眠りのともだち
イキウメ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2008/02/27 (水) ~ 2008/03/09 (日)公演終了
満足度★★★★
少し不思議の魅力。
面白みのある設定を、現実という地盤に乗せて遊ぶ、ラヴありで。
言うなれば、前川知大作品とは、そういうことなのである。
逆に言えば、その設定こそが作品の善し悪しにもろに影響する。
眠りという判りやすいテーマで、少し不思議(SF)な世界に導いた。
その設定の面白みたるや、流石と唸ってしまう。
説明台詞に説得力がある作風だと思うのだけど、……少数派意見?
最後の引っ張りが少々くどいような気もしつつ。
やっぱりウェットだなぁ……とドライに思ってしまう、私。
お前がダメな理由
箱庭円舞曲
サンモールスタジオ(東京都)
2008/02/27 (水) ~ 2008/03/03 (月)公演終了
満足度★★★
わかっちゃいるけどやめられない。
舞台の“調子”に慣れるまでは、台詞やら音楽やら鼻についていた。
でも、その“調子”になれてしまえば、なかなか心地よい空間が広がる。
慣れというのは怖く、それこそダメな人々が生活するアパートの居心地のようで。
……えっと、もちろん感想的には悪い意味ではなくて。
わかっちゃいるけどやめられない。そういうことなんだろうね。
群像劇らしい群像劇で、オフビートな人々のキャラクタが生きている。
最後のやりきれない爆走感だって好感を持たない理由はない。
だからこそ、120分強は冗長でしかない。そこが酷くもったいない。
檸檬/蜜柑
弘前劇場
ザ・スズナリ(東京都)
2008/02/29 (金) ~ 2008/03/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
思考する音。
リアルな言葉で話されているのに、物語は地上50センチくらいをふわりと浮く。
話がぷつんぷつんとあり、リンクするようなデッドリンクするような面白さ。
抽象的な話の交錯に、ビリヤードの球の音も交錯。何というか、思考する音だ。
長谷川孝治の世界観、ここにありき。
小笠原真理子が巧く舞台を回し、回りもそれに呼応するといった様相。
ここまで安心して観られる俳優陣を揃えたリージョナルシアターは、他に類を見ないでしょう。
春琴(しゅんきん)
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2008/02/21 (木) ~ 2008/03/05 (水)公演終了
満足度★★★★★
陰翳を礼賛す。
仄暗い舞台にゆらゆらと立ち上がる谷崎の世界に酔う。
時間の流れ方が非常にゆっくり濃密になっていく。
ごくごく真っ当に原作と向き合った結果、誠実な舞台になったという印象。
原作の言葉の強さと、仄暗い舞台に浮かぶイメージが見事に合致。
なるほど、陰翳とは確かに美しい。
明るい部屋
背番号零
STスポット(神奈川県)
2008/02/22 (金) ~ 2008/02/26 (火)公演終了
満足度★★★
歩み寄りというあざとさ。
零の芝居は、相も変わらずかなり「小説」的である。
ただ、今回に限って言えば、「芥川賞を取りに来た純文学小説」であった。
“会話劇”というフォーマットに演出家が安心しちゃったのだろうか。不満。
そんなこの作品を演劇たらしめたのは、片倉わき。
その存在感は、一気に零的な空間作りに寄与しており、脱帽の一言である。
なんと今回が初舞台とか。いやはや、飛んだモンスターが居たものだ。
これが一番の収穫。
つまり、“会話劇”ではない部分において素晴らしい演出だったということ。
……このフォーマットは零には向いていない、のかな。
「(発電所)」
親族代表
新宿シアタートップス(東京都)
2008/02/14 (木) ~ 2008/02/24 (日)公演終了
満足度★★
のほほんと。
コントと言っても五者五様といった感じで、そこがオムニバスの楽しみ。
のほほんと気構えなしに見るのも、たまにはいいかなって思える。
でも、福原演出の妙がもうちょっと見たかったな、と欲を言ってみたり。
愛にキて
アマヤドリ
王子小劇場(東京都)
2008/02/15 (金) ~ 2008/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
都市に祝祭を。
オフビートな人たちがぬるっと漂うスローな展開のかったるさ。
エピソードを無機的にガチャガチャくっつけてるような猥雑さ。
