ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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ものがたり降る夜

ものがたり降る夜

ことのはbox

上野ストアハウス(東京都)

2015/12/16 (水) ~ 2015/12/21 (月)公演終了

満足度★★★★

仕掛けの面白さと深読み
 男と女を語るのに猿と人の混血を登場させている所が今作の仕掛けとしては基本だろう。この混血、人間のように嘘はつかない。(追記2015.12.23)

ネタバレBOX

考えていることは、セックスをすることばかりなのだが、人間のような卑猥さが無いのだ。彼らは楽しく和合している。かつて日本の庶民が持っていた風習としての夜這いなども例示されるのだが、実際、第一回東京オリンピック開催辺りまで地方によってこの風習は残っていたようである。
 基本的に言い寄った相手のOKがなければ夜這いは不成立。一方、合意の上であればOKということだ。このような発想は宗教的に厳格な絶対神を持ち、神が定めたとされる婚姻制度があれば、出てこない。このような大らかな性意識は、律令制を正当化し一種のクーデタをおこした藤原 不比等らが中心となって編纂した日本書記では、当然のことながら否定的見られているが、古事記ではずっと大らかであるのを観ることによって、或いは神道以前にこの倭国にあった鬼道に於いては、普遍的な性のありようであった。
 以上に挙げた事情を鑑みれば、今作の目指したものは、アニミズムが体現していた世界観再考の便ともなろう。即ち、尊い存在とは、命を喰らうことによってしか、己をも己の仲間の命脈をも保つことができないことを知る者であり、それを知ることによって生命全体が生きる環境をも射程に入れるような考え方をする者であると考えるのである。そして、であるならば、現在、世界の利口ぶった国の多くが実践しているような右肩上がりの経済発展や軍事競争が如何に愚かで無益なものであるかに対する痛烈な批判になっているという深読みすらできよう。
わからなければモモエさんに聞け

わからなければモモエさんに聞け

劇団青い鳥

小劇場B1(東京都)

2015/12/15 (火) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

日本橋高島屋本店のエレベーターを思い出してしまった
 初老の女性が、名門デパートのエレベーターガール募集のチラシを見つける。ちょっと気に掛かる。

ネタバレBOX

それがきっかけで、余り脈絡のない旅をする。旅と言っても実際の旅ではなく、精神的な放浪に近い。行く先は、占い師、心療内科病院、アメリカ帰りの女性が講師を務める演劇的要素を取り入れたカルチャスクール、そして遂に名門デパートの面接会場。登場人物たちは皆奇妙で、どこか箍の外れたような人々なのだが、特異な才能や、心理的瑕疵乃至は、状況に翻弄された異常な疲れを纏っており、現実的状況ともずれているのだが、そのずれの中では頗る個性的で面白いキャラクターである。半睡状態で見る夢のような不可思議な作りなのだ。それを支えるのは、主演女優の所作と見事な照明、効果的な音響、ぴたりと嵌る科白だ。この絶妙感が堪らない。
ビーイング・アライブ

ビーイング・アライブ

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2015/12/11 (金) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

孤独死の時代
 自分は足早に歩く方なので、携帯に操られているトロイ若者や、歩みの遅い老人はよけて歩く。その際、本当に老人が増えたなと実感する。

ネタバレBOX

外に出るようになった老人が増えたのかも知れないが、データを見るまでもない。ひたひたと音もなく着実に超高齢化社会は、我らを呑み込みつつある。その経済的負担や社会制度へのおざなりの懸念が指摘されてはいるが、福祉には疎いこの植民地の政治屋や官僚が、天下りや手前の利害の為以外に一所懸命に取り組むハズもない。
 一方、身の回りにも散見されるようになった孤独死も最早他人事ではなくなった。そして、独居老人の抱える本質的孤独の深さ深刻さは、老人問題の中核に据えられるべき大切な問題であることは言うを俟たない。政治などに何の期待も抱けないこの植民地で、我々は、老人を抱える家族として、人として、また老いを生きる個々人として如何にこの孤独と向き合ってゆくのか? その孤独感の実質とは如何様なものなのか? を丁寧に掬い上げようとする意欲作。舞台の大部分に傾斜をつけて役者の身体に負荷を掛け、老人の身体特性を舞台構造そのもので実現させようしている舞台美術も素晴らしい。舞台ならではの演出上の工夫、役者陣の優れた演技と共に、古城氏の問題意識と社会性を持った視点に裏打ちされたシナリオが光る。

MID騎士(KNIGHT)ミラージュ

MID騎士(KNIGHT)ミラージュ

無頼組合

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/12/11 (金) ~ 2015/12/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

