)

2017/12/29 (金) ~ 2017/12/31 (日)公演終了

満足度★★★

主人公の…おっ…となる独白から始まって、徐々に語られる…そこまでに至る人生の"弄ばれ感"は一々興味を惹く。

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ネタバレBOX

(続き)

主人公の…おっ…となる独白から始まって、徐々に語られる…そこまでに至る人生の"弄ばれ感"は一々興味を惹く。
…〇〇花火、〇女〇の呪い、3万tonの廃棄〇〇、ヒンズースクワット…、何かしらの暗喩や見立てがとても面白く、要素として光るモノが盛り沢山。個性派揃いの役者も無駄使いなまでの目移りする物量で攻めてきて、勢いを感じた。Gregの存在感良かったね。
…沢山ぶちまけたピースを…自らぶち壊しにかかったかの終盤のメタ展開は、意表を突かれた楽しさが半分と残念感が半分。あのピース達をどう結び付けて…何に結実させるかを見たかったのは本音としてあるし、その観点だと"逃げ"にも映る最終展開だけど、…"そういう芝居"を揶揄するのが意図だとしたらアリなのか。どういう過程であの筋書きに辿り着いたのか…、どこまでが筋書きでどこまでがトラブルなのか…には興味が尽きない。アングラ精神と今どきの若さが共存する面白さでした。
悪魔のいるクリスマス

悪魔のいるクリスマス

ナビロフト

ナビロフト(愛知県)

2017/12/21 (木) ~ 2017/12/24 (日)公演終了

満足度★★★★

悪魔のいるクリスマス、観劇終了。一言で言うと哀歌…かな、でも悲壮さではなく、ほんのり心に残る何かがある…クリスマスらしさ。小熊さんと若手のバランスに…むしろ現実感が湧くの不思議

灰の糸

灰の糸

水没都市

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2017/12/22 (金) ~ 2017/12/24 (日)公演終了

満足度★★★★

最初は電光石火一発座の「のこりび」を思い出しながら観てたけど、それとは大きく異なる舵を切ったところで、肉親の死の位置付け、向き合い方は様々…と思いを馳せる。役者陣の演技の…抑えた中に潜む濃厚さは味わい深い。

アフタートークのはせさんトークはさすが、美味しかった。しんかさんの某疑惑(笑

ヴェニスの商人

ヴェニスの商人

ハラプロジェクト

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2017/12/08 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

見事な異文化混合の空気の妙… 西欧古典の雄 シェークスピア戯曲をベースに、レトロロック(?)、オペラ、幻想的ないで立ちの行列、ぽろっと出てくる大岡裁き、壁を埋め尽くす「慾」と「無」の文字 … カオスでありながら不思議に調和する異世界感でした。

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ネタバレBOX

(続き)
そんな中、金銀鉛の箱選びで、ふっと入ってきた…とある婿候補者のシーン。現代のノリで現実的に核心の箱を見抜き…ポーシャに異能で阻まれるコミカルな顛末が好きなところで、これもまたこの作品の懐の深さでしたね。ちょっとメタ的趣向でもあり、楽しかった。

そして、やはり核心は…金貸しシャイロックの…オリジナリティある末路。

「原作」でのシャイロックの処遇は、キリスト教視点のご都合的な顛末で、シャイロックの強欲を責めながらも、結局は力づくで…キリスト教価値観の元にシャイロックを捻じ伏せる。
表向きは「あくまで知略」の雰囲気にしてあるが、事実上、権力を笠に着た強権発動に他ならない。あまつさえ、そもそもが言い掛かりの死刑を、キリスト教徒の慈悲で免じてあげている恩着せがましさ。

そんな原作の欺瞞を振り払うかの様なラストシーン。
シャイロックが…ヴェニス公に持たせたナイフで自らを刺させて事切れる結末は「結局はお前らも、自分の価値観で他人を捻じ伏せているに過ぎない」と…欺瞞に満ちた慈悲を拒絶する…一世一代の見得切りだ。喜劇から一転しての悲劇の様相はインパクト大でした。
オイラーズサプライズ