しかしながら、そんな気分を吹き飛ばす爆発的な祝祭。
そんな都市の気分も、決して悪くない感じがするのです。
昔のひょっとこ+今のひょっとこ÷2=本作といった感。
やはり、再演はハズレなしかな、と。
そして、美術を見ると、“王子小劇場の雄”だな、と強く思わされる。
こんなにこの劇場をわかってるカンパニーはないでしょう。
よくないこと
E-Pro
【閉館】江古田ストアハウス(東京都)
2008/02/14 (木) ~ 2008/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
大学のある街である「よいこと」
想像通り、誤意訳絶好調の中野成樹ワールド。
出自が違う俳優が出演してもブレない、強度ある演出がすばらしい。
このような短篇は、ぜひ、年に3~4本は上演していただきたい。
日芸演劇学科OBでかためる試みというのは企みとしてなかなか面白い。
それをお膝元である江古田の街でやっていくことにも大いに賛同。
E-Proが大学のある街である「よいこと」でありますよう。
ウラノス
こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
青山円形劇場(東京都)
2008/02/06 (水) ~ 2008/02/17 (日)公演終了
満足度★★★
星に手は届かず。
SFというのは先行作品、というか先行アイディアがあると弱い。
早い段階から「似てるなぁ」と思っていたけれど、オチまでそのまんまで唖然。
盗作とは言わないけれど、オマージュと言うには工夫がないような。
そして、先行作品よりウェットになったことで、結末がチープになった印象。
それでもテキストで魅せてくる部分は数々あったし、
「もしかして違う結末?」と思わせるくらいドキッとさせるところもあった。
青山円劇カウンシル第一作としては全然及第点だとは思う。
でも、なんか結局ミソが付いちゃって、すごく残念。
※ネタバレは、先行作品について明かしています。ご注意下さい。
革命日記
青年団
アトリエ春風舎(東京都)
2008/01/30 (水) ~ 2008/02/12 (火)公演終了
満足度★★★★★
小日本人。
様々なテーマを内包し、すっと提示するオリザ戯曲の巧さ。
この作品は、アプローチが外にも内にも向いており、唸らされること多々。
そして、何よりも日本人というものを見せられた気がする。
若手が演ずるのにマッチした作品でそこも心地よかった。
キラリ☆ふじみで創る芝居『大恋愛』
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)
2008/02/07 (木) ~ 2008/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
加速するリレー。
1幕・菅尾が滑走路を丹念に走り、
2幕・富永が甘くふわりと浮上させ、
3~5幕・多田がドライブ感で大気圏を突き抜けた。
3人の演出家の仕事が見えながら、本当に綺麗なリレーだった。
演出の仕事がこれだけ見える舞台というのは稀有な体験だ。
「ブレのない古典こそ遊ばれて然るべきなんだ」という好例であると思う。
この企画を提案してきた、キラリ☆ふじみのポテンシャルの高さには舌を巻く。
来年の『グランド・フィナーレ』が今から楽しみでしょうがない。
霊感少女ヒドミ
快快
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/02/07 (木) ~ 2008/02/09 (土)公演終了
満足度★★★★★
妥協なき逃げ足。
はじめての小指値にして、さいごの小指値。
名前を変えて活動はするみたいだけど、小指値の妥協なき逃げ足に感服。
名前を変えた所で彼らの価値が何ら変わらないんだろうな、
という確信にも似た妙にガッチリとした感触があった、そんな公演。
あえて言うならば、現代口語演劇系の一つの最先端であるのかな。
なんて、ジャンルで語ってもしょうかないか、と思わされる独特の世界観。
このポップさは、ゼロ年代の収穫と言っても過言ではないでしょうね。
チェーホフ短編集
華のん企画
あうるすぽっと(東京都)
2008/01/26 (土) ~ 2008/02/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
笑ってばかりもいられない。
笑劇とは言っても、そこはチェーホフ。笑ってばかりもいられない。
