マガランの観てきた!クチコミ一覧

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テノヒラサイズの飴と鞭と罪と罰

テノヒラサイズの飴と鞭と罪と罰

テノヒラサイズ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2012/11/06 (火) ~ 2012/11/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

質の高い群像コメディ in 富士山頂
先日、リンクス東京で初めて観て、またすぐに東京で公演されると聞いて気になり、行ってみました。

ネタバレBOX

<あらすじ>
富士山で、山をまるごと地熱発電所に作り変えようとする
大規模な国家プロジェクトが国交省の管轄で進められていた。
山頂では、6社の民間企業の担当者が住み込みで、
掘削機械や発電設備などの各部門で他社と競合し、
契約を取るために働き、半年が経っていた。
すでにプロジェクトから撤退したミツカネ産業(湯浅崇)は、
富士山の模型作りなど無駄な作業をしながら居残り、
周囲のストレスとなっていた。
そんな中、電話番で一人になった大同電力(松木賢三)の前で
噴火を知らせるランプが光って…。

2年前に上演された作品のようで、
震災後の今には少々デリケートな部分もあるようだが、
それを感じさせない出来の良さ。
今だからこそというのもあるのかもしれない。

話のテーマ自体も面白いと思った。
実際そう簡単に富士山で工事はできないだろうけど、
SFっぽい設定は、ワクワクする。
X-10とか出てくると特撮メカのように感じられるし。

そんな荒唐無稽なプロジェクトが土台でも、
そこでの会社間の人間模様はリアル。
姑息な嫌がらせしたり、談合を持ちかけたり…。
一方でつまはじきにされたミツカネ産業は
ファンタジーワールドを作って妙な自信を持ったり。

アフタートークに出られていた、手塚さんもおっしゃっていたが、
要所でのリアルとフィクションのバランスが良い。

それに、台本が巧く出来ている。
最初は立場や存在意義が俄然弱いミツカネ産業が、
トラブルなどで、周囲の人間関係が変わっていく中で
立ち位置が二転三転、
いつの間にか中心になって皆を鼓舞する立場になっちゃたり。

また一つの仕事をするために集まった面々は、
裏でいろんな思惑、事情を抱え、どうにもまとまりが悪いが、
一大事のトラブルの際に心底、一致団結できるっていうのが
ちょっと皮肉っぽさもありつつ、最後にはほろっと感動させられる。

あと段ボールに工夫すると、色んな表現が出来るもんだなと。
ま、○○○には一瞬しか見えなかったけど。


アマヤドリの田中美甫さんがリンクスに続き、出られると言うので、
ご本人と初めてお話した。
素顔とは違う、妙に所々でパンチの効いてる役で面白かった。
広くてすてきな宇宙じゃないか

広くてすてきな宇宙じゃないか

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2012/09/14 (金) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

広くてすてきな・・・
今作は、劇団の代表作の一つで
言わずもがなの面白さ。

前段の話である「銀河旋律」も含め、完成された物語。
SFであり、ホームドラマであり、コメディでもある。
十分に笑わせてもらい、最後にぐっと掴んでくるのは流石。

劇団ほぼ全員出演のまさにお祭りでした。

ネタバレBOX

3チーム中、次の2チームのみ観劇。

<フォレストキャスト>

過去の公演で何度も「おばあちゃん」を演じ続けてこられた、
大森美紀子さんのチームは安定感があると感じた。

柿本も西川さん、3人の子供たちも観ていて安心。

サイゴウ/ヨシダ先生役の真柴さんが弾けてて面白かった。

<スロープキャスト>

初めて「おばあちゃん」を演じる坂口理恵さんは、とにかく元気。
元気に柿本家を引っ張っていく感じ。

ここでもサイゴウ/ヨシダ先生役の前田さんが
突っ走ってて面白かった。
フリル

フリル

アマヤドリ

王子小劇場(東京都)

2012/09/08 (土) ~ 2012/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

せせらぎのように流れる
前身の劇団(ひょっとこ乱舞)特有の群舞はなかったけれど、
水のように言葉が流れてくる感じが巧いなと。

松下さんの台詞が長いのは相変わらずなのか、
それでも止めどなく流れて
その中で感情の起伏を表現してくるところが
素直に凄いと感じた。

別れ、辞める、捨てるとか負や陰の要素が多く、
マイナスの気が溢れる芝居かと思うが、
逆に夜明け前の闇のように次に何かが始まっていく
シークエンスのようにも思えた。

あと女性キャストの表現が良い。
強いけど、繊細で一人一人のカラーの違いを
自然に出していた。

ネタバレBOX

終演後のDULL-COLORED POP主宰、谷賢一さんと
アマヤドリ主宰の広田淳一さんのアフタートークは面白かった。

観劇した後の率直な意見を述べ、
広田さんの精神状態を案じながら、
終始ツッコミを入れつつ、
トーク全体を仕切り倒す職人となっていた谷さん。

このアフタートークで
広田さんがこれまで無意識に感じていたもの、ことが
今作に反映されていることが分かった。
東京福袋

東京福袋

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/09/02 (日) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

