キル
NODA・MAP
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2007/12/07 (金) ~ 2008/01/31 (木)公演終了
満足度★★★★
過不足なしの初見。
初演・再演と評判の良かった作品だけに、初見なのに身構えてしまう。
それでも、高まった期待をスッと超える言葉があるあたり、名作たる所以かと。
初見の者としては過不足のない『キル』体験だった。
妻夫木聡は、惜しくも手が届かなかったという印象。
例えば、5年後にまた『キル』をやるようなことがあれば、ぜひ妻夫木で観たい。
もちろんその時は勝村政信も一緒で。正直、彼で芝居が回っていたように思う。
やはり終盤戦ということもあり、妻夫木を始め声が心配な役者がちらほら。
まあ、それも味と言えば味なんだけれども……ちょっと残念。
ガラガラしてたらモンゴルの青い空に霞がかかっちゃうじゃんか。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【英語編】Suddenly GAIJIN
外国人の方がかなり多い客席の反応も楽しみつつの観劇。
正直な所、前もって4本観ていたから何とか理解ができたという感じ。
翻訳の難しそうな部分など、興味深く……お勉強したかな、と(苦笑)。
リーディングとは言うものの、しっかりアクトがついており、
ほとんどフルパフォーマンスと変わらぬ感じで観ることができた。
英語版ならではのアクトがあり、言葉が変われば身体も変わるんだな、と。
8本観るからこそ、これくらいの刺激物がちょうどいいなっ、てのが正直な感想。
太陽
冨士山アネット
シアタートラム(東京都)
2008/01/19 (土) ~ 2008/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★
物語るダンス。
クソ長い『ファウスト』をこんなにもあっさり解体してしまうのか、と小気味良い。
圧倒的なボリュームの音楽と、やかましいくらいの照明、饒舌なダンス。
それこそ長谷川寧の提唱する“テアタータンツ”としか言えない経験。
今後、どういった作品をダンスで物語るのか、凄く楽しみだ。
ただ、一点。マイクの声はともかくとして生の声はいただけないな、と思った。
前回公演『在処/suger』での徹底に感心していただけに、首を捻った。
メディア モノガタリ
三条会
ザ・スズナリ(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★
もはや暴力だ。
古典と向き合って作品を作り続けた結果、2周目に突入しちゃってる感はいつも通り。
「いつもの通り」って言うにしたって、いつも度肝を抜かれるんだから、凄い。
これは、原作に対する愛がゆえのヴァイオレンス(という名の演出)である。
そのヴァイオレンスに荷担する俳優たちも相も変わらず。
三条会という団体でしか観られないものが、確かにここにある。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★
【帯広編】あじわい深き。
帯広演研のために書き下ろしたということで、ある意味ではオリジナル。
それでいながら、平田演出ではないということで他チームとは違うポイントが多々みられる、異色作でもあった。
やはり、円熟のあじわいということで、完全に別の魅力で魅せられた感がある。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【広島編】意外にもスタイリッシュ。
若いチームということもあるのか、どこか都会っぽい感じで広島弁での応酬。
やりすぎない感じが、逆に「こんな感じなのかな」とか思わされたり。
割とニュートラルな感じ、そしてポップな感じが好みならこのチームかも。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【青森編】故郷の訛り激しき。
青森編は、兄姉夫妻と弟妹夫妻の対比の妙を楽しめた。
青森出身者としては、微妙な会話のニュアンスにほくそ笑み、どこか優越感。
言葉選びに手抜かりなし。おみそれしました。
明日は、帯広と広島。言うなればアウェーです。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【関西編】軽妙だからこそ。