オイラーズサプライズ

アトミック☆グース

千種文化小劇場(愛知県)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

失敗の予感しかない…グダグダのサプライズオーダーから始まる本作。そこに報酬だけが旨味の…前提条件がほぼ皆無、雲を掴むようなミッションが追加され、悪手の見本市の様なWサプライズへ…ほぼミッション・インポッシブルに挑む面々。

ここから小ネタ依存のドタバタ劇になるかと思いきや(それでも十分楽しいけど)、それは甘く見過ぎでした。隙間に巧妙に埋め尽くされた登場人物の「思惑」たち。コレを表に窺わせず…実際のサプライズまで引っ張っていく脚本が見事でした。

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ネタバレBOX

(続き)
最後に明かされてようやく分かる都合6件のサプライズが入り乱れる人間模様。重要なのは…各々単体ならサプライズが成立しなかったこと。まるで"ぷよぷよ"の様に、連鎖によって足りないピースが埋まる…同時でこそ成り立つ仕掛けが面白かった。
実際、彼女(ゆかり?、さゆり?)の「もう一つ言いたいことがあります」のところまで、完全に油断してた(笑)、すっかりやられました。

こうなると…轟さんの挙動なんかは、オチを知った上でもう一度観たかったなぁ。つくづく上手くできてる。お馴染みのところでは、変顔自撮りの女王 大上さんがひたすら"真面目"に困り続けるの、安定して楽しかった。コンプレックスひけらかす笑いも。

デリポ等では中々お目にかかれない「普通の可愛い人」を演じた楓さんも、返って新鮮でしたねぇ。
くじらと見た夢

くじらと見た夢

燐光群

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2017/12/12 (火) ~ 2017/12/13 (水)公演終了

満足度★★★★

イルカ漁・クジラ漁にまつわる民俗描写、高揚感がとても良く、まさか燐光群観て「美味しそう」って感想が湧く日が来るとは思わなかった。
そんな心地よさを醸す一方で、狩られる側視点の暗部も突きつけた対比のシーンにゾクゾクした。
いろんな意味で結構ファンタジーです。

ファントム

ファントム

極東退屈道場

ナビロフト(愛知県)

2017/12/09 (土) ~ 2017/12/10 (日)公演終了

満足度★★★★

圧倒的。理屈で汲み取ろうとすると討ち死にする感じは…少年王者舘の観後感に似てる。まさしく美術品的な舞台装置、世俗的 懐古風ながら神話?寓話?的な佇まい、計り難い繋がりで二転三転する流れはオムニバス的でもある。理解不能ながら興味を惹き続ける不思議。

君のそれはなんだ

君のそれはなんだ

オイスターズ

三重県文化会館(三重県)

2017/12/09 (土) ~ 2017/12/10 (日)公演終了

満足度★★★★

観客がついそのまま呑み込みがちなお約束を…ゼロベースで捉えて料理する駆け引き的会話の妙技。
常にその立場を疑いながら役者の言葉の一つ一つを楽しむ。最後は…言っちゃうんだ…と思ったがトークで納得(笑
台がこの世の非平衡を感じさせる。あと照明良い。

『はやくいかなくちゃ』『シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン』

『はやくいかなくちゃ』『シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン』

演り人知らズ

AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)

2017/12/09 (土) ~ 2017/12/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

演り人博覧会という意欲的な公演を控えての、プレ企画的位置づけ?

ネタバレboxに、ふわっとした感じで、更なる期待感を込めつつ、アッサリ(当社比)の感想を。

ネタバレBOX

■【シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン[新キャスト・新演出]】
演り人博覧会を近々に控え、なぜここで単発の公演?って思ってたけど、これはレパートリーを再集約させる博覧会に新たな魅力を期待させるチラみせやね。元々、名古屋大阪で役者替えする等、…一つの形態に留まらない柔軟な作りをする演り人知らズですが、遂に名古屋キャストも変更。そして…あっと驚く新演出が待っていましたね。

初期ラインナップの中でも1,2を争う魅力的な戯曲ですが、新たな試みをいくつも盛り込むことで、…まったくの新作になった…と言っても過言ではないです。

その最大の秘密はいちろーさんの使われ方。その存在自体が設定考証と舞台の空気に大きな一味を添える…堪らんわコレ、皆みれ。
そして、新キャストが作り出す新たな印象…遜色ないというより、…また別の物語を浮き立たせてくれるねぇ。

