nらoむkれe〜nずaんkの観てきた!クチコミ一覧

381-400件 / 492件中
カタルシツ『語る室』

カタルシツ『語る室』

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/09/19 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

コラー
ふざけるなー! 面白すぎるだろー! えっ? 終わり? マジで? となる。箍が外れてしまった関係性が、ねじれて歪んで繋がっていく。こんな話、なんで閃くんだろう。続きが気になって仕方ない。展開の面白さだけで充分なご馳走。確立されたイキウメワールドに酔いしれた。

ホテル・ミラクル2

ホテル・ミラクル2

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/09/18 (金) ~ 2015/09/23 (水)公演終了

深夜
深夜1時開演という時間帯の特別感にも誘われて、無理を押して観劇し、関越を飛ばして空が白んでくる頃に帰宅。6:30には職場へ。あの時間だから、客席が若い。青山祥子さんは、期待の遥か上をいく美しさで、あんなこと言っちゃ反則だ。「もったいなかったかなぁ」に強く同意。舞台がラブホというシチュエーションにエロスを感じるものの、作品をエロティックとは思わなかった。たくさん笑えるコメディと感じた。だからむしろ、もっと女性やカップルにも楽しんでもらえると思う。あの時間にあの立地で観てもエロを感じないのは、もう枯れている証拠かな?

すばらしい日だ金がいる

すばらしい日だ金がいる

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/09/18 (金) ~ 2015/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

動▶静
アマヤドリの武器は【動】だと思うが、今作は会話劇の【静】で新境地を披露。主宰の挑戦と劇団の可能性を肌で感じる。美しい囲み舞台と吊るされた蛍光灯にウットリ。椅子に乗せられた俳優の身体的拘束が心理的な自由を奪い、心に闇を持つ人物の言葉に魂を吹き込む。笠井里美さんが虚空を見上げながら、言葉に託す思いを語る背中が愛おしい。彼女の心の闇を照らすことのできるアイテムを、千秋楽までにゆっくり探してみよう。▶病は気からだとすれば、鬱は気持ちそのものではないだろうか。自覚と無自覚。どちらが救われるのか。闇を抱えた人たちの渦は他者を抱き込み膨れ上がる。彼らの闇に飲み込まれそうになったり、嫌悪を抱いたりした時に、ふと同調してくれる台詞にホッとする。一見まともに見える人物も闇を抱えている。それはつまり、われわれ誰にでもあること、起こり得ることを表す。自分の世界に堕ちていく時、人は引き、離れ溝を生む。当人には周囲の人の存在も心も見えない。我に帰った時の疎外感の蟻地獄から逃れる術はあるのか。今作に明快なメッセージを見つけるのは難しい。その代わりに、自己を見つめ直すことを促す。我は誰と生きるのか。言葉を使うことこそが人間の人間たる証であるなら、その力を信じ、より良く使えるようになりたい。それが大切な人と生きる術なはずだから。囲み舞台。それにはどんな作品でも場所によって見えるものが違うのだが、今作もそれぞれの方向から観たいシーンがある。リピートを強くお薦めしたい。ならば、フリーパスチケットとプレミアムチケットを、さらに強くお勧めしたい。▶続きはネタバレへ

ネタバレBOX

▶この舞台は檻なのかもしれない。囲むように立てられたアレが、そう思わせる。ソレが中央に並べられると、まるで世界の表と裏の存在を象徴しているよう。とてもシンプルな舞台美術なのに、表情豊かだ。美しい。かなりパーソナルなテーマの作品だと思う。でありながら、現代社会が抱える問題に迫る。主宰の広田淳一さんの魂の叫びが聞こえるよう。まるで、その叫びの照れ隠しのように笑いが仕掛けられている。うん。やはり広田氏、天才だ。▶3回目。驚くべき進化を遂げている。わたしの中の作品の印象が刷新された。理解していたことが次々に塗り替えられた。舞台はナマモノでイキモノだということを、毎作品感じさせてくれるアマヤドリ。何度でも観たい。何度でも観て欲しい。▶昼夜の観劇で5回目。毎公演思うのだが、この劇団の飽くなき追及の姿勢には本当に驚かされる。だって、今日また新たな演出が加えられたとのこと。それがまた目を引く驚き。それにすぐ対応してしまう渡邉圭介さん。糸山和則さんが持ったアイテムにも驚いた。これはきっと救われたい人たちの物語なんだな。タチバナの傍には誰がいるのだろうか?誰かいるのだろうか?彼の母親はどんな人なのか(だったのか)とても気になった。彼にとってオオノの「大丈夫だよ」「多分あなたも・・・」が必要だったんだね。きっと。あのディスカッション直後、狼狽するタチバナと笑う義弟と俯くアマギが印象的。劇団カラーの群舞が、ラストで饒舌に未来を語る。この群舞の美しさは視線の美しさ。交差する眼差しが、時に言葉を超える。そして、人は寄り添い繋がって生きることを証明する。その青空は偽物なのか?山の天気のように移り気なのか?あるいはゲリラ豪雨のように豹変するのか?ユミを演じる平体まひろさんの表情に映る戸惑い、期待、絶望・・・そして、希望。見つめあいすれ違うユミと母(笠井里美さん)の未来に幸あることを祈る。
RENT

