ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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ディスプレイ

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ボクらの罪団

萬劇場(東京都)

2015/04/07 (火) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

ボクらの罪団
は、劇団ではなく、社会不適合者の集まりなのだと言う。丁度、直冶のように“生まれて来て済みません”なのである。(ネタバレに追記は後送)

ネタバレBOX

この屈折が良い。こんな糞植民地で国家のフリをしている嘘つき共が作り出した法など、何の意味もないのは明らかだ。というスタンスに立てば、「日本国」(まさにかっこつき)等の制定した法などにどんな意味があるものか? あるはずが無かろう。というのが正論なのであって、法の定める所に従うのは、人倫の説く所に対する罪であり、悪である。
従って人として生きようと欲すれば、この植民地では、悪人、犯罪者、余計者として生きる他はないのであるから、生きていて済みません、とか、生まれて来て済みません、と言い得る人間こそが普遍的価値を持つ人間なのであって、下司と嘘つきしかいない「国家」で正当と認められる生き方をしている者達は総て、悪ということになる。(人倫に悖る罪を犯しているのであるから)そして、この罪は、国家などという好い加減な共同幻想より遥かに普遍的な価値観に裏打ちされた判断基準に基ずいているのであるという事実も認めない訳にはゆかぬであろう。
月の宴『ヘッダ・ガーブレル』新人公演『桜の園』

月の宴『ヘッダ・ガーブレル』新人公演『桜の園』

演劇集団アクト青山

APOCシアター(東京都)

2015/04/07 (火) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★

「桜の園」を拝見
新人公演なので、技術的なことは余りとやかくは言うまい。

ネタバレBOX

 努力の跡が見えて感じの良い舞台であったが、だからこそ、今後の為に言っておきたいこともある。チェーホフに挑む志や良し。然し、まだまだ発展途上であることは言われる迄もあるまい。観客として感じたのは、演技に溜めが無いこと、結果、身体から滲みだすような演技には、まだまだ到達していないことだ。犬の吠え声にしても動物の形態模写は、スタニスラフスキー学院などの教程では科目に入っており、実際の犬の吠え声と聞き間違うほどのレベルで人間が演じる。本気で芝居をやってゆくつもりなら、世界のこのような現実も知るべきである。とても分かり易い例を挙げておいた。他は難度が更に高いことは分かるだろう。
ハコシキ

ハコシキ

喜劇団 ロックドルーム

荻窪小劇場(東京都)

2015/04/10 (金) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

中々”ドイスル”シナリオ
 同音異義語や紛らわしいコンセプトの狭間にあるズレを使ったり、敢えて、そのようなズレをシナリオ化することで、様々なタイプの笑い(あっけらかんから苦笑い、失笑などを含めて)を生み出す作品群。

ネタバレBOX

一応、独立した小話の演じられる舞台になっているのでオムニバスということになるのだろうが、そういう言い方はしたくない。其々の小話に独自性が強く完成度が高いので、全体のコンセプトは作品内容より、様々なタイプの笑いにこそあると思われるからだ。
 間や小道具の使い方と、工夫を凝らしたその作り方、ウィットに富んだシナリオが良い。
SILVER to BLACK

SILVER to BLACK

HyouRe Theatre Company

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2015/04/11 (土) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

収奪のポリティクス(サイードさんごめんなさい)
 宮沢 賢治の「オッペルと象」を下敷きに作られた作品だ。賢治作品の持つ透徹したリアリズムをキチンと継承しながら、ダンス、パフォーマンスを程良く配置して説得力のある作品に仕上げている。全体のバランスを構成するセンスの良さ、賢治作品の読み込み、効果的な舞台美術の使い方などは、演出を褒めて良かろう。演者3人のパフォーマンスも透明感のある、観客のイマジネーションを上手に引き出すだけの質を持ったものであった。

『スカイ』 次回ノーチラスは7/24(金)~29(水)

『スカイ』 次回ノーチラスは7/24(金)~29(水)

シアターノーチラス

シアター711(東京都)