専らの演出家が主宰する企画ならではのアプローチ。
新作よりも…この企画の趣旨を、より色濃く映し出している新演出Ver.でした。
演り人博覧会でも、舞台が変われば…また別の空気をみせてくれそう。


■【はやくいかなくちゃ】
「下校の時間」で23回劇作家協会新人戯曲賞 最終候補に残り…期待高まる最中の長谷川彩さんの新作。常に一筋縄ではいかない印象のお方。そこに…おっとビックリの競演、藤島さんと青山さんを掛け合わせた演出ぶどうさんの意図は…徐々に姿を現していく。
…巡る年月… 繰り返される行為の中で… 変わりゆくものと変わらないもの… 自分と違う人、他人と違う自分… 現在と過去が綯い交ぜに…心の中に積み重なっていき…滲んでくる生きづらさ。

やっぱり一筋縄ではいかない長谷川彩風味だ。
多彩な色の演技で魅せる2人も、まだまだ磨いてくれる余地ありそうだったし、…そして、これは…ぜったい次の円形舞台・天幕広場の方が合う作りだ。これまた期待が膨らむ。ただ、今回とは別の角度で観たいけど、どこに座ればいいか分からない…円形は(笑"
ちょっと、まってください

ちょっと、まってください

ナイロン100℃

三重県文化会館(三重県)

2017/12/06 (水) ~ 2017/12/06 (水)公演終了

満足度★★★★★

思考も時間も位相が捻じ曲がっている感じが堪らんかったなぁ。色んな作品のテイストが混ざってる印象を受けたけど、ナイロン初見なので何とも言えず。純粋に舞台装置、プロジェクションマッピングは素晴らしいの一語。熟達した演技も堪能したぁ。

ピカソ、ゴッホもダ・ヴィンチも

ピカソ、ゴッホもダ・ヴィンチも

試験管ベビー

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2017/12/01 (金) ~ 2017/12/03 (日)公演終了

満足度★★★★

けっこう切実な美術館業界の集客の悩み、そこで働く学芸員…それを目指す人達の狭き門と待遇の厳しさ、創作と仕事の両立と選択…様々な現実味のある悩みのモチーフに…試験管ベビー"らしさ"で彩るアートとコメディのコラボ作品でした。
前回は「歌舞伎」で仕掛けてきたが、今度は「美術」と…他所の文化を貪欲に題材にしていく姿勢に好感。

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ネタバレBOX

(続き)

名を成した美術作品と美術家を、次々と血祭り…もとい美味しく味付け。いつか怒られる…と作り手側はひやひやしているらしいけど、この距離感は美術を身近に寄せる意味で…アート好きの私にも嫌な感じは湧かない。美術を神棚に飾る様な扱いでなく、同じ人間が作ったモノと等身大で扱ってこそ見えてくるものもある。深い精神的、技術的な話はソコから更に先の話で、入り口は間口広くアレでいいと思うんだよね。やべー奴ゴッホ、金の亡者ピカソ、ザ・めしやで最後の晩餐(やってない笑)、上等じゃないですか。
その点で丸山さん演じる美大生(?)の「融和の過程」が意味あるエピソードだったと思います。
実際、本当の美術館側も、展示や企画で目先変えたり…再構成したり、色んな努力をされています。今回の…劇団・市民ぐるみの活動になっていくくだりは、本当の美術館にとっても羨望の展開だったんじゃないでしょうかね~。住宅展示場でやってたみたいに、収蔵品の企画展あたりで試験管ベビーを呼んでみようという美術館いないかな?