RENT

東宝

シアタークリエ(東京都)

2015/09/08 (火) ~ 2015/10/09 (金)公演終了

満足度★★★★★

誤解を恐れずに書く
誤解を恐れずに書く。ミミ役のsoweluから目が離せないから、作品全体像は掴めなかった。でも全く残念ではなく、彼女の情熱をたっぶり浴びて幸福。エンジェル他界直後の歌では、涙・鼻水・涎を拭うことなく、グチャグチャなまま堂々と立つ姿に震えた。soweluのハスキーボイスの歌は胸の奥深くを刺激する。まるでポールダンスのようなセクシーダンスに、自分の中のオトコを知る。歌舞伎の連獅子の如く振り乱す髪からのラメシャワーは、まるで魔法にかけられているよう。周囲の女性客の「ミミやばい。可愛い」に強く同意。アーティストsowelu、歌手soweluとしては、美しくカッコ良くステージに立っていたいはず。でも、悲しみに打ちひしがれてグチャグチャに汚れている姿を曝け出していた。そこにはsoweluではなく、完全なミミがいた。歌はもちろんだけれど、演者soweluが楽しみ。

鳥取イヴサンローラン

鳥取イヴサンローラン

ロ字ック

シアター711(東京都)

2015/09/26 (土) ~ 2015/10/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

ダメ人間
ダメ人間ばかりで不快だった。こんなにもハッキリと不愉快になる作品は珍しい。きっと不愉快にさせる人間を描いた作品のはずだから、この不快感は、作・演出の山田佳奈さんの狙い通りということになるのだろう。だとすれば完成度が高いということだ。天晴れ。唯一、希望を感じさせてくれるジュンコ役の水野小論さん。ギスギスした関係を中和しようとワチャワチャした感じが愛おしかった。婦人警官コスプレにドキドキ。変わらぬ美脚にクラクラ。ジュンコさんの思い、成就しますように。小川夏鈴さんの今後の活躍が楽しみ。やはり客演の際に良い役を与えられ、良さを発揮している。所属劇団での配役より、客演時の方が持てる才能を発揮する場がある気がする。日高ボブ美さんの出落ち的なブチカマシ感がハンパなくてアッパレ。こうなるとやはり、小野寺ずるさんがいないのが寂しい。残念。ロ字ック、フルメンバーでブチカマス公演を首を長くして待つことにしよう。

ドリームランド

ドリームランド

ロデオ★座★ヘヴン

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/10/08 (木) ~ 2015/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

排他的
オープニングの仁王立ちの百花亜希さんがパンクでクール。謎めいて、クレイジーで、優しくて、切ない。あのクシャッとした笑顔に、いつもヤラレる。qui-coの小栗剛さんの創る世界は、いつもどこか排他的でありながら人間味がある。だからヒリッとする。今回は、幾つものショートストーリーが、グルグルと渦巻いて一つの大きな渦となって全体を飲み込んで行く。観ている側まで飲み込んで行く。見事。ただ、情報量の少ない情報が波のように押し寄せてくる感じ。そのスピードに振り落とされそうな緊張感。必死。でも、嫌じゃない。金子侑加さんが醸し出し纏う清楚さがたまらなく好き。あやめ十八番の夏公演の団子屋次女も今回も、その空気に恋してしまう。真顔で可笑し可愛い。ズルイ。反則。毎作品観たい女優さん。あまり進まない歩き方も可愛いかったなぁ。また素敵な女優さんを発見。わたしの同業者役というのも親近感を高めたかな?奈賀毬子さん。物語の流れや、言葉を交わす相手の状況に合わせて緩急をつけ、クルクルと表情を変える。変幻自在。この作品の肝。また観たい女優さん。

想いはブーン

想いはブーン

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2015/10/02 (金) ~ 2015/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