泥臭いダンディー
というのが、このシリーズの本音という気がする。ハードボイルドというより、泥臭ダンディーという方がしっくりくるように思う。その視点で見ると、実にかっこいいのだ。そもそも、泥臭いのにダンディーというのは、語義矛盾である。然し、ここには、それが、絶妙なバランスで成立しているのだと言いたい。
 感心するのは、このテイストでシリアスな内容をよくぞ、ここまで表現したという点である。殊に、遠いところで単に事件として起こったことが、その地域で苦労している人と友人になることで、自分の問題として捉えられるようになるということや、だからこそ、自分で調べ、自分の頭で考えて、自らの行動を自ら選択してゆくという、社会人としての基本を、普通の人間の内側から描いている点に、作家の極めて真っ直ぐな視座を観る。実は、この視点こそ、表現する者にとって最も大切なことなのである。
 背景に描かれた、都会の寂しさを象徴するような美術のセンスも、また、照明によって効果を変える手法も素晴らしい。(追記後送)

ねじられた周波数

ねじられた周波数

創像工房 in front of.

ザムザ阿佐谷(東京都)

2015/12/10 (木) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★

実存的他者と出会うべし
 2人兄弟の弟の方が、多重人格障害を負っている兄弟の話なのだが、何だか腑に落ちないと観劇中に感じて居た原因が、分かった。

ネタバレBOX

今作では、生まれることができなかった三男が、二男の別人格して登場するのであるが、通常心理学的には、多重人格障害を持つに至った患者の多くが、小さな頃に虐待受けていたり、戦争による深いトラウマを抱えていたりすることが、発症の原因である。
 然し、今作では、この世に存在したことがない三男が、存在したかったというパトスだけで、キチンと産んでくれなかった母を殺したり、二男が現れていない時に三男が現れてそういう行為に至ったことを隠す為に、長男が事件現場に火を放ったりと、主体の置き方が誤っていることによって生じた論理破綻を、恰も自同律の永劫回帰のように見せ掛けている。
 自分にもなるほどと思えるケースは、二男が何らかの理由で深い魂の傷を負い、その為に他の人格を作りだしてゆくという形にすると、その悲劇性を際立たせることができると考える。出てこない父が、二男の目の前で特高の凄惨な拷問によって殺された等でもよかろう。戦争プロパガンダの話も出てくるのだし、日本の特高の拷問は凄まじいものであったのは事実であるから。まして、安倍のような阿呆が、戦前・戦中の治安維持法より悪い法を成立させているし、更に悪化させようしている最中でもあるのだから。
【『比丘尼』全公演終了しました。御来場、誠にありがとうございました!】

【『比丘尼』全公演終了しました。御来場、誠にありがとうございました!】

殺陣集団 伽羅牡丹

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/12/11 (金) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★

形而上学不在
 殺陣のグループということもあって、シナリオは表層的で、比丘尼の生き続けなければならぬという宿命の呪わしさは全然出てこない。

ネタバレBOX

一応、八百比丘尼らしき謎の尼は出てくるが、それが確実にそうと分かる仕掛けにはなっておらず、彼女は、その宿命を嘆くという訳でもない。寧ろ、ヒロイン、椿の生涯を淡々と語る、語り部的存在である。
 まあ、重点を置いている所が違うから仕方がないと言えばそれまでだが、もう少し形而上学的な視点も入れる方が物語としては面白くなろう。構造的にはメタに持ってゆけるのに、そうなっていないのは作・演出が複眼的思考をしていないからであろう。視座が単一だからメタ化できないのだ。これでは、芝居を観なれた観客には退屈である。
 殺陣のグループということで、身体性の高さと殺陣は一定評価できる。
【入場無料・カンパ制】アトリエ公演「桜歌」「RS」「忘却者来訪」

【入場無料・カンパ制】アトリエ公演「桜歌」「RS」「忘却者来訪」

ラビット番長

演劇制作体V-NETアトリエ「柴崎道場」(東京都)

2015/11/28 (土) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

2年目の演者たち
 一応白に属する作品と考えてよかろう。3作品すべてを拝見したが、若い役者陣、これからが楽しみである。自らの充実に投資して更に伸びてほしい。
(追記2016.1.8)