2015/04/08 (水) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

未知? いえいえシアターノーチラスの味
 殆ど詐欺、というか、そういう際どい所で自己表出しないとやってゆけない人間を主人公と脇にした作品である所が、シアターノーチラスの作品らしい所だ。

ネタバレBOX

語られるのは、UFOを見る、コンタクトが取れれば取ることを目的としたサークルである。然し、多くの類似サークルとこのサークルの相違点は、実際、何かが起こりそうだったり、宇宙人とコンタクトが取れるかもしれない、との幻想に浸れるメンバーが多かったりする点だ。上演中なので細かいことは省く。然し、ラストの詩的で圧倒的な意味を持つ科白は、注目に値する。
転人

転人

劇団メイカーズ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2015/04/08 (水) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★

Aチームを拝見
先ず~無難な舞台だが,

ネタバレBOX

 この所、韓国のトップレベルの舞台ばかり観ていたので、如何にも見劣りがする。スタニスラフスキーの演劇理論は、無論、演劇理論の一つに過ぎないという言い方は出来よう。然し、チェーホフ以降の近・現代劇を演じるに当たって最も意味のある演劇手法であり、演劇理論であるということも確かであろう。そういう近現代の世界演劇の基礎をみっちり体に沁み込ませて来た俳優と薄っぺらいスターシステム上で表層の垢に塗れてきただけの人は根本的に異なる。前者は紛れもないプロだが、後者は、殆ど素人だからだ。演劇関係者もキチンとホントのことを言うべきだろう。
 シナリオも転石苔を生ぜずのコンセプトに則って大きな破綻はないが、だからどうだって言うの? と問われたらひとたまりもあるまい。敢えて破綻を作る或いはそのギリギリを作ってそこから転じてくる位でなければ大人は納得しない。
 SMクラブ“パラディ”の場面にしても、キャストを、本物を感じさせる演技が出来る役者を出すか、それができないなら、本物を役者として出演させる位のキャスティングはして欲しい。そのような灰汁、凄みが無いから軽いのだ。まして、映像で世界に発信してスターになるようなSMなど、実舞台でそのまま演じられる訳が無かろう。サド作品などは、皆とうの昔に読んでいるハズであり、実践している連中だっているハズだからである。
 暗転へ移行する場面でも、未だ、ハッキリ観客に役者の動きが見える明度で、腰の曲がった老人を舞台中央で演じていた役者が、椅子からすっと立ち上がりすたすたと袖を目指して動いて行くのは余りにあざとい。観客を蔑ろにしてはいけない。
なぜ ヘカベ

なぜ ヘカベ

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2015/04/03 (金) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

宿命の酷薄
 トロイの王妃、ヘカベは、アガメムノンらの軍との戦いで、オデュッセウスの知略に終に敗戦を迎えた。ヘクトールを始め、19人の息子を失くし、夫を殺され、国と民を失ったヘカベは、宿命を弄ぶ神々を分析する。

ネタバレBOX

 ゼウスとヘラの前には、その親としてオケアノスとテーチュスが、その前にはウラノスとガイアが、そしてその前には、カオスとエロスがと辿ってゆくのだが、これは論理的におかしい。なぜならば、カオスは、総てを含む渾沌と考えられるから、エロスもカオスに含まれるハズであり、カオスは単性生殖をすると考えられるからである。カオスの定義が正しければ、この親を辿ってゆくことによって辿りつく筈だった“愛”というコンセプトそのものが、出てくる余地を失うから、彼女の問いは滑稽そのもの、愚かそのものとなるのであり、それ故にこそ、苦しまなければならなかった、という解が成立する。
 上記の推測が正しいとすれば、愛という概念が間違って抽出されてしまった点に、作家のキリスト教的思い込みがあったと見た方が良さそうである。この点を指摘する者が、誰も居なかったとすると、如何であろうか? 
 まあ、こんな理屈を捏ねなければ楽しめる舞台である。主演の辻 由美子さんの演技が良いし、神々、コロスの使い方も面白い。
アルバトロス・ダウン

アルバトロス・ダウン

岡本塾・ペーチカトライブ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/04/03 (金) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★