ノスタルジー
松本哲也さんの作品からは、いつもノスタルジーの匂いがする。作家として向田邦子の、演出として久世光彦の醸し出す昭和の家族の匂いがする。可笑しくて切ない。そして全ての登場人物が、ダメ人間なのに愛おしい。高校中退のヤンチャ娘の小園茉奈さんのやさぐれ感がたまらなく可愛い。親に逆らう感じも、それでも母の愛に包み込まれちゃう感じも、みんな愛おしい。次にアイツと遭遇した時には、やっつけてしまう気がする。鍋にしちゃう気がする。

文化祭大作戦

文化祭大作戦

20歳の国

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/10/02 (金) ~ 2015/10/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

18歳
彼らは20歳の国ではなく、18歳の国を生きていた。作・演出の竜史さんは不思議な人だ。演技はだいたいこそばゆくなるけれど、ノスタルジーの心にチクッと刺さるセリフを書く。今作の1番は「ダメだよ逃げちゃ!」次点は「人生でいうと今何時くらいだろう」だな。文化祭にはトキメキと絶望がある。それを素直に楽しめるヤツと、拗ねてイジケてるヤツ。自分は完全に後者だったなぁ。やり直したい。いくつもの棘がノスタルジーに浸った心に刺さってサボテン状態。 ほとんどレギュラー出演中の、大好きな湯口光穂さん。彼女のイジケっぷりが自分に似てて泣きそうになる。そして、あのニカッと笑う笑顔が最高。カラオケ熱唱も、安定値の上手さで聞き惚れる。 主宰の竜史さんは女性の描き方が上手い。みんなキラキラして見える。ジュリエットの安川まりさんが素敵。「ダメだよ逃げちゃ」「終わり方わかんないよね」とか名言。ジュリエットも良かったけど、告白されるシーン最高。キャラとしてはヒナちゃんにゾッコン。おバカを演じながら人の心を和ませ勇気づける。山脇唯さんがキュートに好演。アラレちゃんの「キーーーン」で走り去る姿に心をわしづかみされた。これからも観たい女優さん発見。 新しい風を送りこんだのはDULL-COLOREDPOPの東谷英人さん。これまで20歳の国に登場してきた男たちとは明らかに違う空気を持つ。誤解を恐れずに言えば、空気感も含め予想外にフィットしていて驚いた。

大逆走

大逆走

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2015/10/09 (金) ~ 2015/10/25 (日)公演終了

これまでの
これまでの赤堀作品とは違う気がした。もっと緻密に編み込まれたドラマを描けるはず。演出は能舞台に寄せているのだろう。あの枠 がそれを表し、霊が語っているのだから。

十一ぴきのネコ

十一ぴきのネコ

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2015/10/01 (木) ~ 2015/10/17 (土)公演終了

満足度★★★★★

野良
野良ネコたちの冒険と良い国の建国。仲間とコトを成す素晴らしさを伝える。しかし、立場や財が思いやりの心を蝕み、強欲を生み出し、陰謀が蔓延る。さぁ、我々はこの時代をどう生きれば良いのか。大人が子供たちの未来に希望を示さねば。岐路に立っていると自覚せねば。ヤンチャなおっちゃんたちが全身で若さを発散させている。開演直前に、客席にいた猫のホテルの佐藤真弓さんに絡む(驚く)中村まことさんが可笑しかった。「力を付けよう。力を合わせよう。」が、一番響いた。終演後のエレベーターで、小学生の女の子が🎵十一ぴきのネコ🎵と歌い出し、可愛くて空気が和む。むさ苦しいネコたちと一緒に紅一点の荻野清子さん。演奏者で、演技者で、観客だった。大堀さんの「何でそういうことすんの?」にリアルに吹き出してて可愛い。視線が素敵

人間とカマキリ(『キンダガートン・コップ』改め)

人間とカマキリ(『キンダガートン・コップ』改め)

ナカゴー

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2015/10/22 (木) ~ 2015/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

なんと
陳腐でエロバカバカしいオトナの学芸会だった。その学芸会を大真面目にやる大人が愛おしい。エマ王女の田島ゆみかさんのキラッキラの百面相とキラッキラの唇に釘付けになった。幼児もおバカも悪代官も、何でもござれだな。芸達者ぶりに呆れるほどに感服。開演の挨拶で、この人はいったい何を言っているんだ?と思ったのだが、なんとまぁ、そういうことなのかと、奇想天外な展開に呆れながらも大笑いして楽しんでしまう自分がいる。子供たちに与える未来への希望や夢は、そんな風に伝えちゃダメですよ。子供喜び過ぎ。

従軍中のウィトゲンシュタインが(略)

従軍中のウィトゲンシュタインが(略)