ネタバレBOX

 母を早く亡くし、父も最近癌で亡くした民宿の娘、たまちゃんは、祖父と民宿切り盛しているが、夏休みで東京から帰省していた高校の同級生ちゅん、もじゃが交通量調査のアルバイトをしている現場で偶然の再開を果たした。たまちゃんを高校時代から好きだったちゅんともじゃは、民宿の手伝いにかこつけては彼女の所を訪れる。
 ところで、交通量調査をした翌日。二人は、民宿に呼び出された。バイトの際に知り合った鉄道写真愛好家を人定してくれとの依頼が入ったのだ。というのも彼が昨日出掛けた吊り橋から落ちたというのだ。相当の高さがあるのに、外傷もなく、何より生きていたのだが、事情は分からないか? との質問であった。彼らは彼が吊り橋に出掛けたこと。徒歩で出掛けたこと。道は間違えるハズのないことなどを証言したが、問題は、彼の身元を確かめるものが何もないことであった。おまけに怪我などは無かったものの、彼の記憶は、恐らくショックが原因で無くなっていた。この診断は、この辺鄙な場所に赴任してきてくれている医師によるものであった。他に泊まれる所も無いので彼は、民宿で預かることになった。だが、たまちゃんの祖父以外、彼女を守ってやれる人が居ないこの民宿で若い男が宿泊することは、彼女を恋する男にとっては心配の種である。他の宿泊客は馴染の昆虫学者。彼女を同道している。スタッフは祖父、コックなどだが、このコック実は前科があった。現在、地元の警察官の妻になっている女に懸想しストーカーをしたり、件で逮捕歴があった。だが本当は、レイプに及んでいたのである。祖父や父が寛容な人だったのでこの民宿で働くことになったのだが、警官も重点的に彼のチェックをしてきた。
 だが、鉄道写真愛好家の“名無しさん”は、実は宇宙人に乗っ取られており、彼は、他の人の体に触れることでその記憶を無くしたりして精神を乗っ取ることができたのである。そして既に何人もの人に触れて、人間の欲望と我執がこの星を滅ぼすとの認識を得ていた。JRの大赤字を作った大本の原因である新幹線の話もさらりと入れてあるので、この辺りの生臭さが(つまり赤字になることが分かり切っているのに、巨大な建設には、大手ゼネコンが濡れ手に泡の大儲けが画策されており、その金は政治資金に化けて自民党に流れる仕組みなどである)物語にリアルな深さを与えている点も注目したい。地球は異星人の植民地になる危険があった。然し、これを救ったのは、たまちゃんであった。彼女は、宇宙人に人間の愚かさと同時に哀しさをも教えたのである。宇宙人は知的生命体としてのレベルが高いから、彼女の訴えを正確に聞き取った。そして侵略を放棄した、そのように取れるラストである。
灯屋・うまの骨

灯屋・うまの骨

劇団大樹

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2015/12/10 (木) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

舞台美術もグー
 通常、年2回の本公演が多いのだが、この劇団、本公演の数がかなり少ないようだ。だが、内容的には、心に沁みる舞台であった。

ネタバレBOX

舞台になっているのは古道具屋と奥の座敷なのだが、この店に並べてあるものが、まんだらけ辺りで人気になりそうな物だったり、面白いのは1個500円のペーパーウェイトで、これは河原辺りで拾ってきた石に店主が馬の絵を描いたものなのだが、結構、人気商品だったりする。実際、我々なんぞより、これらの石っころの方が遥かに長い歴史をその体に刻んでいるのだ。変わるのであれば、星の歴史と共に変わる位のスタンスで変わりたいものである。こんな何気ないものに対する深い科白も存在する。それに、この店の主人、透馬と育ての母、灯の明るくて温かで偉丈夫な性格がとても上手に描かれている。下宿している住人達も面白いキャラである。1人はストリッパー、1人は元デザイナーのマッサージ師、1人は借金塗れの父を持ちバイトに明け暮れる女学生。出入りしているキャラクターも面白い。亭主と一緒に始めた喫茶店だったが、亭主はこの1年間戻らず、店は人手に渡して、自分は従業員として働いている元ママ。灯が未だ20代の頃、小学校の高学年で引っ越しをする直前、灯に結婚を申し込んだ小金持ち等々。登場人物の一人一人がキチンと自分の人生に気付いてからの話なので、キャラも自ずから立ち、透馬が偶々拾った若者に昔話をするという設定で劇が進行してゆくのでメタ構造が自然に観客に受け入れられる仕組みだ。味のあるいい芝居である。役者たちの演技も良い。
イルクーツク物語

イルクーツク物語

劇団俳小

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/12/09 (水) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

草創期の「夢」
 アンガラ川(ロシア、シベリア南東部を流れる全長1779Kmの川)では大掛かりな工事が行われている。発電所を建設しているのだ。完成すればこの川の水はせき止められて大きなダムができる。