旗揚げと6回目
 ペーチカトライブとラパンは分けて扱う。

ネタバレBOX


 先ず、ラパンだ。こちらは旗揚げということであったが、シナリオ「スリーS」には独創性もなければ、緻密さも無い。おまけに演出は何を見ているのか? 自分が演出なら、駄目の出しっぱなしである。第1に、最初の忍び込みでセンサーに腹具合の悪い男が感知されるシーンでは、中に入っていた2人が、障害物を乗り越えて出て来ない。入る時に乗り越えて行った障害物は、観客の頭脳の中にはキチンと残っている。導入部、ピンクパンサーのもじりも、役者のレベルが到底パロディ化できる力を持っていないのに安易である等々。しょっぱなからつまずいた。役者は、自分の演じているキャラクターが何を見ているのか、役柄を作る上でヴィジョンをキチンと見ていないことが明らかだ。つまり、何を演じているのかすら分かっていない。こんなことでは、役者の名が泣く。後は推して知るべし。こちらの評価は☆2つ。ホントなら1つでも良いくらいだ。
 次にペーチカである。地方のカラーギャングの抗争は、ウェストサイドストーリーを思わせながら、キチンとラップという現代の若者風俗を取り入れると共に、ラップの歴史などをさりげなく説明して伏線とし、現代のIT技術との兼ね合いも自然に表現すると共に、ヤンキーがこれらの技術に弱く逆に喧嘩に強い、という特性と、力で押してくるという趨勢をも対置させて、地方で文化に目覚めた不良と古典的不良を対比させつつ、ダンスやリズムを作品に溶け込ませる点でも成功していて、全体のバランス感覚の良さを見せている。こちらは☆4つ。それから、ペーチカはA・Bとキャストが分かれているが、自分の拝見したのはAチームである。
 2作品合同なので、全体の星は3つ。
セラピスト

セラピスト

別世界カンパニー

ブディストホール(東京都)

2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★

闇チームを拝見

 様々なメソッドを開発することで、有名になった精神科医師のクリニックでは、更に新たな治療法開発を巡って熾烈な競争が繰り広げられていた。新主任のポストも掛かるとあらば、人別帳のはっきりした医師の世界、各自の意地やプライドのみならず、レゾンデートルを賭けての戦いである。本命はゾリンゲン、対抗はマルチャン。(追記後送)

家族という名の鎖

家族という名の鎖

HIGHcolors

「劇」小劇場(東京都)

2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★★

シガラミ

 を捨てたくなる。そんな家族は無論あるものだ。普通の感覚でいったら、今作で描かれているこの一家も、下司!! としてうっちゃっておきたい家族であろうが、この作家、こんなものなんじゃないか? という構えである所に懐の深さがあるのだろう。
(追記後送)

遺産遊戯!

遺産遊戯!

team☆G-VA

小劇場 楽園(東京都)

2015/04/01 (水) ~ 2015/04/05 (日)公演終了

満足度★★★

金と人品
 Team☆G-VA第一回公演となっているが、Please Mr.マーべリックとの合同企画である。合同企画というのは、シナリオ・演出を担当したのが、Please Mr.マーべリックの歳岡氏ということのようだ。因みにG-VAは(じぃば)と読むのだそうで爺、婆の意である。
 序盤、演技が固かったが徐々にほぐれ、シナリオの面白みも増して中々良い展開になった。