Théâtre des Annales

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/10/15 (木) ~ 2015/10/27 (火)公演終了


場面転換ではなく演出としての闇。視覚を奪われ、聴覚が研ぎ澄まされる。言葉からの情報と、その語気から伝わる感情が、より効力を発揮する。これは戦争の舞台ではなく、人間が人間たる言葉の意味と可能性の舞台だ。あの闇の中で、あれだけのことをやってのける俳優って、やっぱスゲーなぁ。あの闇、シアタートラムの『モリー・スウィーニー』のラストに仕掛けたものと同義だな。あの時は南果歩さんが客席を手探りで練り歩いて…。それにしても、初演の時と全く違う舞台を観ている気分だった。初演の方がダークで、今回の方がポップに感じたのはなぜなのか・・を、じっくり反芻しながら思考を楽しもう。くじ引きの持つ意味や価値は興味深いなぁ。

新国立劇場演劇研修所9期生試演会「血の婚礼」

新国立劇場演劇研修所9期生試演会「血の婚礼」

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2015/10/23 (金) ~ 2015/10/27 (火)公演終了

満足度★★★★★

これまでの
これまでの試演会の中で最も歌の多い公演ではなかろうか。しかもその歌がフラメンコ。あまりに日本人の血の中には無い歌だ。だから舌に乗らない。しっくりこない。なのに気持ち悪くはない。それは紛れもなく、歌の力と、歌い手のポテンシャルの高さによるものだ。民族の問題は根強い国だと理解はしていても、結婚に対する考え方に恐ろしささえ覚える。本来魅力的に映る花嫁に、こんなにも気持ちが寄り添えないことに驚いた。演じた八幡みゆきさんが好演していたからこその嫌悪感だと思う。女性の二面性に驚愕する。母親役の岡崎さつきさんは、怨念の凄みを、恵まれた上背に見事に纏っていた。最も印象的だったのは女中の竹内香織さん。誠意と愛情と時折見せる皮肉めいた振る舞いもしなやかに存在していた。小柄ながらも存在感がある。観ていて楽しい。今後の活躍を確信した。

CHAiroiPLIN 踊る戯曲3『三文オペラ』

CHAiroiPLIN 踊る戯曲3『三文オペラ』

CHAiroiPLIN

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2015/10/24 (土) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

楽しい
楽しいダンス。あの激しさで110分はヤバイ。スズキ拓朗さんが出ずっぱりって初めて観た。清水ゆりさんの呆れた顔で眺める表情がたまらなく好き。もちろんオリジナルの歌は最高。田中美甫さんは相変わらず、可笑し可愛キレイだった。冒頭の警官ダンスでヤられた。清水ゆりさんのダンスも観たかったなぁ。

地を渡る舟 ―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―

地を渡る舟 ―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―

てがみ座

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/10/23 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

震えた
重厚な作品だった。世界の渦に抗いながらも飲み込まれて行く人たち。望む道を捨て、望まない道へと囚われて行く。人が羨む地位や名声であっても、自分の望みでなければ地獄だ。ましてそれを妻や家族が望んでいるならなおさら。俵木さんが哀愁たっぷりに好演された。その時々の時代で、欲望は常に渦巻いている。金、名誉、出世を…それが戦争へ。そんなものはしたくないと思っているのに 、ある者は兵士として、ある者は国家権力の中枢として「戦争の真ん中へ」意志に反して飲み込まれる。「僕が恐れる」と言う優しさが時代との軋みを生む。自由とは何だったのだろうか。妻という肩書きを捨てても、財閥令嬢という肩書きは捨てられない妻。「この生き方しか知りません。」という台詞に『細雪』で仙波の大店のプライドを捨てられない鶴子を思い出した。父と夫の狭間で苦しんだ後、二人に「いつか」は来たのだろうか。最も涙腺が崩壊したのは、川面千晶さん演じるかつらの健気さ。出生地差別により、愛しい人の戸籍を汚せないと考える姿が、底抜けの明るさ故に切なさを増す。「帰ってくんなアホー!」と夫を解放して義母と生きる、福田温子さんが演じた宮本常一の妻も、その愛の深さは同じだ。開戦に向かって突き進む日本を「列島が発酵する」と言わしめた長田育恵さんに脱帽。あの発酵は発光にも思えた。「日本人が死を恐れないのは、大切な人のところへ帰れると思うからだ」には目から鱗が落ちた気分だった。とにかく、俳優陣が素晴らしい。みんなそこに確かに生きていた。西山水木さんと今泉舞さんの女中二人、農夫の中村シユンさんが見事。ラストの混沌とした現代の中で天を仰ぐあの男の目には、希望が映っているだろうか。わたしが手にしている自由について、見つめ直そうと思う。思っていることを正直に言ったら喧嘩になることもある。ましてや「あんたが嫌い」でその理由をあけすけにぶつけたら尚更だ。なのに常一に向けた女中の言葉は、バッサリ切られグサリと刺さっているのに、何故か温かい。聞きながら不思議な気分だった。ある種のトリップだった。かつてダイナマイトがそうであったように、学問が幸福な未来にではなく、学者や研究者の意図に反して誰かの欲望に利用されようとするときの恐怖と焦燥に息苦しくなった。まるで津波のように押し寄せてくる悪意の言葉を耳にする渋沢の苦悶の表情が痛々しかった。戦争を感じた。