ネタバレBOX

ここで働くエクスカベーターチーム(パワーシャベル)班長のセルゲイ、親友ヴィクトルそして食品マーケットでレジ打ちの仕事をしている美人のサーニャの3人を中心に、ソ連が未だ夢の国であった当時の人々の生活を描く。大型機械のエクスカベーターは1台で何と14000人分もの仕事をこなし、この機械を動かす当地チームは全国でも模範クラスの優秀なスタッフ揃いだ。ただ一人、怠け者のラプチェンコを除いて。
ところで美しいサーニャには、安売りサーニャの仇名がつけられ、誰とでも深い関係になる女というイメージが持たれていたが、取り敢えず現在はヴィクトルのステディという具合に観られている為、街に屯する若者からの冷やかしも、彼と一緒なら問題はない。実際、2人は一見上手く行っているように見えていたのだが、結婚などの深刻な話になるとヴィクトルは、彼女の浮いた噂が気になり本気になれない。どうも彼には女性に対する不信感があるようである。それは、生みの母が亡くなった後、父と一緒に暮らす女の所為で父が変わり果ててしまったことと連関しているらしい。いずれにせよ、ヴィクトルが、実質的にセルゲイに彼女を紹介することになったことから、親友同士は恋敵になってしまった。彼女は、自分を本当に愛してくれるのがどちらかを見極めようとする。結果、選ばれたのはセルゲイ。それ以前に彼女のステディとして自他共に認められていたヴィクトルは除け者になってしまった訳だ。だが、彼には当初そのことが意味する所が充分に理解できていなかった。セルゲイは理想家肌の性格の良い男であった為、サーニャも彼を信頼し本当に彼一人を愛するようになってゆく。かつてカルメンような生き方を理想としていたとは思えない変容ぶりであった。結婚後、めでたく子供に恵まれた2人だが、何と男女の双子であった。子供達は順調に育ち、仕事も夫婦仲も上手く行っていたが、セルゲイは、子供達が生まれた産院の前で知り合った子供アントンが手製の筏に乗って釣りをするうち転覆したのを見て助けに行き、子供を救えたものの、本人は帰らぬ人となってしまった。
一方自分の不手際からサーニャを逃したものの、未だ彼女を諦めきれないヴィクトルは、彼女の住まいの窓明かりを見ながら長い夜を何度も過ごしていた。夫を亡くした彼女の為にインテリのロージクの提案で4人で5人分を働き、給与は5人分出して貰ってそれをセルゲイの給料としてサーニャに渡すという提案に賛成した皆の好意のお蔭で彼女の生活は困らずに済んだのだが、暫く時間が経つとヴィクトルは異論を唱え始めた。彼女が生きる意味を皆の好意が奪っているのではないか? というのである。インセンティブが無くなれば、人間は死んだも同然。この意見には道理もあった。
人が他人を愛することとはどういうことか? 友人と恋人との間に引き裂かれた恋を人はどう生きるか? その時、本当に愛しているとはどういうことか? 人の幸福とは利他的なものではないのか? などイデオロギーが目指したのとは異なる次元、即ち普遍性のレベルで上演しようという努力の見られる作品。
不在の豊饒。

不在の豊饒。

中野坂上デーモンズ

荻窪小劇場(東京都)

2015/12/10 (木) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

アナーキー
 初見の劇団だが、ちょっとピャーに似ていると思ったら、客演女優にピャーの女優さんが出ていた。どんな所がピャーに似ているかというと、存在の原点を描こうとする所である。 

ネタバレBOX


 今作では、死即ち非在に対し、死へのなんだかんだや、誰もその世界を客観的には証言できないことから来る昏い想像と矢張り昏く大きな想像力の翼が、肉や血、性器や狂気を供物として要求し、生きている側は、それらを虚への供物として奉っているということである。だから、作品はカーニバルのような様相を呈しているのだ。
また、ピャーと異なる点は、ピャーは物語を何とか作りつつ、その間欠泉のような形でその狂気部分を対比するのだが、この劇団は物語性よりは、その乱雑、アナーキーな部分だけを独立した挿話のオムニバス形式で描いているよ
Manhattan96 Revue vol.2~窓枠のパレード・パレード~

Manhattan96 Revue vol.2~窓枠のパレード・パレード~

Manhattan96

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2015/12/09 (水) ~ 2015/12/15 (火)公演終了

満足度★★★

全体としては星3つScene5は星5つ
 丁度1ダースのSceneで構成された芝居ありダンスあり、マジックあり、ショウありの舞台。自分が気に入ったのは、Scene5のAct「開けてはいけない」であった。マジックも見事である。(追記後送)

ネタバレBOX


 「開けてはいけない」:総てがIDナンバーで管理されており、爆発音のような物音が間断なく続く。グレイの部屋に迷い込んで来たのは、上流階級のIDナンバーを持つ男。窓を開けた友人も妻も消えてしまった。どうやら、その謎を解くため、彼らが垣間見たハズの外の世界はどうなっているのかを調べたくて脱出してきたらしい。
時代絵巻AsH 其ノ七 『朱炎〜あけぼの〜』

