バグダッドの兵士たち 公演情報 ピープルシアター「バグダッドの兵士たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    役者の身体能力・鍛錬に注目
     初演は5年前であった。あの時よりずっと真に迫ってくるのは、日本の右傾化・軍事化が着々と進み、直ぐにでも日本人がここで描かれているような体験をしなければならないということに現実感が伴うからだろう。
     宙空に設えられたヒジャブをつけたイスラム女性の後ろ姿のようなオブジェや、上手・下手などに矢張りヒジャブを纏った黒衣の女性が立つのも、殺人者そのものである米兵を追い詰める民衆の影の圧迫感を表して効果的である。また、役者たちの身体鍛錬の見事さも素晴らしい。彼らのプロ意識に敬意を表する。また本日19日マチネ公演後と明日ソワレ公演後には来日している原作者のマガノーイのアフタートークがある。これもお勧め。(追記2015.11.20:02:43)

    ネタバレBOX

     ここで描かれている米国人は、兵士であるが、イラク戦争時、最悪の行動をとっていたのは、無論、傭兵である。彼らは人を殺すのが楽しみと考えているとしか思えない。女性をレイプし、人々を拷問に掛けて楽しんだ挙句惨殺していた。代表的なのは、ブラックウォーターの傭兵たちである。無論、傭兵の方が悪いことを平気でするのには、訳がある。国軍の兵士は、ジュネーブ条約などで禁じられている行為を為した場合、戦争犯罪を犯したとして軍法会議にかけられ処罰される。だが、私兵である傭兵にはこの懸念がない。今作で一般市民を殺した兵士達が処分を気にしているのはこの為である。単に、人間として悩んでいるだけではないのだ。
    そもそも、人間として悩むくらいなら、兵士になるかならないかのレベルでもっと深刻な悩みを抱えているだろう。そんなことも想像できない知的レベルにアメリカの大衆が置かれていることの意味する所を考えていないのは、当しく現在の日本の大衆と変わらない。そして、この程度の頭脳では、たかが貧乏程度で、己の魂を売ることに大きな抵抗はないのだ。考える人間なら、貧乏を恥じることはない。恥ずべきは魂の弛緩であるという程度のことには気付く。この程度のことを自分の頭で考え実践することもできない連中は所詮、人間らしい生き方など望むべくもないのは当然のことだろう。
    根本的な問題として、アメリカ人の誰がISの行為を責められるか? 今作でもたくさんイラク人を蔑視した言い方が出てくるが、バカを言っちゃいけない。そもそも大量破壊兵器が無いことを証明せよなどという難癖をつけ、何の罪もないイラクに殴り込みを掛け、残虐極まる攻撃を仕掛けたのは米英である。彼らは新たな武器の宣伝に、古い武器の刷新に、イラクの良質で豊富な石油の収奪に、また軍需産業の儲けと回転に、更には自分達で破壊しておいて建設を請け負うというマッチポンプ収奪迄してきた。イラクの国宝の多くがアメリカに盗まれたのは周知の事実である。にも関わらず、国籍がアメリカだというだけで、彼らはイラク人より偉い、或いは命が重いと考えているらしい。愚か者である。
    どういうアイロニーか。今作では、おまけに医者になりたいと言う者が人殺しを生業としているのだ。精神的に穢れていることにも気付いていないかのようではないか? 少なくとも遠い木霊のようにしか彼らの魂には響いていないのだ。そして、心は正常を装っている。何と悍ましい欺瞞であることか! おまけにそれを軍に来なければまともな人生が歩めないせいにしているのだ。よその国に出掛けて行って頼まれもしない人殺しをし、あまつさえそれを正当化する為手前のスケベ根性を丸出しにしていやがる。下司野郎! それがアメリカ人の姿だろう。少なくとも一方的にやられる側からはそのように見られて当然である。
    ISが、各地で騒動を引き起こしている。しつこいようだが、そもそもISのような組織ができてしまった主たる原因がアメリカ・英国が中心になって起こしたこのイラク戦争であった。はっきり言って英米はイラクにいちゃもんをつけ、無辜の民を虐殺、レイプ、拷問に掛け恥辱を与え大地を穢した。バクダッドのような人口密集地で大量のDU弾を用い地球の年齢ほどの半減期を持つ放射性核種で汚染した。
    無論この汚染に関して国連も英米も知らんぷりを決め込んでいるが、これは明らかな人道に対する罪、戦争犯罪として賠償させるべきである。仮に彼らの主張するように原因がDUの放射線ではないにせよ、重金属毒性の可能性も含めて国際的な第三者委員会による検証が必要である。そして客観的判断で英米のDU使用に非人道性があったと認められた場合、彼らは、国家が破綻しても払いきれぬだけの借財を背負うべきである。当然のことだ。 
    殊に副大統領であったチェイニーの悪、ブラックウォーターの創設者、エリック・プリンスらの戦争犯罪は国際的に指弾されるべきである。ブッシュにも無論罪はあるが、彼の最大の罪は愚かであったこと。愚かであり続けていることである。丁度、パシリ安倍のように。
    今回の観たいで自分は原作者が殆ど原作を書くためのデータをインターネットで集めた、と書いたが、彼は全部をインターネットで集めたと言っていた。こちらが自分が聞いた正確な話である。観たいでは少し遠慮して書いたのだ。だが、恐らくネットで集めた情報は、一般的米兵の言質に近かったのだろうと再演を拝見して思う。露骨な表現がたくさん出ていることからも、在日米兵から得るデータ・印象からも、非公式な場所でホントに語られていることに近いだろうと思うのである。その生の感覚を吉原さんの見事な翻訳は、日本で暮らす我々にも届けてくれている。この自然な日本語にトランスレイトされた翻訳の、本質の正確な捉え方がなければ、今作は、ここまでキチンと我ら観客に届くことは無かったであろう。

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    2015/11/19 12:33

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