現代能楽集 クイズ・ショウ

現代能楽集 クイズ・ショウ

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/31 (火)公演終了

満足度★★★★★

 知の鏡
我らの時代の不安を、その拠って来る所を、質疑という形を通して問う作品と捉えて良かろう。

ネタバレBOX

 我らの時代の不安を、その拠って来る所を、質疑という形を通して問う作品と捉えて良かろう。例えば、アメリカナイゼーションでしか無いものに、グローバリゼーションと言う名を意図的に間違って与え、アメリカ一国の利益を最大限追求する為に、あくせく働きまわるサラリーマンや正答し続けなければヘブンと名付けられた居場所から奈落へ落ちる他無いかのような設定は、我らの現在のシチュエーションのカリカチュアである。また、イスラエル、欧米露中の国家テロの犠牲となり続けるイスラム世界の本来の姿を提示したシーン、この植民地で現在、アメリカの犬どもによって行われている教育の右傾化などを描いたシーンなど、見るべき所をキチンと見、作品にさりげなく取り込んでいる点は、流石である。
 我々が体験してきたように、実際に多くのクイズ番組が組まれ、視聴率という点でも、面白さという点でも、そこで出される質問や賞品にも、時代や人々の暮らしを反映してきたという事実のみならず、質問と答えという形式は、知の基本的な形を示している。このことから、こうした様式が持つ普遍性に迄考察範囲を広げ、TV・ラジオなどのメディア以外の知の形として普遍化した上で、複式夢幻能との類似を挙げて、演劇にはそれほど馴染みのない観客にも、それとなく諭しながら物語を展開してゆくシナリオの上手さ、クイズ形式に仕込まれた設問と答えを通して、一般の日本人が、洗脳されている諸問題、しつこいようであるが、もう一度挙げておくと、教育の右傾化(ナショナリズム、集団的価値感の強制など)イスラム誤認(例えばイスラム教徒とテロリズムのリンク。正しくは、常にキリスト教徒がイスラム教徒に攻撃を仕掛け、イスラム教徒は自衛の為に闘ってきた。現在でも、自爆攻撃の根底にあるものは、占領と植民地化への止むに止まれぬ抵抗という運動である。
 ただ分かり難いのは、殊に1989年以降、大きく変化した世界情勢の中1991年にソ連が崩壊、唯一の超大国となったアメリカによるユニラテラルな強権支配によって、国連、世銀、IMF、アラブ連盟、EUなどが更に変質させられ、アメリカの情宣の道具やアメリカ一国の国益を実現する為の機関と成り下がり、結果、世界の正義、公正などの最後の片鱗さえも失われたことにより、また9.11をホロコーストと並ぶ人類最大の虐殺事件と喧伝することによって、他の多くの虐殺事件を隠蔽し恰もアシュケナジーとアメリカのみが、大事件の被害者ででもあるかのような演出を施して、既に行き詰まっていたパレスチナ問題を梃子にイスラムフォビアを蔓延させた上で、自分達が育てたビンラディンらを匿ったとして、タリバーンが実効支配していたアフガニスタンを攻撃、その後はイラク戦争を起こして、サイクス・ピコ協定によって英仏ロによって分断された不自然極まる国境を持つ中東のかさぶたのような均衡を破ったわけだ。一応言っておくと、イスラム国となった組織は、英米を中心としたイラク侵略が齎した結果であるのは、キチンと情況を観ている者にとっては常識であろう。シリアにしても、イスラエルの脅威となり得るという判断の下にアンチアラウィー派を支援した結果、現在大きく分けただけでも三つ巴の内戦状態になっているわけだ。無論、イランの“核”問題も同根である。自民党の馬鹿共、少しは世界情勢を研究せい!!)書きだすと、まだまだ問題が山積しているので、これぐらいにしておくが、こういった仕掛けが、作られることで、イスラム教徒の印象が悪くされていることは、実際に彼らと付き合ってみれば間違いであるということが分かる。まあ、イスラエルと付き合いのあるイスラム諸国の為政者は、国民の意識と随分乖離があるが。それは、日本も同じだろう。アメリカの犬に成り下がった国民ばかりではない、ということだ。

 
ABCDEFGH

ABCDEFGH

ENBUゼミナール

シアター風姿花伝(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

にゃんとにゃづけよう
Enbuゼミナールは、今年でひとまず休止ということになってしまった。意欲的な作品を手掛けてきただけに残念だ。然し、今作は、そんな寂しさを吹き飛ばす軽快な音楽に良く鍛錬された身体で挑み、演劇とかミュージカルというよりも緩やかな意味的繋がりを持つパフォーマンスという感じの作品で、楽しませてくれた。