時代絵巻AsH 其ノ七 『朱炎〜あけぼの〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/12/10 (木) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

花4つ星
 上杉 謙信亡き後、上杉家ではお家騒動があった。“御館の乱”である。この戦は養子であった景勝、景虎の争う戦乱であった。時は戦国、昨日の敵は今日の友。逆に言えば、今日の友は明日の敵という時代に、義を報じる上杉家の、義理ではあったが仲の良かった兄弟同士が争ったのである。この戦は謎が多いとされるが、その謎は何故、謎となったのか? 多くの資料をもとに、AsHの作家、灰衣堂 愛彩が、史実を基本に描いた叙事詩の一幕。

ネタバレBOX


 景勝は、長尾 政景と仙洞院(謙信の姉)の息子で謙信の甥に当たる。一方、景虎は相模国主北条 氏康の子息で幼少の頃より寺に預けられたり、他大名の人質としてあちこちの大名家を盥回しにされて育って来たため、人の情に敏く武芸に余り勤しんではこなかった模様である。上杉家へ来てからは、謙信の旧名を与えられ、姪を正室に娶る。正室との間に子を設けたが、本作に登場するのは道満丸という長男。景虎の賢さ、人としての器量・度量は、武芸に秀でると同時に矢張り度量・器量に富んだ景勝と共に相並ぶ者がない。いわば上杉家のいずれ劣らぬ双璧である。
 謙信が遺言を残さず亡くなった為、誰が上杉を継ぐかは、単に継承資格の有る者のみならず、家臣一同にとっても大問題であった。偶々、近親の女性たちと共に枕元で謙信の面倒を見ていた樋口 与七が、病の合間に相槌のような仕草をすると漏らしたことを聞き咎めた上杉 政繁に、そのタイミングを見計らって景勝が継承したということにせよ、との命を受け実行。このことが、この争いの原因となった。然し、景勝、景虎共に戦国武将の子。家来どももどちらに付くかで割れ、今更収集がつかなくなっていることは百も承知。かくなる上は、雌雄を決して勝った者が、越後を豊かで平和な地域として発展させようということになった。なるべく犠牲を出さずに収めるつもりではあったが、景虎の配下、柿崎 晴家が北条家に援軍を要請した為、景勝サイドは武田に援軍を要請。戦が大きくなってしまった。暫く膠着状態が続いたが、終に決戦の時がくる。景虎の正室は自害、景虎は道満丸だけは逃がそうと上杉家重臣の直江 信綱の忍び、殆ど口をきかない又六を伴に付け、景勝との間に戦闘中も密使として手紙を届けていた又六を案内につけ城を脱出させた。又六が常には口のきけない障碍者のふりをしているのは、拷問されても絶対に口を割らぬ、という剛の者であったに違いない。それだけに景虎の信頼も厚かったのだ。だが、彼らが脱出に成功しない内に、景勝に味方する軍が、勝手に動き、道満丸らに襲い掛かり、又六は討ち死にしてしまう。追い詰められた道満丸の運命や如何に? これは、観て確かめて頂きたい。
その王国の夜は明けない

その王国の夜は明けない

シアターノーチラス

シアター711(東京都)

2015/12/09 (水) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

拝金主義の行き着く場所の先の微光
 企業や学校等、人が集まる立地条件の良い場所にあるカフェ。珈琲は不味くて有名。(追記2015.12.11:01:28)