まさに「福袋」
東京芸術劇場って実は前に一度来たことがあった。
知り合いが出演していたピープルシアターの作品だった。

何となく場所の雰囲気は覚えているが、
リニューアルしてまったく別の新しい場所になっていた。

本公演は、東京芸術劇場リニューアル記念で
毎日4団体ほどがそれぞれに短編を上演。

ネタバレBOX

まさに「福袋」。
中身が全くわからないわけではないが、
ジャンルを問わない雑多な舞台作品が集まった感じ。

1本目…カナダの劇団コープス(CORPUS)『飛行隊』。

<あらすじ>
カナダ軍第217飛行中隊は、
きびしい予算削減により飛行機をすべて失ってしまう。
でも5人の戦闘パイロットは志を失わず、
可能なあらゆる場所で地上訓練を続けていく。

最初は、語学的な違い(英語やフランス語など)から
ぽかん、としてしまったが、
途中で観客の男性をステージに上げて、「キャプテン・フィフィ」として
即興でパフォーマンスの輪に無理矢理加えてしまうところは可笑しかった。


2本目…珍しいキノコ舞踊団『珍しいキノコダンス』

これがコンテンポラリーダンスというのか。
女性による不思議な動きの混ぜた舞いという感じでした。
だけれども出演者の動きが力強い。


3本目…柿喰う客『いまさらキスシーン』

<あらすじ>
勉強、部活、恋愛と、
どれにも全力投球したい女子高生・三御堂島ひより
(ミミドウシマひより・玉置玲央)は、
背筋をピンと伸ばして国道4号線を突っ走る。

これ目当てでした。柿喰う客の作品でも度々再演され、
好評を得ている玉置玲央主演の一人芝居で、
つい先日には、劇団員の永島敬三さんバージョンがやっていた。

キャストの玉置さん、永島さん、どちらも身体能力が高いのは、
裏を返せばそれだけかなり激しくエネルギーを消費するってことだろう。

とにかく高校時代は時が過ぎるのが早い。
勉強か、部活か、恋愛か。
そう思っているうちに時は過ぎてゆく。
早口で止めどなく流れる言葉で、時があっという間に流れ、
うまく考えていても思った通りにならない高校生活。

終盤の冬の情景は、まるでそこにあるかのように感じられた。

身体表現の豊かさは言うまでもないが、
これが玉置玲央という役者の力なのか。

色んな感情を揺さぶられる、短い青春のような作品だった。


4本目…東京デスロック『Counseling』
主宰の多田淳之介さんとSPAC芸術監督をされている宮城聰さんの対談。

多田さんが劇団の東京公演を休止した経緯から、
東京を離れて演劇をすることについての思いを語り、
後半に宮城さんがだんだんと話していく。
東京と地方で演劇の捉えられ方が違うこと、など興味深い話題が。

本日まとめのアフタートークのようでもあるが、
内容は講演と言っても十分すぎるほど。
ゴミくずちゃん可愛い

ゴミくずちゃん可愛い

ぬいぐるみハンター

王子小劇場(東京都)

2012/08/22 (水) ~ 2012/08/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

元気をもらった
初めて、ぬいぐるみハンターの作品を観劇。とても元気をもらえた。

ネタバレBOX

近未来。
東の方の最果てに、かつて夢の谷と呼ばれたゴミ谷があった。
世界中から飛行機に乗せて落とされる鉄の雨=ゴミによって
ゴミ谷は、いつしかゴミの山となっていた。

生まれて間もなくゴミと一緒に捨てられたゴミ(浅利ねこ)と
同じ頃にゴミ谷で生まれたソニー(満間昂平)、
彼女らを取り巻く人々の物語。

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ゴミの登場から冒頭のダンスは、キレキレで良かった。

全体的にテンポ良く、疾走感があり、2時間15分でも飽きが来ない。

中央に丘のように置かれた、
地球を模した球面のみを舞台装置として
そこを中心に走り回り、動き回る。
ゴミがなくてもそこはゴミ谷に見え、
まるで宇宙を通して地球、世界全体を見ているようだった。


戦争、平和、企業同士の争い、デモ…
どれも難しいテーマだが、どんなに理屈やシステムが難解でも
ゴミの元気さ、明るさ、可愛さが吹き飛ばしてくれる。
彼女が活き活きとしていると、
ゴミ谷でも楽しい場所なのではと感じさせられる。

けれど世界の最終処分場であるゴミ谷は、目的地ではなく、
一つの通過点に過ぎないと感じた。

ゴミ谷にやってきた、アスナロ(猪股和磨)、イチノセ(川本直人)、
スナフキン(平舘宏大)。

脱走兵のアスナロは、召集令状をもらい、
自分が必要とされていることを感じ、戦場に戻っていく。

旅人のスナフキンは、探していた恋人ポルノ(富山恵理子)と奇跡的に再会し、
世界に戻っていく。

戦場カメラマンのイチノセは、世界を捉えるため、写真を撮っていたが、
ゴミにカメラを通してみる世界の素晴らしさを教え、
ゴミを外の世界へ導いていく。

劇中、ドク(江幡朋子)が「ここ(ゴミ谷)は長くいる場所ではない」
と何度か言っているが、
皆、きっかけがあれば、自分のいる小さな世界から、
外の大きな世界へ飛び出していけるのだと、
言われているような気がした。