関西弁の軽妙さが観客をくすぐり、空気が暖まってくる。
徐々に節々の台詞が不条理状況から見える“問題”を気づかせてくれる。
平田オリザメイドの不条理劇は優しい問題提起をするなぁ。
これが、他のバージョンでどうなってしまうのか。
関西編を基準点に定めて、残り7作品を楽しみたい。
次回は我が故郷・青森編。
目を見て嘘をつけ
KAKUTA
シアタートラム(東京都)
2008/01/10 (木) ~ 2008/01/16 (水)公演終了
満足度★★★
キレイだから目立つ傷。
確かに良質なウェルメイド。堅実で信頼のおける戯曲。実にキレイな作品。
それだけにいくつかの傷が気にかかる……そんな感じで観ていた。
サイドエピソードが充実しているようで、意外と広がりを持たない。
キャラクタが充実にしているだけに、膨らませて本筋に絡ませてほしかった。
本筋があまりにもストレートど真ん中なだけに、ひねりもみたかったな、と。
役者陣の充実ぶりに目を見張ったが、空気を共有できていない瞬間があり。
なんだか、もったいないお化けってこういう時に出るんだと思う。
スチュワーデスデス
クロムモリブデン
駅前劇場(東京都)
2007/12/28 (金) ~ 2008/01/08 (火)公演終了
満足度★★★★
クロム分確保。
このダークなポップさはやはり圧倒的なクロム世界ならでは。
抜群のドライヴ感はあるし、そこに説得力があるのは流石。
いつも思うことだが、役者陣は本当に見事に世界を構築している。
ただ、最後はグルーブ感がもう少し……観た回が悪かったのかも。
クロム分を補給できたので、取りあえず満足。
火宅か修羅か
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2007/12/21 (金) ~ 2008/01/14 (月)公演終了
満足度★★★
静かに心を通り過ぎる。
久々の青年団であまりの“静けさ”に何も留まらず。
状況に、さほど興味を持てなかったということなのかもしれない。
それでも、会話の機微の面白さは相変わらずで、ほっとする。
ベテラン役者陣は見事という他のない仕事ぶり。
荻野友里や堀夏子といった桜美林出身組の活躍も目覚ましい。
再演とは再生(re-born)なのだな、とこういう作品を観ると思う。
残魂エンド摂氏零度
芝居流通センターデス電所
ザ・スズナリ(東京都)
2008/01/11 (金) ~ 2008/01/14 (月)公演終了
満足度★★
ステレオタイプはちょっと。
ネットやロボットといった手垢のついたテーマで挑んだ割には、ステレオタイプな物語に終始。
疾走感はあるものの、説教臭く、そのうえ説得力を持っていないのは痛い。
何よりも、拠り所にできる愛せる役者がいなかったのことにがっかり。
役者・竹内佑(作・演出)が一番愛せるのってどうなんだろうか。
音楽と映像のクオリティはなかなか高い。
生演奏する理由は見当たらないけど、雰囲気は◎。
2008改訂版・百千万(ももちま)
劇団鹿殺し
駅前劇場(東京都)
2008/01/11 (金) ~ 2008/01/21 (月)公演終了
満足度★★★
もったり。
新生・鹿殺しの御披露目としては、全く物足りなかった。
心臓を鷲掴まれるような説得力はなく、物語ももったりと進行する。
チョビ&丸尾丸カラーが強まったのが功を奏していないような印象。
次作は新劇団員の活躍を大いに拝見したいところ。
そんな中、谷山知宏が劇団員と見まごう見事な立ち回り。
花組芝居よりこっちの方が向いているのでは……と余計な心配。
ドン・キホーテの恋人
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2008/01/10 (木) ~ 2008/01/13 (日)公演終了
満足度★★★
掴みは◎。
美術も相まって、説得力のある世界観の構築がなされており、すんなり世界に入り込むことができた……というより“よく理解できた”。
台詞のセンスも面白いし、それを支える役者陣もぴりりと辛い。
全体的に後半にいくほど精度が落ちてしまい、期待していたほどラストが盛り上がらず、残念。
良くも悪くも「次作を見たい」と思わせるのは見事。
手オノをもってあつまれ!