さて、作品自体は小ネタの大集合的な印象で…ドラマ感はやや薄めだったけど、その分充実した美術ネタのオンパレードは、むしろ趣旨に沿うかと。

入れ替わり立ち代わりの大キャストだし、オムニバスって見方もアリか。

遂に救世主の高みに登った…ザ・めしや奥村さん、…

登場しただけで…一堂に残念な空気を蔓延させた寺田さんのインパクト、
…ノリは一番…どっこい肝っ玉学芸員の松本さん、
…ちっちゃい論争を巻き起こした瀬名伝説のくだり
…高橋さんら女子3人と三芳先生のやり取りの軽妙さ、
…真珠の髪飾りの少女を…そのモデルが誰かで演じ分けた宮田さん、
…きっちり、お見事、堂にいったプレゼンテーションの林さん、
…世のオヤジ代表…憎めない小悪党 吉森館長、
…そして、最後の大物「民衆を導く自由の女神」は、下手なドラマを打つよりもよほど効果的な高揚感があって、まるで映画の様な幕引きは素晴らしい。満を持して女神として登場した主任学芸員 加藤奈々さん、カッコよかった!
少年カセットコミック

少年カセットコミック

妄烈キネマレコード

ナンジャーレ(愛知県)

2017/11/30 (木) ~ 2017/12/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

漫画雑誌をモチーフに多彩な短編を織り込んだ意欲的な企画。制作発表時は…7本作るって正気の沙汰か…って思いましたが、新顔の客演抜擢も含め、見事な創刊でした。

ネタバレboxに各話の感想書いてます。

ネタバレBOX

[A]恋の開】
恋オメガ以来2度目。このノリは何度観ても楽しさてんこ盛り。筋とオチを知っていてもなお、無闇に盛り上がる稀有な舞台。この空気づくりに音楽と照明のもたらす寄与は比類ないね。条件反射で…頭に刻み込まれた劇的な感情の発露を促す選曲はGood Job!
酒の肴を追い求める…ただそれだけのことを、壮大な「叙情詩」として成立させるミラクル。アンジェさんのダイナミックな表情と、随所に仕込まれたギャップ萌えの訴求力は見事という他はありません。終盤の変身は「魔法少女モノ」と讃えるべきインパクト。

[B]ドーン・オブ・ザ・ゴッド】
INDEPENDENT:NGY 以来2度目。マーケット戦略さながらの小気味良い布教技術論。その内容の硬さを解きほぐす…ギャップとしてのコミカルな話術。なぜか出てくる名古屋弁(笑)

初演で面白かったところはそのままに…やってくる終盤。
神に対する本音が…ツッコミが響いてくる。「光明もたらしゃあ~」までのくだりが、初演の時よりもスルッと胸の内に落ちてきたのが印象的。
聞いたところによると、初演での畳み掛ける様なセリフ群を…一部、大胆に削ったそうで、「伝える」に比重を置いた成果かな。ただ、エモーショナルな部分がぐっと良くなったのに対し、理屈を捲し立てる話術の部分にもっと淀みなさが欲しい…気持ちよく聞かせて欲しい。
じわじわ好きになってくる素材、また磨かれる機会を切望。

[C]嘘つきパラドックス】
そもそも人間関係から迷わせる趣向。最初は「先生と生徒?」の印象から、徐々に「ドラマ監督と役者?」に見えてきて、遂には「作家の脳内論議」…作家自らが自分で生み出したキャラと自作の方向性に葛藤する様…に辿り着いたかに見えた。

人間関係自体を謎に据えて話を展開させること自体は珍しくないけど、こうやって観客の想像をコロコロ変えさせてゆく趣向は新鮮。ここにフォーカスして、もっと頻繁に変えるのも面白いかも…コント的な味付けになってしまいそうですが(笑)

[D]今日はカレーな気分!】
屁理屈問答や異文化コミュニケーション的なネタの楽しみも多かったが、やはり…常滑kenさん個人の味を堪能した回と言える。吃り方といい、キョドり方といい、まるで漫画から飛び出して来たような振る舞いが何とも愉快。個性に合った起用かな。

[E]ギブちゃんの言うとおり】
Siriをモチーフにしたと思しきキャラ ギブちゃんから享受する人生指南。ギブちゃんの"らしさ"と…ブッダすら演じてみせる役者ぶりのギャップは面白い、はらみつさんナイス。そしてかつて、モラトリアムの代名詞であった"自分探しの旅"にて、行いは適当ながら、何となく納得できる等身大の答えを導き出してレベルアップしていく展開になんとなく好感。ただ、自らの無謀をインスピレーションの源にして、若い子が真の冒険に挑んでいったという展開は、ちょっと皮肉でしたね(笑)