ネタバレBOX

従業員の殆どが、金の為にのみ働き拝金主義の悪しき例に漏れず、表層的であるから、アイデンティファイすることができない。エパーヴのような存在であることだけは感じているから、自らに自信を持つことができず、他人の揚げ足取りや根拠の曖昧な噂話などをして、自らの虚ろを観ようとしない。オブローモフとまではゆかなくとも、何やら気怠い雰囲気の中を海月よろしく漂っている。面白いのは、誰も彼も、決定的に自己と対峙していないことである。従業員は、総て自己の総てを対象化する位置に立つことを選んでいない。即ち悩みも所詮他人事なのである。回りの人間から嫌われるとか排除されることが恐ろしくて、自らが宇宙的な孤独と向き合うことを1度たりともしていない。無論、チャンスは総ての個々人にあった。だが、敢えてそこに踏み込まない所が日本人的特質なのだと言えよう。その為、不良債権処理がいつまで経っても片付かず、原発問題がとんでもなく誤った方向を向いても正道につかせることができない。作中、1週間後には締めると決まったこの店に大量のコーヒー豆が配達され置き場に困ったスタッフが殆ど全員で、それをあちこち移動するシーンが長く続くが、このシーンを観ていてカミユの「シーシュポスの神話」に出てくるシーシュポスを思い出してしまった。シーシュポスは神の怒りに触れて大岩を山上に上げては落とされ、また上げるという作業を永久に続けねばならないという罰を課されたのだが、あのシーシュポスである。この従業員たちのしている他のことも総て基本的に反復。いつ終わるとも知れぬ反復で、偶々、1週間後に店を畳むと店長が発表したものの、それで最後に有終の美を飾ろうなどというインセンティブは微塵もない。それどころか、賃金が本当に貰えるのか?  
働く場所が無くなって生活はどうなるのかと切羽詰った金銭問題ばかりに縛り付けられ、縛り付けられていることが何を阻害しているかについての思考も働かない。遂に、彼らは、店長を王になぞらえ、このカフェを王国になぞらえて反乱を起こす。気勢が一旦収まるのを待って店長が、彼らのアイデンティティーを問うと誰一人答えられる者が無い。そこで店長が話し始めたのは彼がここにこの店を開いた当時の抱負であった。立地は良い。そこで、サラリーマンや学生たちが、ふっと立ち寄りいつものコーヒーを飲んで、命を新たにするように外へ飛び出してゆく。そんな願いを込めて開店した当初の自分の気持ちを。店長は、喫茶店の話を通して人として生きる方向性を示した。唯一、リーダーとして為すべき方向性を示したのである。今作は、このラストで、何の希望も生きる目的も無くなったように見える現在の我々に生に微光を灯してみせる。
宮地真緒主演  「モーツアルトとマリー・アントワネット」

宮地真緒主演 「モーツアルトとマリー・アントワネット」

劇団東京イボンヌ

スクエア荏原・ひらつかホール(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/10 (木)公演終了

満足度★★★★

融合のむずかしさ
 記念すべき第10回公演とあって演目はモーツアルトとマリーアントワネット、演奏にも力が入っている。13時半に入場すると既にコンサートは始まっていて贅沢な気分に浸った。(ネタバレ追記2015.12.11:01時22分)

ネタバレBOX

 東京イボンヌはクラシックの生演奏と演劇を融合させたい、という理念で作られている劇団だから、今回も普段はイタリアで活躍している声楽家も招き豪華なキャストで臨んでいる。だが、異なるジャンルを過不足ないバランスを取りつつ上演するのは至難の業であることも事実だ。この難しさが今回も出たように思う。歌われる言語にしても何か国もの言語が用いられるので、聴いただけで全言語を理解できる日本人は稀であろう。字幕をつけるという配慮があれば、予算、翻訳者の確保等大変な作業が増えるが、観客には喜ばれよう。
 またシナリオは、若干説明的になり過ぎたきらいがある。鋭い煌めきを放つ科白も何か所もあるのだが、序盤、大状況を説明してしまうのは如何か? 演劇的にその悲惨な様を描くことで観客にそれと得心させる所に芝居の醍醐味はあると考える。
 音楽のレベルが高いだけに、それに見合う内実が欲しかった。音楽と演劇が融合していたのは、中盤マリーアントワネットとモーツアルトが初めてゆっくり語り合った場面で、このコラボレーションは見事であった。 
 フランス革命時、今作にも描かれているように庶民の生活は悲惨そのものであった。絶対王政の下、王が殺されるような凶事が起これば太陽が昇らなくなるという迷信が信じられていたとの噂を聞いたことがある。王権神授説を奉じて王の支配権を正当化していた以上、このような世迷い事が民衆に信じられていたとしても驚くにはあたるまい。実際、時の権力が如何なるものであれ、民衆が結果的にそのイデオロギーを支えなければ権力は生き延びることができないのは普遍性を持つ事実であろう。フランス革命後、恐怖政治を通じて民衆の支持を失った革命政権は短命に終わって、ナポレオンが王政を復活させた歴史は誰もが知る通りである。因みに自分がフランスに住んでいた1994年~5年に掛けてのフランスには、良くも悪しきもフランス革命の遺産が重い歴史の重圧としてフランス社会に影を落としていると感じていた。革命とはそのように多用な面を含む。その革命時、民衆がパンを求めたのも事実なら、マリーアントワネットが「パンが食べられないならケーキを食べれば」と言ったというのも良く言われることである。だが、今作で描かれたように本当に彼女が下々の生活を一切知らなかったのであったとしたら、この発言も単に彼女の不徳の致す所と断じる訳にはゆくまい。また、ルイ16世の鍵狂いも、彼の愛の形も、愛新覚羅 溥儀の虫狂いと正妻とのセックスレスとに通じるようで、王たる者の孤独・孤立・不自由・退屈を興味深く想像させる。一方、王ではないが、矢張り騒乱の時代を生きた貴族であるモンテーニュが、普遍的古典となった「エセー」を書き領主として驚くべき開放的精神の持ち主であったことをも考え合わせるならば、これは為政者としてコインの表裏を為すものかも知れない。まあ、為政者次第で人生を翻弄される民には、こんな論理は受け入れられないだろうが。天才芸術家と王妃、王妃と王との純粋恋愛の三角関係とも読める純愛を素直に受け取るのも楽しみ方の一つであろう。
全段通し「仮名手本忠臣蔵」