理不尽な人物、不満足な人物……それが何故か笑えてくるし、物悲しい。
上手い具合にオムニバスに仕立てており、一つの物語のように見えた。
個人的には「煙草の害悪について」が秀逸。
これからシェイクスピアと同じようにチェーホフもシリーズ化される模様。
来年の楽しみが早くもできてしまった。
Sheep fucker's exit
tsumazuki no ishi
ザ・スズナリ(東京都)
2008/01/31 (木) ~ 2008/02/06 (水)公演終了
満足度★★★★
重厚感たっぷりのノワール。
こういうのをノワールというんだよなぁ、と噛みしめるような150分。
本当にたっぷりじっくりノワールに漬かってみて、流石にお腹いっぱい。
話が走るということはなく、たっぷり人間たちを描いていく。
なるほど、これは一種のキャラクタ芝居として見てもいいかも知れない。
ズーンとした重厚感ある世界を支える役者たちが余す所なく魅力的だ。
席によって映像や演出的に面白そうな場面が見えない可能性アリ。
もしかしたら、後ろの方がよいかも知れません。
NINPU妊×××婦SANJŌ
クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)
駅前劇場(東京都)
2008/01/30 (水) ~ 2008/02/04 (月)公演終了
満足度★★★★
ぐらぐらしてるのに倒れない。
石の積み方が、不安定そうに見える点も含めて凄く上手い。
スタートはスローなものの、グッと話が走り出してからは、
様々な事象が有機的に繋がっていき、見ていて本当に心地よい!
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【盛岡編】故郷の訛り懐かし2。
青森県出身なのですが、言葉は南部弁なので、盛岡編は本当に親近感。
ぐっとまとまった感じのバランス感覚の良さは戯曲の良さを伝えてくれる。
それでいながら、しっかり脱線する具合がなかなか◎。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★
【熊本編】南端の曲者。
今回のシリーズの南端ということで、流石に曲者。
癖のある熊本弁を堪能しつつ、やっぱり大袈裟になるなぁと思ってしまう。
言葉によって本当に性格が出るし、戯曲のニュアンスが変わるなぁと。
隣にいても一人
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/01/17 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
【三重編】にゃあにゃあ。
にゃあにゃあ言う以外は、外の者には関西弁との差違は判らず。
しかしながら、全体的にまるっとしていて、関西編とは違った魅力が。
特に弟のおっとり感は、一番好きだったかも知れない。
投げられやす~い石
ジェットラグ
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2008/01/24 (木) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
岩井節炸裂。
喜劇と悲劇が同時進行する状況を作り出すという十八番芸。
観る者のない交ぜの感情を更に揺さぶるという、演劇的な衝撃を与えてくれた。
こういう芝居をプロデュースしてくれたジェットラグにさえ好感。
4人の役者それぞれに魅せられたが、流石に今回は岩井秀人の独り勝ちか。
ああいう悲喜劇役者をやりきれるポテンシャルの高さは半端ない。
繭
reset-N
シアタートラム(東京都)
2008/01/23 (水) ~ 2008/01/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鶏と卵。
電車が止まった影響で、最初の10分ほど観ていないことを前提に書きます。
なお、ほぼ20分遅れで開演したようで、制作的な配慮は十分だったかと。
夏井孝裕と、この作品で出会うことができたことが幸せかどうか判らない。
昔の評判とはどうにも違うようだし、そもそもNとして再起動の公演だという。
ただ言えることは、会話に静かに惹かれ、会話は世界へと導いてくれた。
会話の書かれ具合がよいのか、役者が手練れ揃いであるからよいのか。
それは、鶏と卵の関係であって、さほど問題ではない。
演劇的に世界が立ち上がっていることが肝要なのだから。
惜しむらくは、最初の10分。話を聞くほどに後悔が強まる。