ラスト、18歳を待たずにゴミは死んでしまう。
ゴミの誕生日にみんなが集まって記念写真を撮るところに、
ふらっとゴミが現れて一緒に写真に納まる様が、なんか良い。


キャストは全て魅力的。

主役のゴミは言わずもがな、浅利ねこのパワーに下支えされ、
誰からも愛されるヒロインになっていた。

ゴウトクジ(浅見紘至)は、気味悪さ全開で出てくるだけで笑いが起きる。
それに真っ向からクニマツ(工藤史子)が自由なおとぼけのツッコミをかまし、
時折、コムスビ(橋口克哉)くんへ振り、終始、笑いが絶えないトリオだった。

荒っぽいけど、面倒見の良いサソリ(佐賀モトキ)と
誰もが頼れる存在のドクというのも物語には必要なポジションだと思った。
進化とみなしていいでしょう

進化とみなしていいでしょう

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/07/28 (土) ~ 2012/08/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

クロムが見せる進化
クロムモリブデン、2回目。
飛び込みで観れて、すごいものを観たという感覚。

ネタバレBOX

前回の「節電ボーダートルネード」でもそうだが、
クロムの作品を完全に理解するのは無理だと思った。

それでも断片的に分かるものや、観た人が個々に
感じるものが無限に存在するように思えるところが凄い。
それに音響や舞台装置など、とにかく全てが洗練されている。

五輪熱が冷めぬ中、開幕の少し前に、
10数年ぶりに世間を騒がせた
あのオウムの逃亡犯事件がモチーフなのだろう。

現実と虚構が行ったり来たり、
どちらなのか、どちらでもないのか。

世田谷症候群とか、コミュニケーションなどに
何かしら障害がある人を色んな病名で呼ぶが、
何にでも病名をつけて納得させようとする、
現実に対する皮肉のようにも思えた。

ある意味、コミュニケーションの欠如も
進化と一つとみなしていいのかな。

幸田さんはあんなに長身で足が長く美人なのに
なぜ観ているだけで可笑しさを感じるのか。
あのビビッドな刑事の衣装のせいか?

久保さんの時事ネタ、五輪ネタを絡めた
アドリブの(ような?)台詞回しが面白い。

武子さんの身体能力の高さは、観るたびに感嘆する。

これだけのボリュームを80分にまとめられる
脚本の青木さんの手腕が凄い。
【13日(月)14:00追加公演ございます】父母姉僕弟君

【13日(月)14:00追加公演ございます】父母姉僕弟君

ロロ

王子小劇場(東京都)

2012/08/05 (日) ~ 2012/08/14 (火)公演終了

満足度★★★★

カオスな旅
劇団初見。お目当ては客演で柿喰う客の葉丸あすかさん。
ロードムービー調ということで作品自体の期待も。

ネタバレBOX

キッド(亀島一徳)は、妻の天球(島田桃子)を喪って、
生前話していた出会いの場所を行く約束を実行する。
頭の中の記憶は出会いに向かって遡りつつ、
道中、奇妙な面々と出会い別れる。

キッドの一見ドライなようで、実は不器用だけど、
妻の天球が本当に好きであるところ、
天球の全てが天使のようでありながらも、
夫に対して見せるワガママが、一人の女性らしさを
感じさせるところが良かった。

仙人掌(望月綾乃)は、どんな環境にも適応する都合のよい女で
この複雑でつながりのないエピソードや登場人物たちを
つなげる基点となっていた。

序盤は、ダディーマン(内海正考)が不条理全開パパぶりで突っ走り、
兄弟の兄、重樹(篠崎大悟)によるパワープレイのノリ突っ込みで
中盤以降、キハチ(田中佑弥)と園絵(葉丸あすか)、電源(多賀麻美)が絡んできて
よりカオスな感じになっていく。

葉丸さんのコミカルでインパクトのある動きで
一番コメディパートをけん引していた。
田中さんは、中フラで一度観ていたが、
勘違いしたら止まらないキャラがよりパワーアップしていた。

たらい落としや壁破り、「We are the world」の流れはおかしかった。

ラスト、膨らんだ物語が終息し、一つの旅が終わる。
壁をぶち破るシーンで目が覚めるようなインパクト。
天球と出会ったキッドは、そこから一人再び次の旅へ進む。

人生は旅。ここで流れる「オー、シャンゼリゼ」が旅の御供に心地よい。

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2回(8/8夜、8/12夜)観たが、
最初は書評家の豊崎由美さんと劇団主宰の三浦さんとの
アフタートーク。

実際、色んな話を詰め込み過ぎて長いとも思えたが、
三浦さんの話を聞いて、興味・関心・好きな本の要素が
全て入っていたんだとある意味納得。
舞城王太郎の作品がお好きなようで
その作風が本作に影響を与えているとのこと。
豊崎さんからも読書センスを絶賛されていた。

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