超現実絶望ぐちゃぐちゃ夢子ちゃん

超現実絶望ぐちゃぐちゃ夢子ちゃん

しあわせ学級崩壊

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★

凋落する帝国の植民地で
現在の閉塞状況を、傷つきながら出口を見つけられずに生きる若者の精神構造を舞台化した作品。

ネタバレBOX

表現する際の器具の使い方などは工夫の余地があるが、演出上わざとやっているという側面もあろうから、一定のレベル迄、自分達のガス抜きができれば落ち着くだろう。
 但し、現在の若者が抱えている問題が、それで片付く訳ではないことは無論である。問題を解決する為には、パラダイムシフトが不可欠である。世間の馬鹿な大人達の真似をして、上昇志向で“勝ち組”を目指すなどという愚かな方法では無論パラダイムをシフトすることはできない。それをするには、会場でアンケートに書いた通りの方法が一つ。後は、グローバリゼーションと言われている今のアメリカナイゼーションを、キチンと認識する必要があると同時に、そのアメリカナイゼーションによってアメリカの覇権は、当に破綻したのだ、という事実を見据える程度の力は発揮しなければならない。即ち、知と知恵と論理的・哲学的な思惟によって世界を一度分析解体し再構築しなければならないのである。パラダイムを変えるに当たって最低限、この程度のことは必要だ。それができなければ、何時までも今回描いたような世界観の中で腐って行く未来しか持てまい。だが、今回、表現したことによっていくらか問題を対象化しているハズである。今後とも、自らを切開しキチンと観察して自らの道を切り開いて欲しい。

BAKUとよばれた男

BAKUとよばれた男

創作集団ヒルノツキ

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★

想像力と知恵を使わにゃキャ
なるほど、劇団名の通り、

ネタバレBOX

主張がハッキリしないというより、自分の内部・内面を凝視しようという視点に欠けたシナリオライターの書いた作品である。何より、日本人の悪い癖が出ている。悲惨は現実が起こった時、その事実を真っ直ぐ見つめ、最善の策を立てる為に悲惨の原因を冷静に見つめ、分析し、自分達のして来たことを検証した上で、策を練ることを怠る姿勢である。シナリオは、本来表現すべきであったものが、曖昧化された為にしらじらしく、役者達が、コミットできるものになっていない。この点から根本的に反省すべきだろう。
零度の掌

零度の掌

May

タイニイアリス(東京都)

2015/03/26 (木) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

血と現実
 これまでアイデンティティーの危機についての作品を発表して来たMayの新境地。作・演出の金 哲義氏の実体験に基づく、北朝鮮のドキュメンタリーになっている作品だ。日本では伏せられている情報を含め、理解されたいという個人的インセンティブより、寧ろ時代の変遷に追い立てられるようにして生きている世界中の人々の今を浮き上がらせて鮮烈である。(少し追記2015.3.28)
May作品の凄さは、登場する人物達が、それが常にあり得べき何かとして描かれたり、人工的な型として描かれるのではなく、怪我をすれば血を流す生身の人間として描かれていることだ。(更に少しネタバレに追記2015.3.29)

ネタバレBOX

作・演出の金 哲義氏が、これまでアイデンティティーの危機について書いてきたことは既に述べたが、これは、在日として生きることが如何なることかということでもあった。即ち、二世、三世、四世になれば、ハングルができない。然し日本語はできる。が、日本では朝鮮・韓国人と見られ、祖国へ戻ればそうは見做されない。下手をすればスパイ扱いされて拷問の上、刑を科されるということが起こってきた。然し、自らの内的整合性と暮らす社会での整合性は取れず、何時までも存在の不如意をかこつことになる。という現実が、一方で深い日本文化へのコミットという形で現れていた。今迄のMay作品発表時の演歌・ポップス等の選択眼の確かさは並みのものではないことをみてもそれは自ずと知れるのだ。少し大げさに聞こえるかも知れないが、彼はある意味、日本人以上に日本人である。だが、その心の軋み、魂の軋みは筆舌に尽くし難いものであるだろうし、彼の若い時は、気も狂わんばかりであったであろう。そのような彼の痛みによって、彼のシナリオには、生の活力が付与されており、在日日本人役者達の、自分自身に対する真摯な問い掛けが、人間を表現する厚みに繋がっているのだ。その生の表現への厚みは残したまま、アイデンティティーの悩み自体が、限りなく薄められ、意味そのものに疑いを差し挟まなければならない、と感じさせるほどの変化が北朝鮮に起こっている可能性がある、ということを感じさせる今作、29日13時は、東京公演の楽日だ。是非、もう一度見ておく。
せんてい2人芝居ver.