[F]星のふる丘】
スピード感溢れる軽妙な展開。法則を探りつつ、問題解決ままならぬジレンマの可笑しさ。何とも甘酸っぱい彼氏彼女未満の関係。色々ツボにハマり…率直に「これ、好きやぁ」…と思わせる秀作。
とにかく森さん&清水さん二人のやりとりの可愛さが印象的で萌え要素満載だけど、それで終わらぬ最後のオチにも…完全にやられた。タイムリープ物の既成概念に一捻り加えてきた様で、こういう虚をつく感じは大好き。
印象としては、まさしく女性の掌の上で踊らされて…ポカーンな感じの後味だったなぁ。
並行する彼女側イベント構造は台本を読んでも想像の域から出れないが、バッドエンドに至る前のいずれかのTLにタイムリープを重ねたのかと…スピナーも気になるけど。
ただ清水さんのラストの表情は、そんなものどうでも良いかって気にさせる爽やかさ(笑

[G]WOW WAR GOLD】
西尾さん、こんなシナリオも書くんだ…と率直な驚き。これもまた異文化遭遇ネタではあるけど、極めてSFサスペンス調…しかも、実在んいいドキュメンタリー・スタイルという可笑しみ。
ぶっちゃけ、んいい観てるんだか、妄キネ観てるんだか…分からなくなる不思議体験。
台本には「適当にネタやって」的な指示も入ってて…西尾さんとんいいの信頼関係も窺わせる(笑
あと…任意に光る玉の小道具に驚きあったし、第三者の人格を乗せていく椎葉さんの演技は…まさしく光ってた。随所に見所あり。
第七劇場 日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.2「1984」

第七劇場 日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.2「1984」

三重県文化会館

三重県文化会館(三重県)

2017/11/25 (土) ~ 2017/11/26 (日)公演終了

満足度★★★★

ジョージ・オーウェル「1984」とチェーホフ「三人姉妹」の驚くべき融合。
冗談めいた大胆な挑戦だが意外にしっかり馴染んでオリジナル作品の趣き。訴求力ある。根底の類似点をしっかり押さえて再構成している様だ。役者の佇まいと衣装がうまく世界観を繋いでる。

INDEPENDENT:17

INDEPENDENT:17

INDEPENDENT

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2017/11/16 (木) ~ 2017/11/19 (日)公演終了

満足度★★★★

好きな作品はあれど、脚本での驚きは…いや、福谷さんのはある意味衝撃か、アレどこまで意図的?笑。
「プシュケ」の技量には驚きが、「さようならば、ばら」「スイッチヒッター」「何億年先でも」は率直に好き系、「イーハトーブの雪」には抗えずちょっと悔しい。

熔けない

熔けない

幻想劇団まほろ

G/Pit(愛知県)

2017/11/17 (金) ~ 2017/11/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

強いミステリー感と…時間を行き来するかのような仄かなSF風味の展開には興味が尽きなかった。
終始、何かまだ裏がありそうな空気に集中力を使い続け、心地よい疲労感。

一見、舞台は何の変哲もない学校の保健室だが、何か違和感を纏っている空間。
目の前で行われている5年前の出来事を…過去を演じていると…只の回想とみて良いのか…、ここは本当に保健室なのか、今そこで演じている役は本当に見た目通りのその人なのか…。話を展開通りに素直に呑み込んで良いのか戸惑う…面白い観後感だった。

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ネタバレBOX


(続き)
不思議な印象を形作る筆頭は「クラウド」たち…とても好きな演出でした。

アンサンブルキャストやコロスをイメージする"crowd(群衆)"的な響きと、クラウドコンピューティングを想起させる"cloud"の響きの両方を合わせ持つこのキャストは、見た目の所作の美しさや、主人公の代弁者として表向きはコロス的に機能するが、「記録…」と呟いては、写真やファイル等の情報処理を匂わせて、この空間が「見た目そのままでは無い」ことを主張する。何者かが…「記録」を閲覧・再生している姿を我々は覗いている…とも解釈できそうな気もする。

そもそも現代深紅(養護教諭となった深紅の台本表記) が遭遇する箕島は、一体どういう存在だったのだろうか。公式のストーリー紹介では、箕島が亡霊の様に現在に現れたという扱いだが、箕島の振る舞いの自然さに、むしろ現代深紅の方が5年前に紛れ込んだ感覚だった。