全段通し「仮名手本忠臣蔵」

遊戯空間

浅草木馬亭(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/10 (木)公演終了

満足度★★★★★

シェイクスピアを彷彿とさせるシナリオ
 全段通しの仮名手本忠臣蔵も今年で4回目。観る度に進化し深化し続けるこの舞台は年末の楽しみである。休憩10分を挟んで約2時間50分の今作。どの段も飽きることなく引き込まれるが、基本的に用いられている言語は、江戸時代の日本語なのでやや古風と感じる向きもあろう。然し、水産高校出身で古典などの素養の殆ど無い自分でも、類推できる。殊に六段、七段は、描かれている人間関係の因果と宿命との相克が、当にシェイクスピアの傑作に該当するような深く激しく劇的な状況であるため、固唾をのんで観た。
 昨年迄タイトルにリーディングという但し書きが付けられていたが、今回これは外されている。“原作に用いられている言葉から、如何様にドラマを浮き上がらせるか”に集中している為である。音響に関しても奏者が増え、厚みが増した。(若干追記2015.12.9:12.29更なる追記は後送)

泳ぐ機関車

泳ぐ機関車

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

これぞ演劇 花5つ星
 通常では考えられない三部作一挙上演というハードスケジュールである為、皆の身体は相当疲れているハズなのだが、逆にそのことが効を奏しているようにも思える。肩の力が抜けてとても自然な演技になっている。もともと桟敷童子の強みはチームワークの良さだが、役割上、華のある役に付いている役者のみならず、ワキを演ずる役者陣の演技も自然に溶け合って、観客席から観ていて、本当にイリュージョンが立ち上がってくるような舞台である。
 三部作のトリをつとめる今作だが、話の内容では序章に当たる。初演は2012年12月。三部作の序章が最後に書かれているのは、東 憲司の過去への遡及が現在から始まったことを物語るのかも知れない。(ネタバレ追記後送)

ネタバレBOX

 

 規模は小でも筑豊一の炭鉱否日本一の炭鉱を目指した赤堀炭鉱の山主、三好 辰介は、アイスキャンデーの大ヒットで当初の運転資金半分、100万円を準備していたが、山を開くには、出資者を募るしかない。元々素人ではないもののあくまで現場リーダーの一人に過ぎなかった彼が山主になるには、越えなければならない数々のハードルがあった。赤堀の水は澄んでいた。それは、採掘が容易では無いことを示していた。岩盤が硬いことを意味していたからである。だが、それは同時に落盤事故が少ないことをも意味していた。大手は、採算が炭鉱経営の基本であるから、収益が最優先、その為に人命が失われようが、遺族から恨みを買おうが知ったことではない。ヤクザを使って脅し、下層労働者の憤懣を暴力で抑え込むのが常識であったから、手間暇の掛かる山には見向きもしなかった。この赤堀が有望だとの判断根拠は、唯一辰介の感である。出資を依頼した相手は、岳母、野毛 綾華。筑豊では押しも押されもせぬ名家の実力者である。その性格は女傑というに相応しい肝の据わった女であった。
 さて、山を開くと、高給と行き届いた社会保障、辰介の分け隔ての無い人柄、清廉で篤実な性格から、赤堀の神さまと慕われて、岳母への借金は僅か1年で返済。順風満帆で8年の月日が流れた。
わたしのゆめ

わたしのゆめ

ガラス玉遊戯

小劇場 楽園(東京都)

2015/12/02 (水) ~ 2015/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

偽善と偽悪と子供たち
 タイトルがひらかなで書かれている点、大人からの目線ではあるが、イメージ戦略としては成功していよう。門題は、かようにデリケートである。舞台の出演者の役柄は総て大人。その大人は、小学校4年生(10歳くらい)の子を持つ親、担任クラスを持つ教師、教頭、教師になりたいと考えてボランティアで活躍している女子大生という役回りだ。(追記後送)

【入場無料・カンパ制】アトリエ公演「桜歌」「RS」「忘却者来訪」

【入場無料・カンパ制】アトリエ公演「桜歌」「RS」「忘却者来訪」

ラビット番長

演劇制作体V-NETアトリエ「柴崎道場」(東京都)

2015/11/28 (土) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

RSを拝見(ラビ番noir)
 日本社会というのは鵺のようで得体の知れない世界である。その鵺の正体を暴こうとするかのような内容で、自分にとっては頗る付きで面白い作品であった。演出の仕方も特異である。(追記2016.1.8)