楡の木陰の欲望 ~E.オニール「楡の木陰の欲望」より~

楡の木陰の欲望 ~E.オニール「楡の木陰の欲望」より~

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/10/28 (水) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

今作も
今作も船岩祐太さんらしい美しい演出だった。特に照明。全体的な暗さ、扉の向こうの眩しさ、どれも船岩さんらしいライティングだった。そして特筆すべきは、テーブルの隙間から俳優に当たるキャッチライト。横目で睨むエビンの両目、野望を潜ませるアビーの左目。見事に捉えた。

橙色の中古車

橙色の中古車

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/10/30 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

最高
水分補給もせずに走り抜けるパワーに脱帽。お笑いライブ以上に笑える舞台ではなかろうか。特に前半のたたみかける客席イジリに腹がよじれる程に笑った。ストレスを発散させてくれる作品だった。心は14歳の彼女は、わたしの目の前にいるリアル14歳の中学2年生よりパワフル。「満足です!」とか、一緒に叫びたかった。他にもツッコミを入れたくなるような舞台で、茶の間のテレビの前に座っている錯覚に陥った。最高!

ミュージカル『パッション』

ミュージカル『パッション』

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2015/10/16 (金) ~ 2015/11/08 (日)公演終了

うーん…
開幕していきなりのベッドシーンて初めて。シルビア・グラブさんが怖過ぎて魔女にしか見えない。愛されて解き放たれた後の普通の姿が美しい。魔女からのギャップが凄い。愛されることとストーカーは紙一重だということを、改めて思い知らされる。家族のある人との恋。どちらがアプローチしたのかにもよるけれど、「子供が幼い今は無理。時期が来ればどんな犠牲でも払う」という姿勢には誠意を感じるけどな。相手が今すぐ家庭を捨てられないこときっかけで、呪いのようなストーカーまがいの愛に心移りって腑に落ちない。出演者が演劇畑、オペラ畑、ミュージカル畑など、さまざまなバックボーンをもっているようで、何だか統一感がないように思えた。決闘への流れも、決闘自体も急展開で感情がついていけなかった。感情が寄り添える人物も場面も見つけられずに終幕してしまったなぁ。無念。

カイコ【全公演終了しました!!ご来場誠にありがとうございました!!】

カイコ【全公演終了しました!!ご来場誠にありがとうございました!!】

くちびるの会

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/11/04 (水) ~ 2015/11/10 (火)公演終了

満足度★★★★★

カイコは
蚕ではなく回顧。キャストがみんな魅力的だった。ただ、張り巡らされた関係を追いきれず、やや迷子になった。それにしても、登場する動物が動物だったのが驚き。犬が犬。鳥が…トリ。猫の猫さたるやビックリ。あの上目遣いの目はヤバイ。瞬きが輪をかけてヤバイ。あの猫。猫でありながらキツネに見えた。頭の中ではバービーボーイズ「女ぎつねon the Run」が流れた。あの色気は何だ?エロの極致。鳴き声がまた凄い。突然話す台詞がまたエロい。外村道子さん。観る度に違う表情をしていて引き込まれる。女優って…恐い。好き♥️

現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』

現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2015/11/08 (日) ~ 2015/11/21 (土)公演終了

初日
今回もしっかり能舞台をイメージしたセット。照明も美しかった。音楽もオープニングの電子音楽から、ロバート・プラントまで、転換も楽しめた。ただ、前方席からは死角になる場面が多く、鑑賞意欲を削がれて残念な面もあった。何重にも綿密に練り込まれた物語。その一つ一つにビックリな逆転劇が仕込まれていて、心地良く目がまわる。そこここに笑いが仕掛けられていて楽しい。それでいて常に死者の匂いが漂い、能を根底に感じさせる。サラリと徴兵制度まで織り込み、現代性まで漂わせる。見事。

このページのQRコードです。

拡大