そして、並行して進む「現代深紅」と「過去深紅(5年前の深紅の台本表記)」が各々で関わる5年前の事件の中で、
…現代美紅が箕島にしか会っていないこと、…
…そして5年前の城野教諭のシーンに箕島が一切出てこないこと…
…から、現代深紅は同じ養護教諭として城野の経験を追体験(再生)しているのか?という印象も受けた。そもそも現代深紅が防衛本能的に、不都合な記憶を無意識に封印している感じだったので、…クラウドとの接触等のふとした拍子に、閉ざされた過去の記憶が漏れ出した…、あるいは誰かの記録が流れ込んできてしまったかの様なイメージも想像した。(封印されていた記録文書を見てしまったかのよう。)

ただ、いずれにしても惜しむらくは、…箕島が現代深紅の前に姿を現した…あるいは現代深紅に箕島が見えた「キッカケ」が最後までよく見えなかった。そこが伝わると納まりが良かったかな。

さて、精神的面のドラマの主軸は「深紅の前向きな姿勢の功罪」と「箕島の精神崩壊の過程」かな。
…前者における「深紅と永遠田のシンパシー」…共感できる者が出会った高揚感、意志の強い共鳴。
これ単体でもドラマとして成立しそうな本作指折りの盛り上がり。
ここで培った「負けない」気持ちを…後者において…良かれと「善意」で振りかざし、翻って「凶器」と化す。
なんとも鋭いインパクト。

応援することの反作用。応援する側の身勝手な高揚感。
綺麗に盛り上がった前者の気持ちを…バン!と叩き落す筋書きは、深紅のみならず、善意に共感した観客の心をえぐってくる…そして、何とも切ない。

後者における…箕島の「背景」は常に展開の主軸。前者で構築している「前向きな精神活動」を最後に全否定してくる強烈な要素。

この「背景」が、色んなところでミスリードを誘いながら、順を追って丁寧に明らかにされていく手法は見応えがあった。気にしていた右手首の傷は当初はリスカの方を想像させる仕掛けだし、「家に早く帰ってこない」との親の相談や、「私に似ている人…」とか、ふんだんに伏線が散りばめられていた。

なにぶんオチが「意識の外にある徹底的なタブー」だったので、…丁寧に形作られた善意を…議論の余地なく全否定しうる強度があった。

一方で、箕島の「理性」と「無意識下の行動」が混在している様は、人が壊れていく過程の描写として秀逸で、「もっと上手に人を好きになりたい」に至る心情の吐露や、…「油断したら頭で考えられなくなる」等、印象的な台詞が多い。

ここで小森ひなたさんの演技力も光った。彼女は「無知な六人と六人」の後半でも尋常じゃない精神状態を見事に演じてた。あがく演技に秀でた役者だね。

さて、過酷な現実をようやく認識し…城野とのひとしきりの相談の後、現代深紅が「全て」を呑み込みエンディングを迎える…と思われた刹那のファイルエラー…ビープ音…アカウント削除…?

「うわっ、マジか…」と息を呑む。

本人が壊れたのか、再び記憶が封印されたのか…いずれにせよ、…最後にまた激しく叩き落とされて、…やられた…って気持ちになりました。

このラストが有るのと無いのとでは、著しく芝居の印象が違う。更に苦しい印象を残して終わらせる…思い切りましたね。

役者の感想。先に小森さんには触れましたが、…
…他に印象深かったのは城野養護教諭を演じた森夏音さん。現役高校生にして微塵の違和感もない落ち着いた先生ぶりと包容力…それでいて極めて気さくな理想の先生像。
これまでコメディの印象が強かったですが、う~ん、この子は何でもできるな。

あと、箕島父役の鈴音こうしさんの「俺が愛してやるから…」のくだりは、もう怖くて怖くて… あのシーン…どこまで行っちゃうんだろうとドキドキしました。

これが印象付くと、誰も鈴音さんには逆らえなくなるね…この台詞が飛んで来そうでさ(笑)

W深紅の二人。人格の連続性が感じられて良かった。
福田真也さんのスタイリッシュさに白衣が似合った。ラストシーンにはまんまと騙された。
佐藤美輝さんの真っ直ぐだけど自分本位になりがちな若さの表現も良かった。確か新生のカンニングマスター?