せんてい2人芝居ver.

ポーラは嘘をついた―Paralyzed Paula―

早稲田大学学生会館(東京都)

2015/03/25 (水) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

階層を分けるもの
 要するに主従を分けるもののことだ。それは、存在に対する自信に裏打ちされ、その結果は、意識と言葉によって社会化される。
 

ネタバレBOX

 今作では、それが、客とウェイターの形で表象されているが、ウェイターは、逆転を試みる。己をより非肉化することによって。
 それは、己の肉体を植物化する夢である。そして、己を土に埋めてくれと頼むのだ。来るハズのない待ち人を待つ設定での客の女性にである。だが、彼女は、待っていたのだ、存在のプロトタイプとしての己に身を捧げる餌食を。(従って以下はWミーニングとして捉えると面白い)それがいかなる形であれ、餌食を入手した途端、彼女は存在の本質を露わにする。それは、無論、他の命を喰らうことである。この圧倒的な存在の前で夢に命を賭けた♂とは何であったのか? という♂と♀の噺でもあり得るだろうが、そこは、実に詩的にアウフヘーベンされている。
鷹と雀

鷹と雀

劇団ORIGINAL COLOR

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★

いのちあらたなり
演出・演技とも未だ稚拙な部分があり、突っ込み所満載ではある。然し、主張がハッキリしており、ブレが無い。

ネタバレBOX

即ち、キチンとしたパースペクティブを持ったシナリオが紡がれ、それが正鵠を射ているということだ。その結果、今作は、今当に進行しているアメリカ植民地・日本でのファシズムの在り様をある意味で映し出している。無論、今作は、フィクションであるが、若く鋭敏な感性が時代の本質をキチンと射抜いている点を評価したい。
第一回 来年以降はやらないでいいフェス

第一回 来年以降はやらないでいいフェス

実験劇場企画公演

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2015/03/16 (月) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★

かていさいえん 森チーム
 演劇を続けることの困難と魔力を背景として本音に近い所を劇化している所が良い。

ネタバレBOX


 本番を明日に控えた演劇部アトリエでは稽古が為されている。然し、通し稽古は一度もされていないばかりか上演台本も完成していない。それでも、作・演出家には遠慮のある後輩達には、演出家のダメダシや彼女からの電話にも余りキツイことが言える訳でも無い。更に出演者の一人が大遅刻するわ、切羽詰まった状況であるにもかかわらず、演出家が大して大事でも無いシーンに拘るわ、で出演者達のストレスもパンパンに張りきって仕舞った。更に出演者間の男女関係がもつれて上演以前に人間界系がずたずたである。而も展望は全く見えてこないのだ。(追記後送)
After The Carnival

After The Carnival

ぷろじぇくと☆ぷらねっと

pit北/区域(東京都)

2015/03/17 (火) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★

このシナリオライターは演劇を勉強した方が良い
丸、三角、四角という要素に一旦分解し再構成された舞台美術のセンスは、抜群、作品の内容に合わせた螺旋階段の設えやシックスタントの造形化にも、無論そのセンスは生きている。

ネタバレBOX


然し、シナリオは、詩的イマージュのみが先行して、役者の身体性を無視し、ストーリー展開もおざなりにして、繰り返しを多く取り、詩的レトリックを多用しすぎることなど弊害ばかりが目立つ。演劇に関しては完全に勘違いしていると考えられる。
これでは、役者が可哀そうだ。キャスティングも悪い。

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