ネタバレBOX


 ラビ番は、黒と白を描き分けているのだが、こちらは黒作品。即ち社会の暗部を示唆した作品である。日本社会が鵺だというのは、例えば歴史認識。日本は敗戦を迎えてから占領軍が到着するまでに2週間ほどのタイムラグがあったこの間に何が行われたか? 国内に残っていた為政者にとっての都合の悪い書類、情報などは村落隅々まで“焼け”との命令が通り、実際、朝から晩まで燃やし続けられた。軍関係、占領軍に戦争犯罪として断罪されそうな関係書類の実に99%が焼かれたとの指摘もある。実際、現在までに発見されている資料の殆どは、関係者が自宅に書類を持って帰っていて残った物が大半である。(つまり何らかの理由で持ち出した訳だ・個人的研究の為だとかの)実際、どれだけの書類が隠匿され、どれだけの書類が焼かれたのか、正確な所は誰にも分からない。だが、大量の証拠書類が、為政者側の、即ち戦争犯罪責任者サイドの利益に供する為に焼かれたことだけは間違いのない所である。その上で、安倍のような下司は、証拠書類がないなどの理由で、戦争犯罪が無かったことにしているのだ。他にも例えば原発再稼働、海外輸出等、どう考えてもまともとは言い難い判断を為政者が中心になって行っているのに、それを批判すべき学術研究者、大手メディア、司法、環境相などの公僕らが、推進の後押しをしていることが挙げられる。而も愚衆の多くがこの程度の策術に騙されているのか、騙された振りをして結果的に致命的ダメージを受けることを選択している。かつて長田 弘は「猫に未来はない」を書いたが、現在の我々に必要な認識は「核に未来は無い」訳だし、人間の作り出した技術とそれを用いた乱開発に未来は無いのである。ウルグアイ第40代大統領であったホセ・ムヒカさんではないが、貧しいとは、足るを知らないことである。換言すれば、自ら欲望をコントロールできないことを指す。生きるのに必要なのは、寿限無ではないが、食う寝る所に住む所、つまり住処と衣類、安全な食糧と水、健康と友である。そして愛する連れ合いが居ればこれだけで充分なのである。右肩上がりの経済成長など(直ぐ壊れる物のみを作り、買い替え需要で達成する他ないのだから)環境破壊そのものだし、持続し得るもので無いことは誰の目にも明らかであり、そんなもの・ことを望まなければ人はもっと幸せに心豊かに過ごせるものである。
 今作では、上記、人も他の生き物も無駄に死なず、健康で文化的で幸せを感じ得る世界構築とは逆を目指す者どもの、欲に塗れ精神的に堕落し最早天使の住む場所からは追放された下司共が、「論理の整合性」によって「真実」を作り大衆社会を運営してゆく怖さ、ちょっとしたきっかけや誘導を通してそれが実現してしまうことを描くことによって、その結果の恐ろしさと民衆世界破綻の一端を見せてくれていると言えよう。このような作品は、ことの両極を同時に観る視座なしに書くことはできない。作家、井保 三兎の優れた才能を示す作品である。
膨らむ粘土

膨らむ粘土

創像工房 in front of.

慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館(神奈川県)

2015/12/02 (水) ~ 2015/12/05 (土)公演終了

満足度★★★

ドライとシュール
3人の脚本家によるオムニバス。演目は飯塚政博作①「imu」②「道玄坂ルミ子」⑥「潮」
                   岩崎裕介作③「NENDO」④「適性」
                   岡戸優太作⑤「初心物忘」   ○数字は上演順
 基本的にドライな笑いやシュールな笑いに彩られた作品群だが、各作品の連関は薄い。次は、各作品がゆるやかな連携を保つような作品群にもチャレンジして「みてはどうだろうか。

売春捜査官

売春捜査官

EgHOST

高田馬場ラビネスト(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

継承するということ
 ちょっと変わったバージョンだったのは、脚本に結構付け足しがあったりするからである。

ネタバレBOX

つかこうへいが存命であれば喜んだであろう。芝居に同じものはない、という理由から長い間、上演台本の定稿というものを書かず、口建てで作品を作るタイプの作家であり、アテ書きでどんどんシナリオを変えてゆく作家であったから、このような上演態度こそ、つか作品の本質を継承していると言えよう。それだけに伝兵衛部長刑事の暴力や常識外れの行為の向こう側に、被差別者の苦悩や悔しさ・辛さとそれらを通して鞣されたような優しさが描けている点が良い。科白量が半端でない役もあるので、多少噛んだ所はあったが、役者陣も熱演であった。今回は、上演回数が少なかったが、再演する価値のある作品とみた。

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