藤井紫音さんの最初の会話での抑揚の効いた口調も印象的。もっと聞きたかった。

藤岡侑真さんの気怠そうな佇まいとか、高見大輔さんの徹底した嫌われ役ぶりなんかも目をひく。

最後に…
「熔けない」というタイトルの意図が未だに掴み切れないのです。
…敢えて「金属の溶融」の熔けるで、何に準えているのか。「負けない」と同意では違和感ある。人が学校・社会に適合することを金属の成型に準えて、熔けない=型にハマらない… う〜ん、これもしっくりこない。
これはどっかで語られてないのかな…

追記

オカルト的可能性を排除すれば、現代深紅が養護教諭の立場としてアクセスできた生徒情報アーカイブの記録(城野の記録含む)をキッカケに、封印した記憶が脳内で有機的に反応して、夢?の中で城野の経験も含めて…一連の過去を追体験・再構成した?

そして、自己防衛的な脳内合理化を経ても、受け止めきれずに… とも整理できるか。

ただし、果たして全てが脳内の産物か?…実は…という第三者の関与の可能性に、更なるドラマの推測が湧き立つ…勿論、一つの可能性でしかない。要所が暗示で提示され、妄想が膨らまされるの楽しい。

こういう作りは、作演の意図から逸れて「新たな物語の誕生を許容する器の広さ」があって良いね。
いわゆる二次創作向き。
おとこしばいおんなしばい2本立て上演 チェーホフ「熊」・ブラッドベリ「霧笛」

おとこしばいおんなしばい2本立て上演 チェーホフ「熊」・ブラッドベリ「霧笛」

A.C.O.A.

四天王寺スクエア(三重県)

2017/11/10 (金) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

何と贅沢な時間だぁ。
「霧笛」役者2人の好演に生演奏のSEが第3の役者となって切なげな空気を作る…そして観客を取り込む新感覚。
「熊」えっ?と驚く配役構成が、ラストシーンで意味を成す巧妙さ。そして女優の闘い。

短編集「ふたり、目玉焼き、その他のささいな日常」

短編集「ふたり、目玉焼き、その他のささいな日常」

空宙空地

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2017/11/10 (金) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

津からのおかわりだけど、またパワーアップしとる。
ただでさえ研ぎ澄ませ続けた芝居なのに、印象的な美術がプラスされ、七ツ寺の空間に映える照明が効果的。
明かりで山形さんに更にエロさがハードコートされてびっくり、凄かった。

短編集なんで、色んな所から心えぐってきて、辛いわ…沁みるわ…切ないわ、所々の笑いで救ってくれるから心ももつけど、堪らんなぁ(良い意味で)。

その真骨頂である如水(2017年物)。遂に名古屋に帰ってきた如水。うん、今年の如水も良いよぉ。全国で揉まれてきたこの一品。できる限り多くの人へ。

そして今回。観れないと思っていた大阪クリエーターズ版サプライズ。良かったぁ。よくぞ名古屋まで来てくださった。
一つすごく印象的だったのは、一瀬尚代さんが…青島青子で初めて見た時とまったく別人に見えたこと。やっぱ凄い生き物だな女優というモノは。あのツンデレ感の訴求力たるや…ラストの表情は反則もの。

おナツ-山形組のサプライズとも、すごい対照的なモノになっていました。
初演の伊吹×熊川組、大阪から招聘の立花×一瀬組と観てきて…演出・個性に応じた味と見所を各々楽しめる幸せを感じる。

もしかしたら、いつかは如水も…

ネタバレBOX

(続き)
ライラックライク

ライラックライク

演劇ニッケル

御浪町ホール(岐阜県)

2017/11/04 (土) ~ 2017/11/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

ニッケル観た直後って、心地良き混乱の海へ漕ぎ出すのが常だったけど、今回は強い芯があって異なる観後感。伝えることにも比重を置く進化?
文学的ですらある得意の言葉遊びを若者言語で表現した感じや、じわじわ空気を作っていく役者のステップが良い感じ

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