スロウライダー
新宿シアタートップス(東京都)
2008/01/04 (金) ~ 2008/01/07 (月)公演終了
満足度★★★
たぶん起こる未来。
恐怖はなかったものの、スロウライダーのセンスは各所にあり、でも、怖がりたかったな、と思う。
様々な設定は大変面白くはあったが、有機的に繋がっているようには感じられず。まあ、そこも狙いなのだろうと思うけれど。
今回はすんなり消化でき、「カロリーの消費」で済んでしまった。そこが一番残念。
舞台美術はシンプルながら、照明も相まって鮮烈な印象を残した。
俺たちに他意はない
シベリア少女鉄道
赤坂RED/THEATER(東京都)
2007/12/15 (土) ~ 2007/12/24 (月)公演終了
満足度★★★★
シベ少はシベ少。
2年ぶりのシベ少は、やっぱりシベ少だった。そこに安心。
シンプルな仕掛けで、「これがあったか!」の思いであったが、物語よりも他意=ネタに気を取られてしまうのが笑えるんだけど惜しい。
もしかするとそれが狙いなのかも知れないけれど。
そういえば、シベ少でちゃんと笑ったのは初めてだったかも……。
人間フィルハーモニー
マンションマンション
駅前劇場(東京都)
2007/12/21 (金) ~ 2007/12/26 (水)公演終了
満足度★★★★★
納得の力業。
役者陣のパワーによって不条理な世界観をゴリゴリ押しつけ納得させる。
その力業をできるだけの役者が揃っており、どっぷり浸ることができた。
福原作品は初だったが、強引さと小ネタが非常にツボだった。
全開のチョウソンハも観られて、もはや180%くらい満足の2時間弱。
今年の観劇納めを、満腹で終わることができてハッピーでした。
死んでる体重
たすいち
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2007/12/21 (金) ~ 2007/12/24 (月)公演終了
満足度★
エンタテイメント失格。
テーマをエンタテイメントにしきれずに終わった印象。
話を進めることが目的になってしまい、台詞はもちろん物語への気遣いがほぼ感じられない。
これが「現代っ子のエンタテイメント」だと言うならば、語るに落ちる。
役者陣に関しても、まったく覇気が感じられず、舞台に上がる意味を見出せない。
桜美林大学の佐賀モトキが一人気を吐いた。一人では手遅れなんだけど。
こんなに長い75分もなかった。
作・演出である目崎剛の前作『FIRE LIGHT』に希望を持てただけに、今回の失望は取り返しのつかないくらい大きい。
偏路
劇団、本谷有希子
紀伊國屋ホール(東京都)
2007/12/14 (金) ~ 2007/12/23 (日)公演終了
満足度★★★★
“らしさ”の向こう側?
本谷有希子の視線をそのままに、やわらかい筆ペンで戯曲を書いた印象。
もっとギスギスしててドロドロしてるのが“本谷らしさ”のようなイメージを持ってしまうんだけど、そういったところは今回は薄味。
“らしさ”は失ってはいないと思うけれど、“ふつう”の作品を描く人になったのかな、と思うとちょっと淋しい気もしたり。
前回公演『FFSNF』の揺り戻しが来たと思うと、何となく納得はするのだけど。
父娘である近藤芳正&馬渕英俚可を筆頭に、役者陣が抜群に素晴らしい。
本谷というよりは役者陣の印象が強い公演だったということになりそう。
メリー
国分寺大人倶楽部
王子小劇場(東京都)
2007/12/21 (金) ~ 2007/12/24 (月)公演終了
満足度★★★
天然ということ。
リアル芝居を天然の人が作ったらこうなっちゃうのか、という稀有な感情を抱く。
後半の仕掛けには、正直「やっちゃった」感しか漂わなかったし、ラストは更に「やっちゃった」感が残ってしまって実に残念。
でも、仕掛けたことは評価したいし、少なくとも次回も観たいという気持ちを持てた。
主人公を演じた小斉英嗣にしてみても、実に稀有な存在感だった。
代わりが思いつかないほどにフィットしており、彼もまた極上の天然物だ。